カクレマショウ

やっぴBLOG

NO BORDERな宮沢賢治

2006-10-08 | ■本
先日、久しぶりに岩手県花巻市にある宮沢賢治記念館を訪ねる機会がありました。ここに来るたびに賢治を読み返したくなるのですが、今回は、賢治がエスペラントを学んでいたという展示を見て、改めてなるほどなーと思いました。

エスペラントとは、1880年代にポーランドのルドヴィコ・ザメンホフによって発明された「世界共通語」です。賢治は、世界のいろいろな人に自分の作品を読んでもらいたいという動機から、エスペラントを学び、実際、いくつかの詩をエスペラントに訳してもいます。また、彼の作品に登場する不思議な「地名」には、エスペラントの影響が強いとも言われています。「イーハトヴ」(イーハトーヴォ)が、岩手(いはて)の読みから作られた言葉であるのは別にしても。

彼の作品には、大地や森、川といった自然界、そしてそこに住む動物たちへの深い愛情と、まるで宇宙を見通すかのような透明感が底流に流れています。そしてもう一つ、彼の特異性は、「無国籍性」ではないかと思います。『銀河鉄道の夜』のあの国籍性のなさはどうでしょう。ジョバンニ、カンパネルラといった登場人物の名前だけでなく、「ケンタウル祭」や「烏瓜ながし」といった風俗や彼らの習慣は、いったいどこの「国」のことなんだろう?と思う。ますむらひろしの漫画のように、いっそ「猫」版にしてくれた方がよっぽどすんなり入ってくるような、不思議な世界。昭和初期の東北の農村地帯に住む賢治がどうしてこれほどまでに「ぶっとんだ」世界を描くことができたのでしょうか? もっとも私自身は、賢治のそういうところに一番惹かれるのですが…。

彼の作品は、今や様々な言語に訳されて世界中で読むことができます。賢治がエスペラントを学んだというのは、彼の言う目的は目的として、私には賢治の無国籍性を象徴するものに見えます。いったいどこの国の言葉? いったいどこの国の話? …どこの国でもいいのです。日本でもいいし、イーハトヴでもいいし、イタリアでもニューギニアでもフィンランドでもいいし、青森でもいい。同じ人間として共通する思いがそこにあれば。

『グスコーブドリの伝記』、『どんぐりと山猫』、『銀河鉄道の夜』、『カイロ団長』…、私の好きな賢治たち。また読みたくなりました。

宮沢賢治 Kenji Review 賢治の作品を読むことができます。

 

最新の画像もっと見る

コメントを投稿