カクレマショウ

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「桃太郎」前史

2007-05-27 | ■本
現在公開中の「ハンニバル・ライジング」(未見ですが)は、トマス・ハリス原作による「羊たちの沈黙」、「ハンニバル」、「レッドドラゴン」の主役であるハンニバル・レクターの「誕生」を描く映画。この手のスタイルは、ジョージ・ルーカス原作、 スティーブン・スピルバーグ監督による「インディ・ジョーンズ」シリーズでも、テレビ映画として「ヤング・インディ・ジョーンズ」が作られたように、けっこうよく見られるスタイルです。「スターウォーズ」も、ルーク・スカイウォーカーを中心に、時をさかのぼって描かれていますね。「有名」になると、その「誕生」や「生い立ち」も注目されるということでしょうか。

で、日本でも、あの「有名」な「桃太郎」のルーツを描いた童話があります。冒頭の、「どんぶらこどんぶらこと川を流れてきた大きな桃」、その桃はいったいなぜ、どこから流れてきたのか?という物語。『ももの里』(毛利まさみち 文/絵、リブリオ出版)というその物語のあらすじはこんな感じです。

「むかし むかしの大むかし」、「ももの里」という桃の名産地の村があった。ももの里の人々は、日本一大きな桃のおかげで幸せに暮らしていたが、隣の「くりの里」や「かきの里」に、鬼が現れて「ひどいわるさ」をしているという噂を聞いて、戦々恐々としていた。そんな時、桃の里に久しぶりに男の子が生まれた。「太郎」と名付けられたその男の子の誕生を一番喜んだのは、村で太郎の次に年長となる、10年前に生まれた男の子タケ。タケはまるで弟のように太郎をかわいがった。

ある日、ももの里についに鬼たちがやってきた。タケの策略でいったんは鬼を退散したものの、鬼たちは再び村にやってくる。太郎の身を案じたタケは、太郎を抱きかかえると、裏山にある神社のおやしろの中に隠れる。しかしそこにも一匹の鬼が鼻をひくひくさせながらやってくる。。タケは一計を案じる。神社に奉納されていた大きな桃の中に太郎を押し込むと、それを鬼に差し出し、大きな桃があるところに案内すると言う。里のはずれの川のところまで来ると、タケは鬼が丸太橋を渡っている時に丸太をころがして、鬼を川に落としてしまう。そして、「タケの思ったとおり ももをあわてて 手放したんだと。」

こうして、中に「太郎」という赤ん坊を入れた大きな桃は、どんぶらこどんぶらこと川を下っていって、「川に洗濯に来たおばあさん」に拾われた…というわけです。

名前を書いていたわけでもないのに、おじいさんおばあさんが、桃から生まれた男の子に桃太郎、と名付けたのは偶然と言えば偶然でしょうか。タケが太郎を桃に入れる時に、小刀で「もものなかみをくりぬいて、その中に太郎をおしこんだ」のなら、桃に切れ目が入っていたわけで、そこから水が入って来なかったのかな、とか、既に切れ目が入っていることにおじいさんおばあさんが気づかなかったのかな、とか、大人は余計なことばかり考えてしまいそうですが、なかなかよくできた「桃太郎前史」だと思います。

この絵本、滝平次郎風の切り絵がとても美しい。作者の毛利さんが、自身の長男のために作った作品だそうで、しばらく絶版になっていたのを、リブリオ出版が復刊(2005年)したのだとか。

こういう「さかのぼり物語」は、他のおとぎ話でもあったら楽しそうです。かぐや姫がなぜ竹の中にいたのか、とか、さるかに合戦の猿やかちかち山の狸がなぜあんなに意地悪になったのか、とか。また、いろんなストーリーを子どもたち自身が考えてみるというのもおもしろそうです。「ありきたり」のストーリーから、「自分だけ」のストーリーを持つことって大切ですね。

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