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鄭和とアレクサンダー大王とキリスト

2005-08-25 | ■世界史
先日の新聞に、「鄭和船団「子孫」 ケニアから招く」という記事が載っていました(朝日新聞2005年8月23日付)。

15世紀、明の時代に大航海を行った鄭和(1371-1434?)の船団は、遠くアフリカ東海岸まで達しています。現在のケニア沿岸部の小さな島に住む住民は、昔から鄭和船団に参加した船員の子孫だと語り継がれてきたそうなのです。島に残る石積みの古い墓は中国人船員たちの墓で、中国製の陶器がはめこまれているとかで、新聞は、「遺跡も裏付け」と報じています。

今年は鄭和の第1回航海からちょうど600周年にあたります。中国政府は、本国はもちろん、鄭和船団が訪れた東南アジアやアフリカ各地で記念式典を行う予定なんだそうです。「鄭和の子孫」が遠くアフリカに住んでいる、というのはたぶん格好の宣伝材料なのでしょう。ケニアの中国大使館員は3年も前からこの島を何度も訪れて、「鄭和の子孫」だと伝えられる人たちに聞き取り調査をし、「確証は得られていないが」、彼らが子孫だと判断した、とのことです。

子孫だと伝えられる人たちは、「肌の色が薄く、顔つきも特徴がある」ということですが、そんなあいまいな根拠で「子孫」だと決めつけるのはどうでしょうか。600年もたてば、いくらなんでも「中国人」っぽさは消えてるんじゃないでしょうか。「墓」にしても言い伝えだけで中国人の墓という確固とした証拠があるわけでもないようです。

この記事を読んで思い出したことが二つあります。

一つは、アレクサンダー大王(前356-前323)の東方遠征により、アフガニスタンやインド北部にいまだにその遠征軍の兵士の「子孫」が生き残っている村があるという話。

それから、あの有名な?「キリストの墓」のある青森県新郷村戸来(へらい)地区の住民は彫りの深い顔立ちをしており、キリストの子孫だと言われていること。

どれもこれも眉にツバつけて聞いた方がいい話。けど、そういう話の方が、話としてはおもしろい。歴史の真実は脇に置いておくとして。

「鄭和の子孫」の記事では、中国政府によって「ケニアから招」かれるのは、その島に住む子孫一家の19歳の娘で、南京大学に進学して医師を目指すのだそうです。彼女のコメントが泣かせます。「600年前の勇気ある中国人のおかげで、夢がかない、私の人生は変わった。将来は、1人の医師もいないパテ島に戻って、人々を助けたい」。子孫であるかどうかの真偽はともかく、少なくとも彼女の「夢」が現実になりそう、という意味では、大変めでたい話です。

それにしても、中国政府はこういう「美談」を作り出すのが本当にうまいなーと思いますね。

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