カクレマショウ

やっぴBLOG

美術史の中の棟方志功

2005-08-24 | ■美術/博物
…というタイトルの講演会を聴いてきました。

青森市の「棟方志功記念館」の会館30周年記念講演会。講師は大原美術館館長の高階秀爾氏です。

大原美術館には、「釈迦十大弟子板画柵」や「女人観世音板画柵」、「東海道五十三次板画柵」など、200点を超える棟方作品を収蔵しています。数年前に一度訪れたことがありましたが、「ホンモノ」には、本当に腰を抜かすほどの迫力がありました。「釈迦十大弟子板画柵」なんて、ほぼ等身大ですから。その大きさにまず圧倒されます。凄い、としか言いようがない。

高階氏は、大原美術館所蔵の棟方作品を中心に、ふんだんにスライドを使い、大変わかりやすく棟方志功の魅力をお話しいただきました。中でも興味深かったのは、欧米の「本」は、昔から「活字」の部分と「銅版画による挿し絵」の部分は明確に分けられ、印刷も別々に行われていたのに対し、日本の本は「文章」と「絵」が渾然一体となっていたという話です。百人一首しかり、浮世絵しかり。今日見せてもらったスライドでも、「絵」の上に和歌が記してあったり、蒔絵(まきえ)の硯箱(すずりばこ)のふたに上の句、ふたをあけると中に下の句がさりげなく配置されていたりする。「文字」で絵を書くなんておもしろい作品もありました。そして、棟方志功の版画にも、その流れが受け継がれている…。

彼の作品の魅力の一つに、板画(彼は版画を「板画」と呼んでいました)の中の「文字」があります。大作「大和し美し(やまとしうるわし)」なんか見ると、「絵」の部分より「文字」の方が多いくらいです。板をいっぱいに使って、豪快に彫られた文字がハネ踊っているようです。棟方志功の彫る「文字」はまさにねぶたを思い起こさせます。そして文字一つ一つが美しい。魂が込められているような気がするのです。

そんな例をスライドでたくさん紹介してもらいましたが、見ていて思ったのは、「白い文字」より「黒い文字」の方が迫力あるなーということです。つまり「白い文字」は、彫刻刀で「彫られた部分」(凹部)、「黒い文字」とは「彫り残された部分」(凸部)です。後者の方がきっと手間はかかるのでしょうが、やはり浮き出された文字は受ける印象度も違います。

子どもの頃は「変な子」扱いされていたらしい棟方志功ですが、その強烈な個性こそが、私たちに「凄い」としか言わせようのない多くの作品を生み出したことはまちがいないでしょう。

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