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3月が1年の始まりだった。

2005-03-06 | ■世界史
日本では、暦上の「月」をナンバリングして1月、2月、3月…と呼んでいます。ただし、陰暦では、睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、葉月、長月、神無月、霜月、師走と数名詞は使っていませんでした。

英語ではどうかというと、ご存知のとおり、“January”“February”“March”…とこちらも数名詞ではありません。英語の月名の起源が古代ローマ時代にまでさかのぼることもよく知られていますが、実は、当時、1年の始まりは「3月」だったのです。

ローマの開祖ロムルスが紀元前753年に制定したとされる「ロムルス暦」では、1年を304日としてそれを10ヶ月に分けていました。月の呼び名は、第1月から第4月までにローマの神の名を当て、それぞれ、Martius(軍神)、Aprilis (美の女神)、Maius(豊壌の神)、Junius (結婚の神)と呼んでいました。続く第5月から第10月までにはそれぞれラテン語の数字を当てはめていました(下記に一覧を載せています)。では、365日引く304日=61日間はどうしたかというと、この季節(現在の暦では1月と2月)は冬で生物が活動できないためとくに呼び名がなかったというのがおもしろいですね。暦上は存在しない日々を、人々はどんなふうに暮らしていたのでしょうか。

次に使われたのは、ローマ王ユマ・ポンピリウスが紀元前710年に制定した暦(ユマ暦)です。1年を355日とし、ロムルス暦では名称のなかった日々を第11月と第12月として加えて12ヶ月とし、それぞれJanuarius(ローマの門の神ヤヌスから)、Februarius(贖罪の神フェブルスから)と名付けられました。第12月は、「1年間の罪をつぐなう」という意味が込められた月だったのです。

紀元前153年、ユマ暦に大改革が加えられました。“Januarius”は「門の神」なので、1年の冒頭にもってくるべきだとして、月の順序を2ヶ月後ろにずらしたのです。月の呼び名はそのままでしたから、神の名からとられた月はともかく、数字名の月はその結果妙なことになりました。本来の数字と実際の年始めからの順序が2ヶ月ずれることになったのです。たとえば、Octoberの“okto”はラテン語で「8」を意味します(oktopusは足が「8」本ある、タコですね)が、実際の月では「10月」になってしまったのです。

さて、現在使われているグレゴリ暦のもとになったのが、ユリウス・カエサルが紀元前46年に採用した暦です。これまでのローマ暦は太陰暦でしたが、彼はエジプトに遠征した際に太陽暦を知り、ある天文学者に命じて新しい暦を作らせたのです。ユリウス暦は、1年の長さを365.25日、平年を365日とし、閏年を4年に1度設けるようにしていました。

当初のユリウス暦では、ユマ暦からの伝統を受け継ぎ、1年の始まりをMartius(3月)としていました。奇数番目の月は「大の月」で31日、偶数番目の月は「小の月」で30日とされましたが、これだと平年では366日となってしまうため、最後の月Februarius(2月)を29日としていたのです。しかし、実際には、現在2月は28日しかありませんね。これはどうしたことでしょう。

カエサルは、自分の生まれ月であるQuintilis(7月)を自分の名前をとってJuliusと改称しました。これが現在、英語のJulyの由来となります。カエサルの跡を継ぎ、初代ローマ皇帝となったアウグストゥスもまたSextilis(8月)をAugustusと変えています。実はこの際、アウグストゥスは、Augustus(8月)が「小の月」であることを不満として、もともと平年では29日しかないFebruarius(2月)からさらに1日に引っ張ってきて、Augustus(8月)を31日とし、まんまと「大の月」にしてしまったのでした。「時間」をも支配しようとする権力者のエゴまるだしですね。ちなみに、現在残っているローマ皇帝の名前はこの2人のものだけですが、他にももちろん、自分の名前をちゃっかり月名にした皇帝がいました。たとえば、ネロは4月をNeroneusと改称し、「五賢帝」の一人アントニヌス・ピウスは9月をAntoninusと変えるなど、他にもたくさんいます。ただ、いずれの場合も、死後再びもとの名称に戻され、生き残ることはできなかったのです。

<日本>  <ロムルス暦> →<ユマ暦改訂> → <ユリウス暦以降>→<現在の英語名>
1月  Martius (軍神マルス)→Janiarius →Janiarius →January
2月  Aprilis (美の女神アフロディテから)→ Februarius→Februarius→February
3月  Maius (豊壌の神マイアから)→Martius→Martius→March
4月  Junius (結婚の神ユノーから)→Aprilis →Aprilis→April
5月   Quintilis (ラテンの数字の5)→Maius→Maius→May
6月  Sextilis (ラテンの数字の6)→Junius→Junius→June
7月  September (ラテンの数字の7)→Quintilis→Julius→July
8月  October (ラテンの数字の8)→Sextilis→Augustus→August
9月  November (ラテンの数字の9)→September →September→September
10月  December(ラテンの数字の10)→October→October →October
11月  ─ →November→November→November
12月  ─ →December→December →December

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (れごまま)
2005-03-09 23:23:50
こんばんは

長年、どうして2月は小の月といっても特小なのか?(笑)と思ってきましたが、おかげさまで謎が解けました。

陰暦の呼び名は「弥生」と「師走」はまだ生きていますね。「弥生」は卒業式には必ずといっていいほど耳にするように思います。
味わい深い陰暦 (yappi)
2005-03-13 23:20:51
確かに、師走と弥生くらいのもんですかね~。



それぞれに味わい深くて、月雅称、好きですけどね。そっけない一月、二月よりは。少なくとも。

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