カクレマショウ

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「阿修羅のごとく」の恐ろしいテーマ曲

2009-05-25 | ■テレビ/メディア
阿修羅つながりで思い出すのが、「阿修羅のごとく」。向田邦子脚本で1979年にNHK「土曜ドラマ」の枠で放送されたドラマです。四姉妹を中心としたどろどろした人間関係が、まだ若かった私にはあまり理解できない部分もありましたが、何となく「怖いドラマ」というイメージがあります。そして、「怖い」イメージの背景には、テーマ曲のあの恐ろしい旋律が…。

ずいぶんあとになって知ったのですが、あれは、オスマントルコ(1302-1922)の軍楽隊の曲で、「ジェッディン・デデン Ceddin Deden」(祖先も祖父も)と言います。オスマン帝国には、「イェニチェリ」という常備軍がありました。イェニチェリは、メフテルハーネという軍楽隊を持ち、ヨーロッパへの遠征に同行していました。兵士たちの士気を高め、敵を威嚇するためです。行軍しながら彼ら(メフテル)が奏でる音楽に、ヨーロッパの人々は震え上がったと言われます。

この曲は20世紀初頭に作られた曲ということですが、その独特の音階と耳障りにも聞こえる演奏は、おそらくオスマントルコ全盛期のメフテルから受け継がれてきたものなのでしょう。一度聴いたら忘れられない楽曲です。曲は、「世界の国歌」というサイトの中の「世界の行進曲・愛国歌」からyoutubeにリンクされているので、そこで聴くことができます。同サイトには歌詞も掲載されています。

 Ceddin deden, Neslin baban!
 Ceddin deden, Neslin baban!
 Hep kahraman Türk milleti!

 Orduların, pekçok zaman!
 Vermiştiler dünyaya şan!
 Orduların, pekçok zaman!
 Vermiştiler dünyaya şan!

 祖先も 祖父も
 祖先も 祖父も
 勇猛なるトルコよ!

 汝の軍隊は幾度となく
 世界にその名を轟かす!
 汝の軍隊は幾度となく
 世界にその名を轟かす!

実は、モーツァルトやベートーベンの「トルコ行進曲」は、その名の通り、トルコのメフテルに刺激されて作られたものだとか。ま、それにしては二人の曲の方は旋律が美しすぎますけどね。また、メフテルは、現代のブラスバンドの楽器の編成にも影響を与えています。パレードなんかで行進しながらブラスバンドが演奏する場合がありますが、あれなんかは、まさにメフテルがルーツなのですね。演奏する目的は全然違いますけど。

それにしても、この曲をドラマのテーマ曲に選ぶなんて、すごいセンスだと思います。演出家・和田勉氏によるものでしょうか? なんだかよくわからないけど、まさに「阿修羅のごとく」怖いものを見せられそうな感じがしますね。怖いのは、決して姿形ではなく、目には見えない人間の深い性(さが)だったり、果てしのない欲望だったりするのです。阿修羅はそういうものを一手に引き受けていた存在であり、このドラマに「阿修羅のごとく」というタイトルをつけた向田邦子のセンスにも敬服します。

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