カクレマショウ

やっぴBLOG

「釜石の奇跡」?―防災教育とキャリア教育

2011-10-04 | └キャリア教育

東日本大震災で19.3mの津波に襲われた釜石市は、死者・行方不明者1,100人を超えました。そのうち、小中学生で亡くなった子どもは5人。分母が2,926人ですから、99.8%の子どもが生き延びたということです。これは、学校の防災教育の成果だということで、「釜石の奇跡」とまで言われています。

う~ん。「奇跡」か。安易に使っていいのかな、この言葉。だいたい、亡くなった5人の子どもは「奇跡」にあずかることはできなかったわけで、親御さんや家族の皆さんは、この言葉に違和感を覚えるのではないでしょうか。全員が助かって初めて「奇跡」と言えるのでは…。

だいたい、釜石の子どもたち自身が、「私たちはふだん通りのことをしただけ」と語っているではないですか。彼らは決して「奇跡」だとは思っていない。結局、マスコミや世間がいっわいわい言っているだけなのです。

釜石の防災教育の基本は、「想定は信じるな」、「助けられる人から助ける人へ」、そして、「自分の命は自分で守れ」ということ。避難場所も決して100%安全ではない。危険だと判断したら、もっと高いところに自分で移動しなさい、と徹底的に教えているという。実際、3月11日には、この教えが生かされたそうです。いざというときに役に立たない防災教育は何の意味もないわけで、その意味では釜石の小中学校の取組はずいぶん参考になりそうです。

阪神淡路大震災後に設立された、全国で唯一の防災の専門学科「環境防災科」を持つ兵庫県立舞子高校では、今年8月に「防災教育全国交流大会」を開催しました。大会には、東日本大震災で被災した釜石市や宮古市の中高校生も参加し、災害体験者ならではの、防災教育に関する熱い議論が展開されたようです(「内外教育」,2011年9月16日)。

舞子高校のある先生は、「防災教育は本来、直接被災したか、災害現場で直接支援した経験がある者が行うべきだ」と言っています。なるほど。体験者にしか分からないことって、確かにありますね。実際に体験していない人が、被災者の気持ちを「分かる」というのは不可能、ということかもしれません。

でも、その先生はこうも付け加えています。「体験者から知識を学び、自分たちが次にできることを考えようとする姿勢があれば、被災・支援体験がなくても防災教育は成り立つ。つまりやる気があれば誰でもできるんです」と。

高校生が、こういう姿勢を体験的に学ぶというのは素晴らしいことだとつくづく思う。被災地にボランティアで行った舞子高校の生徒は、釜石の中学生の笑顔を見て、「この笑顔をなくさないよう、私たちがずっと支援していかなければ」と思ったという。「私たちが」と言い切れるのは、ふだんから、学校で「当事者意識」を叩き込まれているからに違いありません。

防災教育は、単に災害に対する備えと自らの命を守るすべを教える教育だけではないと思います。避難所での生活における人間関係、地域の復旧・復興までのプロセスにおける役割分担など、今回の大震災を見ても、予め学んでおくべきことはたくさんあります。そういう意味では、防災教育をとおした生き方教育、キャリア教育というとらえ方も十分可能でしょう。舞子高校の生徒も、「震災を『いい経験』とは決して言えないが、生きていく上で大切な経験になった」と語っています。

そして、とても参考になったのが、「+α」の防災教育、という考え方。つまり、防災+自分の得意技、防災+好きなこと。自分たちに何ができるか、というところからスタートする防災です。人との「つながりづくり」だって、とらえようによっては防災教育とも言えます。「防災教育」という枠組みを超えた、「与えられた知識だけをこなす教育ではなく、自分で知識を作り判断できる人材を育てる教育」。これもまたキャリア教育の考え方に通じるものがあります。

「防災教育」を考えると、これからの教育の在り方について、いろんな方向性が見えてきそうです。


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2 コメント

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お久しぶりです^^ (モン吉)
2011-10-13 16:46:30
就職試験が解禁になって約1ヶ月・・・
内定を頂き笑顔の子、残念ながら不採用の知らせをうけ、悲しそうな子・・・さまざまです。

求人票を何百枚とみて感じたのが、青森県の雇用情勢の厳しさです。
女子の求人の少なさや、最低賃金ギリギリじゃないの?とツッコミを入れたくなるぐらいの給与水準の低さ・・・・これじゃあ県外に出て行かざるをえないよなあって悲しくなりました。

みんなホンとは青森県にいたいのに、働ける企業がない、あったとしても条件が悪く、実家にいないと生活が成り立たない・・・そうすると結婚が出来ないとか、子供をつくって育てていくことが出来ないという悪循環に陥っていく・・・
青森県は東北でワースト1の求人数です。今年は本当に厳しいです。

青森県の優秀な人材を青森県で生かすには県全体で考えないといけないですよね?

行き当たりばったりで就職の世話は出来ないし、でも求人はないし、生徒も先生も泣きたい気持ちです・・・
久しぶりなのに☆☆愚痴ってすみませんでした
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Unknown (やっぴ)
2011-10-14 01:06:05
モン吉さん
お久しぶりです。

雇用の厳しさ、それは教育ではいかんともしがたい悩ましい問題ですね。就職できる企業がないのに、どうして青森県に残って青森県のために尽くせなんて言えるでしょう。

本当に、「悪循環」を断ち切らないことには、いくらキャリア教育だ職業教育だといっても、なかなか…ですね。現場で苦しむモン吉さんが愚痴りたくお気持ち、よく分かります。

ただ、嘆いていても始まらないので、みんなで何とかしていかないといけません。目の前に就職できない生徒がいるのにこういうことを言うのもなんですが、一つには、やっぱり20年とか30年とか、長期的に対策を講じていくことも必要でしょう。付け焼刃の対策をいくら講じても、根本的な解決には至らないですから。たとえば、希望する職種がないなら自らそういう仕事を作っていけるようなバイタリティあふれる子どもを育てることも一つ。あるいは、青森県の持つ強み(農林水産業など)を前面に押し出した新たな仕事づくり。今、こういう苦しい時代だからこそ、先を見通した対策が必要なのではと思っています。

それにしたって、目の前で泣いている生徒をなんとかしてあげたいですよね。県内外を問わず、その子が一番幸せになれるような仕事につけることを陰ながら祈っています。
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