
11月15-16日の2日間、「第1回日本宇宙エレベーター会議」が東京・お台場の日本科学未来館で開催されました。主催は、日本宇宙エレベーター協会(JSEA)。
「宇宙エレベーター」…? 宇宙まで届くエレベーター? 漫画やSFじゃあるまいし。…なんて、いかにも怪しげなんですが、確かに、少し前なら完全に「SFの話」だった。ところが、近年の技術の進歩によって、俄然、現実的になってきたのだそうです。
宇宙エレベーター(軌道エレベーターとも言うようです)とは、文字通り、宇宙に通じるエレベーターです。エレベーターというより、原理的には上下に細長い人工衛星の一種なんだそうです。地球上を回っている人工衛星は、地球の重力(下に働く力)と、遠心力(上=宇宙に飛び出そうとする力)が釣り合っているため、同じ高さのところをぐるぐる回ることができる。このうち、赤道の上空3万6,000kmを回る人工衛星は、周期がちょうど地球の自転と同じなので、地球から見ると、静止しているように見える。これが静止衛星です。
この静止衛星から、下(つまり地球方向)に向けてケーブルを繰り出していくとしましょう。すると、ケーブルの重みで、静止衛星は重力に引っ張られて落っこちてしまう。そこで、反対側(上)の方にもケーブルを延ばして、重力と遠心力とが釣り合うようにする。下の方を地上まで延ばせば3万6,000km。それとバランスを取るためには、上の方は10万kmほどまで延ばす必要がありますが、こうして、静止衛星をはさんで、上下に長い長い紐が浮かぶような形になります。この「紐」を伝わって人や物を昇降させるようにしたものが、「宇宙エレベーター」というわけです。
宇宙エレベーターの最大のメリットは、コスト面だと言います。例えば、現在、スペースシャトルで1kgの物を宇宙に運ぶとおよそ1万ドル以上かかるのが、宇宙エレベーターを使えば約100ドル。つまり、100分の1の費用で済むのです。ケーブルを引くのに1~2兆円かかるそうですが、一度軌道を造ってしまえば、あとは昇降にかかる費用だけで済むので、大幅なコスト削減が可能となるというわけです。
原理的には十分実現可能なのだそうですが、最大の問題はケーブルの強度。これだけの長いケーブルとなると、鋼鉄の180倍もの強度が必要になるのだとか。そこに登場したのが日本製のカーボンナノチューブ。丈夫でしかも極めて軽量のカーボンナノチューブの開発は現在も着々と進められていて、まだ10万kmまで延ばせるまでには至っていないものの、必要な強度の4分の1までは実現しているのだそうです。このまま開発が進めば、15年後くらいには宇宙エレベーターを実際に見ることができるかもしれません。
しかし、こういうのって、実際に見てみないと、なかなかイメージがわきにくい。地上の基地からまっすぐに空に向かって伸びる幅1mのリボン。空どころか、そのリボンは成層圏を越えて宇宙まで達している…。そんな光景、誰も見たことがないですから。
『宇宙エレベーター』という本があります。著者は、トルコ人宇宙物理学者、アニリール・セルカン。読んでみると、あにはからんや、タイトルにすっかりだまされた! いや、だまされた、というのは、あくまでも「いい意味で」。宇宙エレベーターは、確かに彼も構想を考えたことがあるそうで、その解説もされているのですが、それより何より、このセルカンという人、ちょっとすごい。トルコ人初の宇宙飛行士候補。アルペンスキーのトルコ代表選手。もともとは建築学が専門で、宇宙物理学界でもホープとされている。東大で学んだこともあって、日本語もぺらぺら。この本も日本人向けに書かれたものらしく、自分で日本語で書いたんじゃないかと思われます。日本語だけじゃなく、古代メソポタミアのシュメール文字まで読めちゃう!
要するに、この本は、セルカンの考える次元や宇宙論をわかりやすく(と言ってもやっぱり難しいのですが)説明してくれているのです。中でも、タイムマシンの話はとっても興味深い部分でした。地球は自転しているから、たとえば「1時間後」の世界に行ったとすれば、自分のいる「場所」も移っているのか! なるほど。
タイムマシンと言えば、彼が中学生の時に、友だち13人と一緒にタイムマシンを作る計画を立てたという話が傑作。大きな電流が必要とあって、彼らは4km分の銅線を使って、なんとサッカー場の周りにそれを巻き付けて巨大な電磁石を作ったという。で、セルカンの弟をいけにえ?に、タイムトラベルをさせようとするのですが、あえなく失敗に終わる。セルカン少年の理論に半信半疑ながらも、ちゃんと実行に移すことを認め、助けてあげる親や周りの大人たちがすばらしいと思いました。
このセルカンのようなマルチで好奇心豊かな人なら、宇宙エレベーターはもちろん、タイムマシンでさえ、私たちの前に披露してくれそうな気がします。
宇宙エレベーター≫Amazon.co.jp
「宇宙エレベーター」…? 宇宙まで届くエレベーター? 漫画やSFじゃあるまいし。…なんて、いかにも怪しげなんですが、確かに、少し前なら完全に「SFの話」だった。ところが、近年の技術の進歩によって、俄然、現実的になってきたのだそうです。
宇宙エレベーター(軌道エレベーターとも言うようです)とは、文字通り、宇宙に通じるエレベーターです。エレベーターというより、原理的には上下に細長い人工衛星の一種なんだそうです。地球上を回っている人工衛星は、地球の重力(下に働く力)と、遠心力(上=宇宙に飛び出そうとする力)が釣り合っているため、同じ高さのところをぐるぐる回ることができる。このうち、赤道の上空3万6,000kmを回る人工衛星は、周期がちょうど地球の自転と同じなので、地球から見ると、静止しているように見える。これが静止衛星です。
この静止衛星から、下(つまり地球方向)に向けてケーブルを繰り出していくとしましょう。すると、ケーブルの重みで、静止衛星は重力に引っ張られて落っこちてしまう。そこで、反対側(上)の方にもケーブルを延ばして、重力と遠心力とが釣り合うようにする。下の方を地上まで延ばせば3万6,000km。それとバランスを取るためには、上の方は10万kmほどまで延ばす必要がありますが、こうして、静止衛星をはさんで、上下に長い長い紐が浮かぶような形になります。この「紐」を伝わって人や物を昇降させるようにしたものが、「宇宙エレベーター」というわけです。
宇宙エレベーターの最大のメリットは、コスト面だと言います。例えば、現在、スペースシャトルで1kgの物を宇宙に運ぶとおよそ1万ドル以上かかるのが、宇宙エレベーターを使えば約100ドル。つまり、100分の1の費用で済むのです。ケーブルを引くのに1~2兆円かかるそうですが、一度軌道を造ってしまえば、あとは昇降にかかる費用だけで済むので、大幅なコスト削減が可能となるというわけです。
原理的には十分実現可能なのだそうですが、最大の問題はケーブルの強度。これだけの長いケーブルとなると、鋼鉄の180倍もの強度が必要になるのだとか。そこに登場したのが日本製のカーボンナノチューブ。丈夫でしかも極めて軽量のカーボンナノチューブの開発は現在も着々と進められていて、まだ10万kmまで延ばせるまでには至っていないものの、必要な強度の4分の1までは実現しているのだそうです。このまま開発が進めば、15年後くらいには宇宙エレベーターを実際に見ることができるかもしれません。
しかし、こういうのって、実際に見てみないと、なかなかイメージがわきにくい。地上の基地からまっすぐに空に向かって伸びる幅1mのリボン。空どころか、そのリボンは成層圏を越えて宇宙まで達している…。そんな光景、誰も見たことがないですから。
『宇宙エレベーター』という本があります。著者は、トルコ人宇宙物理学者、アニリール・セルカン。読んでみると、あにはからんや、タイトルにすっかりだまされた! いや、だまされた、というのは、あくまでも「いい意味で」。宇宙エレベーターは、確かに彼も構想を考えたことがあるそうで、その解説もされているのですが、それより何より、このセルカンという人、ちょっとすごい。トルコ人初の宇宙飛行士候補。アルペンスキーのトルコ代表選手。もともとは建築学が専門で、宇宙物理学界でもホープとされている。東大で学んだこともあって、日本語もぺらぺら。この本も日本人向けに書かれたものらしく、自分で日本語で書いたんじゃないかと思われます。日本語だけじゃなく、古代メソポタミアのシュメール文字まで読めちゃう!
要するに、この本は、セルカンの考える次元や宇宙論をわかりやすく(と言ってもやっぱり難しいのですが)説明してくれているのです。中でも、タイムマシンの話はとっても興味深い部分でした。地球は自転しているから、たとえば「1時間後」の世界に行ったとすれば、自分のいる「場所」も移っているのか! なるほど。
タイムマシンと言えば、彼が中学生の時に、友だち13人と一緒にタイムマシンを作る計画を立てたという話が傑作。大きな電流が必要とあって、彼らは4km分の銅線を使って、なんとサッカー場の周りにそれを巻き付けて巨大な電磁石を作ったという。で、セルカンの弟をいけにえ?に、タイムトラベルをさせようとするのですが、あえなく失敗に終わる。セルカン少年の理論に半信半疑ながらも、ちゃんと実行に移すことを認め、助けてあげる親や周りの大人たちがすばらしいと思いました。
このセルカンのようなマルチで好奇心豊かな人なら、宇宙エレベーターはもちろん、タイムマシンでさえ、私たちの前に披露してくれそうな気がします。
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http://www29.atwiki.jp/serkan_anilir/
【アニリール・セルカン氏についてのまとめ(主な結論)】
・アニリール・セルカン氏は「宇宙物理学者」であり11次元宇宙の研究で受賞したことになっていますが、氏を著者とする物理学に関する論文は一編も発表されていません。
・東京大学、およびJAXAのホームページ等で公表されていたセルカン氏の業績リストに掲載されていた物理学の論文は、現実には存在しない架空のものです。
・東京大学で公表されていたセルカン氏の業績リストに掲載されていた知的財産権2件については、一件は他人の特許であり、もう一件は存在しない特許です。
・「ケンブリッジ大学物理学部 特別科学賞 受賞」については記録もありませんし、そもそもセルカン氏は物理学の研究業績が皆無なので、物理学の研究によって(まともな)賞を授与されることはあり得ません。
・同様に、「America Medal of Honor(アメリカ名誉賞)」、U.S.Technology Award受賞の記録もありません。
・「プリンストン大学数学部講師」に就任したという記録もありません。またセルカン氏は数学分野の研究業績が皆無なので、数学部講師に就任するというこはまずあり得ません。
・セルカン氏は「宇宙飛行士候補」と言うことになっていますが、NASAの宇宙飛行士候補のリストにも、宇宙飛行士のリストにも掲載されていません。