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永遠なるすれ違い─3.14159265......

2009-03-14 | ■環境/科学
今日、3月14日は「数学の日」。

2000年に日本数学検定協会が定めたものらしいですが、なんで3月14日かというと、3.14、つまり「円周率」なのですね。数学で扱われるいろんな数字の中でも、円周率はやっぱり代表的ということなのでしょう。

円周率は、「果てしない数字」としても知られています。3.14159265358979323846..........。現在、その「最高ケタ数」を保持しているのは日本だそうです。東大の金田康正教授が2002年に、日立製のスーパーコンピューターHITACHI SR8000/MPPを使って計算した、なんと、1兆2411億ケタというのがその数字。円周率には、究極にランダムな数が並ぶ「万能数」の可能性もあるとのことですが、身近な「円」の中にそんな数字が潜んでいるなんて、神秘的ですね。

円周率(π)とは、言うまでもなく「円周の長さ÷直径」ですが、紀元前2000年には既に、古代バビロニア人が3+1⁄7 ≒ 3.142857 という数字を割り出していたというから驚きます。古代エジプトでは、ピラミッドの建造にπが使われていたとも言われます。計測輪を用いて長さを測るとき、車が一回転した時の長さ(直径×π)を知るために必要だったのでしょう。つまり、直径がどのくらいの計測輪なら、何回転すればどのくらいの距離になるのかということを知っておく必要があったといことですね。

円周率の計算には、古くから、円に内接する正多角形が使われてきました。正六角形なら周囲の長さは円の直径の3倍になります。では、正八角形なら、正十二角形なら…とどんどん円に近づけていく。この方法で、16世紀後半のドイツのコイレンという数学者は、「正322億1,225万4,720角形」の辺の長さを計算し、πの値を35桁目まで正しく計算しています。

その後、1706年に英国のマチンが生み出した「マチンの公式」など、多くの学者がπを割り出す計算式の改良に取り組むようになります。そして、20世紀後半、コンピューターの登場によってそれまでの手計算に比べると、πのケタ数は飛躍的に伸びていきます。ただ、どんなに優秀なコンピューターでも、入力する計算式自体は人間が作らなければならないわけですけどね。

そう、人間だって、コンピュータの正確さに負けてはいません。なんと、円周率を10万ケタも暗唱できる人がいるというのです! これも日本人で、千葉県に住む原口證(あきら)さんという方。彼は、2007年10月、16時間半かけて10万ケタの暗唱に成功しています。もちろん、世界一。それにしても、いったい、どうやって10万ケタもの数字を暗記できるのか?

究極の「意味のない数字」の羅列を、そのまま暗記するのはさすがに無理らしい。原口さんは、すべて語呂合わせで覚えていくのだそうです。彼のHPにその語呂合わせ(の一部)が紹介されています。

最初の部分は、こんな感じだそうです。「さー、安心得んと国許去った儚きその身は…」。これは、「北海道松前藩の武士の旅立ちのシーン」なのだとか。語呂合わせといっても、「身(3) 一つ(1) 世(4) 一つ(1) 生(5) く(9) に(2) 無(6) 意(5) 味(3)…」のような曖昧な語呂合わせではない。原口さんが使う「変換表」はこんな感じです。

 1=あ行全般
 2=か行全般
 3=さ行全般
 4=た行全般
 5=な行全般
 6=は行全般
 7=ま行全般
 8=や行全般および(、)
 9=ら行全般
 0=わ行全般および「、」、J

「あ・い・う・え・お」なら「1」というように、一つの数字に対応しているのは5個以上の文字。とっさに対応させるのがなかなか難しそうですが、でも、それだけ深みのあるストーリーが作れるのかもしれません。

原口さんなりの10万字にも及ぶ「物語」、たとえば、800ケタから1,000ケタまでの、語呂合わせはこうです。

四人枠取ってねランチに望んで昼を予算枠。ホント、五人が感心、「欲なしさんで手本よね」そんな気品嬉しい縁よ良い。舞うわいわん々和さえ親身良し。夢中よ、ゆんべの夢の三途川ヨッシャー良いと川は今、ウメ実はホラ落ちミ沢さんなら欲望んでるわって悔やむのに手本病むさえ祈る呑んべー燗よ、本心ヤヤコシーのさ。無闇なら、地味にありのまま、良い夜のまんま夜半の酒。美味いかコンパ。夜半はハイサワー、ワイン、リカー無闇ほん放癒えるなら、割り勘威張って加える夜。

…むむむ、ストーリーになっているようないないような…。これを一字たりとも間違えないで覚えるのも大変だ…。「あらすじ」は、「大変な経済不況の時代です。五人なのに四人分のランチで済ます無欲な三沢さん、夜半に見た夢の中でのお酒は我慢しないのでした」だそうです。ふむ、なるほど…。ちなみに、最初の部分を数字と対応させてみると、

よ⑧にん(5) わ(0)く(2)と(4)って(4)ね(5)ラン(9)チ(4)に(5)の(5)ぞん(3)で(4)ひ(6)る(9)を(0)よ(8)さん(3)わ(0)く(2)ホン(6)

最初の⑧は、「800ケタ目」を表すのだと思います。いや、それにしても、こうして10万字か…。驚異的としか言いようがないですね。

円周率を出すために、「正多角形」の辺の数を「限りなく」増やしたとしても、それはあくまでも「直線」であって、円を作る「曲線」にはならない。つまり円周率は、永遠に「近似値」であり続けるしかありません。限りのない、しかし大いなるすれ違い。そこが円周率の魅力なのかもしれません。


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