
去年刊行され、話題になった『日本でいちばん大切にしたい会社』という本があります。著者の坂本光司さんは、法政大学で中小企業の研究をされている先生ですが、日本全国の中小企業をこれまで6000社以上訪問し、調査してきたというから驚きます。
そのうち坂本さんが「真に正しい経営」をしていると考える5社(他にコラムで9社)がこの本で紹介されています。
「はじめに」で坂本さんが書いています。こうした素晴らしい企業と、いつも「五つの言い訳」を口ぐせにする企業(経営者)との間には、「はるかに遠い距離があるというしかありません」と。
「五つの言い訳」とは、
・景気や政策が悪い
・業種・業態が悪い
・規模が小さい
・ロケーションが悪い
・大企業・大型店が悪い
だと言う。つまり、経営がうまくいかない問題の原因は、すべて外にあって、自分には責任がないということです。変わるべきなのは、外部環境であって、自分たちではない…。
私は企業を経営したことも社員だったこともないので企業のことはよくわかりませんが、確かに、自分たちがどうあがいても変わらないことに業を煮やして、つい他人のせいにしたくなる気持ちも何となくわかるような気がします。
ただ、そうした経営者の「もう一つの特徴」として坂本さんが挙げていること、「何よりも重視し、その実現を追求したなければならない社員やその家族、下請企業や顧客等の幸福に対する思いが総じて弱い・低いということ」に関しては、それじゃダメだよなあと思えます。
坂本さんは、「会社経営とは「五人に対する使命と責任」を果たすための活動」だと言います。そして、その一番目に来るのは、「社員とその家族」。え!? 会社は「お客様が第一」じゃないの?と思いますが、実は、お客様を満足させるためには、当の社員が、会社に対して満足していなければならないというわけなのですね。
なるほど。経営者は、「社員(とそれを支える家族)の幸せ」をまず一番に考えればいいのですね。そうすれば、おのずといい商品やサービスを提供できるわけか。一見、遠回りのように見えることが実は一番大切。
次に大切にしなければならない人は、「外注先・下請企業の社員」。そして、三番目にようやく「顧客」が登場。
四番目は「地域社会を幸せにし、活性化させる」。で、最後にくるのが「自然に生まれる株主の幸せ」です。
四番目の「地域社会」については、つまりは「社会貢献」です。企業の社会貢献と言うと、一時盛んだった「メセナ」(文化的貢献活動)がつい思い浮かんでしまいますが、もちろん、地域社会への貢献は、建物を建てたり、地域活動に寄付をしたりといった金銭的な貢献だけに限りません。坂本さんは、「いちばん大切なことは、経営を通じての、企業市民としての日常的な活動だ」と言います。そうして、地域に住む人から、誇りに思われるような会社、地域になくてはならない会社だと思われること。
たとえば、この本で紹介されている、長野県の「伊那食品工業株式会社」という会社は、3万坪の敷地面積を持ちますが、そこには市民が自由に出入りできるという。つまり、塀も門も警備員もいない。敷地の中にあるレストラン(同社の主力商品である「寒天」をテーマとしているとか)や公園は、市民の憩いの場として開放されています。また、敷地の中に国道が通っていて、そこは子どもたちの通学路にもなっているのですが、この会社では、そこに歩道橋を作ったのだそうです。社員は、毎朝敷地内はおろか、その外まで、掃除をしているのだとか。こんな会社なら、地域の人たちが自慢するようになるのも当たり前ですね。
企業による社会貢献で、いま私が一番期待しているのは、子どもたちの教育活動への支援です。「教育CSR(教育分野での企業の社会的責任)」とも言われますが、企業が持つ教育資源(商品やその製造過程、社員など)を、もっと子どもたちのための生かせないものかと思っています。
企業の中には、できれば地域の子どもたちのために何かお手伝いしたいと考えている企業もたくさんあります。現に、国の肝いりもあってここ数年活発になっている、中学生や高校生の職場体験活動(インターンシップ)を受け入れてくれる企業はどんどん増えています。更に、たとえば学校に出向いて授業のお手伝いをしたいといったニーズを持つ企業もあります。ただ、そうした声を学校や子どもたちと結びつける窓口がないので二の足を踏んでいるという現状があります。
まだまだ課題はたくさんありますが、「教育CSR」の可能性に、私は大いに期待したいと思っています。
経営上、そんな余裕はないという会社ももちろんある。それは仕方ないとしても、「会社や工場が地域に存在すること自体が社会貢献なのだ」、つまり、雇用を生み出し、税金を払っていることで社会貢献している、と公言してはばからない会社も時々耳にします。う~ん、本当にそれでいいのかなあと、そういう声を聞くと、ちょっと寂しい気がします。
この本で紹介されている5つの会社は、どれも、この「五つの幸せ」をきちんと考え、実行している企業です。「他人のせい」にせず、自分たちがやれることをまずやってみるという姿勢も共通しています。こういう経営者のもとで仕事をする社員は幸せだろうなあと率直に思う。
今年も、高校生・大学生の就職戦線は冷え込んでいるようです。そんな状況の中ではなかなかむずかしいかもしれませんが、ぜひ、こういう会社を「見極める」力は持っていてほしいなと思っています。
坂本光司『日本でいちばん大切にしたい会社』≫Amazon.co.jp
そのうち坂本さんが「真に正しい経営」をしていると考える5社(他にコラムで9社)がこの本で紹介されています。
「はじめに」で坂本さんが書いています。こうした素晴らしい企業と、いつも「五つの言い訳」を口ぐせにする企業(経営者)との間には、「はるかに遠い距離があるというしかありません」と。
「五つの言い訳」とは、
・景気や政策が悪い
・業種・業態が悪い
・規模が小さい
・ロケーションが悪い
・大企業・大型店が悪い
だと言う。つまり、経営がうまくいかない問題の原因は、すべて外にあって、自分には責任がないということです。変わるべきなのは、外部環境であって、自分たちではない…。
私は企業を経営したことも社員だったこともないので企業のことはよくわかりませんが、確かに、自分たちがどうあがいても変わらないことに業を煮やして、つい他人のせいにしたくなる気持ちも何となくわかるような気がします。
ただ、そうした経営者の「もう一つの特徴」として坂本さんが挙げていること、「何よりも重視し、その実現を追求したなければならない社員やその家族、下請企業や顧客等の幸福に対する思いが総じて弱い・低いということ」に関しては、それじゃダメだよなあと思えます。
坂本さんは、「会社経営とは「五人に対する使命と責任」を果たすための活動」だと言います。そして、その一番目に来るのは、「社員とその家族」。え!? 会社は「お客様が第一」じゃないの?と思いますが、実は、お客様を満足させるためには、当の社員が、会社に対して満足していなければならないというわけなのですね。
なるほど。経営者は、「社員(とそれを支える家族)の幸せ」をまず一番に考えればいいのですね。そうすれば、おのずといい商品やサービスを提供できるわけか。一見、遠回りのように見えることが実は一番大切。
次に大切にしなければならない人は、「外注先・下請企業の社員」。そして、三番目にようやく「顧客」が登場。
四番目は「地域社会を幸せにし、活性化させる」。で、最後にくるのが「自然に生まれる株主の幸せ」です。
四番目の「地域社会」については、つまりは「社会貢献」です。企業の社会貢献と言うと、一時盛んだった「メセナ」(文化的貢献活動)がつい思い浮かんでしまいますが、もちろん、地域社会への貢献は、建物を建てたり、地域活動に寄付をしたりといった金銭的な貢献だけに限りません。坂本さんは、「いちばん大切なことは、経営を通じての、企業市民としての日常的な活動だ」と言います。そうして、地域に住む人から、誇りに思われるような会社、地域になくてはならない会社だと思われること。
たとえば、この本で紹介されている、長野県の「伊那食品工業株式会社」という会社は、3万坪の敷地面積を持ちますが、そこには市民が自由に出入りできるという。つまり、塀も門も警備員もいない。敷地の中にあるレストラン(同社の主力商品である「寒天」をテーマとしているとか)や公園は、市民の憩いの場として開放されています。また、敷地の中に国道が通っていて、そこは子どもたちの通学路にもなっているのですが、この会社では、そこに歩道橋を作ったのだそうです。社員は、毎朝敷地内はおろか、その外まで、掃除をしているのだとか。こんな会社なら、地域の人たちが自慢するようになるのも当たり前ですね。
企業による社会貢献で、いま私が一番期待しているのは、子どもたちの教育活動への支援です。「教育CSR(教育分野での企業の社会的責任)」とも言われますが、企業が持つ教育資源(商品やその製造過程、社員など)を、もっと子どもたちのための生かせないものかと思っています。
企業の中には、できれば地域の子どもたちのために何かお手伝いしたいと考えている企業もたくさんあります。現に、国の肝いりもあってここ数年活発になっている、中学生や高校生の職場体験活動(インターンシップ)を受け入れてくれる企業はどんどん増えています。更に、たとえば学校に出向いて授業のお手伝いをしたいといったニーズを持つ企業もあります。ただ、そうした声を学校や子どもたちと結びつける窓口がないので二の足を踏んでいるという現状があります。
まだまだ課題はたくさんありますが、「教育CSR」の可能性に、私は大いに期待したいと思っています。
経営上、そんな余裕はないという会社ももちろんある。それは仕方ないとしても、「会社や工場が地域に存在すること自体が社会貢献なのだ」、つまり、雇用を生み出し、税金を払っていることで社会貢献している、と公言してはばからない会社も時々耳にします。う~ん、本当にそれでいいのかなあと、そういう声を聞くと、ちょっと寂しい気がします。
この本で紹介されている5つの会社は、どれも、この「五つの幸せ」をきちんと考え、実行している企業です。「他人のせい」にせず、自分たちがやれることをまずやってみるという姿勢も共通しています。こういう経営者のもとで仕事をする社員は幸せだろうなあと率直に思う。
今年も、高校生・大学生の就職戦線は冷え込んでいるようです。そんな状況の中ではなかなかむずかしいかもしれませんが、ぜひ、こういう会社を「見極める」力は持っていてほしいなと思っています。
坂本光司『日本でいちばん大切にしたい会社』≫Amazon.co.jp
②「日本でいちばん大切にしたい会社」本は買ったのですが、内容わかっているので未読。
③チョーク会社もよくテレビで見ましたが、なんといっても「寒天パパ」が凄い。実は、15年前年商80億円程度の頃、本社で社長から事業説明を聞いた経験あり。我々に逢うため北米の商談を一部キャンセルしての緊急帰国です。熱烈歓迎でした。「いい会社をつくりましょう」「幸福への原点回帰」等も読んで頂きたい。
④従業員に良い会社、日本全国探せばあるので学生さんは、万巻の書を読み万里の道を歩みだしていただきたい。新聞は日本経済新聞、データベースは日経テレコムをちゃんと読むのですよ!
暖かいお言葉、大変恐縮です。
「寒天パパ」ですか! 直接お話しを聞かれたなんてうらやましいです。
④の学生へのメッセージもいいですねー。日本全国探せばある、というのは本当ですね。ネットはそういうところに使ってほしいものですね。
過去に近鉄バッファローズの帽子のサインのことをうかがったものです
あのときはお世話になりました
この本、是非読みたいと思います
自分自身が小さな会社をいくつか渡り、3人での起業から年商が億を超える会社になる過程を目の当りにしました。他にも成長出来ない会社での分裂や引き抜き。成長後の会社の迷走と停滞と混乱と社員の意欲喪失など、いろんな事を思い出しました。
今は社会貢献にはほど遠く毎日を生きることに精一杯な状況にありますが、せっかく人生のお昼休み的なところにいるので、今しか出来ない事をしていきたいです。この本からも是非何かを得てどこかにつなげていけたらと思います。
ほんとにいつもためになる話が多くてありがたいサイトです。また覗かせていただきます。
いつもありがとうございます。
「人生のお昼休み的なところにいる」というのはいいフレーズですねー。なかなかそんなふうに自分の人生、引いて見られないものですから。
これからもよろしくお願いします。
読んでて涙がでました。
私の会社で、第二弾に紹介されている
沖縄教育出版さんの書籍を作ってます。
よかったら読んでみてください♪
↓
http://www.kokorozashi.co.jp/
コメントありがとうございました。
御社サイト、拝見しましたが「感コミ」、おもしろそうですねー。
早速amazonで注文しました。
「2」は買ったのですが、まだ読んでいないのです。さっそく読みます。今回もまた沖縄教育出版、みらい工業とスゴイ会社がいっぱいですね!