goo blog サービス終了のお知らせ 

カクレマショウ

やっぴBLOG

ネアンデルタール人の「社会力」

2010-06-15 | ■教育
ネアンデルタール人(旧人)は、アフリカで生まれたヒトと共通の祖先から50万年前以降に分かれ、3万年前までヨーロッパから西アジアにかけて分布していた、ヒトに最も近い種です。

しばらく前の新聞ですが、ドイツの研究所が、ネアンデルタール人女性3体の骨の化石の細胞核からDNAを取り出し、ゲノム(全遺伝子情報)を解析したという記事がありました(2010年5月7日付け各紙)。それを、現代のヒトのゲノムと比較したところ、アフリカに住むヒトより、中国やフランス、パプアニューギニアのヒトの方が、ネアンデルタール人のゲノムと一致する率がわずかに高かったという。

これは、アフリカで進化したヒト(現生人類)が、どうやって世界各地に広がっていったかを知る上で、非常に意味があります。つまり、8万年前以降にアフリカを離れたヒト(現生人類)は、ユーラシア大陸に広がっていく前に、中東付近でネアンデルタール人と混血した可能性があるということです。これまで、ヒトは、他の種と混血することなく、世界に広がったという説(アフリカ単一起源説)が有力でしたが、実は、「ヒトの遺伝子の1~4%はネアンデルタール人に由来している可能性がある」とのことです。これはすごいや。

ネアンデルタール人が滅ぶ3万年前までは、ヒトとネアンデルタール人は世界に並存していました。それにもかかわらず、混血があったかどうかについては意見の分かれるところでしたが、今回の分析によって、バッチリ証拠を押さえた、てなところでしょうか。

この記事のことを思い出したのは、今読みかけの『社会力を育てる』(門脇厚司、岩波新書)に、ネアンデルタール人が出てきたからです。ネアンデルタール人は、「大きな脳を持ち、すでに火や道具を用いた共同生活を営み、不自由な仲間を気遣い助ける高度な社会性を有していた」。ネアンデルタール人が、死者を埋葬したり、呪術めいた儀式を行っていたことから、精神的にもずいぶん進化していたことは分かっていますが、「しかし、コミュニケーション能力に乏しく、それが原因で生き残れず絶滅したとされる」!

ネアンデルタール人が滅んでしまった原因は、コミュニケーション能力の欠如と、それに伴う社会性の低さだったのか。

門脇氏は、コミュニケーション能力は、「社会を構成している多くの他者とのいい関係をつくり維持する社会的知性とも言える社会性であり、社会力である」と言います。人口が増え、社会の規模が大きくなればなるほど、コミュニケーション能力を含めた社会力のレベルが高度になることが求められていく。さらに、ヒトの脳も、それに伴って進化していく…。

社会生活とヒトの脳の進化は、実は密接な関係があったのですね。ということは、他人とうまくコミュニケーションが取れない人が増えると、「社会力」が低下し、脳も退化していくということか…?
「人が人とつながり、社会をつくる力」が、門脇氏の言う「社会力」です。1999年に刊行され、「○○力」をはやらせるきっかけの1つにもなった『子どもの社会力』(岩波新書)の続編とも言えるこの本では、改めて、「つながりのある社会」(「互恵型協働社会」)の実現を説いています。今、個人個人の社会力を高めることがなぜ必要なのか、また、そのために教育に求められることは何か。「教育目標の転換」が求められているのではないか。学校の先生にぜひ読んで欲しい本です。

私もまだ途中ですので、読み終わったら改めて紹介したいと思っています。今日はとりあえず、ネアンデルタール人でした。

門脇厚司『社会力を育てる』≫Amazon.co.jp

 

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。