１９９５年、１月１７日。阪神淡路大震災が起こった時、被害が広がる中で、電話はほとんど使えなくなった。携帯はもちろん、公衆電話ではテレフオンカードも使えなくなった。唯一、細々と使えたのは、従来通りの１０円玉を投入するものであったのであるが、災害に直面した時、その１０円玉を持っていない人も多かったのである。最近のコマーシャルで、「お財布よ。さらば。」と画面に映るひとがお財布を空に投げ捨てているものがあった。お財布の代わりに携帯電話が、その役割を果たしますよと言うものである。私の友人たちも、いつの間にか、ＪＲのスイカにお金をチャージして、お財布代わりにしている人もいる。だが、阪神淡路の大震災時ではないが、大震災に遭った時には、それらは全く機能しないであろうことは明白である。その時の勝利者はまちがいなくアナログ人間である。さて、あの、大災害時、神戸のある公衆電話の傍らには、１０円玉を入れた籠が置かれていたという。そして、その籠には「どうぞ、自由に使ってください。」という走り書きが添えられていたという。素晴らしいアナログ人間である。
