風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

鍵を忘れた(4)

2019年06月29日 | 出版
会社の鍵を自宅に忘れて出てしまい、それでひどい目にあったというだけの話なのだけれども、例によって雑念が浮かんでしまい話がなかなか進まない。江戸城の堀端を歩き、半蔵門を目指しているところであった。そしてようやく半蔵門にたどりついたところで、さらにまっすぐ進むか、左折するかと考える。もっと進めば千鳥ヶ淵で、そこから北の丸公園にかけては桜の名所として有名なところだ。左折すれば麹町を抜けて市ヶ谷へと向かうコースとなる。千鳥ヶ淵コースの方が飯田橋までの距離は短いように思うものの、べつに急いでいるわけではない。いささか馴染み深い市ヶ谷コースにした。
新宿通りは車がうるさいので、それから一本内側に入った道を歩いてみる。知らなかったけれど、その通りには麹町学園通りなる名称がついている。たしか、駐日パレスチナ常駐総代表部がこのへんにあったはずだよなあと思いつつ進むものの、どこにあったのかを思い出せない。もう10年ほど経つのだろうか。いつのことだったのか記憶が定かではないのだけれども、その常駐総代表部にお呼ばれされてお茶をご馳走になったことがある。その常駐代表の方が、先日、朝日新聞の東京面で紹介されていた。気さくな雰囲気の人で、小生のお仲間ら数名で楽しい時間を過ごさせていただいたことがある。そこから少し離れたところに、イスラエルの大使館がある。そこの職員と思しき人から、先ほどのお仲間に「一度話を聞きたいから、大使館に招待したい」旨の話があった。「そりゃあ、ぜひ行こう、行こう」となったものの、以降、ご招待されていない。イスラエル大使館はいけずやね。
ここでまた雑念が湧き起こってきた。もう30年ほど前だろうか。取材申し込みかなにかで、麻布のオーストラリア大使館に行く用事ができた。そこでアポを事前にとるわけでもなく、とにかく現場に行って担当の人からレクチャーを直接受ければいいやと、地図を見て(ネットなんてない時代)オーストラリア大使館に足を運ぶことにした。その敷地に入って、受付の人に「すんませ~ん」と話しかけたら、「ああ、ここはオーストリア大使館で、オーストラリアじゃないんですよ」と説明されてしまった。これには絶句し、赤面するしかない。すると、「オーストラリア大使館はこちらですから」と、コピーされた地図を渡された。そこでありがたくおしいただき、そこから徒歩数分で行けるオーストラリア大使館へと向かうことにしたのだけれど、歩きながら、こういうコピーを用意しているということは、こういうそそっかしいのは小生だけではなくよくあることなんだと思いなしたのであった。そしてオーストラリア大使館に行って資料だかパンフだかをもらって帰ったのだけれど、結局、その企画自体がポシャっちゃったのだっけな。ただの無駄足に終わったわけである。しかし、無駄足をただ無駄と認定してしまうのも少々もったいない。その無駄が、実は豊かな時間であるかもしれないからだ。
自己弁護はさておき、麹町学園通りを歩いていくと、本当に麹町学園なんてのがあった。なんやこりゃというのが正直な印象であり、公立学校にしか通ったことがない小生にしてみれば、私立の学校というのはそもそも経験的に理解できない世界である。したがって、その学校がどういうところなのかを知るよしもないし関心もわかないから素通りしていく。そのまま進んでいくと、馴染みの日テレ通りに出る。馴染みのと記してみたところで、現在解体中の旧日テレ本社ビルにたいした関わりがあるわけでもないし(入ったことはある)、ましてや、昼下がりに日テレ通りに来るのはかなり久しぶりだ。いろいろと事情があり、来るのはだいたい19:00過ぎと決まっている。そのため、明るいうちの日テレ通りというのは、小生の好奇心をどことなくくすぐらせる。
まずはキース・リチャーズごっこをしようとコンビニに入り、ペットボトルの水とジャック・ダニエルの小瓶を購入することにした。ジャック・ダニエルを飲んでキース気分になることを、小生のなかではキース・リチャーズごっこと呼んでいる。ところが、ジャック・ダニエルだけ飲んでいたらすぐに酔っ払ってしまうので、水が必要なのだ。しょせんはごっこであり、ホンモノの足元にもおよびつかない。ところがそのご本尊から、最近は酒を控えているなんて発言があった。おい、おい、あんたがどのツラ下げてそんなこと言うんだ?というのが小生の気分ではあるけれど、ご本尊曰く「ジャック・ダニエルは、もう一生分飲んだからなあ」げな。ご本尊がそう語るのならば、小生がそれ以上とやかく言う筋合いではないものの、しかし、彼らすごいなあ。またツアーに出ちゃった。
こうしてうすら汚い中年のオヤジが、陽の高いうちからウイスキーを舐めつつ天下の公道をヨタヨタ歩いていく。他者の視線なぞどうでもいい。しかし、そのヨタヨタ感はいささか気持ちがいいものだ。こうして無事わが家に到着し、妻の帰りを待つことになった。(終)

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