風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

友人と酒を飲む

2022年06月17日 | 出版
某日、ワルの弁護士軍団らと行きつけのおでん屋さんで酒を飲む。コロナのおかげでいっときこの飲み会も開けなかったけれど、復活できて実にうれしい。そしてほろ酔いとなってきたところで、電波系の依頼者には困ったという話題になった。「弁護士懲戒を請求してくるくせに、すぐにまた事件の依頼をしてくるんだよねえ」「そういう人、いる、いる」「この前、某県の地検から電話があって、ある服役囚の出所日の情報を彼の敵対組織にあなたが流したんですか?ってたずねられたんですよ。一審しか関わってなくて出所日すら知らないんだから、そんなことできるわけないじゃないですか。しかも、彼はなかで騒動を起こして刑を重ねていたそうで、私が関わった事件以上に服役しているんですよ。なのに地検は、どうして私に電話してくるんですかね。アタマにきて『そんなことするわけないでしょ!』と電話切りましたよ」
そこで、小生が「そういう人たちって、若いころシャブとかやりすぎて、オツムがいかれちゃっているんですか?」とたずねると、「そういう人もいるかもしれないけれど、『おれは偉いんだ』という自己主張をこじらせちゃっている人の方が多いんじゃないですかね」とWさん。「しかも電波系って、盗聴されているとか、監視されているってすぐに言い出すんですよ。この前、公安に尾行されているという人がいたから、『日本の公安警察は、あなたを尾行しているほどヒマではありません』って言っておきましたよ」とKさん。
陰謀論論者なんかもそうなんだろうけれど、世界の権力者に目をつけられているとか、逆にこの世界の真の姿を知っているという妄想は、その人の自意識をくすぐってくれるのだろう。しかし、その妄想を相手にしてくれる人が身近にいないから、事件の相談に乗ってくれる弁護士相手にわけのわからないことを言い始める。なるほどね、弁護士も大変だ。これはなにかの本で内田樹氏が指摘していた点だが「そういう妄想肥大の前提には、ビッグになりたかったのに現実の前には卑小な存在でしかない自分自身への喪失感がある」とのことであった。心的メカニズムとしてはそんなところなのだろう。
別の某日、別の弁護士のKさんとそのパートナーのAさんから呼び出しを受け、旧友のN氏も交え東京都下某所にてご馳走にあずかることとなった。以前、N氏の紹介でAさん執筆の名著『トラブル依頼人』を弊社から刊行させていただいている。Kさんは当時、都心に事務所を構えていらっしゃったが、年齢ということで都下に引越しされて、仕事も押さえ気味にするようにしているとのことだ。N氏と会うのも久しぶりで、会うなり早速、彼も編者に入っている『法社会学』(某出版社刊)なる新著を渡された。次に彼に会うまでに、その本の彼の担当した箇所だけでも読んでおかねばならないだろう。しかし、そもそも彼の本を弊社からも出そうとしているのに、作業はまったく進んでいない。
Kさん、Aさんに会うのも久しぶりだけど、お二人とも以前とさほどお変わりもなく、きのうも会ったばかりのような感じで暖かく接していただき、ヘンに緊張することもなくうれしかった。Aさんからは続編を執筆中とのことで、「本年内ならば、弊社も存続できそうなので、ぜひお早めにお願いします」旨申し述べておく。Aさんによると、仕事量は減らしているけれど、Kさんは相変わらず面白い案件に取り組んでいるらしい。そういうお話をうかがっていると、小生、法律の世界に行かなくてよかったかもと思ってしまう。おそらく、小生の能力ではついていけなかったことだろう。
そこでAさんからうかがった話で、ご親族に出版社を経営されていた方がいたらしい。ところがアル中になってしまい、社長職どころか会社までクビになってしまったそうだ。小生に身近なところでもたまに聞く、嗚呼、さもありなんという零細出版社にありがちな話である。だいたい、いつも資金繰りに悩んでいる会社が多い。そこで行き詰ってしまうと、神風が吹くことにしか期待できなくなってしまう。そして神風が吹いてくれるまでの間なにができるのかといえば、酒を飲んで、目の前の難題を忘れるだけである。その結果、酒に強い人ほど酒におぼれてアル中への道まっしぐらだ。小生など酒に弱いからまだアル中にはなっていないものの(?)、あすはわが身といったところか。
さらにまた別の某日、なぜか小生は福岡にいた。旧友数名と酒を飲む。昔、某寮で一緒に同じ釜のメシを食ってきた仲間だ。そして「もう若くもないからさあ、あの当時のようには食べられないよね」という話になる。「Aさんの車に8人くらい押し詰めて長浜に行って、ウマんごたラーメンば食いよったもんね」「Hさんとか、替玉5杯ばい」「ほんで帰りんごた、もうぎゅう詰めの車ば乗られんってタクシーよ」「そんなん、もうダメ。だいたい、博多ラーメン食うと3日くらい胃もたれしちゃって、どうしようもなか」「ほんなこつ、そげんあるばい」
ほんなこつ、友人と酒を飲むのは楽しかばいねえ(この表現は多分、久留米弁だと思う)。

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