風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

ジャガイモを植える(04)

2022年07月12日 | 出版
結局、ライトを買ってきて室内で育てるのはしばし延期とする。そして思いついた。日中は会社前の歩道に植木鉢を出しておき、日に当てておけばいいじゃないか、と。歩行者の邪魔にならないところにひっそりと置いておけば、苦情も出ないことだろう。そこで、会社に来たら松の盆栽ともども路上に出しておく日が2、3日続いた。ところが目の届かないところにジャガイモを置いていると、スクスク育っているのだろうか、日当たりはどうなのだろうかと気になってしょうがないものである。日が暮れたら、鉢ごと100均で買ってきた防虫ネットに包んでおけば、コバエの発生も抑えられることだろうと期待しておく。
しかしある日、出社してみたら、やたらとコバエが多い。大量発生していて、室内をワンサカ飛んでいやがる。これまで置いておいた「コバエがホイホイ」も「アース虫よけネット」も、まったく効果がないようだ。アッタマにきた。そして弊社の近くは飲食店も多いので、迷惑をかけるわけにもいかない。すぐさま本三のドラッグストアに行き、「アースジェット」なる殺虫剤を買ってくる。そして防虫ネットのうえからボワボワかけまくる。ネットをはずして、まずは死骸を掃き集めてゴミ箱へ。鉢を水受け皿からはずしてみたら、皿にはコバエの卵がずいぶんとたまってけつかる。気持ち悪いなあと思いつつも、怒りは鎮まらずそこにも殺虫剤をブシャブシャふりかけてアウシュビッツにしてやった。
不思議なもので、成虫となって飛び回っているコバエを手で叩いて殺す分にはさほど気味の悪さを覚えないが、卵やうじ虫状態のものだと直接手で殺そうという気分にはなれないものである。そして、大量殺戮を繰り返しながら理解したのは、コバエ(ショウジョウバエ?)の成長過程であった。まずは0.5ミリほどの薄黄色の卵として登場する。それが1ミリほどの白いうじ虫へと成長。この状態だと水のなかは泳げるが、地面のうえだと尺取虫のような動きしかできない。そこに手足が生えてきて、体も黒く変化していく。こうなると、地上をわりと速く動くことができる。そして羽が生えてきて、空間を移動することができるようになる。それからどのように交尾をして卵をうえつけるのかまでは知らないが、コバエの一生をここまでつぶさに観察したのは初めての人生経験だ。ファーブルにでもなったような気分もする。
こうして、殺虫剤のおかげでとりあえずのコバエ駆除は終了。芽の出ているジャガイモの鉢を路上に出しておいたのが、その日の11:00くらいだっただろうか。夕方、それを社内に引っ込めようと見たら、葉が少し茶化していて枯れが生じているようだ。気がかりではあったものの、それをどうするという手段が自分のなかにあるわけではない。「明日また日光に当てておけば、すぐに成長してくれることだろう」と期待して、防虫ネットに包んでおくことにした。
翌日、出社したら前日ほどのコバエの量ではない。さすがはアウシュビッツ効果だ。それでも、コバエどもの気持ちもわからなくはない。ジャガイモを植えている土壌そのものが土ではなく、コーヒー豆を発酵させたものであるからだ。発酵と腐敗とは化学的には同じ現象であり、要は、腐敗物の固まりというコバエにとっての大御馳走がそこにあるのだから、連中が大量発生するわけである。そこをどうするかは今後の宿題ではあるけれど、方向性はいまのところ見えていない。
少し枯れ始めたジャガイモの鉢を外の路上に出しておき、夕方それを引っ込めようと見たら、茶化がさらに進んでいて、さらには、緑の部分も黒味が濃くなっているような感じがする。つまり、植物としての弱体化が進行しているように見える。アリャリャリャ、水差しは定期的にしていたし、どうしてこうなったのだろうかと考えるが、確定的な結論はなかなか出てこない。再び「明日になれば元気になることだろう」と願うことになる。そしてその翌日、弱ってきたジャガイモの鉢をまた外の日光の当たるところに出しておく。夕方になってその状態を見たら、回復どころかいまにも枯れそうだ。せっかく芽が出てきて収穫の秋を期待していたのに、なんだ、このありさまは。「立て!立つんだジョー」と念を飛ばしてみても、事態の改善には役立ちそうもなかばい。
論拠がないから推論でしかない話ではあるけれど、殺虫剤がジャガイモにもダメージを与えてしまったのではないのだろうか。つまり、ほかの要因が見当たらないということだ。そこでその推論を延長したところで思い浮かぶのは、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』(新潮文庫)ということになる。その本、実はまだ読んだことがないんだけれども、あまりに著名な書籍なので概略だけはこれまでにいろんな人からたっぷり聞かされてきたような気がする。それでも一度、おのれの目でしっかり読まなければしょうがない性格の書籍であることはわかりきっている。

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