風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

自分が優秀だと思われたいからだよ

2013年04月23日 | 出版
某日曜日、都内某ホテルでA氏に取材することになった。家を出る前、妻に「今日はAさんの取材なんだ」と言うと、「そんな人と会うのに、そんなよれよれのジャンパーでいいの?」「ウーン、これしかないだろ」「貧乏ってつらいねえ」と、朝から気の滅入る会話となる。
まずは、会社に行き、取材の準備とDTPの仕事。取材の準備といっても、テレコとICレコーダーの電池を入れ替えるだけで、とりわけのことがあるわけではない。
コンビニの弁当で昼飯を終わらせ、某時にその某ホテルに向かうことにする。撮影をお願いしているBさんと、「1階で待ち合わせましょうか」なんて言っていたが、着いてみると1階は駐車場で待ち合わせるような場所がないことがわかり、そのまま2階に上がり、ロビーでBさんを待つことにする。
ほどなくしてBさんが姿を現す。Bさんもいつもと変わらないカッコだ。よかった一緒で。指定されていた15分前にラウンジに入り、場所を確保することにする。しかし、広いラウンジだなあ。まさかとは思うが、Aさんがすでに来ていることはないだろうとは思いつつも、そのまさかが気になってあたりを眺めてみる。しかし広すぎて、よくわからない。
まあ、いいやと取材に都合のよさそうな場所に陣取ることにする。すると、その後ろに著名なCさんがいて、恐そうな人たちと何やら怪しげな話をしている。
以前、Cさんにお会いしたことがあるけれど、どうせ小生のことなんて忘れているだろうから、挨拶するまでもないだろうと判断し、Aさんの到着を待つことにする。
待つことしばし。この待っている時間というのが、小生は苦手である。ネガティブなことばかりを妄想する時間なのだ。相手が現れなかったらどうしようとか、今日はうまくいくのかなあとか、考えてもしょうがないとわかっていても、ついついそういうことばかりを考えてしまう。
その時、Bさんが「あっ、来ましたよ」と小声で教えてくれた。Aさんが一人でふらっとラウンジに入ってきた。我々は立ち上がって、Aさんを迎えにいく。席についてから名刺を交換し、「あの、後ろにCさんがいますよ」とAさんに伝えると、Aさんはさっと立ち上がりCさんにあいさつに行かれる。よかった、二人の仲が悪くなくて。
事前にAさんにはあるゲラを送ってあるのだけれど、お忙しい方だから、どうせゲラなんて読んでないだろうし、話の流れに合わせてこちらから適当に質問をぶつけ、それを後でまとめればいいやと実は考えていた。
ところが、Aさんは内ポケットからB5の用紙にメモ書きしたものを5、6枚取り出し、まずはそれを見ながらお話を始められる。しかも、ゲラも一通り目を通されているようだ。これにはびっくりした。えっ、そんなに準備してきたの!というわけだ。
Aさんはそのメモに沿って一通りお話され、その後、雑談を交えながら、こちらからの質問にも答えていただく。飛び出す話が大変面白かったのだけれど、残念ながら、ここでその内容を紹介することはできない。
ある話題で、小生が「それは○○に埋没してしまうことが恐いんですかねえ」と質問した。するとAさんは、「君ねえ、埋没なんて言葉を使うのは、自分が優秀だと思われたいからなんだよ」とご指摘された。
それが言葉尻をとらえてとか、嫌味な感じには聞こえない。素直に、小生も肩ひじ張ってしゃべっちゃったのかなあと反省させられた。しかし、「自分が優秀だと思われたいからなんだ」とは、なんとも的確な指摘だ。そんなセリフがさらっと出てくるAさんの人生経験の深さに感銘を受けた。
一般論にしてしまうと、インテリ度の高い奴ほど、「自分が優秀だと思われたい」願望が強いと思う。それはお金とか社会的地位とかという問題ではない。学業において小さい頃から優秀だと他者(親とか教師とかクラスメートとか)に思われて成長してきたから、優秀だと思われないと居心地が悪いのだ。そのため、ついつい、どうでもいいような知識を披瀝したり、かっこいい言い方をしようと考えてしまう。小生も、ご多分にもれずそうした人間なのだろう。そこをズバッとAさんに指摘されて、さすがだなあと感心してしまったというわけだ。
取材は無事に終わり、一度会社にもどる。そこでテレコを聞こうとしたら、ノイズがひどくて使えないことがわかりがっかりする。周囲のお客さんの話し声などがうるさく入りすぎているのだ。しょうがないから、ICレコーダーで拾った方でテープ起こしを始めることにする。
ところが、実はICレコーダーからのテープ起こしって苦手なのだ。なにせものが小さい。そのため、画面を見ながらタイピングをしつつレコーダーのボタンを操作すると、どうしてもミス操作をしてしまう。これがストレスとなる。
しかししょうがない。とにかく作業を終わらせることにしよう。

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