風塵社的業務日誌

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ある埋草原稿

2016年11月28日 | 出版
某ミニコミ誌に書いた、小生の埋草用の原稿。
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 今年も残すところ30数日となった。日ごとに忙しなくなっている、ような気がする。それはあくまでも気がするだけで、金欠で万事にせかされているだけのことかもしれない。嗚呼、それにつけても金のほしさよ。この状態に陥ると困ったことに、気持ちだけは急いているのに、なにもかも手につかなくなってしまう。あの問題はどうしようかなあと悩んだり、この仕事は早く終わらせないとまずいなあと考えたりはするのだけれど、現実逃避的にゲームにうつつをぬかしてしまったりもするのだ。
 これじゃあ、どうしようもないねえと、近くの湯島天神に散歩に出かけた。本殿の左右には、合格祈願の絵馬が鈴なりとなって吊るされている。これからが、天神さんにしてみればかきいれどきだ。初詣の準備にも力が入るというものだろう。そこで振り返れば、鳥居の両脇に立っている二本のイチョウはすっかり黄色くなっている。それを見て、そこにイチョウがそびえていたことに初めて気がついた。目の前にあるからといって、それを認識しているとはかぎらないのだ、と認識を新たにする。目の前にあるものほど、視界に入らないのかもしれない。
 キョロキョロ眺めわたしながら、狭い境内を一周してみる。年に十数回は訪れている場所なので、すっかり定点観測のポイントになってしまった。二月の半ばくらいだったか、梅の花が一輪ずつあちこちに咲き始めているのを見つけたときは、さすがにいささかうれしくなったものである。まさに、春遠からじを実感し、帰りがけに近くにできたY食堂なる小さなお店でナポリタンを食べた記憶がある。私は肉食がきらいな人間ではあるけれど、ナポリタンに入っているウインナーくらいなら食べられるのだ。
 それから九カ月以上が経過したのだろうか。こちらの厳冬状態は相も変わらずである。よくもまあ、凍死もせずに一応は年末まで生き延びたものだ。とりあえずは、自分をほめておこう。しかし、世界の厳冬状態はさらに厳しくなっているように感じる。そもそもの発端はシリア問題だろう。USとモサドがアサドつぶしに出たため、シリア国内は内戦状態となり、大量の難民が発生。EUを揺るがす状態へと深刻化していった。そのままイギリスのEU離脱という動きへと進展する。こうして、イギリスが本当にEUを離脱するのかどうかは見当もつかないけれど、EU内各国での排外主義の高まりはより一層強まることだろう。
 そんななか、難民問題について記者に問われた某国の首相は、移民問題にすり替えた返答をした。官僚の用意した作文を読み上げただけなのか、難民と移民の区別も理解していなかったのか、その場をやりすごせればあとはどうでもよかったのか、それは私にはわからないけれど、質問したその記者はどのような感想を抱いたのだろうか。できることならば、その記者の事後のコメントがマスコミ上にほしいと思った。少なくとも私が新聞を眺めていたかぎりでは、そのコメントは見つからなかった。
 こうしてEUが動揺しているさなか、大西洋の反対側でもとんでもないことが起きる。トランプ大統領の誕生だ。現在の段階では、トランプが次期大統領に当選したとは正確には述べがたいところはある。それでもここでは、一応、トランプが次期大統領ということにしておこう。そして、某国の首相は早速、トランプのもとにご機嫌伺いに出向き、忠犬ぶりをアピールしてきた。それなのに、トランプのTPP離脱声明。ならばついでに、その某国からUSアーミー全員を引き揚げてもらいたいものだ。某国には自衛隊があるじゃないか。
 その自衛隊。忠犬とその一味によって、一部隊が南スーダンに派遣されてしまった。可哀想に。一方で、昨年夏の国会前の反安保デモが懐かしい。それはさておき、まずは、派遣されたみなさんがつつがなく帰国の途につかれることをお祈り申し上げたい。そしてまた、だれ一人殺すことなく任務(その中味を知らないけど)を遂行してもどってきてほしい。さらには、そしてこれは楽観にすぎるだろうけれど、その任務なるものが現地の人に少しは有意義なものであってほしい。
 「ヒゲの隊長」こと佐藤某の率いる部隊が、某年、イラクに行って帰国後、隊員の自殺が相次いだようだ(派遣部隊員五五〇〇名中五四人が自殺と聞く)。そういう悲劇はあってはならない。それは今回の派遣も然りであって、そもそもが、某国の自衛隊を南スーダンに派遣することになんの意味もないはずである。それはともかく、行ってしまった以上は、人命の損傷のないことを、南スーダンから離れた某国から祈るしかない。
 先日、ある友人と酒を飲みながら話していた。「これからは暴力とファシズムの時代だねえ」と私が述べると、「なに言うとんねん。すでにそうなっとるがな」げな。それはおっしゃるとおりだなあと、深く同意したわけである。某国の首相にせよ、トランプにせよ、まさにファシズムの代表者だ。民意なるものがファシストを代表者に押し上げている。その病理に、われわれはこれから直接向き合わなければならない時代に突入している。息苦しくなるのも、むべからざるべし。

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