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ブラームス ピアノ四重奏曲 第1番/バリリ四重奏団、デムス

2009年11月10日 00時03分10秒 | ブラームス
 先のボザール・トリオの全集と一緒に購入したもの。ウェストミンスター・レーベルから出たもので、演奏は50年代のウィーン・フィルからピックアップ・メンバーで構成された伝説のバリリ四重奏団に、ピアノがイェルク・デムスが加わった布陣で収録されている。ウェストミンスターというアメリカのレーベルは、どういうコネクションだったのか、50年代のウィーン・フィル関連のメンバーで構成されるいくつかの団体を擁し、室内楽のアルバムを沢山残したおかげで、現在でも名盤選定の際にはたいてい名前が出てくるくらいに有名で、例えばブラームスのクラリネット五重奏曲をウラッハが吹いたあの大名盤なども、このレーベルからのものだった。そういえば、ヘルマン・シェルヘンのマーラーなどもこのレーベルである。

 さて、このバリリとデムスによる演奏だが、さすがにメンツがメンツなだけにウィーン風なムードと伝統的な表情が濃厚だ。第一楽章冒頭のピアノからチェロにテーマがリレーし、やがてアンサンブルへ発展していく部分からして、くぐもったというか、艶消しで仕上げたような音色が実にウィーン的なものに感じられる。また、全体にリズムの角が少しとれて、縦割りもあまりきっちりかっちり揃っていないのが逆に独特の柔らかな感触を醸成させており、そのあたりもウィーン的なるものを感じさせていると思う。第二楽章のメランコリックなムード、第三楽章の鄙びた風情などは、まさに「おらが音楽」的な自家薬籠中の境地が感じられる。まぁ、そう思って当方が聴いている先入観も大きいとは思うが(笑)、やはりこうした部分はウィーンならではの音楽だと思う。なにしろ当時のウィーン・フィルはまだインターナショナルな存在になる直前で、まだまだ古式ゆかしいローカルな音色を温存していたことも大きいだろう。

 最終楽章は後年の演奏になればなるほど、ホットに疾走しがちな傾向があると思うのだけれど、ここではテンポにせよ、リズムの切れにしたところでかなり節度を持った演奏だ。実をいうと、私はそこにある種の「古さ」や「枠」を感じないでもないのだが、これはこれでひとつの「時代の見識」だったのだろうと思う。ついでに書くと、デムスのピアノが実に瑞々しい気品がある。当時のことなど私は知るわけもないが、その頃、フリードリッヒ・グルダ、パウル・バドゥラ=スコダ、アルフレッド・ブレンデル、そしてワルター・クリーンらともに、当時の彼はの若手のホープだったはずで(確か「ウィーン三羽鳥」のひとりだったはず)、そうしたはつらつさも伝わってくるプレイである。

 ちなみに録音は1956年でモノラルだが、ステレオ録音もちらほら開始されている時期だけにモノラルとはいえ非常に聴きやすい音質となっている。ただ、これはアメリカのレーベル故というべきなのだろうが、やけにオンマイクで楽器に近接した録音のせいで、音圧や各楽器の質感のようなものは非常にクリア収録されているものの、やけに音像が大きく、残響やあまりに少ない、まるでライブをラインモニターで聴いているような音質は、若干の不自然さを感じなくもない(こういう録音はジャズだといいんだけどな)。という訳で、録音にはちと違和感があるものの、全体としてはほとんど違和感がなく、安らかに聴けるブラームスになっている。実はをいえば、この演奏、今の世の中にワルターのマーラーを聴くような、いささか古色蒼然としたものを感じないでもないのだけれど、ブラームスのような音楽だとそういうのはむしろプラスに作用したりするのだ。

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