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伊福部昭の芸術3 舞踏音楽の世界/広上&日本PSO

2006年02月11日 12時27分49秒 | クラシック(20世紀~)
 第3巻は舞踏音楽の世界と題して、1948年の「サロメ」が収録されています。題材がオスカー・ワイルドの「サロメ」というお馴染みのものに加えて、その後、舞踏家貝谷八百子とのコラボレーションということで、何作かある先生のパレエ音楽の中でも(ちなみにこれは第3作目)突出して記憶に残る作品といえるでしょう。また、先生の諸作の中では、純音楽作品と馴染み深い映画音楽とのほぼ境界線にあるような作品上の性格もあり、近年にわかに評価を上げている作品のような気もいたします。私はこの曲については、それほど聴き込んでいる訳ではないので、自分用のメモということで主要な曲を拾っておきます。

 01「前奏曲」は勇壮ですが悲劇なムードに満ちたファンファーレ風な音楽、続く02「ヘロデ王宮殿内の広いテラス」は弦のトレモロにオーボエがデジャブを誘うような短い旋律を歌う短いものの先生らしいもの。03「サロメの召使、ユダヤ人、ナザレ人など 」は、東洋風にエキゾチックな旋律をメインにしたゆったりとした音楽で前半部分のしめやかなハイライトとなるんでしょうか。ちなみにこのムードは映画音楽でいえば、「ファロ島」とか「ムー帝国のテーマ」あたりと共通するものです。場面が替わって05「ヘロデ王と王妃ヘロディアス、及び廷臣たちの登場」は、「黒部谷のテーマ」と「海底軍艦竣工テーマ」の併せたようなファンファーレに始まりますが、バレエのドラマ的な要請だったんでしょう以降は心理劇風な音楽になります。06「サロメ登場」のは、先生の静の部分が良く出たハープと木管の絡みを中心に続く非常に美しい音楽。07「ヘロデは、もうサロメから目線を外さない}は「キンクコングの逆襲」でファンには忘れがたいあの陶酔的ともいえる旋律です。09「ヘロデ、サロメ、ヘロディアス」はいかにも先生らしい律動を感じさせる激しいアレグロ音楽です。

 11-17はRシュトラウスの音楽でも有名な「7つの踊り」の部分となります。「第1の踊り」と「第2の踊り」は、02と同様な弦のトレモロに木管がデジャブを誘う旋律を奏でる幻想的なもの。「第3の踊り」と「第4の踊り」は「ゴジラのテーマ」だとか「海底軍艦の挺身隊のテーマ」が今にも出てきそうなダイナミックに躍動して、先生の映画音楽が好きな私のような人間なら驚喜しそうな音楽です。「第5の踊り」は一旦静まって、エスニックでエキゾチックなテーマがワルツっぽいリズムを伴って優美に演奏されます。「第6の踊り」と「第7の踊り」は再びダイナミックな律動が支配する音楽で、後者はおそらくバレエのハイライトとなるべき場面でしょう。
 20-21は例のヨカナーンの首のシーンですが、これはファンにはお馴染みの「ラドン」の登場する音楽とほぼ同位置なのにぎょっとしたりしますが、全体は急緩の繰り返しでドラマ的なハイライトが形成されているようです。2回目の緩の部分は非常に美しい音楽でとても印象的です。そのまま続く、22-26は狂乱するサロメが殺されるまでの音楽で怒濤のような勢いで進んでいきます。オリジナルではここでダンサーが踊る場面が入れられてしたようですが、この改訂版では一気にエンディングで雪崩れ込んでいくのは、確かに音楽的には正解だと思います。

 フィルアップに収録された「兵士の序楽」は、その詳細について先生も余り語りたがらない、陸軍に委嘱されたらしい一種の国策音楽のようですが、内容的には「バラン」で初めて登場し、その後いくどとなく登場する伊福部マーチそのものですから、ファンには至福の8分間といえましょう。


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