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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

ジャシンタ/枯葉(SACD)

2010年01月14日 22時16分44秒 | JAZZ
 ジャシンタの第2作である。1998年に製作されたデビュー作の翌年にすぐ作られていているので、おそらく第一作が-例えオーディオ・ファンを中心とした購買層だったにせよ-かなり好評だったのだろう。集められたメンバーは全く同じ面々に加え、曲によってはジョン・ラバーブラ(ビル・エヴァンスの最後のトリオでのドラマー)、アンソニー・ウィルソン(この人は後年、ダイアナ・クラークのアルバムで有名になる)のギター、あとトランペットやオルガンなどが加わり、前作より多少サウンドにバラエティを出した内容になっている。録音の方は例によって、真空管マイクを使用したオーバーダビングなしのアナログ2チャンネル一発録りで、SACDというオーバースペックな器を生かした問答無用な超優秀録音である。

 さて、内容だが選曲的には前作と同様、日本人にもポピュラリティのある大スタンダードを中心としているが、まずはベースの深々としたソロから始まる「アンド・ザ・エンジェルス・シング」がいい、彼女にしては珍しいミディアム・テンポのスウィンギーな曲調だが、例によって気怠く囁くよう官能性の高いボーカルが心地よく、テディ・エドワーズのテナーのソロとあいまって極上のムードを醸し出している。2曲目の「スカイラーク」はアンソニー・ウィルスンのギターが参加してるだけに、なんとなくダイアナ・クラールを思い出してしまう、もっとジャシンタのボーカルはもっと退廃的でけだるいのだけれど....。4曲目の「ミッドナイト・サン」はエラ・フィッツジェラルドのヴァージョンを下敷きしたようなアレンジだが、アルバムでも随一のムーディーさである(ケイ赤城のピアノが美しい)。5曲目の「枯葉」はフランス語と英語のチャンポンで歌っているのがおもしろいが、基本はナット・キングコールのようだ。

 6曲目の「酒とばらの日々」は再びアンソニー・ウィルスンのギターをフィーチャーした非常にミッドナイトなムードな仕上がりになっている。8曲目の「トラヴェリング・ライト」はウィル・ミラーのトランペットをフィーチャー、9曲目「サムシング・ゴッダ・ギブ」はアルバム中、唯一のアップテンポの作品。バックはともかく、ボーカルはどちらかといえばポップス系みたいになっているが、こうのも悪くない。10曲は「ムーンリバー」は、最初の2分半はアカペラで歌っていて、後半はケイ赤城のちょっとアブストラクトなピアノ・ソロが続く変わった構成になったアレンジである。という訳で第2作は内容のヴァリエーション、彼女の歌の存在感というかクウォリティなどなど、以前は同じようなものだと思っていたが、じっくりと聴いてみると前作より明らかに良い内容になっていると思った。
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ウラジミール・シャフラノフ/ Movin' Vova!

2010年01月14日 21時30分07秒 | JAZZ-Piano Trio
 ウラジミール・シャフラノフが1998年に録音した第3作。シャフラノフといえば、長らく81年の「Live At Groovy」と1990年の大傑作「ホワイト・ナイツ」しかカタログがなく、澤野工房で彼を知ったファンとしては、当然新作を期待した訳だけれど、これがなかなか出ず、おそらく澤野工房からのオファーによって、ようやっと制作されたのがこのアルバムということになるのだろう。前作の「ホワイト・ナイツ」はジョージ・ムラーツとアル・フォスターという超豪華なオマケが付き、仕上がりの方もエクセレントなものだったけれど、こちらは拠点となるフィンランドのペルオラ・ガッド(ベース)とユッキス・ウイトラ(ドラムス)を伴ってのトリオで制作されている。8年振りのアルバムとのことだが、「Live At Groovy」で横溢していた小気味よさ、「ホワイト・ナイツ」のピアノ・トリオとして非の打ち所がない完成度といった部分と比較すると、全体としてはもう少し普段着な佇まいというか、これは良い意味でいうのだが、気負ったところがないピアノ・トリオ・アルバムとなっている。

 収録曲はスタンダード中心(だと思う、私の知らない曲が多い)の選曲で8曲が収められている。1曲目は「Namerly You」という曲で、しっとりしたピアノ・ソロからスタートし、トリオとなってからミディアム・テンポの快適なスウィング感を振りまいている。自分の形容をもう一度引用させていただくと、シャフラノフは「ウィントン・ケリーばりの軽快なスウィング感+トミー・フラナガン的センスによるスタンダード解釈/ヨーロッパ的洗練」といったところになると思うが、この曲はウィントン・ケリーばりの軽快なスウィング感を感じさせる演奏だ。2曲目の「あなたと夜と音楽と」はトミー・フラナガン的センスによるスタンダード解釈といったところか、ちょっとオーバーにいえば、かの「セブンシーズ」を思わせる流麗なスウィング感が楽しめる。ついでに書けば、残ったヨーロッパ的洗練を感じさせるのは、ソロで演奏された「But Beautiful」あたりに感じられたもする。オリジナル作品である「Geta Way」は「Live At Groovy」での小気味よさを思い出させる、リズムをシャープに決める非常に小気味よい仕上がりになっていて、前述の3曲と並んでアルバム中のハイライトになっている。
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ジャシンタ/ベン・ウェブスターに捧ぐ(SACD)

2010年01月14日 00時01分34秒 | JAZZ
 ジャシンタといえばしばらく前に彼女が作ったボサノバ・アルバムを取り上げたことがあったけれど、こちらは彼女の本邦デビュウ作だ。前のところで書いたけれど、ジャシンタは2000年代の初頭SACD黎明期に、そのメディアの優位性を見せつけるような超優秀録音のアルバムを連打したことで、オーディオ・ファンから一躍注目された存在でもある。特にあの頃、オーディオユニオンにあしげく通っていた人なら、たいてい彼女の歌声を聴いているのではないか?(もちろん、私もそのひとりなのだが-笑)。で、これもあの時の書いたのだが、彼女の歌はジャズ・ボーカルにありがちなクセがほとんどなく、ポップス的といいたいような素直さと透明感があって、まずはこれが親しみやすいことに加え、バックを担当面々が練達のメンツを揃えていたせいで、ジャズとしての風格やムードも十分兼ね備えていたのが、また大きな魅力になってのであった。

 本作はタイトルからも分かる通り、ヴォーカルによるベン・ウェブスターへのトリビュート・アルバムになっている。私はベン・ウェブスターのアルバムを数枚しか持っていないので、ここに収録された10曲がいずれも彼の十八番だったのかどうかはわからないが、いずれにしても、「Georgia on My Mind」「Love Is Here to Stay」「Tenderly」「Stardust」「Danny Boy」を始めとして、どれも超有名曲ばかりであり、多くの曲はテディ・エドワーズがそれこそベン・ウェブスターばりの渋いテナーで華を添えているのが、ジャズ的ムードを盛り上げている(ケイ赤城のくっきりとしたピアノもいい)。私が聴いた印象だと、やはりムーディーなバラードにアレンジされた「Georgia on My Mind」や「Tenderly」、あと「Stardust」といった曲が良く、スタンダード大好きオジサンの夜のお酒のお供には上々の仕上がりである。「Over the Rainbow」はちと退廃的に過ぎたようだが。一方、「Love Is Here to Stay」「How Long Has This Been Going On?」では意外にもポップでスウィングしたところをみせたりもして、バラード一辺倒という訳でもなく、そこそこヴァリエーションを持たせているのはさすがだ。

 ちなみに録音は冒頭にも書いたとおり超優秀である。質感にこだわってアナログ録音を採用したようだが、にもかかわらずヒスノイズが聞こえてこない好SN比なのに加えて、スタジオの広さまで分かりそうな、空気感と各楽器の縁取りをリアルに伝える鮮度感が実に絶妙にバランスしているのが素晴らしい。このアルバムを制作したのは、Groove Mateというマイナー・レーベルのようだが、オーバーダビングなしの一発録り的な鮮度感は大きいとしても、やはり高鮮度感が売りだが、いささか植物的なチェスキーなどとも違った艶やかなハイクウォリティ・サウンドである。それにしても、弱小レーベルにどうしてこんなリッチな録音のだろう?。要はエンジニアの耳次第ということなのだろうか。ある種驚異ではある。
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