Blogout

音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

The Chick Corea Elektric Band

2010年01月18日 23時37分57秒 | JAZZ-Fusion
 1986年に発表されたチック・コリア・エレクトリック・バンド(CCEB)のデビュー作。録音時期としては先に取り上げた「ライヴ・フロム・エラリオズ」の方が早いが、あれは後年発表された一種のレア音源であり、一般リスナーが彼らを知ったのは、当然この作品が最初のものである。この時期のCCEBは当初の構想通り、メンバーはコリアにパティトゥッチとウェックルの3人で、ゲスト的にギターのカルロス・リオスとスコット・ヘンダーソンが参加してサウンド補強するという形をとっている。フランク・ギャンバレのギター、エリック・マリエンサルのサックスが加わって、バンドの布陣が固定するのは、これの翌年に発表された「ライトイヤーズ」からである。
 実をいうと、私がCCEBを聴いたのは、これより更に後の「アイ・オブ・ザ・ビホルダー」あたりからで、初期の2作は聴いたこともなければ、CDも持っていなかった。どうせ、かなりポップなフュージョン路線だろうと、あまり触手が伸びなかったせいだが、先日、聴いた最初期の音源「ライヴ・フロム・エラリオズ」があまりにも良かったため、これは看過出来ないと思い、数日前に急遽購入してきた。

 さて、この初めて聴く彼らのデビュー作だが、エレクトリック・バンドというのがバンド名に込められた意図が非常によく分かる内容だ。「ライヴ・フロム・エラリオズ」はなんだかんだといいつつも、インプロ重視のトリオ演奏だったのに比べると、こちらはとにかく当時最新鋭のデジタル・シンセ、シーケンサー、シモンズ系のパーカスといった飛び道具のオンパレードである(クレジットにはヤマハのTX系、フェアライト、リン、そしてシンクラヴィアなど錚々たるシンセ並ぶ)。これが発表された頃、私は打ち込み音楽に夢中で、デジタルシンセやドラムマシンなどを何台も購入して、Cubaseというシーケンスソフトでもって、自ら打ち込み音楽をやっていた時期なので、この手のサウンドは実に懐かしくもある。
 デジタル・シンセ特有のマリンバを金属的にしたようなクリアなエレピ系、重厚さはないがキレ味の良いブラス系、シンセ・ベース、遠近感のあるシモンズのドラム・サウンドなどをデジタル・リバーブ特有の光沢感....といったものは、当時のまさに「最先端のサウンド」であり、こういうものを多少なりともかじっている人間にとっては(私は下手の横好きだったので全く物になりませんでしたけどね-笑)、ものすごく金のかかる「憧れの音」だったのである。

 本作を聴くと、そうした最新のテクノロジーに触発された音楽という感が非常に強い。なにしろこの時期は音楽テクノロジーという点は、ある種「産業革命」のような時代だったので、テクノロジーの発達が音楽の創作に直接的な動機となるようなことが、いろいろなところでみられたけれど、それがテクノやロックの世界だけなく、ジャズの分野からもチック・コリアのような人からもアクティブに発信されていたということだろう。
 まぁ、そういう音楽なので「ライヴ・フロム・エラリオズ」のような長尺インプロはあまりなく、全体は尺はかなり刈り込まれ、全体はきっちりかっちりアレンジされかなりポップな楽曲が続いている。比較的インプロ度、ゴリゴリ度(?)が高い楽曲としては、 デイブ・ウェックルお得意のラテン・リズムがフィーチャーしつつ、自在に4ビート行き交う「ゴット・ア・マッチ」、RTF的ゴリゴリ感を口当たりの良いサウンドに還元させてみせた「シルヴァー・テンプル」あたりが楽しめる。また「キング・コックローチ」もその系列だ。これらの曲では、コリアもさることながら、若武者ウェックルとパティトゥッチのリズムが圧倒的だ。ありがちな求道的に楽器を追求していくシリアスなタイプではなく、妙に明るい開放感と天衣無縫なプレイ、いろいろな意味で当時衝撃的だったけれど、それがよく分かるプレイだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする