1991年に発表されたチック・コリア・エレクトリック・バンドの第5作にして最終作である。私はこの作品を今回初めて聴いたのだが、まさに最終作に相応しいどこをとっても完成され切った作品になっていると思った。表向き「ライトイヤーズ」的なポップ・センスが全面的に出ているものの、あまりに売れ筋なポップさを狙いすぎて、バンドの個性がスタイルに埋没気味だった「ライトイヤーズ」に比べれば、前作「インサイド・アウト」で獲得した高いテンションとテクニカルさ、一部「アイ・オブ・ザ・ビホルダー」的なスペイシーな感覚に、ポップなフュージョン・サウンドにほどよくミックスされていて、全体の感触としてはかなり聴きやすい音楽ではあるものの、頃合いのバランスになっているのがいい。まさにCCEBの総決算といってもいい出来だ。主な曲をメモってみたい。
冒頭の3曲ははCCEBが再びポップなファンキー・フュージョンに戻ってきたことを感じさせるキャッチーな作品。ただ「ライトイヤーズ」と違うのは、前述の通りバンドのもの凄く高く演奏自体が非常に充実しているということだ。この後何度も書くことなるが、ことにウェックルとパティトゥッチのリズム隊はこのバンド史上最高のテンションを発揮していて、当たり前なものになりかねないこうした曲でもやけにハイな仕立りにしまっている。「Wave Goodbye」は「アイ・オブ・ザ・ビホルダー」で展開されたような幻想味の強いサウンドだが、パティトゥッチが強力なグルーブ感でもってバンドをひっぱっているところが「アイ・オブ・ザ・ビホルダー」の諸曲とは少々違うテンションを感じさせることになっているのがいい。「Lifescape」は「インサイド・アウト」のシリアスさをぐっと滑らかにしたような作品で、複雑なキメや変拍子が実にさりげなく溶け込んでいるアレンジが絶妙。また、ギャンバレのギターが聴き所満載である。「Jammin E. Cricket」もウェックルとパティトゥッチが強力なグルーブ感を醸し出す、まるでアート・オブ・ノイズみたいなメカニカル・ファンキー・ナンバーでカッコ良く、こういうサウンドであれば、中間部で聴かれる「アイ・オブ・ザ・ビホルダー」ばりの中間部の浮遊感も生きてくるというものである。
「Charged Particles」は「インサイド・アウト」的なゴリゴリ感、大仰さをコンパクトにまとめたような作品で、個人的にはアルバム中のお気に入りの作品となった。「Free Step」はポップなラテン・フュージョンの衣をまとった作品で、全体としては滑らかでリラックスして進むが、実にはかなり仕掛け満載のテクニカルな作品で、ウェックルとパティトゥッチが表向きニコニコ、実は怒髪天みたいテンションになっているのが凄い。「99 Flavors」は当時、ヤマハが出していたデジタル・シンセの最新機SY99にあやかった曲で、かのデジタル・シンセらしいクリアだがアナログ的太さも感じさせるサウンドを随所に散りばめている。「Illusions」は10分近い大作で、幻想的サウンドとハイテンションなインタープレイの合体を目論んだ作品という感じだろうか。こういう作品だと必ず顔だすバルトーク的シリアスさや複雑なアレンジを、無理なくポップなサウンドに収束させているあたり、CCEBの進化プロセスの最終形を感じさせる。
冒頭の3曲ははCCEBが再びポップなファンキー・フュージョンに戻ってきたことを感じさせるキャッチーな作品。ただ「ライトイヤーズ」と違うのは、前述の通りバンドのもの凄く高く演奏自体が非常に充実しているということだ。この後何度も書くことなるが、ことにウェックルとパティトゥッチのリズム隊はこのバンド史上最高のテンションを発揮していて、当たり前なものになりかねないこうした曲でもやけにハイな仕立りにしまっている。「Wave Goodbye」は「アイ・オブ・ザ・ビホルダー」で展開されたような幻想味の強いサウンドだが、パティトゥッチが強力なグルーブ感でもってバンドをひっぱっているところが「アイ・オブ・ザ・ビホルダー」の諸曲とは少々違うテンションを感じさせることになっているのがいい。「Lifescape」は「インサイド・アウト」のシリアスさをぐっと滑らかにしたような作品で、複雑なキメや変拍子が実にさりげなく溶け込んでいるアレンジが絶妙。また、ギャンバレのギターが聴き所満載である。「Jammin E. Cricket」もウェックルとパティトゥッチが強力なグルーブ感を醸し出す、まるでアート・オブ・ノイズみたいなメカニカル・ファンキー・ナンバーでカッコ良く、こういうサウンドであれば、中間部で聴かれる「アイ・オブ・ザ・ビホルダー」ばりの中間部の浮遊感も生きてくるというものである。
「Charged Particles」は「インサイド・アウト」的なゴリゴリ感、大仰さをコンパクトにまとめたような作品で、個人的にはアルバム中のお気に入りの作品となった。「Free Step」はポップなラテン・フュージョンの衣をまとった作品で、全体としては滑らかでリラックスして進むが、実にはかなり仕掛け満載のテクニカルな作品で、ウェックルとパティトゥッチが表向きニコニコ、実は怒髪天みたいテンションになっているのが凄い。「99 Flavors」は当時、ヤマハが出していたデジタル・シンセの最新機SY99にあやかった曲で、かのデジタル・シンセらしいクリアだがアナログ的太さも感じさせるサウンドを随所に散りばめている。「Illusions」は10分近い大作で、幻想的サウンドとハイテンションなインタープレイの合体を目論んだ作品という感じだろうか。こういう作品だと必ず顔だすバルトーク的シリアスさや複雑なアレンジを、無理なくポップなサウンドに収束させているあたり、CCEBの進化プロセスの最終形を感じさせる。