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新東宝名画傑作選 「明治天皇と日露大戦争」

2009年09月28日 23時57分39秒 | MOVIE
 このところ新東宝の作品ばかり観ているが、中でもこれは有名な作品、嵐寛寿郎が演じ本邦初のスクリーンに登場する天皇、シネスコの走りと様々な話題を呼び、当時傾きかけていた新東宝の経営を一気に挽回させた起死回生の大作である(「日本人の5人に1人が見た」といわれたらしい)。日露戦争を明治天皇を中心に、陸海軍の活躍を要領よく約2時間で描いているが、「B級の新東宝」にしては、例外的に豪勢な造りになっていて、二百三高地の戦いや奉天入城、あと市井の提灯行列などかなりエキストラを動員したスケール感豊かなものになっているし、戦艦三笠を中心として対バルチック艦隊戦も円谷特撮には敵わないがなかなか迫力がある。

 ただし、大作とはいっても「新東宝にしては」というレベルかもしれない。俳優面では嵐寛寿郎以外は特に大物がおらず(個人的にはせいぜい「ミスター海底軍艦」の田崎潤が東郷をやっているくらいか、後年有名になる丹波哲郎、宇津井健、高島忠夫、天知茂といった人達は当時は新人である)、俳優的な「華」はほとんど感じられなかった。また、早撮りの名人渡辺邦男の演出はそれほど深みがある訳でもなく、プログラムピクチャー的な「撮りっぱなし感」がある上に、ドラマ的にはひねりも屈折もなく、通俗的なお涙頂戴式な浪花節に終始しているので、-まぁ、それはそれで趣はあるのだが-観終わった後「大作映画を鑑賞した」したという充足感はあまりない。ちょうど12チャンネルが昔やっていたような、正月の長時間ドラマ観ているような感じといったらいいか。

 という訳で、今の視点でみれぱ、やれ右翼だの、戦争をいたずらに賛美しているだのといわれかねない視点に基づいたストーリではあるが、1957年という戦後しばらくした時期にあってすら、日本人が持っていた日露戦争のイメージとはこいうものはこういうものだったのか....と、現代との落差を味わうだけでもおもしろい。Wikiによれば。明治天皇が登場するシーンでは「思わず手を合わせる人」がいたというから、当時の年配者たちのイメージもわかろうものである。良きにつけ、悪しきにつけそういうもんだったのである。ついでに書くと、私はこの作品を昭和40年代前半くらいに観た記憶があるのだが、この手のムードは当時でさえ古色蒼然したとものを感じたので、まぁ、10年も経たないうちに社会の雰囲気は大きく変化していたことを併せて感じたりもするのだが....。
コメント (2)
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