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新東宝名画傑作選 「憲兵とバラバラ死美人」

2009年09月25日 00時43分24秒 | MOVIE
 新東宝という今は亡き映画会社は、昭和20年代初頭の有名な東宝大争議から派生した、そもそも東宝の暖簾分けのような会社であった。当初は黒澤明なども作品なども制作し、文字通り第二の東宝的なポジションにあったのだが、あまり儲からなかったらしく、その後、大蔵貢が実権を握ると、安撮りの通俗映画路線をひた走り、いわゆるB級、C級映画を乱発、この時代に「新東宝」のイメージが確立した(新東宝の後継といえなくもない、ピンク映画専門大蔵映画のイメージもあいまっているが)。
 私は新東宝が倒産した1961年でもまだ2歳なので、新東宝のイメージといっても当時をリアルタイムで体感している訳でもないが、この時期の新東宝の作品のひとつで、宇津井健主演による日本版スーパーマン映画「スーパージャイアンツ」などは、昭和40年前後のTVでオンエア時に私は観ているはずだから、新東宝のB級ぶりはけっこう昔から体験していたことにはなる。

 さて、この「憲兵とバラバラ死美人」だが、これはもうタイトルが全てを物語っているといえる。悪名高い戦前の憲兵とバラバラ××という組み合わせ、しかも制作が新東宝とくれば、これはもう大通俗エログロ映画に違いあるまいという訳だ。かくいう私もそうした路線を期待してレンタルしてきた訳だが(観たのは22日)、あに図らんや内容的には普通の刑事物、いや刑事物のヴァリエーションであった。
 仙台歩兵連隊の炊事場附近の井戸の中から、女の胴体が発見され、軍隊という特殊環境で起きた事件であることから(そういえば、軍隊描写は8月に観た「陸軍残酷物語」と共通したムードがあった、おそらく類型なんだろう)、憲兵がその捜査に当たり、犯人は誰か、そもそも被害者は誰なのか....という捜査過程が丹念に描写されている作品で、エロい画面は被害者の胸元がちょっと見える程度、グロといっても骸骨くらいもので、スプラッター風な場面は皆無、あの時代を考慮したとしてもエロ、内容的はきわめてまっとうな映画であった。

 監督は並木鏡太郎、初めて聞く人だが、おそらく戦前からの職人監督だろう。昭和32年とは思えないボテボテのゴロのようなテンポの演出、編集である。だが、私としては、この作品まるで戦前の映画のようなゆったりしたストーリー展開や鄙びた風情がけっこう楽しかったともいえる。 主演はウルトラセブンのキリヤマ隊長でおなじみ中山昭二。憲兵とはいっても悪役ではなく、誠実に犯人を突き止める役の回り。当時の新東宝の常連、天知茂が探偵小説でいうミスディレクションを担う役として小悪党を演じている(どう考えても天知茂が犯人の方が雰囲気的に納得できるのだが-笑)。
 という訳で、まぁ、のんびりと観れた映画ではあるけれど、やっぱり「憲兵とバラバラ死美人」というぶっちぎったタイトルがつけるべき作品じゃないよね。扇情的なタイトルで釣るってのも、まぁB級の新東宝らしい趣向ではあったんだろうけれど....。
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