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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

The BEATLES / Please Please Me その2

2009年09月23日 12時21分18秒 | Beatles
(続き) 実際に聴いてみると、懐かしいような、それでいて新鮮なような、奇妙な感覚にとらわれる。懐かしいというのは、このステレオ・ヴァージョン、左右のバランスが左チャンネルがインスト、右チャンネルがヴォーカルという往年のパターンをほぼ踏襲しているからで、大昔東芝から沢山でていたステレオ録音のコンパクト盤だのを思い出せるのだ。なにしろ、当時日本で広く出回った編集盤「ビートルズ!」、「ビートルズNo.2」、「ビートルズNo.5」といったアルバムは全てモノラルだったので、あえてステレオ録音を聴きたければコンパクト盤で....みたいな複雑な状況になっていたのである。なので、このステレオ・ヴァージョンを聴くと、大昔、初めてステレオ版の「プリーズ・プリーズ・ミー」だとか「フロム・ミー・トゥ・ユー」「サンキュー・ガール」などをコンパクト盤で聴いて、その音の異同にギョっとした感覚が甦ってしまったりするのだ。

 次に新鮮さとは、これこそ新リマスターの効果だろう。オーバーにいえば瞠目したくなるくらいに激変した「音の太さ」と「ヴォーカルの鮮度」である。その大時代的なチャンネルの振り分けの是非はともかくとして、とにもかくにも、ここではヴォーカルとインストが左右に切り離された物理的条件の良さが物をいっているののだと思う。左チャンネルで聴こえるインスト、特にベースの太さと、くっきりと粒だったヴォーカルの鮮度感、コーラスの音離れは、これまで聴いたことも無いビートルズの音だと思う。
 ついでにいえば、リンゴのドラムはこのリマスターでは、ベースに比べるとけっこう大人し目のバランスだが、「蜜の味」で左チャンネルで聴こえるリンゴの刻むブラシの生々しさなど特筆ものだし、ほんのわずかだが、時にドラムス・ブースの空気感のようなものまで感じとれるのも、これまでよりぐっとSN比がよくなり静寂感がましたからだろう。あと、オーバータビングされたおぼしき楽器(ハーモニカとかピアノ)が忽然と右チャンネルに現れる時の妙にリアルな感触も、そのバランスに賛否はあるだろうが、個人的にはけっこう楽しめた。

 という訳で、このステレオ・ヴァージョンだが、-これはモノラル・ヴァージョンと同様-日本人が好みそうな、あざといまでにエッジを際だたせたり、分析的に細部を描写するような方向とは違ったポリシーで整音されことは明らかだ。少なくともパッと聴き、派手な音ではないのも確かであり、「期待したけど、全然音良くなってねーじゃん」みたいな意見は、おそらくこうした面からきているのだろう。ちなみに今回のリマスターでは基本的な左右のバランスは以前のものを踏襲していると思うが、あの泣き別れのバランスに多少は考慮したのか、両側の音をいくらか真ん中に音を寄せているような気もする。ちなみにいえば、今の技術を使えば、ボーカルを真ん中にして、インストを左右に散らすことも、元が2チャンネルのソースであっても、やってやれないことはないと思うのだが、さすがにそこまでいじらないのは、相手がビートルズだからなのか、それとも保守的な英国の見識が反映したというべきなのだろうか。
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The BEATLES / Please Please Me その1

2009年09月23日 11時49分49秒 | Beatles
 1963年の発表のビートルズ、歴史的デビュー・アルバムである。ブライアン・エプスタインの東西奔走もあって、ようやくEMIと契約に漕ぎ着けたビートルズが、1962年のデビュウ・シングルの「ラブ・ミー・ドゥ」がますまずヒット、続く「プリーズ・プリーズ・ミー」が念願のナンバー1ヒットになったことを受け、急遽制作されることとなったもので、収録された14曲のうち4つは既発シングル収録曲だから、当日録音されたのは10曲ほどだが、ビートルズはこれをほぼ一日(10時間くらいだったらしい)で録音が終了したとか、当日のジョンは風邪を引いていて、最後の「ツイスト&シャウト」は喉がつぶれる寸前だったので、ほとんどぶっつけであのテイクを決めたとかいうエピソードは、ビートルズ・デビュウ期を彩る伝説のひとつになっている。

 ポールのカウントから始まる「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」に始まり、ジョンの絶叫で締めくくる「ツイスト・アンド・シャウト」まで、当時のビートルズのもっていたフレッシュで荒々しいパワーがビビッドに伝わってくるアルバムだが、同時に「アスク・ミー・ホワイ」「P.S.アイ・ラヴ・ユー」「ドゥ・ユー・ウォント・トゥ・ノウ・ア・シークレット」といったバラード系の作品も魅力的だ。ビートルズはデビュー当時からロック系の作品とは、ひと味違ったこうしたメロディックな感覚があったこと忘れられないところで、いわばこれらを両極として、その中間に6曲のカバー作品なども折り込み、デビュウ・アルバムの仕上がりとしは意外にも多彩な仕上がりになっているのだ。まぁ、このあたりはキャバーン・クラブその他での経験がものをいっているのだろうが、このアルバムにはデビュウ作らしいその瑞々しさ、若々しさといった魅力は当然あるにしても、それと同時に「既に十分に鍛錬され、手の内が沢山あるバンド」というプロ的な感覚が物をいっていることも忘れられないと思う。

 さて、今回の新リマスターでは、初期の4作が従来のモノラルからステレオ・ヴァージョンに切り替わったのが話題といってもいいだろう。ここでも何度も書いているとおり、もちろんモノラル・ヴァージョンも発売されてはいるのだが、あちらは分売もされないマニア向けの限定発売だから、アーティスト側もここにいたって公式音源として、晴れてステレオ・ヴァージョンを認定した....といってもいいかもしれない。とにかく、その是非についてはこれからも、笑えるほどに議論噴出であろうが、なにはともあれ、これからしばらくの間は泣いても笑っても、「公式なビートルズの音」はコレなのである。(続く)
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