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ガス人間第一号

2008年01月16日 23時46分36秒 | MOVIE
 こちらは変身人間シリーズの中では、表向き一番地味な作品であるが、なかなか味わい深い異色な仕上がりだ。ここで登場するガス人間が犯行を犯すのは復讐だとか変身故の狂気ではなく、落ちぶれた日本舞踊の若き家元のために、いわばパトロンとなるために銀行強盗をするのだ。つまり完全にまっとうな理性をもった人間として登場する訳だが、復讐にとりつかれて狂気のようになってしまった電送人間とは違い、その根底にあるのが恋愛感情ということで、作品自体も抑圧的な情緒が漂っていて独特な雰囲気がある。ガス人間に扮するのは土屋嘉男で、今の視点からすると「真打ち登場」という感じだが、当時は中丸忠雄も土湯嘉男もこういう映画だからこそメインに抜擢されたバイプレイヤーであったはずだが、この家元を演じるのが若き日の八千草薫の浮世離れした純和風な美しさが、この作品独特のスタティックに雰囲気を大きく盛り上げている。

 ちなみに主演は三橋達也で、「虎の牙」ももうすぐそこ....という感じの軽快でスマートな刑事役をそつなくこなしているが、どちらかといえば彼の恋人役となった佐多契子のはつらつとした美しさの方が際だっていたと思う。三橋達也が「虎の牙」寸前なら、多契子の役は、星由里子で頂点を極めた東宝ビューティーの典型だと思う。なにしろ東宝は日本のバラマウント映画みたいな会社だったので、女優さんたちはおしなべて都会的な明るさと勝ち気なところをチャームポイントとして描くことが多かったけれど、彼女もそうした流れでみると、ああ東宝だなぁ....と思ったりする。いずれにしても、この作品、土屋嘉男と三橋達也、八千草薫と佐多契子がそれぞれ陰と陽のような関係になっていて、ふたつが錯綜してドラマが進んでいくのだけれど(そのままメロドラマにしちゃってもいいんじゃないかと思うような仕上がりですらある)、それにガス人間という特撮、そして銀行強盗という要素も加わる訳で、やはりそれを破綻なく演出した本多猪四郎の腕は確かだったと思う。
コメント
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