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JACINTHA / The Girl from Bossa Nova (SACD)

2007年08月27日 00時09分34秒 | JAZZ
ジャシンタという女声ボーカリストはオーディオ・ファンにはけっこう馴染み深い人ではないか。何故かといえば、SACD勃興期にGroove Noteというレーベルから出た何枚かのSACDによる作品は、それはもうデモ・ディスクとして頻繁にかかっていたし、オーディオ雑誌等でもハイファイ録音盤として、あるいは機器のオーディオ・チェック的なソースとして良く顔を出していたからだ。SACDが出始めた時期といえば、なにしろ本家のソニーを除けばCDの時以上にそもそもソースが少なかったし、そのソニーから出た新旧のソースを使ったSACDアルパムにしたところで、時として過渡にリファレンス的というか、早い話優等生的な音でありすぎて、SACDの凄さのようなものが今一歩伝わってこないうらみがあったところに、出てきたアルバムがジャシンタのアルバムだったのである。

 デビュー作は確か「Here's To Ben - A Vocal Tribute To Ben Webster」だったと思うが、とにかく声と楽器のリアルな質感、もうエクセレントとしかいいようがないバランス、それらがスタジオの広さまで分かりそうな精細な残響を伴ってスピーカーから聴こえてきた時は、「SACDってすげぇ」と思ったものだったが、加えていえば、彼女のアルバムがオーディオのデモ・ソースを越えて、日本のオーディオ・ファンに受けたのは、ジャズ・ボーカルとはいえ、ありがちな全くクセがなく、「澄んだ声」と形容したいような自然さとそこからそこはかとわき上がる官能性みたいなものが受けたのだと思う。あまりジャズとか縁がない人でも、ジャズ・クラブで小耳に挟むような音楽として、ごく自然に楽しめる仕上がりだった....という風にいいかえてもいいと思うが。

 さて、このアルバムだが、早いもので彼女のSACDシリーズでも第5作くらいになると思う。内容はタイトルから分かるとおり、どの曲も知らない人がいないというくらいのボサノバの大スタンダードを10曲ほど取り上げている。彼女のボーカルはそもそも軽いタッチだし、意外にアンニュイなところもあるので(そういえば「ジンジ」はフランス語で歌っている)、おそらく本作の狙いであろう「かつてアストラッド・ジルベルトがかつてやった音楽の今風な再現」をそつなくこなしているといったところで、とても聴きやすい仕上がりだ。バックを担当しているメンツも基本的にはジャズだが、これまたそつなくジャズ・ボッサ的なスタンスでバッキングを勤めていて、ハリー・アレンのサックスなどかつての名作アルバムでのスタン・ゲッツ役をなにくわぬ顔でこなしている。。

 ちなみに録音は当然のことながら、超がつくくらいに優秀だが、一連の彼女のアルバムに比べても、更に滑らかでえげつないところがまったくない上品な音になっていると思う。一応CD層の音も聴いてみたが、やはりSACD層を先に聴いてしまうと、CDではにわかに天井が下がったような抜けの悪さを感じてしまうほどで、やはりこういう一発録り的な録音だと、ミキシングのお化粧などといったこと以前に、素直に録音の素性の良さが出るといった感じがした。
コメント
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