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イリアーヌ/アラウンド・ザ・シティ

2007年08月06日 23時40分16秒 | Jobim+Bossa
確か昨年の今頃出た目下の彼女の新作。前作は「Dreamer」はダイアナ・クラールを意識したようなオーケストラを帯同させた実にゴージャスなたたずまいのボーカル・アルバムだったが、本作でもボーカル・アルバムというスタンスは同じなものの、音楽はうってかわってといいたいほどに変身していて、非常にコンテンポラリーな仕上がりになっている。どちらかといえば、前々作「Kissed by Nature」に近いコンテンポラリーさだが、かの作品にあったような、ジャズ的ごたわり、ボーカルの配分、ある種のポップさがどっちつかずに混在しているようなところが、本作ではきれいに吹っ切れて、ジャズ的なフィールドから出たコンテンポラリーなポップ作として、非常に良くできた作品になっているのは注目すべき点といえる。

 とにかくこのアルバム、聴こえてくる音が今までと明らかに違っていて、パーカスこそ生のようだが、ほとんどドラムは打ち込み、シンセによるシーケンス・パターンもふんだんに登場、しかもトレード・マークともいえる彼女の生ピアノのジャジーなソロが全編を通じて数えるほどしか出てこないので、ハウス風なリズムにのって彼女のボーカルが全面的にフィーチャーされるという趣向なのだ。収録曲もいわゆる古典的なスタンダートはほとんどなく、オリジナルと比較的新しいロック・スタンダードを料理しているのもそうした印象を倍加している。まぁ、そういう仕上がりなので、一歩間違えると、日和ったとしか思えない迎合趣味丸出しの音になりかねないのだが、そのあたりは彼女のプロデューサー、アレンジャーの才能なのだろう、非常にコンテンポラリーなサウンドにしつつも、しっかりと彼女の世界を堅持しているように聴こえるのはさすがだ。

 これまでの彼女はやはりピアニストというイメージを自分自身で捨て切れないようなところがあったと思うが、おそらくそれは前作の成功でそのあたりを吹っ切ってしまったのだろうと思う。本作は、自身のボーカルやピアノ、各種キーボード、打ち込みなど全てをプロデューサー的な視点で突き放してみて、更に再構成したみたいな趣があるが、それがひとりよがりとならずに、ある意味「モダンなフュージョン」として、実に心地よく、快適な音楽に仕上げたところは、彼女の才能の大きさを物語っていると思う。ルックスで売れてるみたいなイメージがある人だが、なかなかどうして看過できないミュージシャンに化けてきているのではないか?。
コメント
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