UGUG・GGIのかしこばか日記 

びわ湖畔を彷徨する独居性誇大妄想性イチャモン性前期高齢者の独白

名張毒ぶどう酒事件:再審開始を決定した裁判官は退職、再審開始決定を取り消した裁判官は栄転・・・

2013-12-24 00:58:51 | 日記

先日、西本願寺の聞法会館で行われた「約束」という映画の上映会に行ってきました。死刑廃止を求める宗教者のグループによる催しでありました。

 この映画、まだ裁判で決着がついていない「名張毒ぶどう酒事件」を題材にしたものです。仲代達也主演、ドキュメンタリーとドラマを交えて、この事件の経過を追った、東海テレビ制作の作品です。当日、上映終了後、裁判官を含む関係者およそ150人に会ったという東海テレビの関係者が講演されました。

 「名張毒ぶどう酒事件」というのは1961年に三重県名張市で起きた事件です。ちょうどGGIが大学生になった年です。名張市葛尾の公民館で行われた住民の懇親会の席上で女性の参加者に出されたぶどう酒を飲んで、12人が中毒症状を呈し、5人が死亡しました。

この事件の犯人とし逮捕されたのが奥西勝(当時35歳)さんです。しかし奥西さんは津地裁で無罪の判決を受けました。自白が強要されたものであり信用できず、物証も存在していない、との理由によるものです。ところがその後、名古屋高裁でも最高裁でも死刑判決が下され死刑が確定しました。その後、今日まで8回にわたる再審請求が行われています。

 いったん無罪判決が下された後、上級審で死刑判決が下され確定した例は、この事件だけだそうです。映画によれば、奥西さんは、誰も助けてくれる人はいないまま、第四次再審請求まで独力で行ってきたのですが、法律の知識もなく手続きなどが不十分であったため、いずれも退けられていました。

 しかし第5次再審請求からは、日本弁護士会が冤罪であるとして支援を開始し、弁護団が組まれ今日に至っています。

 奥西さんは一審で無罪判決を受けているだけではなく、第7次再審請求に際して、名古屋高裁でいったん再審開始が決定されるなど、無罪となる可能性が再三あったのですが、その後検察側の申し立てにより、いったん決定された再審開始決定が最終的には取り消されてしまいました。このため、先月、弁護団が第八次再審請求を開始しています。

 7次再審請求では、名古屋高裁と最高裁のあいだで判断が二転三転し、裁判は揺れ動きました。その経過の概要は以下の通りです。

 20024月:第7次再審請求

20054月:名古屋高裁(刑事第一部)、再審開始を決定

20054月:名古屋高検が異議申立て

20062月:名古屋高裁(刑事第二部)、再審開始決定を取り消し

20071月:弁護団が最高裁に特別抗告

20074月:最高裁、「再審再開決定取り消し」の審理は不十分であったとして、名古屋高裁に差し戻す

20122月:「毒物は別の農薬」と弁護団が最終意見書

20125月:名古屋高裁、再審開始決定を取り消し

20125月:弁護側、最高裁に特別抗告

201310月:最高裁、特別抗告を棄却

201311月:弁護団、第八次再審請求、

 奥西さんは今年87歳、事件発生から52年、獄中生活49年。八王子医療刑務所に収容されていますが、人工呼吸器を付けなければならない状態にあります。東海テレビの関係者の話では、それでも「弁護団が第八次再審請求を行う」と伝えると嬉しそうな表情であったとのことです。

 また、この東海テレビの方の話では、奥西さんの死刑判決に係った裁判官はのべおよそ五十人、そして第7次再審請求に際して、無罪判決となる可能性が大である「再審開始の決定」を下した名古屋高裁(刑事第一部)の裁判長はこの決定を下した後退職、一方「再審開始決定の取り消し」の判断を下した同高裁刑事第二部の裁判長は、その後、東京高裁所長に栄転したとのことでした。

 そして、最初に死刑判決を下した名古屋高裁の元判事に話を聞きにいったときは、激怒した元判事に門残払いされ、追い返されたとのことでした。

 「死刑弁護人」というドキャメンタリーでも知られる安田好弘弁護士は最近、今年の9月、死刑確定から2年半後に死刑を執行された熊谷徳久死刑囚(一審判決は無期懲役)についての講演で、死刑について以下のように述べておられます

 『死刑については、永山事件(永山則夫連続射殺事件)の第一次控訴審判決、「船田判決」という名前で呼ばれていますが、その中で、「いかなる裁判所がその事件を扱おうとも、死刑の判決しか出ないという場合にのみ死刑は許される」と言っています。つまり死刑というのは絶対刑であるから、ある裁判所では無期、ある裁判所では死刑と、そのような不公平なものであってはならないし、そのような相対的なものであってはならないという考え方です。言い換えれば、全員一致でないかぎり、死刑は許されないという考えかたです・・・』

 米国の陪審員裁判では、死刑判決を下す場合に限って、陪審員の全員一致が求められてますが、これルールも上記の「船田判決」と同様の考え方に立脚したものであろうと、GGIは思います。

 最近、日本の裁判員裁判でも死刑判決が下される例が出てきました。日本の場合は全員一致ではなく多数決です。また、数は少ないのですが、裁判員裁判による死刑判決が職業裁判官のみによる高裁での裁判で、無期懲役とされる例も現れています

 また上記の安田弁護士は次のようにも述べています。

 『いずれにしても高齢者に対する死刑執行は慎むべきだという国際ルールがあります・・・特に日本の刑事訴訟法には、70歳以上であれば、検察官の裁量によって刑の執行を停止することができると定められています。つまり法律の趣旨は、高齢者に対しては、過酷な刑罰はできるだけ回避しょうということなんですね。この考えが死刑に適用されないはずはありません。』

 以上、いろいろ記しましたことを考えあわせますと、少なくとも裁判所は奥西さんの死刑執行の停止をすぐにでも命じるべきであるとGGIは考えます

 よろしければ写真をクリックしてご覧くださいませ。映画「約束」のパンフレットの表紙です。

グッドナイト・グッドラック!

コメント
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