先日の日記でGGI、冤罪の疑いが極めて濃厚、冤罪と断言しても差し支えない「袴田事件」についての講演会を行ったと記しました。
犯人とされ、46年間ものあいだ獄中に閉じ込められている元プロボクサー袴田巌(元日本フェザー級6位)の実のお姉さん、袴田ひで子さんによる講演でしたが、講演後の質疑のときにGGI、事件とは直接関係のない、彼のボクサー時代のことをたずねてみました
「事件とは直接関係ないことですが、巌さんはボクサー時代、どんな方だったのですか?かつてのボクシング仲間の方々の話によれば、巌さんはとても打たれ強いボクサーであり、一回もノックダウンをくらったこともないのですが、ノックアウト勝ちとしたこともほんの数回ということです、このエピソードを知って、ちょっと不謹慎かもしれませんが、私は巌さんはいっぷう変わったボクサーだなあと何となく笑ってしまったというか、なにかしらユーモラスに感じたのですが・・・」
お姉さんの答は「でも、事件が起きたあの頃(1966年)は、プロボクサーなんて世間ではまともな職業と思われておりませんでした・・ですから事件で逮捕されたときも、元プロボクサーということで世間もマスコミの目もとても冷たいものでした・・・・」というものでした。
彼の選手生活は、「袴田事件」(山本徹美著、新風舎文庫、2004年)などによりますと、以下のようなものでした。
通算成績は29戦16勝10敗3分け、10敗はすべて判定負け、KO負けは一回もなし。そのかわりKO勝ちもわずか1回。年間最多試合、年間19回試合をこなしたという日本記録の持ち主。
こうした彼の戦いぶりについて、彼を支援しており、救援活動を行っているかつての選手仲間は語っています。
元日本フェザー級チャンピオンの山口鉄弥氏、「ぼくがチャンピオンになってすぐの試合だった、接戦でしたよ、袴田さんは俊敏なのとちがって、タフで打たれ強いタイプだから、なかなか倒れない。もうダメだろうと思っても、まだまだとばかりに出てくる。なにしろ粘り強かった。彼はピストン堀口のいた《不二拳》所属だからね。どんなに打たれようと構わず前に出てくる。それでも袴田さんはKO負けしたことなんてなかったんじゃないかな」
所属していた「不二拳闘クラブ」のトレーナー有田昭光氏、「袴田君は忍耐強いというか、おっとりしていましたね。ボクシングは確かになぐり合うわけですが、相手のパンチをくらって逆上しているようでは勝てない、かと言って、あまり冷静でもだめ。ここぞというところで切れ味鋭いパンチで決める、その切れ味が彼はもうひとつだった・・・テクニックはあったが・・まる3年間、面倒を見たが、カッとして人を殺すようなタイプではない。事件を知ったとき、どうしたんだろう、あいつにそんなことができるんだろうか、と意外に思った。何かのまちがいだろうという気持ちは今でも変わりません」
フィリピン遠征に同行したかつての同僚、勝又行雄氏、「テクニックは優れていた。いくら打たれ強いといっても、まともにパンチをくらっていたのでは身体がもたない。彼はパンチを受けながらも、それをほんの一瞬かわす技術を持っていた。彼のパンチは正確でありアマであればポイントを稼いで勝てるが、プロの場合はそうはいかない。やはりKOするぐらいの破壊力がなければ・・・入門してきたときは、ぼくの目にはひ弱な感じに映った、精神的にカーッとくるようなガッツが感じられなかった、一言で表現すると地味ですね・・・なんとか頑張ってほしかったが、消極的な性格はどうも直らなかった。だからこそ、彼に人を殺せるわけがない、と僕は思っている」
全日本ボクシング協会の原田政彦氏(ファイティング原田)は、後楽園ホールでのイベントにおいて、途中でリングにあがり挨拶、「ボクシングファンの皆様、きょうは、25年ものあいだ獄中から無実を訴えている元プロボクサーのことをお話ししたいと思います。ボクサーだから、短時間で殺人をおこなえたとする判決理由はボクシングのイメージを落とすものです。全日本ボクシング協会は、真相を究明するために、再審請求を支援してゆきたいと考えております」
今日(10月29日)、東電社員殺害事件で犯人とされたチベット人、マイナリさんの無罪が東京高裁における再審で事実上確定しました。決めてとなったのはDNA鑑定の結果です。袴田事件でも今年の4月、犯行に用いられたとされるシャツの血痕のDNA鑑定で、袴田巌さんのDNAでないという結果が明らかにされています。一日も早い袴田事件の再審開始と巌氏の無罪確定を、GGI、心から祈ります。
グッドナイト・グッドラック