透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「野分」

2022-06-17 | G 源氏物語

「野分 息子夕霧、野分の日に父を知る」

 **春か秋かと競う時、昔から秋に心を寄せる人のほうが多かったけれど、名高い春の御殿の花園に夢中だった人々ががらりと心変わりする様は、時勢になびく世の有様と変わりがない。**(129頁)「野分」の帖を紫式部はこのような時事評論的な一文から書き出している。「源氏物語」は時に政治的な背景を説き、評論的な内容も書いている。文学論もあった。俗な週刊誌の連載小説とは違う。尤も、熱心な読者である宮中に仕える女性たちの関心を惹くような話題、恋愛物語的な要素が強いのだろうが。

秋好中宮(あの六条御息所の娘)は実家である六条院の秋の御殿に里帰りして、留まっている。八月。野分(台風)が激しい勢いで六条院を襲う。夕霧が野分の見舞いに六条院を訪れる。そこで紫の君の姿を見てしまった夕霧は、あまりの美しさにすっかり心を奪われてしまう。樺桜のようだと一目ぼれ。**春の曙の霞のあいだからみごとに咲き乱れた樺桜を見るかのような気持になる。(中略)その魅力的なうつくしさは、周囲をも照らし、類を見ないすばらしさである。**(130頁) 復習、紫の上は藤壺の姪。この女性にたちまちロックオンされた夕霧は、他の美しい女房たちに目を移すことができない。紫の上はいったいどんな女性なんだろう。再来年の大河ドラマ「光る君へ」には作中の女性たちは登場しないのかな・・・。

夕霧は父君が紫の君から自分を遠ざけてきた意図が分かる。光君は息子が紫の君に一目ぼれしたことを見抜いてしまう。夕霧は律儀な性格、野分をこわがる大宮(おばあちゃん)のことが心配で顔を出している。**「この年になるまでこんなものすごい野分に遭ったことはありませんよ」**(132頁)**「こんな中よく来てくださったこと」**(132頁)と大宮は震えながらも喜ぶ。

夕霧は思う。なぜ父君はあんな美しい紫の君がいるのに、花散里のようなお方も妻にしているのかな、と。花散里は美人ではないけれど誠実で心変わりしない女性だから、という理由(わけ)は若い夕霧には分からないのだろう。無理もないと思う。

光君も夕霧をお供に中宮、明石の御方を見舞い、玉鬘を訪ねる。そこで夕霧は・・・。**何かおかしいぞ、父娘と言いながら懐に抱かれるばかりに近づいていい年頃でもないのに・・・・・と、目を離せない。(中略)あまりの異様さに心底驚いてなおも見入ってしまう。**(139頁)

でも、夕霧は玉鬘はお姉さんだけれど、母親が違うのだからと思って**あるまじき思いを抱きかねないほど魅力的に思える。** あるまじき思いって、単なる恋心ではないのでは・・・。 

光君が玉鬘に親密に話しかける。すると急に立ち上がって**吹き乱る風のけしきに女郎花しをれしぬべきここちこそすれ**と詠む。**あなたの強引さに私は今にも死んでしまいそうな思いです**(140頁)やはり玉鬘は理性的だ。

その後、夕霧は明石の姫君(異母妹)を訪ねる。姫君が紫の上の部屋に行っていて留守だったので、待つ間に雲居雁(幼なじみのいとこ)に宛てて手紙を書く。やがて戻ってきた姫君の姿を夕霧はちらっと見た。

紫の君は桜、玉鬘は山吹の花、可憐な明石の姫君は藤の花がふさわしいなぁ。夕霧、女君の品定め。

物語には世代交代の空気が・・・。


1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔 
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋                     


諏訪大社 四社めぐり

2022-06-17 | A あれこれ

 昨日(16日)の朝、急に思い立って諏訪大社 四社(上社の前宮と本宮、下社の秋宮と春宮)めぐりをしてきた。

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上社前宮 拝殿


上社前宮 御柱 

御柱は7年目毎、寅年と申年に建て替えられる。次回の御柱は2028年(令和10年)。



上社本宮 拝殿と翼廊状の片拝殿



下社秋宮 神楽殿


下社秋宮 幣拝殿(弊殿と拝殿が一体となったもの 二重楼門造り)



下社春宮 神楽殿(御神前にお神楽を奉納するための建物)


下社春宮 幣拝殿(中央)と片拝殿(両側)