透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「金閣寺」

2018-09-20 | A 読書日記

 中高生がよく読む(ここはよく読んでいたとすべきかな)川端康成の作品といえば『伊豆の踊子』(過去ログ)、三島由紀夫は『潮騒』だろうか。ふたりの代表作を問われれば私は『雪国』(過去ログ)と『金閣寺』を挙げる。私がこれらの作品を読んだのは高校生の時だった。

その後『金閣寺』を数回読んでいるが(過去ログ)、また読み始めた。

**目の前の眺望がわが目を疑わせた。久しいあいだの燈火管制を解かれた京都市は、見わたすかぎりの灯であった。(中略)灯は一つの立体をなしていた。平面のそこかしこに散らばる灯が、遠近感を失って、燈火ばかりでできた透明な一つの大建築が、複雑な角を生やし、翼楼をひろげて、夜の只中に立ちはだかっているように思われた。**(90頁) 

戦争が終わって間もないある夜、主人公が鹿苑寺の裏手にある不動山に登り、頂上から見た京都のまちの様子をこう描いている。改めて書くまでもないが、描写力がすごい。「金閣寺」は三島由紀夫が31歳の時の作品だ。 

名作は繰り返し読むことに堪える。今週はこの作品をじっくり読もう。