柱頭のデザインが印象的だ。空間のボリューム、天井の高さなど、バランスがよく好ましい。
このサッシの縦横のフレームの割り付けは槇さんが好んで使っている。
繰り返しの美学!
コードペンダントが印象的
繰り返しの美学な空間
■ 福井県立図書館 福井市郊外の田園地帯の広大な敷地(約7万㎡)に建つ大型図書館(平成15年開館)。久しぶりに槇文彦さんの建築を体験した。
感想をひと言でいえば、知的で上品な空間だということ。
デザインということばの原義は「整理すること」だとか。複雑な建築構成要素を整理して秩序だてることが、ものとしての建築のデザインだと解せば(その逆、意味もなく複雑な構成をしたとしか思えない、デザインの意図が分からない建築もあるが)、槇さんの建築は形が単純化され、各部の寸法が整えられ、材料や色、ディテールが限定されている。その洗練されたデザインが効果を充分発揮して実に上品な空間が創出されている。
だがそれだけではない。例えば基調となる水平・垂直線に敢えて斜めの線を加えたり、イレギュラーな形や色を採りこんだりと、建築を秩序だてるデザインルールから少し外した「遊び」も採り込んでいる。そしてこれが実に魅力的なのだ(青山のスパイラルはちょっとルールから外しすぎ、遊び過ぎではないかと思うが・・・)。
この辺りがよく似た作風、デザイン傾向の谷口吉生さんとは違うところだろう。谷口さんの建築には遊びがない。隅から隅まで徹底して端正にデザインされている。
槇さんの建築には「繰り返しの美学」が頻出する。繰り返しは建築を秩序だてる最も基本的で、最も有効な手法だから当然、というのが私の見解。