透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

衣服も建築!?

2007-10-21 | A あれこれ

 仮に建築を「人体を取り囲む環境を秩序づける装置」とでも定義すれば日傘も衣服もその範疇に含まれることになる。

具体例を書く。登山をしてテントを張ってシュラフの中で寝るということを考えてみる。テントは雨風を防ぐ機能は備えているが、断熱性能は備えていない。で、シュラフに断熱性能を分担させていると捉えることができる。この場合テントはもちろんシュラフも建築というわけだ。

雨漏りする部屋で傘を差しているというマンガの図、この場合傘は建築の基本である雨を防ぐという機能を補っている。

寒い季節に室内で厚着をする。これもシュラフと同様に建築の断熱性能を補うという行為とみなすことができる。 先の定義に拠れば衣服も建築なのだ!?。 

だが衣服を建築と捉えることには違和感がある。ということは先の定義は建築の概念を広げすぎているということなのだろう。

建築は「空間」を秩序づける装置とでも定義すべきであろう。この場合には人体の「近傍の環境」を秩序づける衣服は建築からは除外されることになる。ではパラソルは? これは建築とみなして差し支えないだろう。パラソルは名前の通り直射日光を遮り、空間を秩序づけるという建築の定義に合致しているのだから・・・。最もプリミティブな建築といえるだろう。

この稿つづく・・・。


 


原広司さんの教え

2007-10-21 | B 繰り返しの美学


 京都駅近くのビルの足元。この写真をいつ撮ったのか記憶も記録もないので分からないがかなり前のことだと思う(サービスサイズのプリントの複写を載せた)。

現代建築には同じ構成要素の繰り返しが頻出する。その理由のひとつとして「生産の合理性」を挙げてもいいだろう。つまり同じパーツを繰り返しつくる方が生産コストが縮減できるというわけだ。設計者も敢えて違うデザインにする必要はないという消極的な理由から同じパターンを繰り返す。

このビルの設計者(確か有名な建築家だったように思う)がどのような意図をもってこの部分をデザインしたかは分からないが、私は「繰り返しの美学」をここに感じて写真を撮ったという訳だ。

円柱と同じ仕上げが奥の壁面にも施されている。そのためだと思うが円柱の繰り返しが際立たないのは残念。

このビルのすぐ近くの京都駅を設計した原広司さんは同じデザインの繰り返しを避ける。ここまで変えるのかと思うほどだ。

前にも取り上げたが原さんは『集落の教え100』彰国社で**集落のあいだで、建物のあいだで、部屋のあいだで、差異と類似のネットワークをつくれ。**と書いている。

集落を構成する住居には無限のバリエーションがあり得るが、いずれの二つの住居のあいだにも類似点を指摘できると思われる、という世界の集落を調査して得た知見をもとにそう書いている。

あくまでも類似であって同じではないということに注目すべきだろう。原さんは高層ビルの外壁にも均一ではなくいろんなデザインを施してみせた。大阪梅田の例のツインタワーのことだ。新宿副都心の超高層ビルの外観と比較すればデザインに対する考え方の違いがよく分かる。

宮城県立図書館、正式な名称かどうか、原さん設計の図書館では屋外の誘導ブロックに2種類の黄色を使っていた。原さんの作品を診る(この漢字を使っておく)とあらゆる部分をデザインするのだ!という強い意志を感じる。

先に挙げた本で原さんはこんなことも書いている。**材料が同じなら、形を変えよ。形が同じなら、材料をかえよ。**設計には気力と体力が必要だ。

そしてこうも指摘する。

**幾何学的な形態と不定形な形態、一義的に意味付けられた場所と多義的な場所、明るさと暗さ、荘厳された場所と日常的な場所、古いものと新しいもの等々の二律背反するものを混在せしめよ。また、それらのグラジュアルな変化を混在せしめよ。そして、全域をなめらかに秩序づけよ