透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

いいじゃないの幸せならば 

2007-10-18 | A あれこれ

♪「いいじゃないの幸せならば」と佐良直美さんは歌った。丹下健三さんなら「いいじゃないの美しければ」と建築を語っただろう。

丹下さんの作品は遠景が美しい。建築を都市との関係で捉えてデザインしているから上空から俯瞰するとその意図がよく分かる。代々木体育館然り、広島平和記念資料館然り。

では丹下さんに師事した黒川さんはどうだろう。「いいじゃないのマスコミ受けすれば」 否! 「いいじゃないの思想が表現できれば」といったところだろう。

このところ黒川さんの建築について考えている。代表作は何だろう・・・。「中銀カプセルタワービル」あたりに落ち着くような気がする。

「メタボリズム」、都市や建築を生物のアナロジーとして捉えて新陳代謝すべきものという考え方。この思想を具現化した建築の代表作品が「中銀」だ。

黒川さんが30代半ばで設計したこの作品、カプセルは交換されることもなく、設備配管は新陳代謝できず、メタボリック症候群で取り壊しが決まったと聞く。

残念な結論だ。せめてカプセルひとつだけでも保存できないものだろうか。

尤も黒川さんは**建築を含め目に見える物質の寿命は短いのに対して思想は永く残っていく。私が本当に作りたいのは誰にでも伝わっていく思想である。**と語っている(『建築家のメモ メモが語る100人の建築術』丸善)。

「共生の思想」は黒川さんの願い通り後世に残るだろう、と僕は思う。