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画期的だった「黒い雨」訴訟での広島高裁判決

2021年07月22日 | 国際・政治
昨年7月の一審広島地裁判決は原告全員を被爆者と認定した「黒い雨」訴訟。7月14日、広島高裁は一審判決を支持し、広島県や広島市、国側の控訴を棄却、手帳の交付を命じる判決を言い渡しました。「黒い雨」訴訟での地裁・高裁での画期的判決は何だったのか、この間の経緯も含めて、2021年7月9日配信「毎日新聞」、13日配信「中国新聞社」、14日配信「テレビ新広島」、18日配信「日刊ゲンダイ」から記事を転載させていただき、紹介することにします。(サイト管理者)


※以下、転載はじめ↓


<広島市長、「黒い雨」被害者救済の政治判断求める 厚労相に>

国が定めた援護区域外で原爆投下後に降った「黒い雨」を浴びた住民らが被爆者健康手帳の交付などを求めた訴訟の控訴審判決(7月14日)を前に、広島市の松井一実市長は(7月)9日、オンラインで田村憲久厚生労働相と面会し、判決の内容にかかわらず被害者を救済する「科学的知見を超えた政治判断」を強く求めた。

松井市長は「命あるうちに早急に援護が受けう、被爆者援護の立場に立った決断を優先していただきたい」などと要望した。


【出典】2021年7月9日配信「毎日新聞」


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<「黒い雨」線引き再び焦点 14日広島高裁判決、国の検討会に影響も>


■一審は原告勝訴

原爆投下後に降った放射性物質を含む「黒い雨」に国の援護対象区域外で遭い、健康被害が生じたと訴える広島県内の男女84人(うち14人は死亡)が被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟の控訴審判決が(7月)14日、広島高裁で言い渡される。

昨年7月の一審広島地裁判決は原告全員を被爆者と認定。

今回も区域の線引きの妥当性が最大の焦点となる。高裁が黒い雨を浴びた人の被爆者認定の新たな考え方を示す可能性があり、判決は今後の被爆者援護行政や区域の再検証に向けた国の検討会に影響を与えそうだ。


【出典】2021年7月13日配信「中国新聞社」


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<広島知事「県としては上告したくない」 「黒い雨」訴訟で厚労省に上告断念訴え>

原爆投下直後に降ったいわゆる「黒い雨」を浴びた住民が国と「援護対象区域」などをめぐり争っている裁判の控訴審で、広島高裁は(7月)14日、被爆者と認めた一審を支持し、住民側全面勝訴の判決を言い渡しました。

この裁判は、原爆投下直後に降った放射性物質などを含む「黒い雨」を浴びたとして、広島県内に住む男女84人が被爆者健康手帳の交付を求めているものです。
一審の広島地裁は去年7月、国が定めた援護対象区域の妥当性を否定し、それよりも広い範囲で「黒い雨」が降ったと認定。原告84人全員を被爆者と認める判決を言い渡していました。

広島県や広島市は控訴を断念するよう国に求めていましたが、国は、「十分な科学的知見に基づいていない」などとする一方で、援護区域については拡大を視野に入れた再検証を行う考えを示し、県と広島市と共に控訴していました。


【出典】2021年7月14日配信「テレビ新広島」


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<画期的だった広島高裁「黒い雨」訴訟判決が示す意味>

原爆投下後に降った放射性物質を含む「黒い雨」を国の定めた援護対象区域外で浴び、健康被害が生じたとして84人(うち14人は死亡)が被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟で、広島高裁は(7月)14日、原告全員を被爆者と認定した一審判決を支持し、広島県や広島市、国側の控訴を棄却、手帳の交付を命じる判決を言い渡した。

判決は、「黒い雨」の降雨範囲について、国が定めた区域より広範囲に降ったと認められるとし、健康被害の評価に際しては、降雨の状況やその後の生活状況、症状などをふまえ、内部被曝の影響を重視したうえで、国の定めた区域内かどうかで健康状態に差があるとの調査報告は存在しないことから、援護に差をつけるのは合理性がないと判断した。

今回の判決は、①国の線引きに拘泥せず、内部被曝による健康被害の影響を認めたこと②被爆者の認定要件について、被爆者援護法の趣旨目的を重視した、点で画期的だった。

①は、もともと国の定めた区域が、聞き取り調査をもとに推定したにすぎないものであったことから、判決はこれを絶対視せず、原告の個別状況を認定し、降雨域にいたと結論付けたのだ。また、「黒い雨」に放射性物質が含まれていた可能性があったことから、雨を浴びた人はもちろん、浴びていなくても、空気中の放射性物質を吸引したり、放射性物質を含む水を飲んだり、付着した野菜を摂取することで、内部被曝による健康被害を受ける可能性があったとした。

②については、被爆者援護法が、原爆被害が他の戦争被害と異なるという見地から政策的に制定されたもので、科学的知見のみによって立つものでなかったとし、被爆者に該当するか否かの判断にあたっては、特定の放射線の曝露態様の下にあったこと、その態様が原爆の放射能による健康被害が生ずることを否定できないものであったことを立証することで足りるとした。

国はこれまで、国が主張するところの「科学的根拠」にこだわり、区域外の者を被爆者としてこなかった。また、内部被曝のリスクも軽視する傾向にあった。今回の判決は、こうした国の姿勢を批判し、被害実態に即して、被爆者として扱うことを求めるものだ。

とくに、被爆者援護法の趣旨目的に照らして、「放射能による健康被害が生ずることを否定できないものであったことを立証することで足りる」とした点は、一審判決よりも前進した判断で、被爆者援護行政に根本的な見直しを迫るものといえるだろう。

また、今回の判決は、原発事故後に提起された被害救済訴訟にも影響を及ぼす可能性がある。事故後、国は、賠償対象者の範囲や賠償水準を定めた指針を策定したものの、避難指示の有無や空間線量などに基づき急ぎ策定したことから、被害実態に即してないとの批判もあり、各地で訴訟となっているからだ。こうした訴訟においても、国の定めた線引きではなく、実態に即した判断が求められるうえ、国が主張するところの「科学的根拠」の妥当性も厳しく吟味される必要がある。

一方、原発事故の被害救済の場合、被爆者援護法のような救済法が現状はなく、「否定できない」ことを立証しただけでは、被害立証としては十分ではない。救済法の有無が、立証の場面で差異をもたらしうる例として、今回の判決を見ることもできるだろう。原発事故の被害救済訴訟は最高裁に係属しており、判決確定後には、将来生ずるかもしれない被害のためにも、救済法の制定が課題となる。

今回の判決を受けて、手帳の交付などの事務を国から委託されている市や県は、上告を断念するよう国に求めている。国は上告することなく、直ちに幅広く救済するよう舵を切るべきだ。


■【馬奈木厳太郎(まなぎ・いずたろう)】1975年、福岡県生まれ。大学専任講師(憲法学)を経て現職。福島原発事故の被害救済訴訟などに携わる。


【出典】2021年7月18日配信「日刊ゲンダイ」


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