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空自イラク派遣に違憲判断--「そんなの関係ねぇ」? (2)

2008年06月13日 | 国際・政治
昨日に引き続き、早稲田大学法学学術院教授・水島朝穂氏のホームページ「平和憲法のメッセージ」の「直言」(2008年4月21日 付け)から、同氏の指摘を何回かに渡ってそのまま掲載させていただき、紹介させていただきます。


第1の論点については、イラク特措法が制定されたときからの曖昧な部分を、判決は鋭く衝いたといえる。すなわち「戦闘地域」と「非戦闘地域」の区別という、いわば「砂上の楼閣」の上に、自衛隊派遣は行われてきた。政府は、「戦闘地域」を、「国や国に準ずる組織による国際性、計画性、組織性、継続性のある攻撃が続いている地域」と限定的に定義して、武装グループが、土着的で、場当たり的で、非組織的で、単発的な攻撃を行っているところは「戦闘地域」ではないという結論を導く伏線にしている。また政府は、バグダッド全体が「戦闘地域」か「非戦闘地域」かの判断をしないままに、自衛隊が活動するバグダッド空港に限って、これを「非戦闘地域」であるとしてきた。だが、これには相当な無理がある。小泉首相(当時)は、2003年7月23日の党首討論で、「どこが非戦闘地域で、どこが戦闘地域か、私に聞かれても分かるわけがない」と叫んだことは記憶に新しい。「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域なんです」という小泉首相の発言(2004年11月10日党首討論)につながっていく。これは、「定義の定義」の矛盾とほころびを告白したものといえる。
この点、判決は、空港を含むバグダッド全体が「戦闘地域」に該当すると判断し、そこにおける空自の活動を、違法な「戦闘地域」での活動と認定したわけである。これはきわめて常識的な判断であり、自然な解釈といえる。

また、判決は、多国籍軍の武装兵員を戦闘地域に空輸する行為を、「武力行使と一体化した行動」であり、かつ日本国自身の武力行使と同等評価が可能な行為と認定した。これもきわめて理にかなった判断である。これまで政府は、武力行使ないし武力行使の一体化は、明確かつ直接的な武力行使(爆撃、砲撃)や、戦闘機を発進準備中の空母、ミサイルを発射しようとする艦艇への給油にあるといった形に絞り込み、それ以外は可能であるという「最初に結論ありき」の解釈を積み重ねてきた。しかし、テロ特措法による給油活動とは異なり、武装兵員の輸送というのは、武力行使との密着度は格段に高い。自らは射撃しないが、射撃する兵員を輸送している飛行機が飛んでくれば、当然、武装勢力の側からすればこの飛行機は攻撃目標となる。自ら武力行使を行ったと同等評価されうる部分が、今回の判決で、憲法9条1項違反とされたわけである。もっとも、判決はきわめて慎重に、自衛隊の活動全体が違憲とはしなかった点を強調して、『読売新聞』4月18日付は、あえて「イラク空自『一部違憲』」という一面トップ見出しをつけた。

さらに、多国籍軍の活動が国連決議を受けた活動であることなどを指摘して、判決の誤りを説く社説もある(『読売』『産経』)。だが、イラク戦争そのものが侵略戦争であり、その後の状況から、多国籍軍を派遣している諸国でも撤退の動きがあり、またイラク戦争を始めた米国内でさえも、この戦争が誤りであったという意見が多数になりつつあるときに、日本政府や有力メディアは、ブッシュ政権の間違った政策を弁護し続けているのはいかにも奇異である。今回の判決は、まさにイラク戦争をめぐる世界の常識にかなったものであり、かつ日本国憲法の根本原理に立脚して、その問題性を率直に指摘したものであって、「変な判決」でも、「非常識」でもない。
(つづく)


【出典】早稲田大学法学学術院教授・水島朝穂氏ホームページ「平和憲法のメッセージ」の「直言」2008年4月21日 付けより  http://www.asaho.com/jpn/index.html

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