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空自イラク派遣に違憲判断--「そんなの関係ねぇ」? (1)

2008年06月12日 | 国際・政治
とある冊子で、早稲田大学法学学術院教授・水島朝穂氏の次のコメントを見つけました。大変、示唆に富んだ内容なので、同氏のホームページ「平和憲法のメッセージ」の「直言」(2008年4月21日 付け)から、そのコメントを今後何回かに渡ってそのまま掲載して紹介させていただきます。


耳を疑った。「そんなの関係ねぇ」。最近テレビはあまりみないので、お笑い芸人の名前を知らない。パンツ一枚でこう叫ぶ男性芸人。なぜ人気があるのか疑問に思っていたのだが、その言葉を、何と航空自衛隊トップの田母神俊雄航空幕僚長が使ったから驚いた。「私が〔隊員の〕心境を代弁すれば『そんなの関係ねぇ』という状況だ」と。空幕長が憮然としたのは、イラクにおける空自の輸送活動を憲法違反とする判決が出たからである。

4月17日(木)午後。名古屋高等裁判所民事第3部(青山邦夫裁判長)は、自衛隊イラク派遣訴訟において、違憲確認請求や派遣差し止めの訴えはいずれも不適法であり、損害賠償についても請求を認容するだけの被侵害利益は生じていないなどとして、被控訴人(市民グループなど)の控訴を棄却した。この結論は、これまでの多くの自衛隊海外派遣関連訴訟や、全国11の裁判所で行われている自衛隊イラク派遣差し止め訴訟のなかで出される判決のパターンとおおむね共通している。だが、今回の場合、結論を導く理由のなかで、相当踏み込んだ憲法判断が行われた点が特筆される。論点は大きく二つある。自衛隊イラク派遣の違憲性と、平和的生存権の具体的権利性である。

第1の論点について。判決は、「海外派遣」と「海外派兵」の区別論や、「武力行使の一体化」論など、これまでの政府解釈を丁寧に追いながら、イラク特措法に基づく対応措置が、武力による威嚇・行使にあたるものであってはならないこと(2条2項)、当該措置は、現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷又は物を破壊する行為)が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる一定の地域(非戦闘地域)で実施されること(2条3項)を確認したうえで、これをイラクの具体的状況のなかで検証していく。
判決は、(1)〔イラクの状況が〕外国勢力である多国籍軍と「国に準ずる組織と認められる武装勢力」との「国際的な武力紛争」になっていること、(2)首都バグダッドはイラク特措法にいう「戦闘地域」に該当すること、(3)空自の空輸活動は、多国籍軍の戦闘行為の必要不可欠な軍事上の後方支援を行うもので、少なくとも武装兵員を戦闘地域であるバグダッドへ空輸する行為は、「他国による武力行使と一体化した行動」であること、(4)それは「自らも武力行使を行ったとの評価を受けざるを得ない行動である」こと、(5)空自の当該活動は、イラク特措法2条2項、3項に違反し、憲法9条1項に違反する活動を含むこと、を明らかにした。

第2の論点。平和的生存権については、(1)「すべての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利」であり、憲法の基本的精神や理念の表明にとどまるものではないこと、(2)それは、法規範性をもつ憲法前文と9条、13条を媒介にして第3章の個別的人権を通じて憲法上の法的な権利として認められるべきこと、(3)自由権的、社会権的、参政権的態様をもつ「複合的な権利」であり、かつ裁判所に対して保護・救済を求めることのできる具体的権利であること、(4)憲法9条に違反する戦争遂行などへの加担・協力を強制されるような場合には、裁判所に対して違憲行為の差し止めや損害賠償請求ができる具体的権利性があること、である。
(つづく)


【出典】早稲田大学法学学術院教授・水島朝穂氏ホームページ「平和憲法のメッセージ」の「直言」2008年4月21日 付けより  http://www.asaho.com/jpn/index.html

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