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空自イラク派遣に違憲判断--「そんなの関係ねぇ」? (6)

2008年06月17日 | 国際・政治
昨日に引き続き、早稲田大学法学学術院教授・水島朝穂氏のホームページ「平和憲法のメッセージ」の「直言」(2008年4月21日 付け)から、最後に同氏が『朝日新聞』2008年4月18日付オピニオン面「私の視点」に寄せたコメントを掲載させていただきます。


<イラク判決 政府の法解釈もとに「違憲」>
水島朝穂(早稲田大学法学学術院教授)

イラクでの航空自衛隊の活動に対して、名古屋高裁が違憲だとする判断を出した。これは極めて重要な判決だ。
自衛隊の海外派遣をめぐっては、湾岸戦争後の掃海艇派遣、PKO、テロ特措法に基づく派遣に対して、いくつもの違憲訴訟が起こされてきた。いずれも原告敗訴で、今回も結論は同じだが、理由部分で初めて違憲だとする判断が示された。それだけ今のイラクの空自の活動は違憲性が高いということを意味している。判決には無理な解釈もないし、突飛な理屈もない。極めて常識的な判断だ。
これまで政府は、自衛隊の活動は武力行使と一体化しなければ違憲ではない、と国会で答弁してきた。これに対して判決は、空自が輸送活動を行うバグダッドは「戦闘地域」であるとしたうえで、空自が多国籍軍の武装兵員を戦闘地域に輸送する行為は武力行使と一体化した行為だと認定した。
現代戦においては、輸送などの補給行為も戦闘行為の重要な要素であり、空自の活動は武力行使に当たる。輸送だから、後方や兵站だから、武力行使ではないということにはならない。これは軍事の常識だ。
判決は政府が積み重ねてきた解釈に沿ったもので、むしろ政府見解を丁寧にフォローしていることに驚かされる。
判決は、イラク特措法が合憲であるとしても、活動地域を非戦闘地域に限定した同法に違反する、と明快に指摘した。どこが戦闘地域か不明なままで自衛隊の活動が続いてきたが、当時の小泉首相以来の政府のあいまいな態度に対して、裁判所が厳しい判断を示したということだ。
戦闘地域や武力行使かどうかを認定するに当たって、ここまで裁判所が踏み込むことはこれまでなかった。そうせざるを得ないほど違憲性が高いと判断したのだ。
さらに注目すべきは、判決が平和的生存権について従来より踏み込んでいることだ。〔平和的生存権は〕1973年の長沼ナイキ基地訴訟札幌地裁判決で、初めて憲法上の権利として認められた。今回の判決は、その後の学説の展開を踏まえ、裁判所に対し保護と救済を求めることのできる具体的な権利であると明言している。
たとえば、国から戦争遂行への加担や協力を強制された場合、差し止め請求や損害賠償請求ができる場合があるとした。ここまで踏み込んだ判決はこれまでなかった。
原告らの請求を棄却はしているが、その否定の仕方は異例ともいえる丁寧さが感じられる。理由部分で違憲判断を示したのは、憲法問題が問われた以上、それに誠実にこたえ、ぎりぎりの職責を果たしたと言える。
これは実質、原告側勝訴の判決だ。それだけ、イラク戦争への協力をはじめとした昨今の流れに対して、裁判官の中にも憲法の観点からの危機感が強いことの現れではないだろうか。

(『朝日新聞』2008年4月18日付オピニオン面「私の視点」掲載)


【出典】早稲田大学法学学術院教授・水島朝穂氏ホームページ「平和憲法のメッセージ」の「直言」2008年4月21日 付けより  http://www.asaho.com/jpn/index.html

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