tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2023年春闘に向けて:2 政労使が本来の役割を見失った?

2022年09月30日 19時55分35秒 | 労働問題
日本は、世界に先駆けて労使の関係は信頼関係、労使は社会の安定帯、政労使三者は対等、三者のコミュニケーションが経済・社会の安定と発展のカギといった理念の下に行動してきました。

こうして世界に冠たる「成長と分配の好循環」「一億総中流」と言われる経済社会を創り上げてきた日本が、20 年もの円高不況に苦しんだ結果だったのでしょうか、為替レートが正常化した2015年以降も、成長経済に戻れなくなってしまっているのです。

この謎に迫っていきますと、その原因は、その後の政労使三者の行動の在り方にあることが見えてくるのではないでしょうか。
これに関しては、日本が円高不況に苦しんだ20年という期間、賃金決定で見れば「春闘の終焉」が言われて20年という」長さが大きく関わっていたようです。

はっきり言って、「円レート正常化」「日本経済再活性化」の可能性が実現した時の政労使のリーダーたちは、殆ど、円高不況の中でのた打ち回った経験しか持たないという事ではなかったのではないでしょうか。

円レ-トは正常化されましたが、正常時の日本的労使関係の経験も、政労使三者の協力の経験もなく、一体何から手を付けたらいいのか見当がつかないというのが当時の現実ではなかったかと思います。

このブログでは、まず長期不況で歪んだ雇用構造の復元からと考え、円安の差益を使って非正規雇用の正規化を指摘しましたが、現実の経営の場では非正規は増え続けました。

そんなこんなで今日まで、色々な宿題が残されています。そこでその状況の点検です。

先ずは、政労使の逆順で、「使用者」サイドから見ていってみましょう。

「春闘の終焉」で産労懇も1990年代には自然消滅したようですが、産労懇に代表を出していた日経連は2002年、経団連と統合しました。
結局経団連は「経済団体」で「経営者団体」つまり労働組合の相手が本業ではありませんから、連合との関係は疎遠になってしまったようです。連合も、結果的に経団連と親交を持つという訳にはいかない様です。春闘対応の出版物「経営労働委員会報告」も大変分厚く立派になっていますが、労働問題全般の解説書のようになり、最後に春闘への取り組みが記載されるという定期出版物になって日経連時代の春闘の賃金決定のために必要なことだけに集中したといった形ではなくなっています。

日経連の初代会長桜田武のような人がいれば、官製春闘にはならなかっただろうとか、日経連のOBが「今、日経連があれば、非正規の正規化を言っていただろう」などという話がありますが、労使の接触の希薄化は矢張り問題でしょう。

一方、連合については、嘗てからの賃金決定論を忠実に守って来た事が特徴的なように思われます。
長期不況の中では春闘の際の連合白書の基本姿勢は「一年先輩の賃金の軌跡を追う」といった形での、定期昇給維持、賃下げは認められないというのが基本線でした。

2013年為替レートが円安に転換してからベースアップ1%、2%といった程度の要求が出て来て、実質的に賃上げ要求が始まったと記憶します。
然し、日本経済は2年間で$1=80円から120円への大幅円安にも拘らず、それが日本経済全体に浸透せず、経済の回復は遅々としていたところから春闘要求はベア2%プラス定昇といったモデストなものが中心でした。

政府の賃上げ目標がインフレ2%、賃上げ3%以上といったものであったことと比べれば、労働組合としては大変やりにくかったのではないかと思うところです。

連合としては、「働き方改革」の裁量労働の拡大問題で、政府の統計の誤用、経団連との意見の違いなどのごたごたに振り回されたこともあり、賃上げでの政府との調整をしようにも、コミュニケーションのルートを見つけることすら至難だったのではないでしょうか。。

こうして至る所に政労使三者のコミュニケーションの悪さが出て来るのですが、次回、政府の問題を取り上げてみましょう。

2023年春闘に向けて:1、官製春闘では解決しない

2022年09月29日 17時25分40秒 | 労働問題
2023年春闘に向けて:1、官製春闘では解決しない
歴史から学ぶという事は大事なことで、このブログでも30年不況の原因、為替レートの恐ろしさ(変動相場制の恐ろしさ)、日本銀行の失敗と成功、為替レートの正常化と経済政策などと順次積み上げてきますと色々なことに気づいてきます。

出来ればこの2~3回で、そのあたりから出て来る「来春闘にかけての課題」を引き出していってみたいと思います。

先ず、前提は、今日の世界経済システムの中で起きるインフレ、デフレ、スタグフレーションと、政府、労使、一般国民のそれぞれの行動との関係です。

先ず、1970~80年代の石油危機の時の状況と、今日の原油価格高騰によるインフレ急伸の状況との共通点と政策の相違点を見てみましょう。

国際商品である原油の価格上昇は、消費国から産油国への(値上げによる)富の移転を意味します。これは世界共通で、消費国では打つ手はありません。当然国内では輸入物価の上昇(輸入インフレ)が起きます。
 
このインフレをカバーする賃金上昇があれば、輸入インフレは国内インフレに転嫁されます。この状況は今の欧米諸国で顕著です。(10%インフレの状態です)
石油危機の時は、これを放置する期間が長く賃金・物価は上がって、経済成長は止まり、失業率は上昇というスタグフレーションを招きました。

今日の状況はインフレ昂進は同じですが、アメリカのFRBが先鞭をつけ、早期に金融を引き締め国民(含む労使)に「多少経済にマイナスになってもスタグフレーション回避のため」と強い信号を発し、政策金利の大幅引き上げで警告するという構図でしょう。

その中で日本だけが、第1次石油危機の教訓から労使・国民が素早く学び、スタグフレーションの悲惨な経験をせずに済ませています。
欧米の強烈な金利引上げが、労使・国民の理解を得て成功することを願う所です。

日本は、円安移行後も輸入価格上昇の国内価格への転嫁を極力抑え、賃上げも低成長を前提にインフレ抑制にばかり重点を置くという事で、今の消費者物価の上昇は、過去10年来の原材料コストアップを漸くカバーする程度に留まっています。(8月現在3%)

この辺りが、1913~14年日銀の政策変更(異次元金融緩和)で円レートは正常化したのにかかわらず、円高時代と同じような賃金物価政策がとられてきたために、長い円高による日本経済の歪みが残ったままになってしまったという事の大きな原因でしょう。

日銀が、円レートを正常に戻したというのは大きな功績でした。しかし、それを日本経済再活性化の好機と捉え、政労使が協力して取るべき挽回策を話し合うという雰囲気は残念ながらありませんでした。

原因を少し詳しく見ていけば次のようなものが出て来るように思います。
先ず、労使は春闘の再開をよしとし、主要企業では春闘への取り組みを再開しました。しかし労使ともに初めは円高に戻る危険性を危惧し、動きはかなり慎重でした

円安に狙いを定めていた政府は、アベノミクスで「決める政治」を標榜、賃金決定でも主導権を取り賃上げを奨励、これが3年続いた2015年には「官製春闘」という言葉が定着しました。

結果、政労使三者のコミュニケーションは完全に希薄化し、三者はそれぞれに、企業レベルの交渉に集中、「政労使共通の理念」のない、格差社会化を進めるような春闘になっていったようです。
そのあたりの現実を、順次、出来るだけマスコミ情報などを思い起こし、検討してみたいと思います。

「中流危機を越えて」雑感:労使関係と経済2

2022年09月28日 15時03分41秒 | 労働問題
「中流危機を越えて」雑感:労使関係と経済2
30年に亘る長いデフレ不況に苦しんだ日本経済でしたが、2013~14年の日銀の政策転換による異次元金融緩和で$1=120円に回復、これで日本経済は回復と多くの人は見ていました。

しかし結果は意外で、前回の最後の部分で述べましたように、円レートが正常に戻っても日本経済は成長力を取り戻せなかったのです。

この鍵を標記NHKスペシャルの取り上げた「ワッセナー合意」と標記NHKスペシャルの学者と労使のパネリストの発言の中に見ることが出来ます。

日本について見ますと、ワッセナー合意に先立つこと7年1973年に始まった石油危機によるインフレを1975年の春闘からの「労使の合理的対応」で克服しています。結果、日本は欧米先進国が苦しんだスタグフレーションにはなりませんでした。

欧米先進国は、その後スタグフレーション(当時は先進国病と言われた)に苦しみ、米、英、仏などでは政権交代も巻き込んで、先進国病からの脱出は1980年代に持ち越されその中葉までかかっています。
その中でも、オランダの対応は早い方で、しかも政労使合意という形、政権の力ずくでない方法で成功して注目されたのです。

この辺りから見えてくるものは何でしょうか。日本は世界に先駆けてスタグフレーションを経験することも無く「労使の自主的合意で解決し、エズラ・ボーゲルをして『ジャパンアズナンバーワン』と書かしめました。

オランダのワッセナー合意は政労使三者が先進国病の原因に気づき、合理的な賃金決定についてについての合理性の共有の上に立つ合意「ワッセナー合意」に到達その名を残したという事でしょう。

こうして見てきますと、安定した経済成長実現の重要なカギの一つは、インフレ、雇用に直接影響するマクロ(国)レベルの「賃金決定」在り方にある事が見えてきます。

賃金決定は労使の専権事項というのは誰でも知っています。そして大事なことは、労使が、経済の中での賃金決定の重要な役割を認識し、賃金決定が経済合理性に則ったものかどうかという共通認識を持つことのようです。

ヨーロッパでもインフレ嫌い、失業率も低いドイツでは労使の協調行動、賃金決定の生産性原理という考え方があります。
日本では、第一次石油危機克服の際、経営側は「労働問題は雇用が第一義」賃金決定については経営側は「生産性基準原理」、労働側は「経済整合性理論」を前提に春闘の論戦を展開しています。

思想的にドイツに近いオランダが「政労使合意」で問題(先進国病)の解決に取り組んだのも,自然の流れかもしれません。

という事で、話はNHK の番組に戻りますが、出席のパネリストの中で京都大学教授の諸富さんと連合会長代行の松浦さんは、特に熱心に、「政労使三者の話し合い」の徹底を指摘していました。
特に、連合の会長代行が、強くそうした発言をするという事は、いかに政労使三者のコミュニケーションが欠如しているかを物語るものでしょう。

確かにアベノミクス以来、総理大臣は、賃金決定も政府が主導するものと勘違いしているようです。
具体的にどう間違ってきたかはこのブログでは随所に指摘していますが、勘違いの基本は、基本はこれも繰り返しになりますが、聖徳太子の17条の憲法の第17条「夫れ事は独りにて断ずべからず」という事のように思われます。


「中流危機を越えて」雑感:労使関係と経済1

2022年09月27日 14時38分45秒 | 労働問題
前回は、標記の「NHKスペシャル」の主題の1つであった、オランダの政府と労使が1982年に取り結んだ1970からの欧米を悩ませたスタグフレーション脱出のための3者合意、いわゆる「ワッセナー合意」と、いま日本政府が推進しようとしている「働きから改革」の関連を中心に取り上げました。

もともとワッセナー合意の主目的は、無理な賃金引上げをやめインフレを止めて失業率を減らしスタグフレーション脱却するという事で、イギリスではサッチャー改革(4回にわたる労働関係法制の改定で労組の力を抑えた)フランスではミッテランが賃金凍結令をだすといった荒業を必要としたのでした。

ところがオランダはそうした荒業ではなく「ワークシェアリング」を中心に政労使3者が話し合って問題を解決したというので世界中で評判になったという事です。

ワークシェアリングというと、仕事のある人の労働時間を失業している人に分けて、失業を減らそうという事と言われますが、「本当の意味は労働時間にくっついている賃金も、労働時間と同じように分ける仕組み」のウェイジシェアリングと表裏一体なのです。
 
その時に賃金を減らされるのは困ると言えば、ワークシェアリングは成り立ちません。賃金の付いていない労働時間だけもらって喜ぶ人はいません。

オランダの政労使はそこを賢く合理的に考えて賃金が下がりインフレは収まり失業率は改善してスタグフレーションから脱出できたのです。

一部の人に所得が偏り失業者が出ても賃上げ要求という労使関係から、今払える賃金と仕事(労働時間)をみんなで分け合って、失業率をなくす、つまり所得がより均等に配分され、中流層が多くなるという事で経済が活性化したのです。

オランダの契約労働時間自由、同一労働・同一賃金の原則の原点はそこにあるのです。

ところで今のオランダを見ますと、消費者物価上昇率は2月までは6%台6月までは8%台が8月は12%、エネルギーと食品を除くコア部分は6%という事で、日本とは違い、アメリカEUタイプになっています。

コア指数は自家製インフレの色彩の強い部分ですが、EUの影響は強いようです。
オランダ中央銀行はECBとともに早期の大幅な政策金利引き上げを言っているようです。
(賃金についての情報は検索中です)

今回の混乱についてのオランダ政労使の取り組みの情報は特にありませんが、ワッセナー合意の示す所は、所得を広くより均質に分布するように国民全体が合意すれば経済は安定的に発展するという事で、これは大変大事なことでしょう。

そこで「NHKスペシャル」のテーマに戻りますが、中流の多くが下流に移行し、中流層がやせ細って、今や子供の6人に1人は貧困家庭の子と言われるようになった日本社会の原因を考えてみましょう。

さきに述べましたように、2013~14年の2発の黒田バズーカで日本は円高不況を脱したはずでした。
アベノミクスは「1億総活躍」のスローガンを打ち上げ、これから徐々に「ジャパンアズナンバーワン」の時代に戻るだろうと予測した人も多かったでしょう。

しかし結果はさんざんなものでした、非正規従業員は増え続け、経済成長は殆どなく、結果、賃金は横ばい、国民は将来不安と生活防衛で消費を削って貯蓄に励む。しかしゼロ金利で利息は付かない。政府の奨励に従って株式投資を試みても、成長しない国の株価は上がらない、儲けるのは資本規模の大きい人(金持ち)だけ、・・・。

こうした政治を、規則を曲げてまで長くやった人の「国葬」が今日行われているのです。
一体何を間違えたのでしょうか?
長くなりますので、次回、番組の中から、答えを探します。

「中流危機を越えて」雑感:雇用問題

2022年09月26日 21時42分57秒 | 労働問題
先日の日曜夜9時からの「“中流危機を越えて”NHKスペシャル」はいろいろ考えさせられる内容を提供してくれたようです。

今回は第2回で、第1回から所得分布が大幅に下方にシフトしていることをグラフで示し何とかこれを克服して、中流層を上方に広げ、幅をずっと広げて、(このブログに言わせれば)昔やって出来ていたように(1億総中流)やり直していこうという意欲的なものでした。

そのなかで刺激的だったのは1982年の政労使3社のワッセナー合意以降のオランダの成功を指摘し、ジョブ型賃金・同一労働同一賃金の原則で1人当たりGDPは日本の1.4倍になっているという数字でした。

実は振り返って見ますと1990年代前半あたりまでは、日本の方がオランダより30-40%ほど高かったのですが、日本はそれから30年間もマイナス・ゼロ成長で、現在に至っているのです。一人当たりGDPランキングも世界5位以内から現在30位近くに落ちているのです。

国の経済の浮沈というのはありますが、真面目に一生懸命働いているつもりの日本がなぜそんな事になったのかの説明は「プラザ合意」と「リーマンショック」による「過度の円高」でほとんど説明できます。

ただしこれは円レートが正常化した2013~14年までの話で、アベノミクスに入ってからの低成長の原因は別でしょう。

そこでこのワッセナー合意の意味が注目されるのです。ただし、注目されるのは、実は雇用制度ではありませんが、一応、雇用・労働時間題にも触れておきます。

番組の説明では一日2時間働く人も4時間働く人も8時間働く人も、賃金・社会保障などの計算は全部時間当たりで同じ、とみんな楽しそうでした。

勿論同一労働同一賃金ですから、同じ仕事・同じ労働時間で続けていれば、賃金はいつまでも同じですから、国の職業訓練機関へ通って、例えばデジタル技術を習得、新しい仕事について8時間働いて収入が大幅に増える人もいるわけです。

解り易く言えば、従業員は全部日本でいえば非正規で、正規従業員はいないのです。従業員は仕事(ジョブ)に就き、自分の(夫婦の)生活費に合わせて、労働時間を選んで会社と契約してその時間働くという構図です。資格能力があれば管理職に就けますが、管理職だから8時間働く必要はない必ずしもないのです。

ただし企業がそういう仕事(ジョブ)の採用はありませんと言えば就職はできません。資格・能力を身に着けてからどうぞという事です。会社は職業訓練の場ではないのです。

この点は日本と欧米が基本的に違うところで、日本では、会社が給料を払いながら社会人としての生き方の訓練からローテーションでいろいろな職業訓練までやってくれます。
結果,日本の若年層失業率は世界で多分最低という定評になっているのです。

「働き方改革」の目指す方向は、基本的にはオランダ・モデルです。「ジョブ型賃金」で年功方式はやめる。同一労働・同一賃金で最終的には正規従業員は要らない。そのためには新卒一括採用はやめていくなどなど。

番組では公労使の代表がコメントをしてえいましたが、オランダ方式になれば高生産性部門に人が集まり高成長になるというより、企業内で再訓練(リ・スキリング)をやっているという意見や解説が中心だったようです。

コメントがはっきり出たのは、賃金をめぐる政労使の関係でした、これは中流層拡大という意味からは最も重要な問題ですが、次回は、この問題についてコメンテーターの意見を含め取り上げてみたいと思います。

国内政策を外国で言い出すのは何故でしょう?

2022年09月24日 17時13分55秒 | 経済
先日はNYの国連総会で、安保理改革の推進を力説した岸田総理に絶大な賛意を表しましたが、今回のNYの証券取引所での演説は、国会でならわかりますが、些か場所柄の認識を失したものではないかと思うものでした。

嘗て、ロンドンのシティーで「岸田に投資を」と呼びかけて失笑を買ったようですが、本人は一生懸命だったのでしょう。(その感覚のずれが少し怖いですね)

外国から投資を呼び込むことが「新しい資本主義」かどうか知りませんが、今回も「今後日本経済は力強く成長を続けます」だから投資をと呼びかけています。

一国の総理大臣です、しかもかつて世界一の高度経済成長を実現した日本だからと思ったのでしょうか。しかし、今は30年来経済成長はほとんど無縁で、経済関係のランキングは落ちるばかりの日本です。

そんな国になり下がっている日本ですが、総理が来て、「今後は力強く成長します」と言っても俄には信じないでしょうし、岸田総理自身、その自信はないのではないでしょうか。

事の順序から言えば、国会でこの演説をやり、その結果日本経済が具体的に経済成長を始め、その成果を持って海外で、日本への投資を呼びかけるというのがまともでしょう。

しかも、成長をもたらす原動力として挙げているのは、
・NISAの恒久化で家計の貯蓄の投資に呼び込む
・年功賃金を見直しジョブ型賃金への移行を促す
・新技術習得を充実、労働移動を促進、高生産性産業に人を集める
・海外からの観光客誘致を積極化する
・その他カーボンプラ一シング、GX、起業支援などなど
       
これらはすでに多くの国々で検討・実施され、日本でも長年に亘り論じられ、政府の肝いりで具体策の検討なども行われて来ていることで、これで日本経済が成長力を取り戻すとは、日本に住んでいる我々には、とても考えられない事のようです。

大体、なぜ日本人は金利も付かない銀行預金をするのか解っていないからNISAが最初に出て来るのでしょうし、働き方改革の心臓部の「ジョブ型賃金」は非正規従業員では当たり前の賃金制度、そうなりたくないから新卒一括採用をみんな望んでいるのです。

キャリア形成を中断し、外部でデジタル技術を習得して高賃金企業への転職を狙うよりも、、今いる企業の中で、給料をもらいながら、新しいデジタル技術の勉強をして、企業ともに新しい技術の世界に生まれ変わる努力は、発展する企業では日常茶飯事です。

こうした欧米企業には少ない「企業自体が常に新しい分野の企業に脱皮する」といった形は、企業内再訓練、企業の新規分野進出、高生産性企業への脱皮を「雇用の継続と安定」の中で実現するのが日本的経営の特徴であることをご存じのはずと思うのですが。なぜ労働移動がそんなに大事なのでしょうか。

唯一、インバウンドの積極的拡大策は、ほっておいても、コロナが終息すればいやでも実現するでしょう。逆に政府が急ぎ過ぎれば、第8波で頓挫しかねません。

外国では誇大宣伝をしても、聴衆は自主的に判断してくれますが、国会でやれば言質を取られて後が大変という事で、国政の方針を先ず外国で行って既成事実にするのでしょうか。

こうした「日本経済はこれから力強く成長します」といった約束は、まず国会で、日本国民に真っ先に説明してほしいと日本人なら思うにではないでしょうか。

何やら奇妙な政府・日銀の為替介入

2022年09月23日 16時51分42秒 | 経済
昨日のブログで、アメリカではFRBが大刀を大上段に振り被る形で、3回目の0.75%の政策金利の大幅引き上げをやって、インフレ抑制の強い意志を国民に強引なまでに徹底する様相であることを、そこまでやるかという驚嘆の意識も含め書きました。

それと時を同じくして、日本では、日銀が政策決定会合を終えて、3%(消費者物価総合指数)のインフレに慌てる政府横に見ながら、あくまでクールに、日本の物価安定度を世界に誇示するがごとく異次元金融緩和の方針は維持します、当面金利引き上げなどは考える必要はありませんといったコメントで政策についての自信を示しました。

ここまでの展開を見て、ブログを書いてしまいましたが、それに続いて起きた政府の行動に本気で驚き、一体日本の金融政策はどうなっているのか訳が分からなくなりました。

金融政策は騙し合い。「発表までは極秘」とはよく言われますが、これは相手が目先の利益だけを考える国際投機資本だからでしょう。先読みされえしまえば、彼らのキャピタルゲイン獲得の餌食になるからだとは専門解説者の言うところです。

しかし日銀と財務省が、あんな形の打ち合わせをしたというのはちょっと考えられませんし、あそこまで演技をして。国際投機資本の裏をかかなくても、スイスの様な普通のやり方もありうるでしょう。

今は為替レートの調整の手段は金利政策によるという時代になっている現実でしょう。
黒田さん自身がやった2013,2014年の二回の黒田バズーカもその典型ですが、そんなことは百も承知の黒田さんが、敢えて政府と組んで為替介入をというのも、なかなか理解できないところです。

結果、政府は当然アメリカその他に「為替介入しましたが認めて頂きたいと思います」と言い訳が必要になります。
今回は了解が得られたようですが、多分「2匹目のドジョウはいないよ」という事でしょう。

付け加えますが、マスコミが「政府・日銀」が為替介入と必ず並べて書いていることも気になります足並みが揃っていると強調のし過ぎの感じです。

前回のブログでも政府・日銀の政策の摺合せの拙さも長年、気になっているところです。
プラザ合意の折はG5ですから政府日銀共に出席ですが、日銀はその後長く円高肯定論だったようですが、円高進行の真っ最中に総理だった宮沢さんは「宮沢回顧録」で「あの時は毎日大幅な円高で本当に困りました」と書いています。

黒田バズーカによる円安実現の時は、政府、日銀共に「2%インフレターゲット」でマイルドインフレを目指しましたが、安倍総理は自分が春闘の当事者だと勘違いして、折角の世界に冠たる春闘の機能を生かせず、円安を活用できませんでした。

今回も、政府と日銀が同床異夢ならば、鬼面人を驚かせた為替介入も次第に忘れられる運命でしょうか。
日本国民は、黙々として優れたことをやって来ています。もっと国民の知恵を掬い上げる政策があってもいいような気がします。

政策金利、日米あくまで対照的

2022年09月22日 15時45分46秒 | 経済
今日アメリカの中央銀行FRBは、6月、7月に続いて3回目の0.75%という「大幅な政策金利の引上げ」を発表しました。その直後。今度は日本銀行が「異次元金融緩和の継続」を発表しました。

アメリカは意地でも徹底した金融引き締めをやるという姿勢ですし、日本は、意地でも異次元金融緩和というゼロ・マイナス金利の金融緩和政策を続けようというのです。

考えてみれば、世界経済という環境問題はアメリカも日本も基本的は変わらないのですが、それなのにアメリカは、消費者物価の上昇が10%に達するという心配から、既に二回の大幅金利引き上げやり、消費者物価の上昇は8.3で止まっているところですが、それでもダメ押しという事でしょうか、まだインフレの火は消えていないというのでしょか、また大幅金利引き上げに踏み切ったのです。

日本はといいますと、原油やLNGの国際価格は世界共通で、アメリカは産油国、日本は 無資源国であるにかかわらず、しかも、国内では、最近消費者物価の値上がりが問題になっているのですが、その上昇率は3.0%で、それでも政府は「インフレ傾向だ」と心配しているのです。(日銀は全く心配していない?)

日米間の、この差は、はっきり言って、国内のビジネス慣習の違い、値上げできるチャンスがあれば値上げしよう、賃上げできるチャンスがあれば賃上げしようという競争型経済風土と、インフレは出来れば避けた方が生活が安定すると考える安定志向型社会風土の違いでしょう。

しかし、為替が固定相場制の世なら別として、国際投機資本が常にキャピタルゲインを狙っている変動相場制の現代の世界の事です。
簡単に先を読まれるような政策をとっていては、先を読まれて損ばかりする可能性が出てくるのではないでしょうか。

日銀が異次元緩和継続といった途端、国際投機資本は日銀の頑なな姿勢をよみとったのでしょう、円レートは、$1=¥145を越えました。その後も145円の直下に貼りついているようですが、円安の進行は日本経済内部の付加価値配分のアンバランスを助長し、その調整に政府・民間共に苦労します。

為替レートは、正にマーケット・テクニークの人為的な要素の大きい問題ですが、プラザ合意や黒田さん自身がやった黒田バズーカのように、経済実態に大きな影響を齎す可能性を孕むものです。

日本経済はプラザ合意で致命的な痛手を受け、二発の黒田バズーカでその挽回のチャンスを作りながら、その活用に殆ど失敗して、成長のないアベノミクスの8年余を過ごしました。

これからは、日本も、為替レートと実体経済の関係を十分に研究・理解し、為替レートの安定に努力するとともに、その変動に対しての合理的で適切な対応策を身につけることが益々大事になるのではないかと思っています。

岸田首相、国連総会で安保理改革について訴える

2022年09月21日 15時51分04秒 | 国際政治
国政の中ではこの所、信念不明確、内容不明瞭、言語不可解といった不安、不信の印象を受けてしまうようなことの多い岸田首相です。

ところが、今回の国連総会での一般討論演説には目を瞠るものがあったようです。
報道によりますと、岸田首相は、国連の安全保障理事会の常任理事国であるロシアのウクライナ侵攻問題をズバリ指摘し、これによって、国連のへの信頼が危機に陥っていると指摘したとのことです。

ロシアは国連安全保障理事会の常任理事国ですから当然、世界の安全に責任を持つ立場にあるわけですが、設立当初から、常任理事国5か国は拒否権を持っています。

という訳で、ロシアは世界の安全を保障する立場にありながら、隣国ウクライナに侵攻し、安全保障理事会が、侵攻すべきでないと決議しようとしても、ロシアが拒否権を使えば、その決議は成立しません。

安全保障理事会の常任理事国は第二次世界大戦の戦勝国5か国(米英仏露中)ですが、第二次世界大戦は日独伊という3つの軍事独裁国との戦いに勝った5か国のうち、ロシアと中国は、今や軍事独裁国になっていると言われています。

この二国が拒否権を持っている安全保障理事会常任理事会は今や、独裁国と戦ってしょうりをおさめた国5か国で構成する世界の安全のための組織ではありえないのです。

岸田首相の演説はこの事実を明確に指摘し、今や、世界から信用される組織ではなく、その主因は、国連の運営に絶対的な権限を持つ安全保障理事会の機能不全の現状を引き起こしているロシアの行動の誤りを明確に指摘したとのことです。

その上で、今こそ国連は国連憲章の精神に立ち帰り、力と英知を結集して改革を実施しなければならないと檄を飛ばし、国連改革への具体的着手を呼びかけています。

国連安全保障理事会は常任理事国5か国に加えて非常任理事国が10か国あります。合計15か国が安全保障理事会のメンバーで日本も入っています。
15か国が、多数決で決めても常任理事国一か国が拒否権を行使すれば何も纏まりません。

問題のカギは多分安保理常任理事国の拒否権でしょう。安全保障理事会が多数決で決まるようになれば、世界の安全は大幅に進むのではないでしょうか。

戦後日本は、国連加盟以来、国連中心主義を一貫して国是としてきたはずです。岸田首相が改めてそれを国連総会の場で確認したことは日本外交の一貫性を明確にしたことです。
発言のタイミングはベストでしょう。これからの日本の国連外交がこのレールに乗った力強いものであることを願うところです。

8月の消費者物価上昇3.0%、更なる上昇も?

2022年09月20日 18時10分00秒 | 経済
今朝、総務省から8月分の消費者物価指数が発表になりました、この所、毎月の変化を追っていますから、今回も確り追っていきたいと思います。

マスコミは一斉に「消費者物価の上昇2.8%」という見出しになっています。中身では、2.8%は「変動の大きい生鮮食品を除く総合で」と断って、本当の総合は3.0%上昇と書いてありますが、従来は「総合」の3.0%を当然見出しにしたのが。最近記者発表の仕方でしょうか、いくらかでも低い「除生鮮食品」の数字を中心に書くことが多くなりました。

いずれにしても10年ぶりの2.8%か、消費税増税がなければ30年ぶりの2.8%上昇かという恐るべき物価安定時代だったことは事実のようです。

アメリカもヨーロッパも最近は10%近いインフレですから日本の異常な安定が目立ちますが、余り異常な事は国際経済関係ではよくないという考え方は政府やマスコミにはないのでしょうか。

物価安定なら円高になるところですが、アメリカのインフレ抑止の高金利政策で円安というのも、いつかはまた円高に戻りそうで困ったものです。
消費者物価指数主要3指数の動き

                                   資料:総務省
         消費者物価主要3指数対前年同期比の推移

                                資料:上に同じ
グラフを見て頂くとお解りのように原指数の動きで見ても対前年同月上昇率で見ても、長い目で見れば「総合」と「生鮮食品を除く総合」は時にクロスしますがほぼ似た動きです。
この所、青い線が上になって来ているのは、生鮮食品も、一年中生鮮野菜が食べられる温室栽培や工場生産が増え、天候よりエネルギー価格に左右されるからでしょう。

これも農業の技術革新と統計の分類の問題で、またこれをどうするかとなると連続性の問題もあり総務省統計局は大変でしょう。

ところで、石油の値上がりとガソリンの価格の関係では、政府が元売りに補助金を出せば、ガソリンの価格は上がらずに政府の赤字が膨らむわけで、消費増税をした政府が真逆をやっているわけです。政府はいろいろやるようです。

一番上がらないのはエネルギー価格が上がった分の入っていない「生鮮食品とエネルギーを除く総合」のグラフを見ますと、この春ごろから、この薄緑の線が上昇確度を挙げて来ていることが解ります。

これは、今迄値上げすれば売れなくなるという危惧から一生懸命値上げを抑えてきた商品群で、一部に量目を減らすステルス値上げなどもあったようですが、昨今の値上げムードの中で一斉に値上げ宣言に踏み切っている加工食品や日用品といった日常生活物資の世界です。

これは日本の場合、積年の我慢にも限界が来たといった事情を含む問題のようですから、まだまだ続きそうです。

欧米主要国ではこの部分が安易な便乗的なものも含め年率5~6%にも達するようですが、日本人は値上げすると言ってもごく真面目な範囲という事でしょう。4月から値上げ宣言が続いていますがまだ年率で1.6%です

その意味では、FRBのパウエルさんと、日銀の黒田さんのお荷物は随分違うように思います。

そろそろエネルギー価格の問題も天井に近づいたのではないかと思われますが、だとすれば、これからは為替の変動が国際経済の混乱をもたらす可能性の方が大きくなるのかもしれません。

これまでも、これからも為替の異常な変動を避けることは、日本にとっても世界にとっても大事なことですから、主要国の中央銀行には、為替と実体経済の関係があまり歪まないような舵取りが必要だと思われるところです。

今日は敬老の日です

2022年09月19日 16時20分22秒 | 文化社会
老人が本当に敬われているかどうかはケースバイケースでしょうけれども、「敬老の日」が国民の祝祭日になっている国は世界でもあまりないようです。

私が高齢者だからという訳ではありませんが、高齢者を敬うという気持ちを人間として一般的に持つことは大変結構なことではないかと思います。

ネットで敬老の日のところを見ると大抵「孫がおじいさん、おばあさんに贈り物をしたり似顔絵をかいあげたりする」などというほお笑ましい事が書いてあります。

おじいさん、おばあさんにしてみれば、孫は無条件でかわいいと言われますようですから、まさにこの相思相愛の仲は極めて自然に、極めて成り立ちやすい物ではないでしょうか。

時に新聞の投書欄に出る戦時中の思いででも「あの時おじいさんが戦火の中を生き抜いてくれなければ、父も私もこの世にいなかったのだと考てしまいます」などという表現があったりしますが、考えてみれば、ご先祖様がいなければ「私」はいないのです。

「私」だけではなく、「私の大事な人」も、ご先祖様がいてからの存在です。人皆そうですから、人類社会には祖先崇拝があり、それは敬神崇祖となって、自然万物崇拝とともに日本の民間信仰の二本の柱になっているのでしょう。

そうした意味では、素直な人間の自然として、敬老という気持ちは誰しも持つのでしょう。もちろん、まさに現役世代でしゃにむに働いている人たちに比べれば、今はバリバリの現役は下りていますが、何らかの形で社会のために貢献している、子や孫のためにより良い社会をと考えている世代、「ご苦労さま」も含めて感謝の念を持つのは自然でしょう。

ところで、これが現在の「敬老の日」だとすれば、近い将来、人生100年時代になります。
その時日本人は。60歳、65歳で現役を降りるでしょうか。
最近の傾向を見ますと、働けるうちは今の仕事を続けたいという人が結構多く、70歳、75歳はまだ現役という人が多くなりそうな気配です。

今が一世代が働いて高齢者を支えるという時代であれば、これからは、一世代半近くが働いて高齢者(何歳からでしょう)を支えるという事になるのではないでしょうか。(年金はまた難題です。厚労省の文化的に合理的な知恵が問われますね)


「敬老の日」のプレゼントは、そうなると孫からではなく、ひ孫からという事になるのでしょうか、それとも今や現役の孫からも、もっと手厚いプレセントが来るのでしょうか。

コロナ終息の可能性が見えてくるか

2022年09月17日 19時52分55秒 | 新型コロナ
WHOのテドロス事務局長は、さる15日、コロナの終息の可能性について、触れたとのことです。

立場が立場ですから、我々と違って世界中のあらゆる研究機関や現場からの情報が入って来ているのでしょう。ですから、それなりの確度のある発言として聞いてもいいのではないかと思います。

これまでアルファ、ベータからオミクロンまで、オミクロンになってもBA2まで、何回もの変異を繰り返しそのたびに感染者の棒グラフの山は高くなってきていました。

そして、BA2だったでしょうか、大きな山を作ったいわゆる第7波が、今、次第に落ち着きつつあります。一時、BA.2.75ケンタウロスなどと言われましたが、その後聞きません。

テドロス事務局長も、新たな変異株が出たりしない限り、次第に終息の可能性は高いと言います。

日本はまだ自主規制はかなりきついという感触ですが、先日NYの友人からのメールでは、もう殆ど通常の生活に戻っているという事のようです。

社会的免疫のメカニズムと個人の免疫との関係など、我々にはわからない事ばかりですし、ウィズ・コロナというべきなのか、コロナ終息(収束?)というべきなのか解りませんが、インフルエンザ並みになってくれれば、我々は安心という事ではないでしょうか。

私は一昨年まではインフルエンザの予防注射はしたことがありません。一度感染しましたが、かかりつけ医でタミフルを処方してもらって、1日、静かにしていた程度でした。

個人的な感覚からすれば、適切な治療薬を簡単に処方してもらえれば余計な心配はしないという感覚です。

コロナについては治療薬がいろいろ難しくて、認められないものが多かったりするので、治療薬そのものへの信頼度が低いようです。

国産などなかなか許可にならないようですが、副作用がなく効く場合もあるならば、選択肢は多い方が安心感は向上するのではないでしょうか。

変異株がどんな場合に発生の確率が高いのかといった研究もあるのでしょうが、恐らくそういった点から見ても終息の可能性が高いからこそのWHOの見解でしょう。

世界の人々にとって、明るい情報として、なすべき努力は続けながら着実な終息の日の近い事を切に願うところです。

来春闘に向けて、労使は賢明な話し合いを

2022年09月16日 17時38分56秒 | 労働問題
もう9月も半ばを過ぎました。おそらく既に、連合は「連合白書」、経団連は「経労委報告」の原案の執筆段階入っているのではないかと思われます。

日本の企業は原則年1回、春闘の時しか賃上げをしないので、それまでは企業にとって原則「賃金コストアップ」はありません。
これが、欧米ではインフレが10%近くにあるのに、日本ではまだ3%程度という違いを生む大きな原因になっているようです。

という事で、これからも年末にかけて、消費者物価はじりじり上りそうですが、実質賃金はじりじり下がるといったことに多分なるのでしょう。

そういうわけで、日本経済の「賃金と物価」、「利益と賃金」などのバランスの調整は来年の春闘にかかっているわけです。

春闘での賃金の引き上げは、教科書的に言えば、「定期昇給」+「ベースアップ」という事になります。
定期昇給(定昇)は企業の賃金制度に従って、各従業員の賃金が上昇する分。
ベースアップ(ベア)は賃金表の書き換え、賃金表全体の上昇改定です。
本来、定昇は、賃金表に従っての賃金改定で、元々の約束事で昇給することがきまっているものの実施です。
ベアは、その時点の経済・経営情勢などに照らし、その企業の賃金表を全体的に嵩上げするかどうかを労使で話し合って決めるものでしょう。
(賃金制度の改定は、此処では別問題です)

以上は、定昇とベア原則ですが、現実には、賃金制度がなく、昇給制度だけの企業も随分ありました。
今は定昇と言わず「1年先輩の軌跡を追う」分が2%などと年功賃金そのもののような言い方もあるようですが、この定昇というのはかなり曖昧なものでした。

昭和30年代高度成長が始まった頃の企業の場合は、定昇が毎年10%などという会社もざらにありました。

それを聞いて安心して就職するなどという事も当たり前だったのですが、昭和40年、戦後最大の不況などと言われた頃には、そんな賃金管理がいつまでも可能なはずがない事が理解され、定年までの賃制度が普及するとともに、定昇率は次第に5%、更には2%と下がってきました。

職能資格制度が一般的になってからは、定昇率は、初めは高く次第になだらかといった設計が一般的になり、平成不況にない入ったころには定昇は消えてくる気配もありました。

しかし、学卒一括採用方式が存続する以上、若い時代の定期昇給は「習熟昇給」という概念とともに残らざるを得ません。
こうしていわゆる2%程度といった「定昇制度の記憶」が今も残っているわけです。

ところで、ここでの問題は、相変わらず組合も「定昇+ベア」と言っていますが、定昇というのは賃金制度の適用で、昇給ではありますが、企業の払う「人件費」、日本経済の払う「雇用者報酬」が必ずしも増えるわけではない現実に注目の必要があるという事です。

定期昇給が10%とか5%とか言っていた頃は、定期昇給の中に実質的には「ベア」が確り入っていたのです。
今は春闘結果の「定昇+ベア」が 、例えば2.5%と言っても。それが日本経済の払う「雇用者報酬」を増やすかどうかは疑問です。

平成不況30年の中で、平均の名目賃金は微増、実質賃金水準がほとんど増えなかったといった現実の背後に「定期昇給」の変質があったという点に気付かないと、消費需要を引っ張るという重要な役割を持つ「賃金上昇」の実態を見誤るような気がします。

1970~80年代インフレ対策として「所得政策」が言われましたが、今極端な消費不振の日本で、必要な消費需要を達成する賃金水準を目指す「所得政策」を日本の労使は日本経済活性化のために考えてみたらどうでしょうか

来年3月の春闘の集回答日までに、日本の労使が日本経済を元気にする賃上げを協力して探り当ててほしいものです。
政府には出来ないので、労使がやるしかないのではないでしょうか。

どちらに読むのか、アメリカ8月の消費者物価

2022年09月15日 17時21分11秒 | 経済
昨日、アメリカの8月分の消費者物価指数が発表になりました。

結果次第で、アメリカの金融引き締めの程度が決まるという事で、世界中から注目されていました。

結果は、客観的にみれば、かなり結構な数字のように思えました。季節調整済みの対前月比がプラス0.1%、原指数の対前年同期比を見ますと、7月の8.3%と同じ8.3%の上昇と、消費者物価指数は殆ど横這いです。

原指数で見れば6月296.3、7月296.3、8月296.2ですから6月まで急速に上がってきた消費者物価がそこでピタッと止まっているという形です。
流石に0.75%の政策金利引き上げを2回つづけた成果は凄いとと感じるところです。

ところがどうでしょう 発表された途端にNYダウは急落、下げ幅は1300ドルに達しそうでした。NY追随の日経平均も800円の下げ、1日明けてもほとんど動かないようです。

FRBの引締め策はかなり効果をあげているように見えるのですが、株価は大幅下げ、さらなる引き締めを危惧して為替は円安といった反応は、多分に投機筋の思惑の結果でもあろうと政府・日銀も口先介入といった反応があったようです。

ところで肝心のアメリカの消費者物価の中身はどうなのでしょうか。という事で見てみました。大まかなところですが、こんな状態です。

     アメリカの消費者物価指数2022年8月

                            資料:アメリカ労働省

マスコミも書いていますように、消費者物価が上がらなかったのはエネルギーの値段が下がったから、というのはその通りで、エネルギーのマイナス5%が効いているのです。(国際商品ですから、8月は日本でも下がりました)

青い線が対前年同月、茶色が対前月です。総合指数は対前年の8.3%で止まっていて、対前月が0.1%でインフレは進んでいません。
コア指数(食料とエネルギーを除く)は国内産のインフレですがこれは、前年比6.3%で前月比0.6%(年率7.4%)ですから、まだインフレ加速中という事になります。

エネルギー価格が下がっても自家製インフレが進むのが最もまずい事なので、心配という向きもあるかと思います。

この辺りはエネルギー価格が下がれば下がるもの、関係なく上るものを探しますと、食糧、新車、家賃、医療サービスは上がっていて、衣料、薬品は上がっていない、運送サービスはガソリンが下がれば下がりそうといったところでしょうか。

家賃や医療サービスは多少便乗値上げ的な感もしますが、こう見てきますと、もう1~2か月、食料・エネルギーを除くコア部分の動きを見ればはっきりするでしょうが、金融引き締めは、何とか上手く効いてくるような感触が持てるのではないでしょうか。

多少希望的観測も入っているのかもしれませんが、皆様いかがお感じでしょうか。

インフレ傾向を上手に活用しよう

2022年09月14日 15時35分50秒 | 経済
日本経済も久しぶりにインフレ傾向になってきました。
政府は2%インフレを目指していましたが、喜ぶどころか大慌てで、ガソリンの元売りに補助金を出したり、住民税非課税所帯に5万円の給付金を出そうと言ったりしています。

何故政府は喜ばないのでしょうか。今のインフレは、原油やLNG、小麦やトウモロコシなどの国際商品が値上がりして、それを使っている製品が値上がりするという、いわば「外から強いられた」インフレだからです。

政府や日銀が考えていた2%インフレというのは、海外の価格は安定していて、日本の中で賃金が上がり物価も上がって2%程度のインフレになれば、経済も巧く回るし、政府の借金もインフレ分だけ目減りするし、インフレになれば税収も増えて、政府にとってプラスが大きいからです。

同時に、インフレになると、経済活動にいろいろプラスがあります。
・先行き値上がりするなら早く買おうと消費が積極化する
・仕入れた時より売る時の方が値段が上がっているので利幅が大きくなる
・ゼロ金利ではなくなるので、金融機関の機能が復活する
・貯蓄に利息が付くので国民は安心する
などなどでしょう。
(もちろん、此処で考えているのはせいぜい5%ぐらい迄のインフレです)

海外から強いられてインフレになるのは(都合の)悪いインフレ、国内で起きるインフレは(都合の)良いインフレ、と定義すれば、「悪いインフレ」と「良いインフレ」の意味ははっきりするでしょう。

ところで、歴史的に見ますと、今のような世界的なインフレの場合は、まず海外の物価が上がって国内にそのインフレが持ち込まれます(輸入インフレ)、そうすると、政府も国民も慌てます。国民は買い急いだり、売り惜しみや便乗値上げをしたり、労働組合は大幅賃上げを要求したりして国内要因のインフレが起きます(自家製インフレ)。

今、アメリカやヨーロッパで起きている消費者物価の10%レベルのインフレの中身を見ますと、大体輸入インフレ5%、自家製インフレ5%というところのようです。

同じことを日本で見ますと、消費者物価上昇は全体は2.6%、その内自家製インフレは1.2%(7月現在、共に年率)で、8月には全体は3%、自家製部分が1.5%ぐらいになりそうです。

日本の消費者物価の上昇率は異常に低いのですが、前回見ましたように企業物価の上昇率は、ほぼ輸入物価上昇を反映していますから、消費者物価だけが異常に上がらないという傾向がはっきりします。

恐らくこれが、日本経済の長期低迷に直接関係する問題と思われますが、この「消費者物価が上げられなかった」という事情、その原因を究明すれば、日本経済の復活、復元の方向が見えてくるのではないでしょうか。

その意味では、今年に入って、この異常な状況から脱出しようという、已むに已まれぬ動きが、消費物資の生産者、流通関連業界、サービス業界に出てきたことは「正常な価格機構の回復」という意味で重要な現象かもしれません。

勿論日本社会の事です、便乗や思惑でインフレを激化させるようなことは起きないでしょう。その範囲で、物価と賃金の正常な関係を来年の春闘で実現し、輸入インフレは別にして2~3%の自家製インフレを許容し、ゼロ金利から脱出、貯蓄は適切な利回りを生むよな経済状況を目指してみたらどうでしょうか。