tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

最低賃金論議

2007年04月29日 16時43分19秒 | 労働
最低賃金論議
 いわゆる格差是正論議から、政府が最低賃金を引き上げを促進するような雰囲気が生まれ、労働組合サイドもメーデーで最低賃金の引き上げをスローガンのひとつにするようです。
 最低賃金は公・労・使3者構成の審議会で決まることになっていて、中央の審議会で基本方針を示し、各県の審議会が県ごとに具体的な数字を決めます。ですから政府が勝手に上げるとか上げないとか言ってもそうなるかどうかは別ですが、労働組合がそれに賛成すれば、公・労・使の審議会では2対1で引き上げになる可能性は出てきます。

 法律的にはそれでいいのですが、法律と経済は違っていて、最低賃金が高すぎると、企業は、出来るだけ人を雇わなくてやりくりしようとするか、コストの上がる分値上げをするか、仕事をやめるかのどれかを選ばなければなりません。

 結果は物価が上がるか雇用の機会が減るかどちらかになります。経済は法律で動かすわけにはいきません。逆に、最近のように景気が良くなって、技術革新が進み、企業の生産性が上がると、企業には雇用増や賃金アップの余力が出てきて、新卒採用も増え、パートの賃金も上がることになります。

 賃金と雇用の元は生産性です。生産性が上がれば、その分を賃金と雇用(労働コスト)と利益に分配することが出来ます。ですから、生産性を上げることが最初で、分配はその結果で決めると具合がいいのですが、どこの国でも政府は、生産性のことは企業に任せて、分配の方だけを法律や制度で決めようとします。そして企業にしわ寄せが行って、企業の元気がなくなり、不況になるというのがよくあるパターンです。

 実はこの辺のことは、日本の現場の労働組合は良く解っていて(解りすぎているという意見もあります)、労使の間で合理的な話が出来ますから、日本は救われているという面が大きいようです。

週休制の進展

2007年04月23日 18時03分35秒 | 労働
週休制の進展
 労働省が週休2日制を普及させようとして「ツイン・ホリデー」という歌を流行らせようとしたことを覚えていらっしゃる方も多いと思います。
 どんな歌だったかもう誰も覚えていないようですが、週休2日制のほうは完全に定着しました。

 薮入りで年に2回盆と正月に奉公人が実家へ帰るといいう昔はいざ知らず、明治になって日本も太陽暦になり、欧米に習って「週」という概念が導入され、日曜が休みというのが普及したのがいつごろでしょうか。

 実は、私は親から教わった「明日は日曜」という歌を覚えていまして、ツイン・ホリデーのキャンペーンのときに「労働省のお役人の中に誰か明治時代のこの歌を知っている人がいて、二番煎じをやったのかな」などと思いました。

  「明日は日曜楽しき日
   勇む心に打ちみれば
   常には暗きこのランプ
   今宵ばかりは光るなり」

というのが歌詞ですが、「常には暗きこのランプ」が「今宵ばかりは光る」というところに、その頃の生活の様子が伺われて、いったい誰がどういうときに作り、どこで歌ったのだろうと長い間思っていました。

 ところが、今日、たまたまGoogle で検索しましたら、ばっちり出てきました。しかもオルゴールで曲もついて。(ご興味のおありの方は「明日は日曜楽しき日」で検索してみてください)

 中学唱歌でした。インターネットの威力をつくづく感じました。

ワークライフバランスに必要なもの

2007年04月21日 12時38分19秒 | インポート
ワーク・ライフ・バランスに必要なもの
 この2-3年「ワーク・ライフ・バランス」という言葉がはやっています。もともとが英語ですから欧米から輸入された言葉ですが、日本語で言えば、「仕事と生活のバランス」ということになります。
 欧米各国でも、この問題は少子化と一緒に論じられる場合が多いようで、「働きながら十分子育てが出来るような労働時間や仕事の仕方が必要」といった形で論じられます。そこから企業に対して「育児休業」とか「子育てのための休暇制度」とか「男性も育児休業を取りましょう」とかいった形で、仕事が家庭生活を圧迫しないようにしましょうといったキャンペーンや法律制度の導入になっているわけです。
 ところで、これが日本に来ると、もっとも大きな問題は、昔から指摘されている「長時間労働」をどうするかといったことになってきます。
 もともとワーク・ライフ・バランスは「社会のための仕事の時間(欧米では所得を得るための時間というかもしれません)」と「自分としての私的な時間」とのバランスをどうとるか、という問題でしょう。日本人はこのバランスのとり方が下手です。放っておけばどんどん仕事のほうに傾斜していってしまいます。仕事は社会のためだという大義名分の安心感があるからでしょうか。
 政策として「ワーク・ライフ・バランス」を掲げている官庁や労働組合や経済団体のエリートたちは、「5時になったから失礼します」などといったことは考えられないようで、男性女性を問わず、夜中まで仕事をすることに生きがいを感じているようです。
 日本人のこの仕事に対する真剣な態度は、大変大事だと思います。自分中心ではなく、社会の役に立つことのほうを重視しようという素晴らしい考え方です。だからといって、その負担を全部家族にかけてしまっているようでは、本当のワーク・ライフ・バランスは取れていないということでしょう。
 良いワーク・ライフ・バランス実現には、法律や制度も必要でしょう。しかし最後の決め手は、それぞれの個人が、仕事の意義と、自分を含めた家族の生活とをいかに適切に判断するかという個人の意識の問題に帰着しそうです。
 人間としてどう生きるか。そのための適切なバランス感覚を養うような、人間としてのバランスの取れた教育が必要なようです。
 
 
 

格差問題と諺

2007年04月07日 10時24分28秒 | インポート
格差問題と諺
 かつては1億総中流と自称し、ノルウェーに次いで世界で2番目に格差の少ない国といわれた日本で、このところ、国民の所得格差が広がっているといわれます。
 たしかに累進課税は大幅に縮小されたし、このところ非正規雇用も増加したし、所得の減少する高齢者が増えたりしているからそのとおりだと感じます。
 その中でも特に指摘されているのは非正規雇用の増加の問題のようですが、これは日本経済の力強さの回復で、行き過ぎの是正は進みはじめているので、行方を見守りたいところです。
 それはそれとして、本当に問われているのは、格差社会に対する日本人の意思と取り組みではないでしょうか。
 日本には昔から素晴らしい諺がありました。 「稼ぐに追いつく貧乏なし」です。
 この諺を呟きながら、頑張り抜いた日本人は、たくさん、たくさんいるはずです。 「働けど、働けどわが暮らし楽にならざり、じっと手を見る」とうたいながら、啄木も頑張ったのでしょう。「1人口は食えなくても、2人口は食える」という諺は、貧しくても結婚し、所帯を持って2人で頑張れば何とかなるという励ましです。
 昔の日本は貧しかった。そのなかで努力して頑張ろうということを、諺は教えていたのでしょう。
 それに対して、今の世の中はというと、マスコミが書き、評論家が言うのは「ワーキング・プアー」といった言葉です。この言葉には夢も希望もありません。「偉い人もそういうのだから、オレ/ワタシが貧しいのは世の中のせい」という認識を広めるだけです。
 格差問題の解決に、法律や制度も必要でしょう、しかし最後の決め手は国民一人ひとりの意思と取り組みです。そのためにも、百年、千年の人間の知恵の結晶である諺を軽んじてはいけないと思うのですがいかがでしょうか。

富士CALMの富士

2007年04月03日 14時12分53秒 | インポート
富士CALMの富士山
 先日、山梨県富士吉田市の「人材開発センター:富士研修所」(通称 富士CALM)というところにいってきました。
 この研修施設は、日本経団連関係の企業の従業員のための研修施設ですが、研修の少ない週末などは、家族やグループのレジャー基地、ゴルフ基地などとしても使えるようです。
 着いた日は曇りでしたが、翌朝、朝早く窓を開けると、巨大な富士山が五合目あたりまで雪をかぶって眼前に迫ってきて、まさに圧倒される思いでした。富士山という山はこんなに美しかったのかと改めて感じた一瞬でした。
 富士CALMからの富士山の美しさは、知る人ぞ知る有名なもので、「今週の富士」「リアルタイム富士」などネット配信されていて、CDにもなっており、富士CALMで検索すれば出て来ます。
 ここからの富士山がなぜそんなに美しいかというと、それは左右に稜線がすっきりと延び、それが全く綺麗な対称形をなしているからのようです。まさにバランスの美しさです。
 この研修所をここに建てたのにはそれなりの由来があるそうで、昭和40年代の初め、この研修所の初代所長になった二宮尊徳(因みに本名)という方が、用地を探して富士山の周りを一周し、その結果、ここが一番美しいと感じて、地主の方々にお願いして、用地取得が出来、研修所が出来上がったとのことです。
 ところで、地図でみるとわかりますが、富士CALMの隣は、富士浅間神社で、この神社は富士山のご神体であるコノハナサクヤヒメ(木花咲耶姫)を祀り、昔は、富士山の登山道の吉田口はここが基点だったようです。
 その昔、千数百年前、われわれの先祖が、ここからの富士山を仰ぎ見て、その美しさに感動し、その場所にコノハナサクヤヒメを祀る神社を建てたのでしょう。富士山の美しさも、それを美しいと感じる日本人の心も、変わっていないようです。

2種類の物価

2007年04月01日 20時04分13秒 | インポート
2種類の物価 物価には、大きく分けて2種類あるような気がしている。
1つは、その値段で買って、自分で使うつもりで買う価格
2つは、その値段で買って、値上がりを待って売るために買う価格
 100万円の絵を買って、自分の部屋に掛けて、毎日見て楽しんでるのは前者、100万円で絵を買って120万円になったら売ろうと考えるのは後者。
 食料品や日用品を買う場合は大体前者、株を買う場合は大体後者。しかし株の利回りが定期預金よりいいから、ということで配当をもらうために株を買う場合は前者ということだろう。
 会社の株を買い占め、子会社にして経営を改善し、シナジー効果も含めてグループの業績を上げるのは前者、会社の株を買い占め、配当をあげさせて、株価が高くなったら売り逃げるというのは後者。
 土地を買い、開発して付加価値を高め、分譲して利益を上げるのは前者、土地を買い、値上がりを待って転売するのは後者。
 前者の場合の価格を収益還元価格といい、後者の場合の価格を投機価格という。前者で得た利得はインカムゲインといい、後者で得た利得をキャピタルゲインという。
 日本人はインカムゲインは「額に汗したカネ」といい、キャピタルゲインは「あぶく銭」といって区別してきた。アメリカはこの2つをなるべく区別しないような金融制度や会計制度、さらに経済価値観を世界標準にするよう努力しているように見える。