tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

円レート、日経平均2万円、企業の投資行動

2015年11月30日 14時02分39秒 | 経営
円レート、日経平均2万円、企業の投資行動
 三題噺のように3つ並べてみましたが、このところの姿勢の日本経済に対する見方は、この辺りで何となく整理がつくような気がするからです。

 ネット上で「ファイナンス」などというところで書かれている株価についての意見などを見ていますと、日経平均二万円に今日あたりは乗りそうなどと書いてあったりします。
 今朝もそんなのをちらっと見ましたが、午後に入って150円ぐらい下げています。

 予想は当たらない事も多いようですが、少し長い目で見れば2万円を超えることはだれも疑わないでしょう。
 株価の動きも短期的予想は難しいですが、長期的には市況分析の手法など解らなくても、ある程度の方向感覚は何となく持てるでしょう。

 このブログも、日本経済はここ当分緩やかながら成長軌道と何時も書いていますが、それを前提にすれば、株価はじりじり上がるのでしょう。
 経済成長が踊り場状態にある原因として、消費性向の低下については統計上からも見てきましたが、もう1つ安倍さんがやきもきしている投資が予想ほど伸びないという問題にはやはりそれなりの根があるように思います。

 アベノミクスの第1弾金融緩和で企業は利益を上げ、内部留保を大きく伸ばしたのだからもっと投資を積極化せよというのでしょうが、企業は金があるから投資をするのではありません。そこにビジネスチャンスがあるから投資するのです。

 この足掛け3年ほど、確かに企業の収益は大幅に改善しました。しかし、その改善の最大の要因は20円ずつ2回にわたる円安のおかげだと企業は知っています。
 もう、そうした円安は期待できませんから、あとは通常の経済の中での活動になります。

 今後は着実に付加価値を作り、その中から利益を計上していくことになります。企業にとって、それでは何を目標にすれば、成功(成長)の可能性が大きいか、その選択が極めて重要です。
 
 もちろんそれを的確につかんで進めている部門もあります。省エネ車、航空機、などについてはこのブログでも取り上げました。最近ではロケット、先進医療、養殖漁業、機能性素材、ウエアラブル端末などなどマスコミを賑わすものも多くなっています。

 しかし産業の根幹であるエネルギー問題については、COP21の最中ですが、国の方針がどこを向いているのか解らないと誰しも感じているでしょう。

 為替レート(円安)で潤った時期が終わり、地道なビジネスが基調となる時期への切り替え、企業の投資行動から見れば、これが日本経済踊り場状態の原因でしょう。

 新3本の矢の中身では、企業は動きにくいでしょう、一億層活躍社会でも同じです。企業に投資を奨励する前に、企業が投資をしたくなるような政策が示せるかどうかのようです。

 新しい正常な経済の中で健全に経済活層が前進し、日経平均2万円などは軽々超えていくような日本経済が望まれます。

政府の賃上げ要請と財界・企業

2015年11月27日 09時42分14秒 | 労働
政府の賃上げ要請と財界・企業
 マスコミでは「今年は官製春闘3年目」などと言われています。
 すでに連合はベースアップ要求基準として2パーセントを打ち出し、政府は財界に賃上げ加速を要請し、経団連は2016春闘向けの「経営労働委員会報告」でベア容認を言う方向だという報道もありました。

 もちろん経団連の「報告書」が発表されてみないと本当のことはわかりませんが、会長の発言などからもその方向のようです。
 マスコミは同時に、個別企業、特に中小はどう動くかといった形で現実がどうなるかは予測のほかということになっていますが、それは当然でしょう。

 就職協定でもわかりますように、経団連は大企業の組織体ですから、中小企業への影響力はないようです。大企業でも、このところの国際的政治経済の動きの中で、企業業績もまちまちのようです。中小企業を組織する商工会議所などは慎重の構えでしょう。

 安倍政権は 賃上げさえすれば景気が良くなると思っているようですが、すでに書いてきましたように、経済というものは、そんなに単純なものではありません。
 今、消費が不振と言われる原因は、所得が増えても、消費者(家計)の行動では貯蓄率が上がって消費性向が低いままということにあるようです。

 原因をさかのぼれば、将来不安(雇用不安、高齢化準備、人口減少、格差社会化、などなど)という意見が根強く、それを打ち消そうと発表された新3本の矢も「そうなればいいね」という程度の受け取りでしかないようです。

 そんな中で2016春闘はどんな展開になるのでしょうか。どちらかというと控えめな連合の方針がどのように展開されるかも重要ですが、最も大事なのは、多くの国民が「いかなる賃上げが本当に望ましいのか」を合理的に理解することでしょう。
 労使交渉にも国民の良識が反映するというのが日本の伝統です。

 常識的に考えれば、賃上げは平均的には日本経済の成長に見合ったものであるべきでしょう。その中で企業業績によって差が出るのは当然でしょうが、賃金そのものでは格差を出来るだけ少なくして、ボーナスでトータルの人件費は調整するというのが日本の従来の方式でした。

 その意味では「3年連続の賃上げ」などと特別なことのように言うのではなく、多少でも経済成長があるのですから、マスコミも、毎年賃上げがあって当たり前という前提で報道をすべきでしょう。長期のデフレ不況からは抜けたのです。
 
 企業にとって最も大事なのは、生産性を上げ、相対コストを引き下げて競争力を強め、企業成長を確保し、従業員が将来への自信を持てるようにすることでしょう。
 今年無理な賃上げをして、来年に不安を持たせるようなのは労使とも避けます。

 幸い、日本経済は、政策宜しきを得れば当面ゆっくりでも確実な成長路線を進みうる状況にあるようです。
 そうした中で、年々着実な賃金上昇がある(前提は勿論雇用の安定)という状況が積み重ねられて、初めて、従業員は安心し家計は消費を増やすようになるのでしょう。

 企業レベルで考えれば、これは極めて当たり前のことですが、「株式会社日本」の経営陣でもある安倍政権にこそ、こうした、国民が理解し納得するような地道な経済成長の実績作りが必要なのではないでしょうか。掛け声だけの政策は空疎に響きます。
 安定成長路線の確立には時間も必要です。拙速は禁物でしょう。

合理性の感じられない消費税軽減税率論議

2015年11月25日 10時46分35秒 | 政治
合理性の感じられない消費税軽減税率論議
 与党内の話ですが、消費税率を10パーセントに引き上げる際の軽減税率で自民と公明間が揉めています。

 軽減税率の適用を生鮮食品だけにしようという自民党と、加工食品にまで広げるべきだという公明党の論争です。
 コップの中の嵐のようなことかもしれませんが、お互いの主張の本来の目的がどうも良く解りません。

 消費税10パーセント負担は、低所得者には重いから、毎日消費しなければならない食料品のような生活の基本にかかわるようは品目には軽減税率を適用して、低所得者の負担を軽くいたいというのが本来の軽減税率の趣旨でしょう。

 自民党の生鮮食品だけというのは、財源がないからという意識が強いことの結果のようです。
 本来、生鮮食品というのは、天候などに左右され、価格が乱高下するもので、不作なら高騰、出来すぎればキャベツをトラクターで踏みつぶすといった報道記事なども出ます。何時でも価格が高いわけではありません。

 一方最近の報道に見られますように、加工食品の価格は、デフレでなければコンスタントに上がる傾向があります。これは人件費コストがかなり入っているからです。

 低所得者と言われる人たちが、生鮮食品か、加工食品か、どちらを多く購入しているのでしょうか。
 ニュースやルポで見聞きするのは、時間も金も体力もない場合の多い低所得家庭では、調理に手のかからない加工食品を多用している様子もうかがえます。

 何を基準に線引きをするのか、線引きの合理性がどこにあるのか、そのあたりが、論争の中で全く見えていません。

 一方、加工食品を含め、軽減税率を広く適用しようということになりますと、これは、所得の高い所帯が、より多くの恩恵を得るような感じもします。もちろん贅沢品などは除外するのでしょう。それにしても、高所得所帯には、本来軽減税率などは適用する必要がないはずではないでしょうか。

 本当に低所得所帯に恩恵をということであれば、所帯収入に関係なく、品目別で一律に軽減税率という考え方そのものが、不適切な部分を持っているようです。

 与党としては早期に決着させたいということのようですが、低所得所帯のための 消費税軽減税率という問題は、何が本当の合理性なのかという視点を、本気で考えているようには思われないのですが。

 4000億円の財源があるなら、きちんと消費税増税の目的である社会保障制度の一環として適切な使い方をするほうが、よほど合理的でしょう。

ブラック企業と管理監督者教育

2015年11月23日 10時19分14秒 | 経営
ブラック企業と管理監督者教育
 日本銀行は、日本経済は徐々ながら成長軌道と読んでいるようですし、安倍さんは、企業には投資しろ、賃上げしろと焦ってはいますが、日本経済が後退しているとは思っていないでしょう。
 企業の多くは増収増益基調を維持しているようです。

 にも拘らず、非正規従業員の比率は下がりません。円レートが$1=¥80前後でデフレ不況のどん底だった頃、非正規の比率38パーセントでしたが、最近は40パーセントを超えたようです。

 景気が回復に向かったら正規従業員が増えるだろう(経済・雇用の正常状態への復元が起きるだろう)と予想していたこのブログの見方は外れたようです。
 かつて「 IKEAに学ぶ日本的経営」などで書かせていただきましたが、日本企業の多くでも非正規従業員の正規化に取り組んできています。

 しかし、日本の雇用全体で見ると、雇用増の多くが非正規ベースで、結果的に非正規比率が上昇という「きわめて望ましくない」現実に繋がっているということになってしまっています。何がそうさせているのでしょうか。

 日本経済の高度成長期から多くの企業や経営者との接触の経験などを思い起こして考えますと、この長期不況を経て、経営というものについてのアメリカ型、短期利益追求型への無意識の転換があったように思われてなりません。

 もちろんアメリカにも「エクセレント・カンパニーズ」と言われたように優れた企業は沢山ありましたが、ポスト・インダストリアル・ソサエティーなどという言葉がはやり、モノづくりから金融偏重の時代に入り、経営理念も、企業評価システムも、会計基準も短期利益重視に変わってきました。

 人間中心・長期的視点の経営を基本理念に掲げて発展してきた日本企業も、20余年にわたる長期不況の中で、次第に変質してしまったようです。
 
 長期的視点の経営の背後にあるのは、人間重視の経営です。企業とは「人間が資本を活用して付加価値を作る」システムですから、成果は「人間が何を考え、何を行うか」で決まります。

 だからこそ日本企業の経営理念には「企業は人間の育成の場」という趣旨が多く謳われています。

 その日本企業に長期不況の中で次第に「即戦力」といった言葉が言われるようになりました。即戦力というのは「誰かが教育した人間を採る」ということです。
 この辺りから企業の教育への手抜きが始まります。即戦力を採り、ダメなら使い捨てという欧米流の雇用形態です。
 ダメなら再教育、再訓練(日本企業本来の考え方)ではないのです。

 今、企業で不祥事が多発し、ブラック企業、ブラックバイトなどといった唾棄したいような言葉がマスコミに舞います。
 職場で部下を管理監督する人たちが、確りとした教育訓練を受けずに仕事をしているのです。そして20年不況の歳月がそういう人たちを管理監督職に就かせているのです。

 かつては企業の中の「主柱」だった人事・労務担当業務が、アウトソーシングで済まされるような時代になってしまったようです。
 
 「企業は人なり」という言葉は、企業が人間社会ある限り変わらないでしょう。
 管理監督者の教育訓練を徹底し、企業の長期的発展を考えることは、企業トップの最重要の仕事です。
 経営者自身の再教育が必要な時代なのかもしれません。

2015年7-9月GDP速報:緩やかな上昇傾向維持

2015年11月20日 11時03分07秒 | 経済
2015年7-9月GDP速報:緩やかな上昇傾向維持
 11月の16日に標記の第1次速報が発表されました。大方の見出しは2四半期連続のマイナスで、景気は足踏みといったものでした。
 
 ただし基本的な見方は、どちらかというと楽観的で、民間在庫が減ったのが響いていて、これは在庫調整が進んだからで、これからは在庫積み増しの可能性もあり、基本的には日本経済は、緩やかながら上昇のプロセスにあるといったものでした。

 日銀の黒田総裁も、日本経済の回復基調は変わらないということで、当面金融政策は現状の緩和政策を維持ということです。

 一部投機筋などに更なる緩和の期待があり、それを予測する意見もありましたが、日本経済全体や円レートを通観すれば、これ以上の緩和は、百害あって一利なしというのがまともな見方でしょう。

 ところで、GDP速報で発表された数字を「トレンドを見る」という視点で対前年同期比の実質成長率(民間部門のみ)で見てみますと、以下のような動きになっていて、「なんだ、やっぱり段々良くなっているじゃないの」といった状況なので、少し数字を並べてみます。

 数字を5つ並べますが、2014年7-9月期から2015年7-9月期の5四半期の「対前年同期比」の伸び率です。プラスなら、1年前より良くなっているということになります。

国内総生産(GDP)  ‐1.4  ‐0.9  ‐0.8  1.0  1.0
民間最終消費支出    ‐3.0  ‐2.4  ‐4.0  0.4  0.7
民間住宅       ‐12.4 ‐15.5 ‐15.4 ‐3.3  5.7
民間企業設備       1.4   0.2  ‐1.4  1.4 ‐0.3

 基本的に、昨年のマイナスには、消費税増税後という特殊事情のあることは否定できません。しかしこうした特殊要因を除けば、1パーセント程度の基調的上昇というトレンドは見えるようです。

一番下の民間企業設備は、変転著しい国際環境も含め確かに出入りはありますが、最も不振とみられている民間最終消費支出も、次第にマイナスから、正常状態としてのプラスに転じ、弱々しい伸びではありますが、ゆっくりと上昇に向かっているように感じられます。
 問題はこれまでも触れてきましたように、家計の消費支出をいかにして伸ばしていくかでしょうか。

人類に必要な平穏への知恵

2015年11月18日 15時16分32秒 | 国際政治
人類に必要な平穏への知恵
 今回のパリの事件では心の痛みは消えません。
 宮沢賢治は「世界が全体幸せにならないうちは個人の幸せはあり得ない」と言っています。それには遠く及ばない者ですが、何とかこのようなことが起きない世界にならないかと思います。

 こうした問題は、 加害者がいて被害者がいます。そして多くの場合、加害者も自分は被害者だと思っているのではないでしょうか。
 報復の連鎖は避けられないのかもしれません。しかし多くの人間は、平穏な生活を望んでいます。

 人類に平穏をもたらすための知恵が、ますます求められるように思います。その知恵も人類の中にあるのでしょう。
 そうした知恵が形を成し、その成果が早く表れることを願うばかりです。

ゼロ金利脱出:アメリカと日本

2015年11月16日 16時01分02秒 | 経済
ゼロ金利脱出:アメリカと日本
 アメリカはいよいよ利上げに動くのでしょうか。12月に利上げを打ち出す可能性が70パーセントなどと言われていますが、雇用の伸びが順調に続くかもはっきりしませんし、賃金の伸びは低いようです。

 ゼロ金利脱出は、アメリカ経済正常化に必要なことでしょうが、ゼロ金利(異次元金融緩和)で回ってきたアメリカ経済、更にはその恩恵を受けてきた途上国経済のことまで考えると脱出には多様な配慮と努力が必要なのでしょう。

 アメリカ国内には、伝統的な保守派の「モンロー主義」的な意見も強くなるようで、どこまで世界経済のことを考えなければならないのか、基軸通貨国の責任も有り、検討・決定は大変でしょう。IMFの人民元準備通貨入り問題も関係あるのでしょうか。

 加えて心配なのは、経済問題に大きく影響する可能性のある政治的要素、さらには、ますます広がりを見せる紛争を含め軍事的問題がどうなるのかです。
 紛争解決には(人命も含め)膨大な負担がかかります。副次的に難民も大なども発生します。覇権国・基軸通貨国ですが、万年赤字国のあるアメリカの経済政策は容易ではありません。

 ところで、アメリカが利上げに動けば、当然日本にも影響があります。もちろん日本自体としても、いつまでも超金融緩和を続けて、円安維持というわけにはいかないでしょう。これは、あくまでも、長期円高からの脱出を目指した日銀の窮余の政策だったはずです。

 日本の金融緩和も明らかに成功を収め、日本経済は「デフレ不況」から脱出しました。しかしこれをやめればまた円高という可能性は大きく、なかなか止められません。
 その意味ではアメリカが金利引き上げに動くことは、日本にもチャンスとヒントを与えてくれるのでしょう。失敗しないでほしいと願うところです。

 同時に日本としても、自分自身で、経済の正常化の道を模索し、着実に歩を進めていかなければならないでしょう。
 そのために最も必要なのは「内需拡大による自力での経済成長」です。これは、大幅黒字国日本というイメージ、「成長はしないが安全な通貨¥」という投機家たちの既成概念を打ち消していくためも必要です。

 これから始まるアメリカの利上げのプロセスからは、日本にとって学ぶことが沢山出てくるでしょう。もちろん反面教師もあるかもしれませんが、十分に学び、日本経済の安定した成長を確実にしてほしいものです。
 これからの経済政策が問われています。

MRJ離陸

2015年11月12日 09時51分36秒 | 科学技術
MRJ離陸
 2015年11月11日、三菱のMRJが文字通り離陸しました。
 航空機事業については戦後の強いられた空白、そして戦後の航空業界にとって記念碑的な1962年のYS11の誕生、性能はよかったが営業でつまずき1971年に生産打ち切り、それから44年、日本のメーカーは海外航空機会社の下請けが中心でした。

 そしてようやく国産ジェット旅客機が文字通り離陸したのです。おそらくこの離陸は、日本の航空機業界が世界のマーケットに向けての本格的離陸ということになるのではないでしょうか。
 YS11の時は、ベースは戦争中に培った軍用機の生産技術だったといわれます。性能はいいが乗り心地や保守作業対応などには問題があるなどと言われたようです。しかしそれからの期間、日本のものづくり技術は格段に洗練されました。

 世界に通用する、国際水準を凌駕する製品が目白押しです。中でも燃費、居住性、操縦性などでは日本の自動車技術は世界に先行していますし、飛行機並みのスピードを誇る高速鉄道も日本のお家芸です。

 離陸したMRJにはそうした発展の中で洗練された高度な技術が徹底的に組み込まれているようです。国際水準を2割がた上回る燃費性能、軽量・スマートで座り心地のよい座席、広めの居住空間、操縦性能は今後ますます磨きがかかるでしょう。

 この4月に ホンダジェットが本拠地のアメリカから飛来しとことはこのブログでも取り上げましたが、その際も触れましたように、日本の航空機製造技術は着実に進化していたようです。新明和の飛行艇は3メートルの荒波でも着水できるという高性能を誇ります。

 そして今回は、いよいよ世界に注目される中型旅客機MRJの登場です。
 この分野は、航空機業界ではある意味ではニッチで、ボーイングやエアバスはやっていません。性能さえ良ければ、マーケットは巨大だという意見は以前から聞かれました。

 とはいえ、もちろん競争は激しいでしょう。しかし、戦後、カメラからオートバイ、家電製品から自動車まで世界市場を席巻してきた日本のものづくりの伝統があります。
 日本人の得意技であるこの、きめの細かいものづくりの技術、ノーハウに磨きをかけることが、これからの日本産業のもう一段の発展の支柱でしょう。

 その象徴として、の今回のMRJの離陸を祝福したいと思います。

現実は一歩前進・半歩後退の緩行ペースでしょうか

2015年11月11日 09時41分21秒 | 経済
現実は一歩前進・半歩後退の緩行ペースでしょうか
 現在の日本経済の動きを家計調査の「平均消費性向」を主要な参考にしつつ検討してきました。
 内外のエコノミストも現政権も、日本経済の持続的発展のためには、内需拡大、その柱は個人消費の拡大という指摘がほぼ一致した図柄ですし、その指摘は確かにその通りだと思うからです。

 しかしかつての日本経済の好調な時代(1980年代前半)と今日の平均消費性向の差5~6%ポイント(77~79%対72~73%)を埋めていくためには、現状の国民(消費者)意識をもっと明るいものに変えていくような努力が必要なようです。

 安倍政権もそれを望んではいるのでしょうが、その前に自分のやりたいことがいろいろとあって、それが邪魔になって、国民の本当の気持ちを汲むような政策はなかなか取れないようです。

 この大事な時に、種々の事情もあり臨時国会はやらないで済まそうといいうようなことですから、「新3本の矢」も「展示中」ということで当分棚晒しになるのでしょう。

 アメリカの雇用が良かったということで、アメリカの利上げが期待され、円安になり株価が上がるといったのが昨日あたりの動きで、これは結構と喜ぶ人もおられるでしょうが、反面これは格差拡大要因でもあることは間違いありません。
 アメリカの事情ではなく、日本が自力で経済を活性化し株価を上げるべきでしょう。

 そんな状態ですから、内需拡大、そのための消費支出の拡大、その前提になる安定雇用の増加、格差拡大ストップといった日本経済にはなかなかなりそうにもありません。

 国民にとっては残念なことですが、これも民主主義に基づく選挙の結果ですから、国民も自らに問いかけて観念するよりないのでしょう。
 しかし、あまり悲観することはないように私は考えています。現状($1=¥120)辺りで為替レートさえ安定していれば、日本経済は、緩行電車並みでも、着実に前に進むでしょう。
 それはいつも申し上げますように、政策が多少ダメでも国民は真面目で勤勉に働くからです。この点日本の為政者は恵まれています。

 アメリカが戦後日本を統治して大成功をおさめ、こんなに立派なことができるのだと自信を持っても、この成功体験は、ほかの国では必ずしも通用しないのです。アメリカが日本で成功したのは、相手が日本人だったからという要素が大きいのです。

 遅々とした前進でも、時間がたてば成果は出ます。政策が拙くても、日本人の努力で日本経済は確実に前進していくでしょう。
 かつて「いざなぎ越え」という景気回復がありました。誰も好況だとは思いませんでしたが、経済成長は何とかプラスで、雇用も何となく改善、日経平均は18,000円まで行きました。今回は、あれよりは大分ましでしょう。

 「いざなぎ越え」はリーマンショックで潰れてしまいましたが、いかに環境条件が悪くても、それなりに環境が安定していれば、日本人は頑張れるのです。その意味ではこのブログは楽観派です。
 ただし「政策よろしきを得れば、もっともっと前に進むことができるのに」という気持ちでこんなことを書いてきました。

消費拡大は財政赤字削減にも貢献

2015年11月09日 09時45分52秒 | 経済
消費拡大は財政赤字削減にも貢献
 この所の一連のブログで願っているのは、赤字に悩む政府が、国債を発行して更なる借金を重ね、経済成長の後押しをするより、1600兆円という世界一の個人貯蓄(個人企業の分も入っていますが)を持っている国民が、主体的に金を使うような条件を整え、経済を活性化しようという政策です。
   平均消費性向を上げて日本経済の健全性を取り戻そうと考えるからです。

 そのために必要なのが、ここまで述べてきた、国民に将来への希望を持たせる、将来はより良い社会に「します」という政府の、具体性のある「分かりやすい」メッセージ(具体的で納得性のある政策の説明)だと考えています。

 国民を将来不安から、過度な貯蓄に追い込まないようにしなければならないのです。今の貯蓄は、ゼロ金利ですし、素人は投信などでは損ばかりで、これではまだ貯蓄が足りないと思わせ、更なる貯蓄に走らせるような状況です。

 政府が国民を安心させる政策を確りやれば(今はその逆の政策が多すぎますが)、国債発行を減らしても、個人消費がそれを補い、経済は活性化し、税収も増え、財政健全化のきっかけになるでしょう。

 雇用問題(雇用の安定)については、民間企業の役割が最も大事ですが、政府の仕事は、企業に将来への安心感を与えるような政策を進め、雇用を安定させることが大事で、かりそめにも非正規労働を助長し、労不安定雇用を増やし、社会を不安定にするような方向は取るべきではないでしょう。

 所得税の累進制復活を言いましたが(公明党も言い始めています)、格差社会にしないためにはこれは是非必要です。従来日本人は、高所得者もそうした社会を良しとしてきました。
 そしてこれは租税弾性値(経済成長率に対する税収の伸びの比率)を高め、財政再建に大きなプラスになります。

 経済成長が安定すれば、金融の異常事態である「ゼロ金利」時代も終わるでしょう。これにはアメリカのこれからが参考になります。多分日本はもっと巧くできるでしょう。
 そうなれば、定期預金にはまともな利息が付き、家計貯蓄は「生き返り」実生活の役に立つようになるでしょう。

 財政のプライマリーバランス(注)が回復すれば、国債は、国民の 重要な貯蓄手段となります。
 いずれにしても、貯蓄好きの日本人にとっては、将来不安から、ゼロ金利の預貯金やタンス預金に悩む必要のない、生活に有意義な貯蓄ができるようになります。


 世界で最も真面目、勤勉と言われる日本人です、良い政策さえ得れば、経済的安定や発展は当然得られるべき物と考えても誤りではないでしょう。

 (注) プライマリーバランス: 税金などの政府の経常収入で、政府の経常支出をまかなえる財政状態。この場合借金は増えないので、最低限健全といえる。利息が利息を生んで借金(国債残高)は増えるが、サラ金と違って国債利息は経済成長率程度なので、国民経済に対し、政府の借金が雪だるま式に増えることはないという前提。

不安感と格差社会化の中では消費は伸びない

2015年11月06日 09時35分22秒 | 経済
不安感と格差社会化の中では消費は伸びない
 円安で日本への観光客は急激に増えています。そして、観光客は一様に日本はいい国だ、人々は礼儀正しく、親切で、どこに行っても清潔、観光資源は豊富だし、商品の質は高く値段も高くない、日本食は美味しいと言います。

 これなら、Far east(東のはすれ=極東)でも行ってみたくなるのでしょうか。
 近隣のアジア諸国からは、まさに「買い物ツアー」、爆買いが日本の消費を支えるという構図が見えます。
 
 しかし日本人の消費は伸びません。先に述べましたように1980年代には可処分所得の79パーセントほどを消費していた日本人が、今は73パーセントしか使わず残りは貯蓄です。消費不振の原因は明らかです。

 「失われた20年」という長かった不況のせいで日本人の生活が過度に防衛的になったということはあるかもしれませんが、日銀の政策変更で景気が改善してそろそろ3年です。

 最近の職安業務統計では有効求人倍率はこの9月、1.24倍(季節調整済み)になり23年8ヶ月ぶりの高水準だそうです。
 雇用の安定が消費につながることは経験的にも知られていますから、求人倍率上昇=雇用安定で消費が増えるかと思いますが、国民の財布の紐はなかなか緩みません。

 何か今回は違うようです。何が違うのか考えてみますと、前回書きました政府への不信からくる将来への不安もあるのかもしれませんが、有効求人倍率の高さが雇用の安定に必ずしも繋がっていないのではいかという点に気が付きます。

 というのは正規社員の有効求人倍率は大幅に低くて0.77倍です。求人倍率を押し上げているのは非正規の求人が圧倒的に多いためという実態があります。結果的に、いつもこのブログが望んでいる雇用の中での正規社員の比率の上昇は未だに見られないのが実態です。

 企業が正社員を増やしたくないというのも、経済の先行きへの不安感からでしょうか。かつての日本企業は従業員の身分差別をなくし、全員を「社員」とすることから戦後の日本経済の復興と高度成長を実現しています。

 何れ長くは勤められない非正規社員、正社員より大幅に低い賃金水準、これでは「雇用の安定」とは言えないようです。
 こうして、単に求人倍率の数字だけでは示されない雇用問題があるのでしょう。
 さらに言えば、かつては雇用の安定を第一義と考えていた大企業でも、雇用の削減は日常茶飯、「大企業に就職したから安心などと思うなよ」と言われる時代です。

 正社員でも雇用が不安定、さらに正規、非正規の格差があれば、日本経済を支える勤労者世帯の中でも、不安感や格差化が進みます。まずは消費よりも貯蓄でしょう。
 これでは消費支出を支える「分厚い中間層」などという政府の口癖は実現しそうもありません。

消費を増やすための必要条件

2015年11月02日 14時41分09秒 | 経済
消費を増やすための必要条件
 かつて、池田勇人首相が「所得倍増計画」を掲げ、国民も奮闘して名目GDPは10年で4倍になり実質成長9パーセント(7.2%で10年倍増)の時代を作りました。  
 安倍さんがGDP600兆円といっても、何か国民はシラケ気味です。
 何が違うのでしょうか。

 確かに今は難しい時代かもしれません。しかし、政府への信頼の違いもかなりあると思う人は多いのではないでしょうか。
 安倍総理が、本当は何を考えているのか、誰にもどうも良く解りません。心理学では、そういう人には信頼感が持ちにくいことになっています。

 現政権だけではありません、国民は官僚機構も含めて、政府にあまり信頼感を持っていないのが日本の現状でしょう。これは、 国民負担率がヨーロッパ諸国に比べて大幅に低い中で消費税問題がうまくいかない原因でもあります。

 そうした環境の中では国民に「まず消費を」といっても難しいでしょう。かつてデフレ不況の中で「 国民のやるケインズ政策」を書かせていただきましたが、政府が国民から金を借りて(国債発行)政府なりに使うより、国民が自分のために使ったほうがいいに決まっています。

 ただこうした政策に国民が乗って来るには、消費拡大の成果が国民に広く均霑するという政府への信頼を国民が持っていなければだめでしょう。

 同時に、国民の企業に対する信頼も必要です。財界が武器輸出や法人税減税などを声高に言うばかりで、国民の豊かさは後回し、非正規雇用の一般化、ブラック企業といった嫌な新語がマスコミに踊る、政府も企業も、国民・従業員を最も大切と考えなければ信頼関係は生まれないでしょう。
 
 安定雇用の推進、格差社会化阻止、所得税制の見直し、目に見えるところでは、議員定数の削減、官民格差問題などがきちんと国民の納得する形で推進され、これなら明日は今日よりよくなるという確信を国民が持つことが前提でしょう。

 幸い、今の為替レートを前提にすれば、日本経済は、真面目に働く国民の下支えで、ある程度の成長路線は維持できると思っています。
 これを本格的な安定成長路線に乗せることは決して難しいことではありません。今まさに政府の力量が問われているということでしょう。

昨日への追記

2015年11月01日 20時55分28秒 | 政治
 企業が生産を増やせば経済成長するというのはその通りですが、今の日本は、生産した分を買ってくれる国民の消費のほうが足りないので景気が伸び悩んでいます。アジアからの旅行者の爆買いも有難いのですが、1兆円程度では足りません。

 今年度も10兆円ぐらいの経常黒字が出るでしょう。これはGDPの使い残しです。平均消費性向の反対の貯蓄(黒字率)が大きすぎるということです。これを政府が10兆円の国債発行で吸い上げ、補正予算で10兆円使うことも理論上は可能ですが、現実には出来ないでしょうし、やるべきでもないでしょう。

 ならば政府に頼まないで、自分で使えばいいというのが結論になるのですが、国民が、貯蓄してしまって使わないのです。結局この金は日本の銀行が、外国の銀行などに預けたり、外国の国債を買ったりということになるのです。グローバルソブリンやブラボンなどの投資信託で損した人も多いと思います。そんなことなら、外国に預けないで、消費して今の生活をより豊かにしたほうがいいという理屈にもなります。

 しかし、将来不安があるから、多少目減りはしても、うまくいけば儲かるかもしれないそうした投信に投資する人は多いようです。儲からなくてもいい、目減りしないほうがいいという人は日本の国債を買います。ですから、日本の国債はきっちり国内で消化されるのです。

 しかし、今の日本では、もう1つの選択肢があります。余った10兆円を消費に向けるという選択です。これで経済成長が高まれば、来年の所得が高まる可能性があります。

 安倍政権が、消費拡大を言うのはそれを狙っているからです。しかし国民に「どんどん金を使ってください」とは言えませんから、賃上げをしましょうというのでしょう。しかし現状では賃上げを奨励しても消費はあまり増えないでしょう。

 そこで問題になるのが、国民が政府に何をしてほしいか、どうすれば国民が安心して消費を増やすようになるのか、そのために政府の為すべき政策は何かということになります。