tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「人口減少をプラスに!」労使がともに主張:2017春闘

2017年01月31日 10時38分40秒 | 社会
「人口減少をプラスに!」労使がともに主張:2017春闘
 先日、「 ジャパンシンドロームは消えたか?」を書きました。確かに一時の深刻さより改善したように感じています。合計特殊出生率も上昇してきました。街に出ても、ベビーカーと若いお母さんが目立つような気がします。
 
 待機児童問題はいまだに深刻で、保育士の不足も指摘されています。政策が目指す政策が現実になって出生率が上がってきているのですから、何をおいても早急な対策を取ることが中央・地方政府の当然の義務でしょう。何せ出生率という問題は、国の在り方の基本に関わる問題ですから。

 勿論、合計特殊出生率が最低を記録した2005年の1.25人に台から2015年に1.45人に上がっても、人口維持のために必要な2.07にはまだまだですが、この10年で0.2人上昇したという事は、かなりのスピードです。人口問題研究所の中位推計も、数字を改訂して上げてきています。

 まだ当分人口減少、労働力人口の減少は続くとしても、そのスピードは鈍るでしょうし、深刻の度も弱まり、対策も容易になるでしょう。
 「人口減少よりGDP成長が大きければ」1人当たりの豊かさは増えるわけで、その程度の事は日本経済でも十分できるわけで、住宅も余って来るし、満員電車も、交通渋滞の緩和される方向で、悪いことばかりではないと先日は書きました。

 ところで、今春闘に向けての労使の白書「連合白書」(連合)と「経労委報告」(経団連)を見ますと。奇しくも「人口減少をプラスに生かそう」という意向が「共に」出されています。
 人口動態というのは、30年50年のスパンで変化するものだから、人口減少を嘆いてみてもどうなるものでもない。「ここは逆転の発想で突破口を開こう」という事なのでしょう。

 経団連の「経労委報告」は ズバリ副題で「人口減少を好機に変える人材の活躍推進と生産性の向上」」と書き、榊原会長は序文で「飛躍的生産性向上を実現する絶好の機会」と人口減少を前向きにと捉えるのがリーダーシップと経営者の気概を強調しています。

 一方「連合白書」では、冒頭の「春闘の役割と問題意識」の第一項で「超少子高齢化、人口減少が日本社会にもたらす課題」で、先ず人口減少そしてより急激な労働力人口の減少を指摘しています。
 そして現在の雇用の在り方や社会保障制度の問題点を挙げつつも、それに対して「イノベーションがもたらす挑戦」として、AI、IoTを含めたあらゆるイノベーションで挑戦すべきとし、これは労使共通の課題であることを指摘しています。

 連合は、春闘をこうした挑戦への労使の話し合いの場としてとらえ、イノベーションを担うのは人であり、人への投資を課題として企業にその積極化を要請する姿勢です。

 高齢化、人口減少が我々日本人の将来に大きな不安をもたらし、消費の不振(消費性向の低下)に繋がり、それが、経済成長へのブレーキになっていることは明らかでしょう。
 この日本社会の漠然とした、しかし大きな不安に、今春闘では、労使がともに、積極的な挑戦を打ち出し、そこに日本経済・社会の発展の突破口を開こうと考えたことは素晴らしいと思います。

 春闘の中で労使が一致してそれを確認し、政府がそのための環境整備に動けば、高齢化問題も、ジャパンシンドロームも、確実に消えていくことになると確信して(多分、出生率の更なる向上にもつながるでしょう)、先ず労使による積極的な議論の展開、出来れば「労使の共同宣言」なども期待したいと思います。

消費性向の回復:企業の労使で 出来ることは何か

2017年01月30日 15時50分50秒 | 経営
消費性向の回復:企業の労使で出来ることは何か
 前回、消費性向が低下する原因として、大きくみると、政府や日銀の政策の影響が大きいものと、企業労使で対応可能な問題の2つがあることが見えてきました。
 今回はまず後者、企業労使で対応可能な問題について考えてみたいと思います。
 
 その原因は、「企業環境が変化し経営が難しくなった」という事で、問題点は、国際化、為替の変動、規制緩和などが挙げられ、具体的には、企業の寿命が短くなった、解雇が容易になった、非正規が増えた、などがあげられました。

 今は「企業の寿命平均30年」で職業生活の期間より短いから、同じ企業で定年を迎える可能性は低いなどと言われます。確かに円高不況の失われた20年の中で、日本企業は多くの辛酸を舐めました。しかしその絶悪な環境はすでに変わりました。
 今も、大企業でも経営の失敗はありますが、これは労使関係を含め、企業内のコミュニケーションの不足、それによる経営判断の誤りが大きいようです。

・ 経営の安定を確保するには、労使を含め、社内でできるだけ多くの人々が正しい情報を共有することが重要で、雇用安定の意識がそのために極めて重要です。そして雇用安定の意識は、消費性向を高めるための最も重要と指摘されるものでもあります。

・ 労使で企業の現状に関する情報を共有し、雇用の安定に協力し、人員削減などは未然に防止の努力をし、非正規従業員は非正規を積極的に希望する人だけにしていくことが実現すれば消費性向に良い効果を持つことは明らかでしょう。
 コストはかかります。しかし、これはベア以前の問題のように思われます。

・ それを支えるのは、企業内の一体感、そのベースは、かつて日本企業が熱心だった階層別教育の徹底でしょう。新入社員教育から、職場のOJT教育、監督者教育、管理者教育、経営者教育まで一貫した教育です。

 これは企業と一体になって成長しようとする従業員意識を醸成します。長期不況の中で、コスト意識が先に立ち、こうした教育の手抜きの咎めが今出ていることを痛感する企業人も多いはずです。

・ 平均余命の延伸に雇用延長が追い付かないといった問題は、現状のような人手不足が続く中では、積極的対応の必要があるように思われます。今後は「うちは(給料は十分ではないかもしれないが)、出来るだけ長く働いてもらうよ」といった合意が大事でしょう。
 意欲のあるベテラン高齢者は企業にとっての宝でもあります。
 一方、従業員に対しては、企業の役に立ち続ける能力、意思、体力の維持の努力が要請されるでしょう。

・ 定年後再雇用の場合の賃金制度については、長澤運輸事件が最高裁にかかっているような状態ですが、多分定年再雇用の際の日本型賃金制度は認められるでしょう。
 高齢者の雇用については、賃金、企業年金、公的年金をいかに組み合わせて所得の安定の方向を考えるか、政府の施策も含め、残された課題でしょう。

 現実に企業レベルでこうした問題を論議すれば、恐らく具体的な点が出てくるのではないでしょうか。問題対応の現場が、こうした基本的な意識を共有して行動することが大事でしょう。少し長い目で見れば、日本経済、日本企業には、十分高齢化の中での雇用問題に対抗していく力があると思っています。

 幸い連合に代表される日本の労働組合は極めて良識的・合理的な考えを持っており、企業の安定発展のための協議の相手として適切な役割を果たせるでしょう。

 「なぜ」で出てきた多くの企業レベルにおける消費性向低下の原因は、企業労使の良識ある柔軟な話し合いの中でかなり解決できるのではないかと考えています。
 ところで、より大事なのは矢張り政府の対応でしょう。

消費性向低下の要因を整理すると

2017年01月29日 09時58分55秒 | 経済
消費性向低下の要因を整理すると
 前回、「なぜ」と尋ね「理由」を上げて見ました。何か際限なく広がりそうですが、この辺で「理由の方に共通の要因があるものをまとめて考えたり、より根本的な重要なものを重視したりといった整理をしなければならないようです。

 「企業の寿命が短くなった」「企業が成長しない」「企業にリスクを取る積極性がない」などは、共通する企業環境の難しさからきているのでしょう。
 「解雇が容易になった」「非正規が増えた」などは雇用条件が悪化したという事で、これらすべてに共通の理由は「経営が難しい世の中になった」「経営者が対応できていない、戸惑っている」といったことでしょうか。

 年金関係の問題では、「当面の高齢化は積極的に認めざるをえません」、しかし「ゼロ金利、年金積立金の運用が下手」は、かつて確定給付の企業年金が全盛だった時期を考えれば、ゼロ金利が基本的な理由でしょう。金融機関がリスクを負わないというのは、確定利付き商品がなくなり、政府もペイオフ制度を決めたように、時代が「リスク負担はご自分で」という時代になったという事でしょう。

 「寿命の延びに勤務延長が追い付かない」という問題は、「企業ではコストパフォーマンスの問題、賃金制度の対応問題」が主でしょうし、「働く方では健康問題」が主でしょう。

 こう見て来ますと、
「企業環境が変化し、経営が難しい時代になった」
「経営がそれに対応できていない」
「ゼロ金利政策・金融機関がリスクを負わないことが将来不安を増進し貯蓄を促進している」
「平均余命が伸びることは目出度いが、企業も本人の意識も対応不十分」
といった状況が浮かび上がってきます。

 ここでまた「なぜ」をやったらどうでしょうか。
・「なぜ経営が難しい時代になったのか」
・「なぜ経営がそれに対応できないのか」
・「なぜゼロ金利なのか」「なぜ金融機関はリスクを負わないのか」
・「なぜ企業も個人も高齢化時代への対応が遅れるのか」
こうした問題が解決出来れば、国民は安心し、消費性向は上がるはずという事になります。対応する理由を探せば、
「経済のグローバル化」「為替変動が読み切れない」「規制緩和で環境変化」
「経営者が十分に育っていない」「長期不況で従業員教育が手抜きされている」
「円高阻止のためにゼロ金利が必要」「金融緩和で景気刺激」
「政府の法制、企業の意識・努力、従業員の理解不足」
などが原因と考えられます。(まだいろいろあるかと思いますが)

 1番目と3番目は企業レベルではどうにもならない政府・日銀の政策問題。
 2番目と4番目は、企業労使で対応可能な問題という事になるのでしょうか。

 では、政府、企業、個人、それぞれがやるべきことは、という事になります。次回その辺りを整理してみましょう。

消費性向低下:どんな要因が考えられるか

2017年01月28日 10時42分20秒 | 経済
消費性向低下:どんな要因が考えられるか
 前回、消費性向の低下に関して、現状では日本国民の多くが「当面、金は使わないで貯金した方がよさそうだ」と考えてしまうような状況になっていると書きました。

 何故そう考えるのか、トヨタ生産方式ではありませんが「なぜ」を5回繰り返してみましょう。年代や職業によって違うと思いますが、サラリーマン家庭を前提に一般的に考えてみます。

 私の世代は、私の厚生年金と家内の国民年金で、戦後の事を考えれば何とか暮らしていけるでしょう。しかし子供の代はそうもいかないと思われています。息子や娘たちの家庭では、何はともあれ、倹約して貯金して老後に備えようとか、ボーナスは手を付けずに貯金して子供の教育費とか言っています。

 今日たまたま見たブログでも、「夫が節約しようというので一汁一菜を原則にしようと献立を考えています、節約の理由はこの次に書きます」などというのがありました。
 何か世の中、節約ムードに溢れています。
 という訳で、最初の「なぜ」ですが、なぜ節約? なぜ貯金?です。答えは「先が読めない、何が起こるかわからない、備えあれば憂いなし」、結局「将来不安」でしょう。
 これは比較的簡単に答えが出ると思います。

 次の「なぜ」は、「なぜ将来が不安か」でしょう。これはかなり難しいことになりますが。勤労者所帯を例にとれば、
・「昔と違って「経済・経営不安定、定年まで安定して勤められるか心配」
・「賃金が先行き上がらないと思われるので貯金が大事」
・「永く勤められても、厚生年金だけでは老後は不足らしい」
・「退職金は確定拠出年金になり受け取り額不明」
・「老後はますます長くなり巨額の準備が必要と言われる」などでしょうか。

これらに対して、
・「なぜサラリーマンの雇用が昔ほど安定していないのか」
・「なぜ賃金が上がらないのか」
・「なぜ厚生年金では足りないと考えるのか」
・「なぜ退職金が一時金から年金になり、さらに確定拠出年金になるのか」
・「なぜ老後がますます長くなるのか」
などの「何故」が続きます。

 これらにそれぞれ、
・「大企業でも潰れる、企業が簡単に人減らしする、正規社員になれない」
・「企業が成長しない、企業も先行き不安で貯蓄(内部留保)指向」
・「高齢化で支える人が減る、積立金に金利が付かない、GPIFの運用が下手」
・「退職金コストが高い、年金化は資金繰りのため、確定拠出はリスク負担が困難だから」
・「平均余命が長くなる、勤務延長が追い付いていないから、そんなに働けない」
などの理由があるのでしょう。

 次の「なぜ」はまた複雑になります。
・「なぜ企業の寿命が短くなった、なぜ解雇が容易になった、なぜ非正規が増えた」
・「なぜ企業が成長しない、なぜ企業はリスクを取る積極性がないのか」
・「何故高齢化、なぜゼロ金利、なぜ株運用か、なぜ運用が下手か」
・「退職金コストはなぜ高くなった、資金繰り困難の理由、なぜリスクを背負わない」
・「なぜ長寿命になる、なぜ勤務延長できない、なぜ働けなくなるのか」

 やっと4回の「なぜ」を繰り返しまいたが、「なぜ」の「樹形図」を書かなければならないようです。
 皆様がお考えになると、もっともっと違った「なぜ」も出てくると思われますが、いずれにしても、4回でもかなり問題点が具体化して来るような気がします。

 次は4回目の「なぜ」の理由を見つけながら、問題に少し軽重をつけてみるのはどうでしょうか。

消費性向の引き上げのために

2017年01月26日 16時56分28秒 | 経済
消費性向の引き上げのために
 世界の国々の中でも、日本ほど健全な経済を維持している国はそうありません。しかも日本は、国土は狭く、資源をほとんど持たない国です。
 日本がこんな良い国になれた理由は何かと考えますと、やはり「日本人が真面目に働いたから」という事ではないでしょうか。

 戦後の高度成長で世界を驚かせ、世界が震撼した二回のオイルショックの後は、いち早く経済体制を建て直し、ジャパンアズナンバーワンと言われ、あまりパフォーマンスが良すぎて主要国から妬まれた結果のプラザ合意による円高で、「失われた20年」を強いられましたが、2014年からの為替レート正常化で、今またトランプ大統領から「アメリカに損害を与えている」と言われるほどの強い経済状態を回復してきました。

 海外から見ればそうした日本ですが、日本人特有の「キリギリスでなく蟻であれ」という勤倹貯蓄精神、「朝三暮四の故事」から学ぶ先憂後楽の思想、などが、時に強すぎ、(もちろんカネが無くても借りて使ってしまうよりずっといいのですが)それが災いして逆に経済成長の足かせになるほどの堅実さを実践してしまっているようです。

 今、日本経済は、政府・日銀が思っているような順調は成長路線になかなか行き着くことが出来ません。その最大の原因は、所得が増えても、消費は伸びない消費不振というところにあるという事はほとんど一致した意見でしょう。
 これは経済指標で言えば、「消費性向の低下」という事になります。

 このブログでも繰り返し取り上げています、この消費性向の低下問題は、こうした日本人の良い特性が、偶々マイナスに出てしまったことに原因があるようです。
 という事は、これは決して日本国民自体の考え方が間違っているのではなく、その考え方は大変結構なのですが、それが適切な成果をもたらすことが出来るような環境条件が準備されていないという事から来ているのでしょう。

 環境条件が整備されない理由はいろいろあるでしょう。勿論、国内だけでなく、国際環境条件が良くないこともあるでしょう。しかし、一国の国民が、良い特性を持ちながら、それがうまく発揮できないという責任は、国民にあるのではなく、国の政策にあると考えるのが合理的でしょう。

 安倍政権の方策は「官製春闘4年」と言われるように、「賃上げ奨励」ぐらいが主要な対策で、ほとんどは国民が消費を「したくなくなる」、当面「カネは使わない方がよさそうだ」と考えさせるようなものになっているようです。

 国際関係もますます厳しくなりそうです。この問題は、政府として、本格的に取り組む必要がるのでしょう。
 今の状態では、いくら政府が高めの経済見通しを立てても、日銀が物価を2%上げようとしてもダメでしょう。

 何とかならないものか、皆さんと一緒に考えてみたいと思うのですが・・・・・。

トランプ大統領のアメリカ:それでもアメリカを大切に

2017年01月24日 10時51分37秒 | 国際政治
トランプ大統領のアメリカ:それでもアメリカを大切に
 トランプ大統領の就任演説を中心に、そこから読み取れる被害者意識の強さと内包する危険性、経済政策の持つ多くの矛盾と巧く行かない可能性について見てきました。
 今日のニュースでは、トランプ大統領は「日本は国内でアメリカの車を売りにくくしている」と日本の貿易姿勢を批判したとのことです。

 これからの日本は、トランプ大統領への対応に苦労することも多いでしょう。しかし結局、最後に指摘したいのは「やっぱりアメリカを大切にしましょう」という事です。

 戦後は随分アメリカのお世話になりました。戦後、日本人が急速に平和で民主的な国民に変わり得たのも(日本人の本卦返りというベースがあったとしても)良心的で優れたアメリカ人の協力があったことは大きいと思います。

 戦後日本の高度成長期を支えたリーダーの中にも、アメリカで教育を受けた多くの人々がいました。
 今でも、プロ野球やゴルフだけでなく、多様な芸術分野、企業・起業分野、さらには自然科学や社会科学といったアカデミアでもアメリカで学び活躍している日本人、またそれを目指す人は多いのです。

 やはりアメリカは地球社会における多様な分野での活躍のアリーナなのでしょう。
 そのアメリカが今、分断の危機にあるようです。未だに各地で反トランプのデモが続いているようで、トランプ大統領が就任演説で掲げた「アメリカが纏まれば、アメリカは止まらない」というところまで行き着くのは大変でしょう。

 反トランプのデモは世界中に飛び火しているようですが、分断は破壊をもたらすだけです。日本ではこうした運動はないようですが、それは日本人の本来の姿、争いを好まず、「和」を基調に、共存、共生、共益といった基本的な考え方、態度が好きだからでしょう。

 このブログでは繰り返し述べていますが、「 多様なDNAの集合体」である日本人は、1万有余年という長い縄文時代の中で、争わず、征服・被征服、奴隷制度といった文化を持たず、しかも一部地域の特産品であるヒスイや黒曜石は日本全土に分布するという共生、共益の社会を作ったようです。この記憶は日本人の海馬の中に蓄積されています。

 トランプ大統領の勝利はまさに僅差でした。多くのアメリカ人はトランプ大統領の考えに疑問を感じているでしょうし、トランプ政権内部にも、多様な考え方があるようです。
 かつてアメリカにお世話になった日本は、超大国アメリカが被害者意識をベースにするような国にならないように、アメリカのためを思い恩返しをするチャンスと考えるべきではないでしょうか。

 付き合い方は難しいと思います。しかしこれは、日本の自立した外交力を磨くチャンスでもあります。

トランプ大統領のアメリカ:経済政策は矛盾の集積

2017年01月23日 11時07分34秒 | 国際経済
トランプ大統領のアメリカ:経済政策は矛盾の集積
 トランプ大統領の最大のアッピールは「雇用の創出」です。
 皆様ご存知のように、雇用は従属変数で、主体は生産活動です。ですから景気動向指数でも、雇用は遅行指標です。

 経済が活況を呈して初めて雇用は増えるのですが、就任演説の中でも主張しているのは、先ず、海外(特にメキシコ)からの労働力(不法就労)の流入を止めることで、これは当面アメリカ人の雇用を増やすことには合理性を持つでしょう。

 経済活動の活発化については、先ずインフラの整備に1兆ドルの投資でしょう。経済活動活性化、雇用の創出のルールは簡単「buy American, hire American」と言います。

 確かにそれが出来れば雇用は増ええるでしょう。問題は、そうした政策が現実に実施、実行できるかどうかです。
 この辺りは、来月になるトランプ予算教書で、ある程度具体的な政策は出てくるのでしょうが、単純にアメリカ経済の収支計算をしてみても、かなり難しそうです。

 1兆ドルのインフラ整備にしても、今のアメリカのインフラ老朽化を考えれば、とても足りないでしょう。さらにそのカネは政府が出すのではなく、民間の力でという考え方のようですが、経験的にみても容易ではないでしょう。
 マネーゲーマーたちにカネを出させるというのでしょうか。

 もし政府が出さなければならないとすれば、政府の赤字は増えるでしょう。アメリカの痼疾でもある双子の赤字の深刻化懸念は付きまといます。
 何れにしても経常赤字が増大する可能性は高いでしょう。そのファイナンスは、ドッド・フランク法を廃止し国際マネーゲームで調達でしょうか。

 バイ・アメリカンも愛国精神に訴える効果はあるでしょう。かつても、日本製の車を街頭で叩き壊したり、輸入反対の動きはありました。
しかし、アメリカの消費者が、愛国心と同時に「良い品を安く」と考えれば、外国製品はアメリカに入ります。国境で自由経済の流れを完全にストップすることはできません。
自由経済をやめることは猶更出来ないでしょう。

 もし、buy American hire American を徹底すれば、アメリカの物価は上がらざるを得ないでしょう。実質賃金が下がるのは我慢できないでしょうから、賃上げ圧力が強まって、コストインフレになる可能性が高くなります。

 割高のアメリカ製品は、外国では売れないでしょう。アメリカの国際競争力は落ちます。ならば、ドル切下げで競争力をつけるのでしょうか。金融市場の操作はお手の物というのではないでしょうが。

 このジレンマを脱出する方法は大きく2つあるように思います。1つは、シェ―ル・エネルギーを増産して外貨を稼ぐ、つまり産油国になる道です。
 もう1つは、「外国の国境を守る」ことをやめ、核を含む軍縮で原資を賄うことですが、核増強が主張されているようで、難しいでしょう。

 このブログでは、企業のCSR になぞらえて、国については NGR(nation’ s global responsibility)という概念を提唱していますが。いずれにしても、アメリカさえ良ければになりそうで、この概念からは遠いようです。

 アメリカの取るべき王道は、アメリカ(の国民)が徹底して働き、浪費より貯蓄を旨とし、技術分野でも、働き方の分野でも、かつての様に世界に冠たる地位を占めることでしょう。経済指標では「経常黒字国」という形で示されます。

 世界の覇権国、基軸通貨国が、第二次大戦後のような、実力のあるアメリカを取り戻すことがトランプ大統領の念願でしょう。アメリカの成功を願いつつも、例え成功しても、何か一時代遅れたアメリカが誕生するような気がします。

トランプ大統領のアメリカ:被害者意識が基調

2017年01月22日 12時17分18秒 | 国際政治
トランプ大統領のアメリカ:被害者意識が基調
 今日になると、マスコミでも、トランプ大統領の就任演説全文、細かい解釈などいろいろ出てきています。克明にトレースされた方も多いのではないかと思います。何せ、日本の今後に大きな影響を持つ可能性が大きいものですから。

 今回は、アメリカの被害者意識の問題を取り上げてみたいと思います。

 アメリカは世界に君臨する超大国、覇権国であり、基軸通貨国です。
 第一次世界大戦後、世界の平和を目指して設立された国際連盟にはアメリカは加盟せず、本部は永世中立国であるスイスのジュネーブにありましたが、第二次大戦後はアメリカが主導して国際連合(国連:UN)を作り、本部をニューヨークに置いています。

 こうした経緯からも、アメリカが世界のリーダーを自任していたことはわかります。
 今回のトランプ大統領の就任演説でも「これから我々の手で、アメリカそして世界(world)の進路を決めよう」と言っていますように、「世界のリーダー」としての気概は持っていると思われます。

 しかしその反面、「アメリカは自らの犠牲で外国を豊かにしてきた、自国の国境を守らず他国の国境を守ってきた」と言い、「これからはAmerica first、 国境の防衛こそがアメリな繁栄をもたらす、buy American hire American、アメリカは勝者となる」と自国中心主義を明確にしています。

 その背後にあるのは、アメリカは損ばかりしてきたという被害者意識でしょう。
 確かに、戦後のマーシャル・プラン、ガリオア・エロア資金の様に敗戦国に対しても寛大な政策をとったアメリカでしたが、当時の「バターも大砲も」と言われた強大な経済力を誇るアメリカには、被害者意識は全くなかったでしょう。

 しかし、トランプ大統領の就任演説から読みとれるのは「世界のために、アメリカは損ばかりしている」という強烈な被害者意識です。
 その被害者意識が、格差社会化を強めているアメリカ社会の中で、多くのアメリカ市民の共感と重なり合い、トランプ政権が誕生したのでしょう。

 しかし本当にアメリカは被害者なのでしょうか。経済的な面で見れば、アメリカはいろいろなところで加害者です。
 最大の加害はサブプライムローンで自国の経済を維持し、そのツケを、リーマンショックで世界中の金融機関のB/Sに大穴をあけるという形で処理したことは記憶に新しいと思います。その結果、世界の庶民の貯蓄も大きな負担させられました。

 日本で言えば、プラザ合意による大幅な円高もそうでしょう、日本人は被害者意識は持たず、自助努力で対応しましたが、中国は日本の経験に学び、人民元高を強硬に拒否した経験を持ちます。

 今また、トランプ大統領は、人民元切り上げに言及しています。経済的に言えば、こうした問題は、どちらが加害者か被害者かは、判定の難しい問題でしょう。

 つい先日「 ポピュリズムの本当の恐ろしさ」でアメリカもロシアも中国も、みんな被害者意識を持っていると書きました。一体、加害者はどこにいるのでしょう。(被害者意識の恐ろしさは、嵩じると往々行動が良識を逸脱する事です。極端ですが、オウムやISのようなテロ行為も、被害者意識の異常な進行の結果でしょう)

 世界の覇権国、基軸通貨国が被害者意識を強めたとき、世界の政治、経済、社会はどんなことになるのでしょうか。あまり経験のないことだけに、いろいろと心配です。

トランプ大統領就任演説、概要と雑感

2017年01月21日 15時43分39秒 | 国際政治
トランプ大統領就任演説、概要と雑感
 新聞に全文の紹介がなかったので、ネットで呼び出してコピーし、よく読んでみました。文章はたいへん短く区切られていて、読みやすく、解りやすい文章でした。

 トランプ大統領の支持派だけでなく、アメリカ人ならば、賛同したくなる文言がたくさん織り込まれていました。最後のところは、箇条書きで、こんな表現ですね。

・皆さんと一緒に、再びアメリカを強く
・アメリカを再び豊かに
・アメリカの誇り再び
・アメリカを再び安全な国に
・そして共にアメリカを再び偉大な国にしましょう
神の祝福が皆さんとアメリカの上にありますように。

 演説の最初の所で、world という言葉が2つ使ってありまして、先ず謝辞で出席の要人に続いてfellow Americans, and people of the world:Thank you.と言っています。
 そのあと、アメリカ市民は偉大な国の再建に集う、と言った後、来たるべき年月、我々は共に、アメリカそして世界(world)の進路を決めよう、と言っています。

 やはりアメリカは世界のリーダーという意識は確り持っているのでしょう。世界の警察官はやめるという発言との関係は、「取り締まるのではなく、皆がついてくる」という事のようです(後述)。アメリカが豊かさと偉大さを取り戻した時、世界はついてくるというのでしょうか。

 政治家批判は強烈です、「これまではワシントン(政治家)が繁栄し、全国に行き渡らなかった、しかしこれからは皆さん(people)が中心です」「都市の貧困家庭、工場の荒廃、犯罪や薬物は今日から正し、一つの心で一つの栄光の国を創ろう」といいます。

 そしてそのすぐ後で、「アメリカは自らの犠牲で外国を豊かにしてきた、自国の国境を守らず他国の国境を守ってきた」「アメリカのインフラは劣化、失業は増え、産業は空洞化した」「こに宣言する、皆(外国資本も)聞いてほしい、今日からAmerica first だ」と続け、「国境の防護こそが繁栄をもたらす」と言っています。そして「アメリカは勝者になる」と。

 トランプ大統領に持論が、それに続きます。
「我われは素晴らしい国づくりのためにも、インフラを作り直さなければならない」「そのために重要なのは、福祉から仕事へだ、仕事が国を創る」「ルールは簡単、 buy Americanとhire Americanだ」「勿論世界の国々とは友好と善意で付き合う、ただし自国の利害が第一という了解が前提」「アメリカは強制しない、皆が見習うだけ」「イスラムのテロは根絶すべきもの」「政治の基盤はアメリカへの献身、愛国心があれば偏見はあり得ない」「率直に議論すれば、それが団結につながる」「アメリカがまとまればアメリカは止まらない」「アメリカは偉大な軍事力、何よりも神によって守られている」と述べています。

 そして最後に、有言実行を説きます、「口だけの政治家は不要、今は実行の時」「我々は新世紀の入り口にいる」と言い、これからのアメリカの夢として、「スペース、薬品、エネルギー、明日の産業技術」と、新生アメリカのフロンティアを示しています。
 さらにそれを可能にする条件という事でしょう、アメリカの団結を強調しています。「肌の色は違っても同じ赤い血が流れている」と。
 「アメリカの何処に生まれようと何処にいようと、あなた方は無視されることはない」「あなた方の勇気と善意がアメリカのこれからを作る」と明言し、そこから冒頭の「・印」の5行になります。

 アメリカらしいと言えばそうでしょう、しかし古き良きアメリカを彷彿させます。世界はこうした時代を過ぎて、新しいグローバルな地球社会を目指しているのでしょう。それも昨日まではアメリカ主導で。

 すでに皆様お気づきのように、問題点は沢山あります。長くなるので、今日はまず紹介だけにします。問題点は皆様と一緒に考えましょう。

平成29年度「政府経済見通し」閣議決定

2017年01月20日 16時11分49秒 | 経済
平成29年度「政府経済見通し」閣議決定
 年末に、閣議了解の「政府経済見通し」の主要な数字についてみましたが、きょう閣議決定版が出ました。

 閣議決定版では雇用者報酬の数字なども示され、政府が来年度の賃上げをどう考えているかもわかりますのでその辺りだけ取り急ぎ見てみます。

 雇用者報酬の総額の伸びは(名目値です)27年度(実績)1.5%、28年度(実績見込み)1.8%、29年度(見通し)2.1%で、年々少しづつ上がると見ています。春闘情勢から見れば、些か楽観的かなと思いますが如何でしょう。

 雇用者数の伸びは、それぞれの年度で、1.0%、1.2%、0.8%ですから、差し引きして、雇用者1人当たりの人件費の伸びは0.5%、0.6%、1.3%という事になり、今年は昨年の倍以上の伸びとなっています。雇用があまり伸びないから1人当たりは増えるというところです。

 一方、2パーセントインフレを目指す政府は29年度の消費者物価の上昇率を1.1%とみていますから、それ以上の数字でないと実質賃金マイナスの見通しなどと言われかねず、政府としても難しい所なのでしょう。

 29年度の民間最終消費支出の伸びは、前回も触れましたように、名目で1.6%ですから、勤労者の平均消費性向は上がると見ていると思われます。この所の低下傾向が反転すれば結構ですが、何か良い施策があっての見通しでしょうか。下がり過ぎたから反転とみているのかもしれません。

 ところでアメリカの今日、1月20日はトランプさんが大統領に就任する日です。さて、就任演説で何を言われるか、その辺りで、これらの数字も多分に影響を受けそうです。

 29年度の平均円レートは111.5円としてありますが、明日の朝のニュースで、どんな展開が待っていますか、平成29年度は、先行きの読みにくい、難しい年になりそうです。

アメリカが最強の為替操作国に?

2017年01月19日 11時47分44秒 | 国際経済
アメリカが最強の為替操作国に?
 トランプさんはいよいよ明日、アメリカの大統領に就任しますが、さて、どんな大統領が生まれるのでしょうか。

 選挙期間週にトランプさんは、中国を名指しで「為替操作国」と指摘し、最近も、中国の安価な製品がアメリカの雇用を奪っていると言っているようです。
 一方、中国の方は、かつては人民元安を経済の生命線のように考え、アメリカその他からの人民元切り上げ要請をかたくなに拒んできました。
 
 勿論共産党一党独裁の国家で、自由化して来ているといっても為替管理は厳然として機能している国ですから、日本などとは違います。
 しかしプラザ合意で円高を安易に受け入れて、「失われた20年」の辛酸を舐めた我々から見れば、その頑張りも羨ましく見えたことも事実です。

 しかし今、中国は、人民元安が過度に進めば、海外からの資本が引き揚げに動く危険を感じ、外貨準備が急減するほどドル売りをし、人民円安に抵抗しているようです。

 トランプさんは知ってか知らずか、アメリカの貿易不均衡はドルが高すぎるからと感じ、ドル安にする必要に言及したようです。
 折しも、FRBは利上げに動き始めています。これは当然ドル高路線です。トランプさんにしてみれば、このままドル高になれば、旗印の雇用拡大も画餅に帰しかねません。

 状況から見れば、ドル高阻止、ドル安政策は、これからのアメリカにとって必須でしょう。国境税や関税は、自由貿易協定やWTOなどいろいろ問題があります。
 しかし、マネー資本主義は為替の自由な変動を認めますし、為替の動きをリードする主要な国際投機資本の主はマンハッタン、ウォール街ににいるようです。

 トランプ政権の閣僚の顔ぶれを見れば、国際マネーゲームを知悉している方々もおられるようです。加えてトランプさんは「ドッド・フランク法」(注)の廃止も言っています。
 日本から見れば、アメリカ主導で$1=¥360と決め、その後、一時は4分の1以下の$1=¥80円にまでドル切り下げを主導した(?)アメリカです。

 アメリカが為替操作国になったら世界最強でしょう。さて、世界経済はどうなり、日本はどう備えればいいのでしょうか。
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(注)銀行の金融商品の自己売買やヘッジファンドへの貸し出しなどを規制するボルカールールを中核とする消費者保護法。

自立を要請される日本経済と労使の対応

2017年01月18日 12時28分51秒 | 経済
自立を要請される日本経済と労使の対応
 昨年12月のアメリカFRBの利上げ決定の影響か、トランプ効果か、その複合でしょうか、円安に動いていた為替レートが、ここ数日急激に円高に転じてきました。連動して株価は急速な下げ基調です。

 昨年も、同様な状態で、年初に景気見通しが急変、株価も急落という事でしたが、このブログでも再三触れますように、今の日本経済は、まさに、円レート次第といった様相です。

 もちろん日本だけではありません。どこの国でも、自国通貨のレートには極めて敏感にならざるを得ないのが実情でしょう。中国然り、EU然り、心配の仕方は違っても為替レートの乱高下は、世界経済の安定に極めて有害です。

 特に最近のような、トランプさんのツイッター次第で機関投資家の思惑が変化するような 状態というのは困ったものです。しかし、現実問題として、こうした状態は今後まだまだ続くのではないでしょうか。
 
 日本経済は、こうした困った外部環境の変化にしっかり自立して対応できるような強固で強靭な体質を持たなければならないようです。

 しかし、残念ながら、アベノミクスは第3の矢で行き詰まり、日銀の異次元緩和の効力も、マイナス金利以来神通力を失い、現状は、年80兆円の国際買い上げという異次元金融緩和を際限なく続けるしかやることがないような困った状態です。

 幸い、真面目で勤勉な日本人・日本企業の頑張りで、日本経済自体は何とかこの荒海の中を、1億2000万人を乗せて頑張っていますが、激変する環境条件の中で、苦境に陥る企業もなしとしません。

 状況は大変難しいようです。この難しい状態を、何かと思い込みの強すぎるアベノミクスで乗り切ろうというのは所詮無理ではないかという感じを持たれる方も多いのではないでしょうか。

 対外政策も確かに重要ですが、安倍さんが各国を歴訪して胸を張れるのも、日本経済があらゆる面で確りしていて、訪問する各国のために「お役に立つことが出来ます」と言えるという実態があってのことです。

 今、その日本経済の内部が大変難しい状態になりかけているというのであれば、まず大事な事は、日本経済の立て直しでしょう。

 折しも、2017春闘の労使の主張も一両日中には出揃い、日本中の企業が、何らかの形で労使の話し合いを持つ時期に入ろうとしています。
 その話し合いの場で、どんな現実、どんなデータを中心に、どんな話し合いが出来るか、その内容、そのレベルが今後の日本経済を決めていくのでしょう。

 政府は自分の主観で春闘に介入するのではなく、労使に適切な情報を提供し、レベルの高い議論をして貰い、そこから政府の取るべき政策の在り方を学び取るような、民意を汲み取る政策を実践すべきではないでしょうか。

 日本の労使が積み上げてきた春闘の多種多様な知恵の中から、政府が学ぶことは沢山あるようです。トップダウンだけではなく、ボトムアップとの組み合わせが問題の本当の解決につながるというのもその一つでしょう。

ポピュリズムの本当の恐ろしさ

2017年01月17日 14時25分12秒 | 国際関係
ポピュリズムの本当の恐ろしさ
最近の政治家たちは、往々ポピュリストと評されています。

 He is popular と言えば、「彼ならみんな知っているよ」とか「彼は人気者だ」という事でしょう。「彼は人望がある」とか「彼は評価されている」というと少し褒め過ぎという所でしょうか。

 世の政治家も、民主主義の社会では自分の地位のベースは選挙ですから、どうしてもポピュリストになる、あるいはポピュリストを装うという事になるのでしょう。
 そのためには、良い評判を作るタネになるようなことにはこまめに反応し、出来るだけマスコミに載り、握手をし、顔を売ることが大事になってきます。

 世の中が、平穏無事であれば、こうしたポピュリズムの盛行も、あまり問題なく見過ごされていくのかもしれません。みんなが賛同し、納得して、仲良く平和に過ごせれば社会は安定でしょう。

 しかし、最近の世の中は、それほど穏やかではありません。格差社会化が進んで、「少数の超豊かな人と、多くの生活に不満を持つ人」が生じたりするような社会では、政治家も不満を持つ多数の人の間でポピュラーでなければなりません。

 今回のアメリカの大統領選挙の結果は、矢張りポピュリズムが産んだものでしょう。トランプさん自身は大金持ちです、しかしトランプさんは「アメリカは今の国際情勢の中で損を強いられている 被害者だ」という立場を強調して当選しました。

 「貿易で経済的損害を被り、不法移民で雇用を奪われ、アメリカは被害者だ、それを阻止して雇用と豊かさを生み出し、偉大なアメリカを再生する」という意見に多くの有権者が反応したのでしょう。

 ポピュリズムの問題点は、「人気が出て票が取れれば」という事で済んでしまうところにありそうです。政治で本当に大事な事は、「本当に結果が出せるのか」なのですが、ポピュリズムでは通常その問題までは問われずに選挙結果が出てしまいます。

 民主主義のレベルは「民衆のレベルが決定する」というのは自明ですが、ポピュリズムの流行は「多くの人がより安易に意思決定をする風潮」を生むように感じられます。

 その上で更に恐ろしいのは、国際的にも、国内的にも、顕著になっている「格差社会化」に象徴されるような問題です。
 しかも、加害者は加害者意識がなく、ともすれば、加害者も含めて全体が皆、被害者意識を持ってしまうといった奇妙な状況が見られることです。

 アメリカも、ロシアも、中国もみんな被害者意識を持っているようです。被害者意識で人心をを収攬して国論を統一し、国民の結束を図ろうというのでしょうか。
 ポピュリズムと被害者意識、この2つが複合すると、人類社会は異常なことになりかねないのではないかと心配です。

刀狩り、銃砲刀剣所持等取締法と核兵器禁止問題

2017年01月16日 16時29分00秒 | 国際政治
刀狩り、銃砲刀剣所持等取締法と核兵器禁止問題
 核兵器問題の取り上げ方として、あまりにもアナクロニズムと言われるかもしれませんが、人間が人間を殺傷する道具をどう取り扱うかという問題としては、基本的な共通点があると思い取り上げてみました。

 刀狩りには、支配階級が被支配階級を統治する際の便宜を考えてという理解が一般的かもしれません。 
 しかし、争いの絶えない社会で、争いが起きても、なるべく人の生死に至るようなことにならないようにという意識もあったと考えています。

 この、人間として普遍的と思われる、人の安全を重視する意識は、今の銃砲刀剣所持等取締法では極めて明白でしょう。
 勿論統治する側の統治を容易にするという意識(効果)もあるでしょうし、反社会的組織の活動などを考えれば、それも大事な役割でしょう。

 それでは今の核拡散防止条約とか、 核兵器禁止条約というのはどうでしょうか。
 これは本来、国連の常任理事国だけが核兵器を持つことが出来、それ以外の国は持てないという形のものでした。第二次大戦で勝った連合国の主要5か国、国連の常任理事国だけが核保有が出来るというものです。
 世界の恒久平和を目指して国連を組織したこの5か国が一致して国連を世界の中央政府の様に盛り立てていくという事であればそれは世界平和、核不拡散の第一歩になったのでしょう。

 しかし現実には、第二次大戦の連合国と枢軸国の対立は解消し、代わりに、連合国の中の米ソが戦後世界の対立国となり、最近は中国の台頭で、連合国(常任理事国)の中での対立が世界の主要な対立という事態です。

 これでは、核の管理をこの5か国に任せるわけには行かない、出来る所は自分も核保有国にというのは自然の成り行きでしょう。核不拡散は有名無実化しました。
 トランプ政権の発足で米ロ関係は予測不能ですが、米中関係は対立の激化を予測する人も多い状態です。

 刀狩りの故事に倣えば、核兵器は、中央政府であるべき国連が管理して、初めて実効性のあるものになるのでしょう。常任理事国5カ国だけが核兵器を持つことが出来るというのは、本来それ(国連管理)に至るプロセスロして存在すべきものではなかったのでしょうか。

 今や核兵器は、昔と違い、簡単に(?)作れる(オウム真理教のサリン製造より難しいにしても)ものになりつつあります。テロ集団が開発しないとも限りません。

 一般市民は銃砲刀剣等は持つべきでない、しかし中央政府(警察システム)が丸腰では、これはまた人類にとっての危機でしょう。核抑止力の行使は国連の権限であってしかるべきなのでしょう。

 核兵器廃絶は理想です。理想ではありますが、それは、核兵器の国連管理の次に来る、人類はもはや争うなどという事は毛頭考えないという、理想の時代に本当にふさわしいものなのでしょう。

 核保有を公的に許された国連の常任理事国が対立抗争を深めているような状態の中で、唯一の被爆国と言っても、日本国民に責任を持つ日本国政府が、いかなる対応をすれば本当に褒められるのか、これは大変難しい問題ですね。

ジャパンシンドロームは消えたか?

2017年01月14日 12時34分48秒 | 社会
ジャパンシンドロームは消えたか?
 2011年ごろでしたか「ジャパン・シンドローム」という言葉が流行りました。合計特殊出生率が1.26人まで下がり、将来日本の人口は半分以下になり、そこからさまざまな対応困難な問題が発生する、日本の将来は心配だといった内容でした。

 その後、合計特殊出生率の徐々に改善し2015年には1.46人に上昇、その後も強含みのようです。
 同時に、円レートの正常化で日本経済が元気を取り戻したことの効果の方が大きかったのでしょうか、一時の流行後も死語になりつつあります。

 しかし未だこの亡霊が残っている面があるようなのが、公的年金を中心にした漠然とした老後不安の問題です。
 先日触れました公的年金のマクロスライド問題などに代表されるのかもしれません。

 確かに年金問題は、支える人と支えられる人の比率が決定的に影響しますから過去の出生率低下の影響は避けられません。だからと言って、深刻度を増す老後不安で、景気が回復しても、貯蓄ばかり増えて、消費が増えず、経済成長の深刻なブレーキになるほどの事でしょうか。

 人口減少はそんなに大きな問題でしょうか。人口が増え続けなければ、経済成長は出来ないのでしょうか。
 そんなことはありません。人口減少率より経済成長率を高めれば、1人当たりの豊かさは増すのです。

 数字で言えば、人口減少はせいぜい年1パーセント以下です。それ以上の経済成長をすれば、国民一人一人の豊かさは増します。
 もっと身近の表現で言えば、働く人が工夫して生産性を2%上げれば、1%の人口減を支えてなお1%の豊かさの増加が手に出来ます。
 あとは、国民1人当たり増えた1%の豊かさの配分をどうするかです。

 人口減少は悪い面だけではありません。例えば、高度成長期のサラリーマンは住宅の確保に膨大な負担をしなければなりませんでした、次の世代は、その住宅の良さを引き継ぐことが出来、この点では1代前よりずっと楽に住宅確保が可能です。
 超満員だった通勤地獄や、道路事情も、1代、2代前よりずっと良くなります。

 便利なところは大いに活用し、足りない所はすこし頑張れば「平均的には」ジャパン・シンドロームは消えるはずです。

 これからの最も重要な問題は、国民1人当たり増えた豊かさを、如何に適切に配分するか(実はいつの世でも変わらない問題ですが)でしょう。
 これから起きてくる先行き不安、特に老後不安の問題は、決して豊かさの総体の大きさの不足ではなく、その配分の失敗、広く言えば格差社会化によるという事になるのでしょう。

 日本経済が曲がりなりにも成長経済を取り戻す中で、老後不安が深刻化する、あるいは子育て不安、教育負担が社会を不安にするような状態は、GDP,国民所得の配分を、社会保障、次世代の育成に、如何に配分すべきかについて、政府の考えと国民の考えがずれているところから発生するのではないでしょうか。

 「 コンセンサス社会の作法」でも書きましたが、日本人は、最も合理的な意見を理解し、コンセンサスができれば、協力して推進できる真面目さと能力を持っていると思っています。
 数の論理、強行採決頼みではなくそのための制度を、どう構築できるかでしょう。