tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

主役だれ? 明日の経済 年の暮れ

2023年12月30日 14時01分20秒 | 経済

政治の泥沼を這いまわっているニュースの中ですが、経済面では、昨日今日のニュースは、「2023年、日経平均は28%上昇」というのがトップのようです。

確かに株は上がりました。しかし株価が上ってもGDPが増えなければ日本人の生活はよくなりません。ウォーレン・バフェットが日本株を囃して海外の日本株買いがあったり、アメリカの金利引き上げで円安になり為替差益で潤ったりしましたが、来年は円高のようです。

日本の実体経済は相変わらず停滞のまま年を越すことになりますが、過ぎたことは仕方がないとして、その中から学ぶべきことを学び、来年に生かしてこそが発展のプロセスでしょう。

その意味で大事なのは、アベノミクス以来の、何でも政府が主導し、政治分野では、野党はその欠陥を突くことでけに専念し、自分たちが政権を取ったらどんな日本にするかという一番大事な主張を忘れているのではないかといった問題があります。

そして経済分野では、政府が赤字国債を原資にいろいろな補助金や給付金を出すのに迎合し、もっと手厚くと言ったり、雇用や働き方まで政府が指導したりで、民間産業の自立、労使の協力が基本といった民間の自主性や気概の希薄化が顕著の様に思われます。

嘗ては民営化が大きな課題でしたが、これは産業の発展には民間の自主性と自立が大事という基本に基づくものでしょう。経済は官営では上手く行かないのです。

そして、産業の自主・自立にさらに踏み込めば、SDGsの理念に基づく付加価値生産性の向上こそが産業の使命であり、その実現のためには、生産性向上を実現する労働と資本の組み合わせ、そのベースとなる労使関係、就中、賃金決定が重要なのです。

その賃金決定についてまで、政府が発言し、それに影響されるようでは、産業の自立は望めません。

戦後の日本産業の発展は、試行錯誤を繰り返しながらも、労使がその立場を主張し、付加価値生産性の向上と、労使の分配関係ありかたを、年々の春闘の経験の中で積み上げ、その成果で、欧米がスタグフレーションの呻吟する中、「ジャパンアスナンバーワン」と言われるまでになっているのが日本の経験です。

この成功は「プラザ合意」の円高により一挙に突き崩されました。それから約30年、黒田日銀による円レートの正常化でようやく円レートは正常化されました。

残念ながら、円レート正常化にも拘らず、その後のアベノミクス流の政府主導方式が、円高対策で疲れ果てた日本産業界の自主性回復を阻害する事になってしまいました。

昨年に至って、長らく失われた産業界の自主性回復の動きが出て来たようです。パッチワークばかりの政府に愛想が尽きたのか、コロナ終息で元気が出たのか、矢張り産業界、産業労使は自力で経済・産業活動を回復すべきという雰囲気が感じられます。

消費者物価を押し上げている一斉値上の動きも、その表れでしょう。これに対して労働組合の賃上げ意欲の高まりも生まれつつあります。

これを単なる労使紛争でなく「労使こそが産業の発展を担う原動力」というより高邁なレベルに引き上げる(かつての日本の労使関係を思い起こす)動きも見えるようです。

来年の日本経済は、こうした動きの進捗に支えられた新時代の動きの出発点にしたいものです。


混沌の 政治の中で 年は暮れ

2023年12月29日 14時36分38秒 | 政治

令和5年、2023年も暮れようとしています。新聞の紙面にも、テレビのニュースにも、新しい年は来るけれども、来年の日本はどうなるのかなと気に懸る事の多い年の暮れです。

国会の解散があるのか、総選挙になるのかなどという声もあった中で、岸田政権は、日本は平穏無事であるがごとくに、国債を発行して、岸田流経済対策を掲げて内政、外交に忙しいようです。

しかし今年の日本経済はあまり良いものではありませんでした。春闘の賃上げが少し高かったという事で、日本経済も元気が出るかと思いましたが、政府の意に反して物価が上がり、実質賃金の対前年マイナス記録が連続19カ月に伸びています。

良いことを探せば、円安が急進、輸出関連企業の為替差益が拡大、日経平均3万4千円に近づいたりしましたが、これはマネーゲームの世界で、先行きは不透明です。

良くない事の方が圧倒的に多い中でも、政治とカネの問題は異常でしょう。実はここまでひどい状態だったことが、安倍さんが居なくなったので明らかになったようです。

事は安倍政権の時から深刻化していて、裏金が自民党の中では裏金でなくなっていたようです。外と中では倫理基準が違うという異常な事になっていたのです。

何故こんなことになったかと言えば、成長と分配の好循環ならぬ「政治権力とカネの好循環」を作り出し、自民党の長期政権の基礎固めが目的だったのでしょう。

そして政治家は、国のためを言いながら、内実は選挙に勝つ。政権維持こそが最大の目標といった意識に捕らわれてしまったのではないでしょうか。

政治とカネの問題と並んで、沖縄の基地問題も、日本人の心を暗くしている大きな要素です。沖縄の民意とは裏腹の事が国の力で強行されるという、民主主義と違うのではないかという現実が進み、今日が国の代執行が始まる日でしょうか。

事は総てアメリカの方針に沿って進められているという見方が一層強くなっているようですが、状況証拠としては、その可能性が大きい事を多くの人が感じているようです。

政治とカネの異常さ、沖縄の民意の無視といった報道が日本国民の気持ちを暗くしている中で、嘗ての武器輸出三原則の見直しが進んでいる事も、国民の心を暗くしています。パトリオットを日本で作り、アメリカに輸出する事を決めたようです。

これにはロシアが即座に、それがウクライナで使われれば日本にとって重大な結果をもたらうすとコメントしています。

日米関係の裏表、我々には知らされない事ですが、嘗ての経験、現在の諸状況から判断すれば、アメリカの意向には、日本国民の意見と相容れなくても従おうとするような政権の態度を感じます。

残念なことですが、日本の主権は日本の国民に在るという民主主義の基本を現政権はどう考えているのかと一層気持ちを暗くする年の暮れではないでしょうか。

それだけに来年への期待を一層強めるところです。


賃金雑感-労働とおカネの接点- 

2023年12月28日 17時41分50秒 | 労働問題

今年から来年にかけて、来春闘と中心に、賃金に関わる議論が活発になりそうです。

普通なら、金融政策で金利水準や金利や通貨の量的調節、それに絡んで国債発行の問題などが専門の日本銀行さえも、来年の賃上げがどうなるかに強い関心を持っているのです。

このブログは、実は賃金というのは大変大事で、経済社会の安定的な発展の基本的部分に深く関係していると考えています。

経済社会は基本的に、人間とカネの関係、そのバランスで動いているというのは、昔から経済学者の研究のベースになっていたようです。

経済原論では、生産の3要素として、土地、労働、資本と教えてくれましたが、今は土地は資本の中に含まれ、産業活動は「人間と資本」で成り立っていると言われます。

このブログでは企業というのは「人間が資本を使って付加価値の生産をするシステム」と定義しています。

そして企業などが作った付加価値の総合計がGDPで、国民経済はその付加価値を生産要素である人間(労働)と資本に分配し、翌年の生産の準備をするという事になっているのです。

付加価値が順調に増えれば労働に分配される分も順調に増えて行くわけです。

付加価値が労働に分配される具体的な形が「賃金」ですから、「賃金」は「おカネと労働の接点」なのです。

2つある生産要素の接点が賃金なのですから、こんな重要なポイントはありません。つまり賃金決定の在り方を見ていれば、生産活動、経済活動がどうなるかという事は一番よくわかるという事になります。

先ず、分配が賃金の方に寄りすぎると資本が不足して生産が増えない。資本により過ぎると生産は増えても需要が無いから生産物が売れない。インフレとデフレの原因です。

賃金の配分が不公平になりますと、格差社会になって社会に不満が生まれ、社会が混乱したり劣化したりします。

では、政府は何をするのかと言いますと、人間への分配と資本への分配の夫々から税金を取って、政府への分配とし、それを使って、その国の経済活動が順調にいくように、適切なルールを作って、国全体としての調節をするのが役割でしょう。

大方の経済問題は、これらのプレーヤー(政・労・使)の行動が自分の利害を優先して、全体の調和に失敗するのが原因です。

複数の失敗が重複すると、解決はなかなか難しいことになります。日本経済の現状は、政府、労働、使用者の3者がそれぞれ失敗したことによるように思われますが、政府の失敗が最も大きいようです。

問題解決のために、金融専門の日銀が、学者の総裁を迎え、客観的な目で見て頂こうという事のようですが、今回は日銀が「賃金」に注目している事が示しますように、「賃金決定」がやっぱり重要な日本経済復活の鍵という事になるのでしょう。


2024年度政府経済見通しを見る

2023年12月27日 15時28分19秒 | 経済

12月21日に来年度の政府経済見通しが発表されています。来年度予算が未確定ですから閣議了解の段階で閣議決定は年が明けてからですが、多分大きく変わらないと思いますので要点を見ておきたいと思います。

数字は22年度(実績)、23年度(実績見込み)、24年度(見通し)という形ですが、一番大事な経済成長率について見ますと

        2022年度 2023年度 2024年度(単位:%) 

名目成長率    2.3    5.5    3.0 

実質成長率    1.5    1.6    1.3

という事で、来年度は名目でも実質でも今年度より下がることになっています。今年はインフレがひどい年ですから名目が5.5%と高いのは当然ですが、実質成長率も高くなるようです。

それに引き換え、来年は過去2年と較べても0.1~0.2ポイント下がるというのは意外というか、残念な感じです。

去年から今年にかけて19カ月連続で実質賃金が前年比マイナス続きといった実績があるわけですから、来年度は今年度より実質成長が下がるという事になりますと一体どうなるのですかといった感じです。 

ということで国民の生活実感に直結する実質民間最終消費支出を見てみますと、今年度の伸びは僅か0.1%になっています。(民間住宅建設と輸出で成長率を稼ぐという形です)

それが来年度は1.2%になっています。つまり、インフレが収まるからその分実質消費支出が増えるという計算です。(インフレがおまく収まったくれますように)

閣議了解の段階では雇用者報酬の数字はありませんから、政府が賃上げをどう見ているかはわかりませんが、昨年度の消費支出の伸びが実質2.7%ですから、増えたと言っても来年度は昨年度の半分以下の伸びに止まるという事になります。

政府が賃上げを奨励し、最低賃金の大幅アップの方針を出し、主要労組が大幅な賃上げ要求を打ち出し、賃金上昇の期待がもたれ、更にインフレの鎮静化が予想される中で、昨年度の半分も実質消費が伸びないという政府の見込みは、一寸納得しにくいところです。

これでは、政府の言う「成長と分配の好循環」が、何時になったら回り始めるのか、国民の期待に応えられないでしょうし、演説は演説で、発表する数字は別という事になってしまいます。

子育てについては各種の給付金、教育の無料化の拡大、各種関連施設などの充実が言われ、高齢者福祉のための介護労働力などの待遇改善などが言われる中ですから、それでは政府の消費支出が増えるんかと見ますと、公需の寄与度は実質0.2%増で今年度と同じです。

民需の寄与度が実質1.2%で、合計1.4%でこれから外需の寄与度(貿易収支のマイナス)-0.1%を入れれば、実質経済成長率1.3%という事になっています。

民間住宅は落ち込んでいますが、民間企業の設備投資は実質3.3%の伸びで、内需寄与度の1.4%に貢献するという見通しになっているわけです。

元気なのは、企業の設備投資、これが相変わらずの主役、民間消費は貢献度は大きいが伸び率は企業設備より小さい、これでは、消費が牽引する成長経済にはまだまだ行き着かないという政府見通しのようです。

付け加えますと、就業人口は2024年も0.2%(前2年は0.3%)の伸びで、人口減少、高齢化でも、働く人の数は増えているのですから、人口構成が経済成長のマイナス要因にはなっていない(就業人口で見る限り)という事です。


製造業の付加価値率の推移と春闘展望

2023年12月26日 14時47分16秒 | 経営

来春闘に向けて、金属労協や基幹労連が本気でこれまでの停滞した春闘の殻を破るような賃上げの要求基準を打ち出したことは、日本経済の沈滞からの脱出を、賃金決定の面から牽引しようという意気込みと読んで応援するところです。

しかし、本気の賃上げ要求に応える企業の方の状況はどうかという事で企業経営に関連する統計指標を見てみました。

重要なものを1つだけグラフにしましたが、それは「付加価値率」です。

付加価値率というのは「付加価値/売上高」(%表示)で企業がより効率的に付加価値を作り出しているかを示す数字です。

日本中で生産された付加価値の合計がGDP ですから経済成長のためには、まず企業の売上高が増えること、そして付加価値率が向上することが大事です。

付加価値率の向上は、基本的には技術革新を始めとした多様な新機軸の開発が支えます。企業社会は競争社会ですから、同じものを同じように作って売っていれば付加価値率は下がります。

ですから、付加価値率向上は、企業の創造力、元気度、活性化度などの指標であると言われることが多いわけです。

魅力ある新製品をどんどん市場に出すような企業は付加価値率が高くなります。

そして、大事なことは、生産された付加価値は、その企業の労使に分配されることです。

支出項目でいえば、人件費と資本費、資本費は通常支払金利と利益です。利益の中から法人税と株主配当が支払われます。

という事で、賃上げをするには企業としては付加価値を増やす必要があり、量的な増加が売上増、質的な増加が付加価値率向上によると言えます。

法人企業統計年報で春闘を主導する製造業の2021年度までの10年間の付加価値率の動きを見たのが下図です。青い線の製造業を見ますと、コロナの影響での低下がありますが、回復して来ました。

    製造業と好調産業の付加価値率の推移(%)

                資料:財務省「法人企業統計年報」

花形の自動車産業(紫)は実はあまり付加価値率が上がりません。EVの出現で今後は変化が起きるかもしれませんが、完成し成熟した製品で付加価値率を上げるのは大変です。当然販売台数を伸ばすことが重要になります。

一方電気機械(赤)と情報通信機械(緑)は、新技術、新分野が活発な広がりを見せている分野ですから、付加価値率が上がって来ているように見受けられます。このほか産業用機械の分野でも、日本の製品の評価が上がり、付加価値率の上がっている分野もあるようです。

法人企業年報は21年度までですが、その後のニュースや決算の様子を見ても、こうした傾向はこの2年ほど続いているように思われます。

勿論、法人企業統計だけでは限界がありその後の種々の情報を加えての予測もふくめてですが、発表されている統計データの動きを見ても来春闘には追い風ではないかとった状況が見られるように思われるところです。

元気な産業、元気な労使が日本経済の明日を切り開いてくれるのではないかと思っているところです。


日本も再び独裁国家への道を辿るのか

2023年12月25日 16時24分21秒 | 政治

今朝の報道でかつてはソ連邦の機関紙だったイズべスチア紙が、ロシアの主要産業で人手不足が深刻と報じているというのがありました。

一方で、プーチンは政府の会合で、ロシアの失業率は記録的な低水準にあり、実質賃金も増加している、と自讃しているという報道もありました。

端から見れば、皆ウクライナ戦のせいで若者に動員令を出せば人手不足は当然で、若者の戦争の犠牲者や国外脱出が増えて人手不足で賃金上昇も当前と解ります。

正にロシアの悲劇の中の喜劇という感じですが、恐らくロシアではプーチンの発言を良い事と肯定する人が大勢いるのでしょう。

小学校6年生の夏まで、軍部独裁国日本の教育を受け、大本営発表が正しいと信じていた自分を省みる独裁性の恐ろしさを経験してきた世代としては、ロシア国民の多くがプーチンのいうように、賃金上昇で結構せすと思っていても、それもありうると思うのです。

それだけに独裁国とは恐ろしいものという感じを強くするのですが、よく考えてみれば、今の日本もその方向へどんどん舵を切っている事に気が付き、一瞬背筋に寒さが走ります。

独裁国家が成立してしまってからでは遅いのです。成立する前に国民が気付き、進行方向を変えなければならないのですが、ここは独裁者と国民の知恵と力比べという事になるのでしょう。

日本の独裁化が顕著に進み始めたのは2013年の第二次安倍政権の成立からでしょう。
長期不況からの脱出がままならず、国民の不満が累積というタイミングで打ち出された「決める政治」というスローガンは、国民に受け入れられたのでしょう。

日本経済不振の最大の原因だった円高を、日銀と図って一挙に円安に変えた金融政策は、国民に「頼れる」という感じを植えつけたのではないでしょうか。

それ以降の経済政策の大半は失敗でしたが、安倍総理の嘘も含めた爽やかな演説に引きつけられた国民も多かったようです。

その結果が、集団的自衛権、敵基地攻撃能力、武器輸出の再開、おまけのカジノ3か所開業という国民の望まぬ方向への展開になったという事でしょう。

それを可能にしたのが、「決める政治」を肯定した国民を次第に「独裁制」に慣れさせるための意思決定機構の改革です。

具体的には、官邸への権力の集中、これには人事権の掌握が大きな役割を果たしています。
そして、国会論議に頼らず、閣議決定で基本的な国の進行方向も決め得るという国の意思決定方式の既成事実化でしょう。

そしてその後の自民党政権も、「なんでも官邸主導で決められる」というのは使い勝手が良いからでしょう、その方向でどんどんも事を進めて行っているようです。

国民は殆ど反対ですから、内閣の支持率はどんどん下がります。
しかし高齢者は昔の様に国会に押しかけてデモをやる元気はなく。若者は、政治に無関心になっているようです。

野党は、完全に与党のペースに乗せられ、こまめに反対はしても、現政権と違った健全な国の進路を構築し、現政権と対峙する国家の構想を国民に語るまでの努力はしません。

その隙を狙って、アメリカはアメリカの都合の良い様に日本を動かす努力を着々と進めて来ています。

いま日本は、大げさな表現ではなく、国の進路を誤るか正すかの岐路に立つのでしょう。
今の内なら、未だ正す可能性はあると思っています。

やらなければならない事は、内閣支持率の低下の「数字」を「行動」に表わすことです。
多分それは、下がりに下がった投票率を、民主主義の基本に則って確りと上げるだけで良いのではないでしょうか。
そうすれば嫌でも、あるべき日本の針路についての議論が本格化するでしょう。

連合、最低賃金を2035年1600円超に

2023年12月23日 15時01分42秒 | 労働問題
来春闘で、連合が今春の要求の定昇込み5%に「定昇込み5%以上」と「以上」を付けただけの要求を掲げたところ、金属労協が今年の6000円要求を10000円に、基幹労連が今年の3500円要求を12000円に引き上げて、来春闘に向けての強力な賃上げ意欲を示しました。

労組のナショナルセンターである連合としては些かモデストに過ぎる要求基準という雰囲気になってしまったかなという感じを受けていたところに、今度は連合が、今年時給1000円という目標を達成した最低賃金について、2035年までに1600円以上に引き上げるという目標を固めたという報道がありました。

連合の意識としては大企業の賃上げで中小企業との賃金格差が拡大しないよう、最低賃金の引き上げで格差是正をという意識が強いと思われますが、12年で6割上げるというのは年率4%です。長期計画も長期に過ぎる感じです。その間何が起きるか・・・。

ところで、今年は4%の最低賃金の上昇が実現して1000円乗せになったわけですが、この所の最低賃金の急激な引き上げは、厚労省主導のもので、審議会では公益委員が厚労省の方針を示し、当然労働側は引き上げに賛成、使用者側はが反対しても2対1で多数決というケースが多いようです。

一方厚労省はこの夏に2030年代半ばに最低賃金を1500円にするという目標を掲げていますから、連合の目標は政府と連合の合意でほぼ達成でしょう。

それはそれでいいにしても、問題が2つほど残るという気がします。
1つは、これで格差是正が目に見えて進むかという問題、2つは、最賃引き上げで、非正規労働者の問題は解決するのかです。

賃金格差問題の発生は、基本的には、企業の非正規労働者の多用によるものです。雇用構造からみても、格差拡大に発する種々の社会問題から見ても、正規労働者として働いて家計を支えるべき人が、正規雇用者になれないという問題こそが主因でしょう。

嘗ての円高不況の中でコスト削減のための窮余の一策だったはずの非正規雇用の増加が円安になってももとにもどらないという経営者の行動を正していくのは、連合の大きな役割ではないでしょうか。(連合は正規雇用者の組織といった意識はもうないはずです)

これは連合自身が、経営者と話し合わなければならない問題でしょう。
非正規雇用4割という現実が、如何に格差問題を含む社会問題に大きなひずみを齎しているかを説き、労使の徹底した真剣な取り組みによって解決すべき問題ではないでしょうか。

最低賃金引き上げで政府・労働の協力も結構かもしれませんが、雇用構造の是正といったより構造的、本質的な問題についても、ナショナルセンターとしての連合の、経営者の在り方につての積極的発言が大いに期待されるところではないでしょいうか。

2023年11月、消費者物価沈静化進む

2023年12月22日 17時10分02秒 | 経済
2023年11月、消費者物価沈静化進む
今朝、総務省統計局から11月の消費者物価指数が発表されました。
10月には千数百品目の一斉値上げがあり、未だ、生活必需品等の値上げ圧力は続くかと懸念していたところですが、11月は一転して沈静傾向になっています。 

具体的な動きは下図の通りですが、鎮静傾向と3本の線が1%ほどの範囲内にまとまって来ていることが解ります。物価を取り巻く情勢が平穏になって来たという事でしょう。

   消費者物価主要3指数の推移

           資料:総務省統計局「消費者物価指数」

「総合」、「生鮮食品を除く総合」の指数は下降に転じています。「生鮮食品とエネルギーを除く総合」はまだいくらか上昇傾向ですが11月は105.8から105.9への0.1ポイントの上昇です。この指数(いわゆるコアコア指数)がこの所一貫して消費者物価を押し上げてきましたが、ようやく国内インフレ要因が消えて来ているという所でしょう。

10月には生鮮食品が暑すぎた秋のせいで値上がりでしたが、それも落ち着き、政府が補助金を出して政策的に引き下げていた電力やガソリンも原油価格の下落などで沈静化して来た事があると思います。

コアコア指数の上昇が、一斉値上げなどの動きもあって心配されてきていましたが、調理・加工食品、飲料、調味料といった食品類、それにトイレットペーパーなどの必需品についても、値上がりすると買い控えが起きるといった現象が見え始めたようです。

今春闘の賃上げが思ったより小幅だった中での消費者物価上昇で、実質賃金の低下が19カ月連続といった状況では、そろそろ値上げも限界という意識が出てきたのでしょう。
この辺りを、対前年同月上昇率で見ますと下図です。

消費者物価主要3指数の対前年同月上昇率(%)

               資料:上に同じ

2月に電力ガスなどが政府補助金で下がり、緑色のコアコア指数が独歩上昇でしたが、それも夏以降は横ばい状態のなり、秋に入って上げ幅の縮小となって来ています。

11月には、生鮮食品、エネルギーが下げ、天候や、輸入エネルギーが下げ、残った食料、日用品などのコアコア指数も、値上がり→買い控えといった現象から安売りが頻繁に見られるようになるなど3本の線が揃って下がるという現象が出て来たようです。

一時の円安による輸入物価の上昇も、為替レートは円高に転じるようで、国内情勢の変化と相まって、消費者物価の上昇要因も次第に消えてきた、というのが現状ではないでしょうか。

こうした状況が続き、その上に、来春闘での主要労組の10000円を越える賃上げ要求が成果を出せば、日本銀行が望んでいるような日本経済のバランス回復、ゼロ金利脱出で、国民の目指す元気な日本経済に向かう可能性も出て来るという期待を持って年末年始の物価の動きを追いかけていきたいと思っています。
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<訂正>11月24日付の当ブログの10月分のコアコア指数の上昇率に誤りがありました。
今回の数字は訂正済みです。大変申し訳ありませんでした。

日銀は目指す日本経済の具体的イメージを

2023年12月21日 14時11分10秒 | 経済
先日の記者会見で日銀の植田総裁は、年末から来年にかけて一段とチャレンジングになると発言されました。
確かに、我々もいろいろなニュースから、これから少し変化の時期なるような印象を受けています。

10年以上も金融緩和一本でほとんど動かなかった日銀も、何かしなければならない時期になると感じられ、出口政策論気が賑やかな中で、日銀総裁が「チャレンジング」といわれる気持ちもわかります。

所がマスコミでは、この「チャレンジング」という言葉ばかりが大きく取り上げられ、これは出口に向けて動くことの示唆だという意見から、ただ難しくなるという意味での自覚も含めての発言といい意見までいろいろです。

その結果、その筋の専門家からはそれぞれに多様な解釈や解説が示され、問題を益々コンガラガラせているような感じです。

円レートは140円と150円の間を行ったり来たり、日経平均は1000円幅の上下を繰り返すといった状況です
マネーゲーマーたちは、これがビジネスチャンスとばかり、ボラティリティ―を高めてキャピタルゲインを追求するための格好の材料にしています。

マネー資本主義の時代だから仕方ないという事でしょうか、実体経済には迷惑なこうした活動を助長するのは日銀としても本意ではないでしょう。

そうした意味では従来金融政策以外あまり口にしなかった日銀が、今回の会合では来年の春闘での賃金決定に言及している事は大変結構だと思います。

但し、「賃金の引き上げを伴う物価の上昇が2%になるまで」という政府日銀の常套句では国民の具体的理解は困難でしょう。
物価上昇には必ず名目賃金の上昇は絡んでいます。賃金インフレ、輸入インフレ、便乗値上げの3大要因で物価は上昇するのです。

日銀の言うのは名目の上昇が主体になって2%のインフレという事でしょうが、アメリカの金利が上れば円安で日本の物価は上がります。アメリカの金利が下がれば円高になって、円安の影響(輸入インフレ)は消えるでしょう。

その時、春闘で名目賃金が上がれば、賃金上昇主因の物価上昇になるでしょうが、円レートの正常化、安定化は「日銀の仕事」でもあるのです。待つだけでいいのでしょうか。

日銀には、来春闘後が絶好のチャンスになるかもしれないという意味で、チャレンジングなのかも知れませんが、そう上手く行かない可能性も残るでしょう。

この辺りを少しハッキリ説明をすることで、日銀の考えているイメージが解り易くなるのではないでしょうか。

学者専門家の言葉は素人には解りにくいですが、何と何がこうなれば日銀はこう動くという望ましい筋道とビジョンを国民に分かり易く示してほしいといつも感じるところです。

基幹労連12000円要求方針、鉄鋼隔年春闘方式見直しも

2023年12月20日 15時16分36秒 | 経済
来春闘に向けて基幹労連は、月12000円以上という要求方針案を示したという報道がありました。

12000円以上というのは今春闘の3500円に較べれば3倍以上、過日取り上げました金属労協の10000円を超える大幅なものです。

基幹労連は、鉄鋼、造船重機、非鉄金属を中心に、建設、航空宇宙、産業機械などの分野を要する基幹産業の産別労組です。
鉄鋼労連はかつては春闘のリーダーで、鉄鋼産業の賃金決定は春闘の全体に大きな影響を持つ存在でした。

第一次石油危機の際には、当時の宮田義二委員長(のちの松下政経塾長)が経済整合性理論を提唱、年率22%のインフレの克服を可能にし、「ジャパンアズナンバーワン」の基礎づくりにも貢献しています。

あの年、急激なインフレの中で、更なる大幅賃上げを求める労組が殆どだった中で、敢えて賃金インフレ抑制のために、大幅賃上げ論を抑え、日本経済の安定化を考えた決断は、経済整合性理論という言葉と共に、労使関係の歴史に大きな足跡を残しました。。

その鉄鋼労連を主要な核とした基幹労連は、世の大勢に流されるのではなく、その時代のあるべき姿に整合した理論と活動方針を持つという明確な意識を持っているようです。

連合が今春の要求に「以上」を付けただけの中で敢えて、今の日本に要請される労働組合の行動、適切な水準の賃上げ要求の重要性を認識しての方針決定かと思量するところです。

同時に、日本経済の安定、労使関係安定の中で試みた長期賃金協定を目指す隔年春闘も、内外情勢波乱の中では、単年春闘に切り替えるという方針も、臨機に状況変化に応じ適切な判断をするという意味では、同様な視点からのものと理解できます。

金属労協の10000円以上、基幹労連の12000以上という数字の中で、連合の定昇込み5%以上という方針は次第に影が薄くなりそうですが、多くの中小企業を傘下に持つ連合の組織を考慮し、些か慎重に過ぎたという感も持つのではないでしょうか。

勿論、金属労協としても基幹労連としても、個々の企業の労組は殆どが連合傘下でしょう。
連合も「以上」とついているからいくらでもいいという事ではないでしょうが、春闘のキックオフは新年に入ってからですから、何か意思表示が欲しいところです。

特に、「公正取引委員会」が、賃上げによるコスト上昇を価格転嫁する際の行動指針を発表しているというその後の状況変化も勘案すれば、中小企業の賃上げについては、「賃金支払い能力」の束縛は、来春闘では「取り払われた」という事でしょう。

中小企業労使のためにも、より柔軟な賃上げ要求基準を考えても良い、あるいは「考えるべき」という判断があってもいいのではないかと思われます。

中小企業の場合は、平均賃金水準の低さから、賃上げ率は高く見えても賃上げ額は低いのです。「公正取引委員会」の指針は、中小企業の人手不足、人材確保への対抗策に「お墨付き」が出たと言えない事もないでしょう。

これからも、種々新展開があるかもしれません。労使の賃金決定の生み出す活力で、日本経済を活性化の軌道に乗せられるか、年が明ければ始まる2024年春闘に期待したいところです。

「独裁者」:人類社会の最大の問題を考える(続)

2023年12月19日 14時54分19秒 | 文化社会
民主主義のつもりでいたらいつの間にか独裁主義的になっていた。

これは良くあることです。例えばアメリカではトランプ政権が独裁的な色彩を強め、アメリカ社会を分断することになりました。
日本でも、安倍政権の政治姿勢は官邸独裁などと言われましたし、今の岸田政権も支持率23%になっても自分の主張を曲げず、国民の心配を無視しています。

民主主義というのは病気に罹り易いのです。国民が真剣に政権の行動を監視していないと政府の行動は国民の意識とずれてきます。

独裁者になる人は、往々魅力的で、カリスマ性もあり、頼りになるように見え、言葉も巧みです。「頼りになりそう」、「任せれば確りやってくれそう」などと安心しているうちに、独裁者は権力を固めていきます。

独裁者は人々の被害者意識を巧みに利用します。プーチンはNATOがロシアを滅ぼそうとしている」「ウクライナはナチズムだ」とロシアの危機を訴えます。

中国はアメリカや時に日本を敵視して、国内の輿論をまとめ、トランプは中国や日本がアメリカ市場で利益を上げアメリカは損ばかりだ」と言って「アメリカ・ファースト」で支持を掴みました。

日本では、今、中国、北朝鮮の脅威を言っていますが、それを国民がみんなまともに受け止めれば、台湾有事から「新しい戦前」への可能性が高まるでしょう。
幸い日本の世論では、中国との関係は大事にしなければならないという意見が確りありますから、国民は何とか安心していられるのでしょう。

独裁者は通常後継者を育てません(北朝鮮の世襲制は別)。自分が終われば後は野となれ山となれが結果のようでうす。後の国民は大変です。

ところで、民主主義社会のはずが独裁者を生んでしまうといった過ちを防ぐ方法があるのでしょうか。これは結構難しい問題のようです。

人間は時に怠惰で、任せてやってもらえればその方が楽だと思いがちです。この油断を独裁者は巧く利用します。
矢張り、国レベルも含めて、リーダーを選びの選挙の在り方、選挙に対する有権者の真剣な意識が、民主主義の健全化のための必須条件なのです。

このブログでは、それに役立つような「民主主義のトリセツ」が必要と指摘した事は前回、具体的ヒントも含めて触れました。

しかし、これはあくまで「トリセツ」のレベルです。問題の本質はもっともっと深いところにあるのでしょう。
深いというのは、人びとの意識や文化のレベルに関わるからです。国の場合であれば、国民が真面目で、その上に賢明でなければならないという事ではないでしょうか。

日本の国政選挙の投票率の推移を嘗て取り上げましたが、戦後の民主主義社会を作り上げた当時の日本人は、今よりずっと真面目だったようです。今の日本人の50%は、明らかに「油断」をしています。日本の民主主義はすでに病気に罹っているようです。

思い出すのは、戦後の民主主義の導入の国民的動きの中で大変熱心に行われて運動に「ユネスコの目的や考え方を学ぶ活動」があることです。学校でのユネスコ・クラブなどです。

ユネスコ憲章の冒頭の言葉から前回のブログは始まっていますが、ユネスコの精神は平和と民主主義の根幹に関わっています。

ユネスコは本来、「国連教育科学文化機関」United Nations Educational Scientific and Cultural Organization なのです。

象徴的な事象もあります。トランプ大統領の時、ユネスコからアメリカが脱退しました(独裁気質の証明)。バイデン大統領になって復帰を決めています。

出来うれば、ユネスコの活動が、嘗ての日本でのような活発さを取り戻せば、世界の民主主義は一層強靭なものとなり、人類社会は平和と発展中心のSDGsにも叶った姿への人類社会の進路も見えてくるのではないかと思われるところです。

「独裁者」:人類社会の最大の問題を考える(続)

2023年12月19日 14時54分19秒 | 文化社会
民主主義のつもりでいたらいつの間にか独裁主義的になっていた。

これは良くあることです。例えばアメリカではトランプ政権が独裁的な色彩を強め、アメリカ社会を分断することになりました。
日本でも、安倍政権の政治姿勢は官邸独裁などと言われましたし、今の岸田政権も支持率23%になっても自分の主張を曲げず、国民の心配を無視しています。

民主主義というのは病気に罹り易いのです。国民が真剣に政権の行動を監視していないと政府の行動は国民の意識とずれてきます。

独裁者になる人は、往々魅力的で、カリスマ性もあり、頼りになるように見え、言葉も巧みです。「頼りになりそう」、「任せれば確りやってくれそう」などと安心しているうちに、独裁者は権力を固めていきます。

独裁者は人々の被害者意識を巧みに利用します。プーチンはNATOがロシアを滅ぼそうとしている」「ウクライナはナチズムだ」とロシアの危機を訴えます。

中国はアメリカや時に日本を敵視して、国内の輿論をまとめ、トランプは中国や日本がアメリカ市場で利益を上げアメリカは損ばかりだ」と言って「アメリカ・ファースト」で支持を掴みました。

日本では、今、中国、北朝鮮の脅威を言っていますが、それを国民がみんなまともに受け止めれば、台湾有事から「新しい戦前」への可能性が高まるでしょう。
幸い日本の世論では、中国との関係は大事にしなければならないという意見が確りありますから、国民は何とか安心していられるのでしょう。

独裁者は通常後継者を育てません(北朝鮮の世襲制は別)。自分が終われば後は野となれ山となれが結果のようでうす。後の国民は大変です。

ところで、民主主義社会のはずが独裁者を生んでしまうといった過ちを防ぐ方法があるのでしょうか。これは結構難しい問題のようです。

人間は時に怠惰で、任せてやってもらえればその方が楽だと思いがちです。この油断を独裁者は巧く利用します。
矢張り、国レベルも含めて、リーダーを選びの選挙の在り方、選挙に対する有権者の真剣な意識が、民主主義の健全化のための必須条件なのです。

このブログでは、それに役立つような「民主主義のトリセツ」が必要と指摘した事は前回、具体的ヒントも含めて触れました。

しかし、これはあくまで「トリセツ」のレベルです。問題の本質はもっともっと深いところにあるのでしょう。
深いというのは、人びとの意識や文化のレベルに関わるからです。国の場合であれば、国民が真面目で、その上に賢明でなければならないという事ではないでしょうか。

日本の国政選挙の投票率の推移を嘗て取り上げましたが、戦後の民主主義社会を作り上げた当時の日本人は、今よりずっと真面目だったようです。今の日本人の50%は、明らかに「油断」をしています。日本の民主主義はすでに病気に罹っているようです。

思い出すのは、戦後の民主主義の導入の国民的動きの中で大変熱心に行われて運動に「ユネスコの目的や考え方を学ぶ活動」があることです。学校でのユネスコ・クラブなどです。

ユネスコ憲章の冒頭の言葉から前回のブログは始まっていますが、ユネスコの精神は平和と民主主義の根幹に関わっています。

ユネスコは本来、「国連教育科学文化機関」United Nations Educational Scientific and Cultural Organization なのです。

象徴的な事象もあります。トランプ大統領の時、ユネスコからアメリカが脱退しました(独裁気質の証明)。バイデン大統領になって復帰を決めています。

出来うれば、ユネスコの活動が、嘗ての日本でのような活発さを取り戻せば、世界の民主主義は一層強靭なものとなり、人類社会は平和と発展中心のSDGsにも叶った姿への人類社会の進路も見えてくるのではないかと思われるところです。

「独裁者」:人類社会の最大の問題を考える(続)

2023年12月19日 14時54分19秒 | 文化社会
民主主義のつもりでいたらいつの間にか独裁主義的になっていた。

これは良くあることです。例えばアメリカではトランプ政権が独裁的な色彩を強め、アメリカ社会を分断することになりました。
日本でも、安倍政権の政治姿勢は官邸独裁などと言われましたし、今の岸田政権も支持率23%になっても自分の主張を曲げず、国民の心配を無視しています。

民主主義というのは病気に罹り易いのです。国民が真剣に政権の行動を監視していないと政府の行動は国民の意識とずれてきます。

独裁者になる人は、往々魅力的で、カリスマ性もあり、頼りになるように見え、言葉も巧みです。「頼りになりそう」、「任せれば確りやってくれそう」などと安心しているうちに、独裁者は権力を固めていきます。

独裁者は人々の被害者意識を巧みに利用します。プーチンはNATOがロシアを滅ぼそうとしている」「ウクライナはナチズムだ」とロシアの危機を訴えます。

中国はアメリカや時に日本を敵視して、国内の輿論をまとめ、トランプは中国や日本がアメリカ市場で利益を上げアメリカは損ばかりだ」と言って「アメリカ・ファースト」で支持を掴みました。

日本では、今、中国、北朝鮮の脅威を言っていますが、それを国民がみんなまともに受け止めれば、台湾有事から「新しい戦前」への可能性が高まるでしょう。
幸い日本の世論では、中国との関係は大事にしなければならないという意見が確りありますから、国民は何とか安心していられるのでしょう。

独裁者は通常後継者を育てません(北朝鮮の世襲制は別)。自分が終われば後は野となれ山となれが結果のようでうす。後の国民は大変です。

ところで、民主主義社会のはずが独裁者を生んでしまうといった過ちを防ぐ方法があるのでしょうか。これは結構難しい問題のようです。

人間は時に怠惰で、任せてやってもらえればその方が楽だと思いがちです。この油断を独裁者は巧く利用します。
矢張り、国レベルも含めて、リーダーを選びの選挙の在り方、選挙に対する有権者の真剣な意識が、民主主義の健全化のための必須条件なのです。

このブログでは、それに役立つような「民主主義のトリセツ」が必要と指摘した事は前回、具体的ヒントも含めて触れました。

しかし、これはあくまで「トリセツ」のレベルです。問題の本質はもっともっと深いところにあるのでしょう。
深いというのは、人びとの意識や文化のレベルに関わるからです。国の場合であれば、国民が真面目で、その上に賢明でなければならないという事ではないでしょうか。

日本の国政選挙の投票率の推移を嘗て取り上げましたが、戦後の民主主義社会を作り上げた当時の日本人は、今よりずっと真面目だったようです。今の日本人の50%は、明らかに「油断」をしています。日本の民主主義はすでに病気に罹っているようです。

思い出すのは、戦後の民主主義の導入の国民的動きの中で大変熱心に行われて運動に「ユネスコの目的や考え方を学ぶ活動」があることです。学校でのユネスコ・クラブなどです。

ユネスコ憲章の冒頭の言葉から前回のブログは始まっていますが、ユネスコの精神は平和と民主主義の根幹に関わっています。

ユネスコは本来、「国連教育科学文化機関」United Nations Educational Scientific and Cultural Organization なのです。

象徴的な事象もあります。トランプ大統領の時、ユネスコからアメリカが脱退しました(独裁気質の証明)。バイデン大統領になって復帰を決めています。

出来うれば、ユネスコの活動が、嘗ての日本でのような活発さを取り戻せば、世界の民主主義は一層強靭なものとなり、人類社会は平和と発展中心のSDGsにも叶った姿への人類社会の進路も見えてくるのではないかと思われるところです。

「独裁者」:人類社会の最大の問題を考える

2023年12月18日 14時49分07秒 | 文化社会
ユネスコ憲章前文の冒頭に「戦争は人の心の中で始まるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない」という故アトリー英国首相の言葉があることは、このブログでは何回か書いています。

最近の世界の大混乱を見るにつけ、また地球人類の将来を考える時、この大切な言葉をさらに具体的に進めて行かなければならないとつくづく感じていました。

そんなことを考え続けている中で、気づいて来た事を言葉にしてみましたら、こんな言葉になりました。
「戦争や多くの紛争は、独裁者の意思決定によるものであるから、人類社会の持続的な平和のためには、独裁者を生み出さないようにしなければならない」

考えてみれば当然のことですが、地球上の人間のほとんどは平和で平穏な社会の持続的な発展を願っているのです。
この希望を無視・蹂躙し、破壊と殺戮、人類社会の退化を進めるのが戦争や紛争です。

こうした大多数の人々の意思に反する事が容易に出来るのは独裁者なのです。
民主主義が貫徹する社会では、大多数の人々の意見に逆らう事は不可能です。

今、我々はその典型をロシアに見ることがウクライナでは破壊と殺戮、ロシア側でも、多くの若者の命が失われているのです。

目を転じれば、ガザの多くの人達も、大多数のイスラエルの国民も、またミャンマーの国民も、独裁者の意思とは異なり、平和と安定・発展の日々を望んでいます。

振り返れば、日本では、軍部独裁が続いた果てに、その帰結は廃墟になった日本でした。愚かにも、国民は独裁者の嘘に騙されていたのです。日本人はそれを恥じ、それは平和憲法に結実しました。

今のロシアも同列でしょう。プーチンの嘘を信じている人も多いでしょう。気付いている人も多いと思われますが、その声を上げられないのが独裁政治の恐ろしさです。

こうした、多くの人が望まない戦争や紛争を引き起こす独裁者は、いかにして生まれるのでしょうか、独裁者が生れる原因の検討が必要でしょう。

ロシアでも来年は、大統領選挙があり、形は民主主義になっているのです。なぜ、民主主義の下で独裁者が生まれるのでしょうか。

このブログでは、「民主主義のトリセツ」でこの問題を取り上げてきました
民主主義社会の土台になる「選挙」の場で、肝心なことを列挙して、さらに多くの人からの意見を求めました。反応もいただきました。

その中で真っ先に掲げたのは「リーダーの任期には制限が必要」という事です。
現に、多くの国、組織では、リーダーの任期に制限を決めています。

プーチンは、 最初に任期が来た時、腹心のメドベージェフと大統領と総理大臣の地位を交替し、次期選挙で大統領に再選、巧みに長期政権を固めました。そして今、ウクライナ侵攻、ロシア帝国の皇帝を目指しているようです。

最近の事例に鑑みれば、中国では、毛沢東の晩年の失政に学び、国家主席は2期10年までとしていました。しかし習近平は忠告や諫言を退け、3期目に入りました。習近平の独裁者化を心配する声は国内外で大きいようです。国内の声は既に圧殺でしょう。

日本の卑近な例では、安倍総理の例があります。党紀を改めてまで3期を強行、長期政権の中で、「決める政治」の旗印の下、内閣府への権利の集中、閣議決定万能など内政、外交の独裁化が進みました。党組織の金銭的腐敗も進行したのです。

次回も、独裁者の問題を、もう少し論じてみたいと思います

大幅賃上げで経済は 繁栄?/衰退? 日本はどちら!

2023年12月15日 14時35分51秒 | 経済
このブログでは、平均賃金水準の10%引き上げで日本経済の活性化を、と論じて来ていますが、常識的には「そんなの無理」という感覚が大勢なのかと思います。

しかし現状の日本経済を考えればそうかなと思う方もおられるでしょう。多分その理由は「今までの賃上げで景気は良くならなかった」「企業業績と賃金のアンバランス」といった、状況観測からの合理的な判断でしょう。そのあたりを少し具体的に考えてみましょう。

先日、公正取引委員会が、賃上げでコストが上ったら、その分を「価格転嫁する際の指針」を出しました。このブログでも取り上げ、この指針は素晴らしいと述べました。

今の日本経済の中身を見ますと(2022年度)GDP:566兆円、雇用者報酬:296兆円(労働分配率(52.3%)です。
雇用者報酬というのは、皆様ご存じのように現金給与だけではなく企業の支払う人件費(社長以下のすべての従業員分で、企業の払う社会保険料や福利厚生費、教育訓練費などすべての雇用コストを含む)の合計です。

そこで、このグログの提言の様に、平均賃金水準を10%上げます。具体的には雇用者報酬を10%増やしてみます。296兆円×1.1で326兆円(四捨五入しています)になります。

増加した30兆円の分企業の利益が減ったら大変ですから、そんな事にならないように公正取引委員会は30兆円は「全部価格転嫁をしなさい」という指針を出しています価格転嫁すれば、利益に食い込むことはありません。

各企業の賃上げの結果は、それぞれの企業の売上高に加算されて最終的には消費者が支払うことになります。つまり、人件費の上がった分だけ物価が上がるという事です。

一般的な言葉でいえば「賃金インフレ」が起きたことになるわけです。
どのくらい賃金インフレが起きるかの計算は、賃金インフレで増えたGDP 566兆円+30兆円=596を、増える前のGDP566兆円で割れば出ます。
596/566=1.053 つまり5.3%のインフレになるという事です。

これが、平均賃金水準を10%引き上げて、その分を価格転嫁したときの結果です。賃金は10%上がり。物価は5.3%上がることで 新しい経済バランスが生れます。

利益は金額としては影響をうけません。しかし賃金が10%上げりますから労働分配率が上がり(これは上の数字から計算可能、52.3%→54.7%)、購買力が家計に移転してその分消費需要が増える可能性が大きくなり、多分これまでの消費不振経済は解消の方向に向かうという事です。翌年からは通常の賃上げに戻って、政府・日銀の2%インフレ目標、「実質成長率プラス2%インフレ分」ぐらいを目指せばいいのです。

ところで、何故そんな簡単なことがやれないのかという質問が出て来そうです。
原因は大きく2つでしょう。

第一は、国際競争力がなくなるという心配ですが、インバウンドの盛況が示すように日本の物価は安い、国際競争力は強い、それに今の円レートは円高と言っても140円(2年前は109円)、5%程度のインフレで国際競争力は失われる事はないでしょうという回答になります。

第二は、賃金・物価のスパイラルが起きる恐れの心配ですが、日本の企業は真面目で、賃上げしたと偽って便乗値上げが一般化するような恐れはない(公正取引委員会の指針を守れる)という企業の真面目さへの信頼感が回答です。

こんな事を「政労使」で話し合って、国民の納得を得て実行できるような日本(石油危機のころはそんな雰囲気がありました)であってほしいと思っています。