tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2011年5月から2011年12月までのテーマ

2011年12月30日 15時02分05秒 | インポート
2011年5月から2011年12月までのテーマ
2011年12月
2011年5月から2011年12月までのテーマ    米、EU、経済立て直しに必要なこと:まとめ   米、EU、経済立て直しに必要なこと:金融問題   米、EU、経済立て直しに必要なこと:実体経済2   米、EU、経済立て直しに必要なこと:実体経済1   米、EU、経済立て直しに必要なこと   雇用の本質への理解不足   キャピタルロスの心理学   財政健全化と円高の関係は?   経済発展のライフステージと金融   ギャンブルは賭博場で 3   欧州主要銀行の国債売り   
2011年11月
ギャンブルは賭博場で:2   ギャンブルは賭博場で   ギャンブルと経済:土地バブルの想い出   経済にギャンブルは役立つか   日米関係に知恵を   世界における日本の役割   TPPと円高   TPPの胡散臭さ   円高か、円安か? 前回の応用問題   
2011年10月
2種類の「金融」の峻別を  2   2種類の「金融」の峻別を 1   金融危機とPPP(汚染者負担原則)   経済・経営近視眼化の理由?   長期的視点を忘れた世界の論調   長期的視点の必要性   混迷の世界経済を読みきれるか   
2011年9月
大震災復興の資金と組織   資本主義の社会主義化?   円高の恐怖は変わらず   為替政策: 行き過ぎた自由の再考(5)   為替政策: 行き過ぎた自由 の再考(4)   為替政策: 行き過ぎた自由の再考(3)   為替政策: 行き過ぎた自由の再考(2)   為替政策: 行き過ぎた自由 の再考(1)   
2011年8月
新政権、何が変わるか   日本経済の直面する奇妙なジレンマ   アメリカ経済再建 その4: 実体経済で見れば   アメリカ経済再建 その3: 実体経済の反撃   アメリカ経済再建 その2: 金融中心、繰り返す失敗   アメリカ経済再建 その1: 2つの方法   実体経済、実体経済学への回帰を   問題は実体経済   単独介入と日本経済   米政府債務上限引き上げの意味   
2011年7月
里山の知恵   リサイクルとむすび   神話を信じるか見破るか   緊急課題と長期課題は分けて   喫緊の課題は被災地、被災者対応   喫緊の課題は被災地、被災者対応   原発か自然エネルギーか: 二元論は不毛   人口減少: 50年先が予測できるか   少子・高齢化、人口減少も対応次第   少子・高齢化、人口減少も対応次第   人口減少と経済成長   日本的思考の原点への回帰を   
2011年6月
ジャパン・シンドロームを吹き飛ばそう   
東京電力グループの経営理念を見る   春闘総括の盲点   武蔵野の自然:ラミーカミキリ来訪   政治の混乱と円の評価   政治の混乱と円の評価   国民意識変化の兆しか   
2011年5月
対話と説得による経済政策   日本復活の契機に出来るか   人類は前に進んでいるのか   2010年11月から2011年4月までのテーマ   「あけぼの」と「おおむらさき」   放射能汚染と天気予報   災害復興支援策の早期稼動を   


米、EU、経済立て直しに必要なこと:まとめ

2011年12月30日 12時30分16秒 | 経済
米、EU、経済立て直しに必要なこと:まとめ
 最近、改めて世界は民主主義化へ動いているように思えます。アラブ諸国でも独裁政権が倒れつつあります。ミャンマーでも国が開かれようとしています。今後北朝鮮がどうなるかまだ分かりませんが、こうした動きが望ましいものであることは否定しようもなしでしょう。

 こうした動きの背景に、フェイスブックなど、IT技術の普及による情報の伝達の促進があげられています。正しい情報が広く伝わることが社会を良くするのでしょう。
 日本でも、私ども戦中世代は、意図的に誤った情報のみを聞かされ、誤った行動に走った苦い思い出があります。

 一方、今の情報洪水の中で、正しい情報を識別するのも大変です。リビアでカダフィを倒したのも、ギリシャやアメリカで、現政権の経済運営に反対するのもデモです。マジョリティーは正しい情報判断に従って行動するのでないと、その社会は行く先を誤ります。
 
 この7月に、「神話を信じるか見破るか 」を書かせていただきました。
そうしたことをなくするためにも、政権担当者や、責任ある学識経験者、マスコミなどは、正しいことを「解り易く」伝える努力を徹底してほしいと思います。
 「知らしむべからず、依らしむべし」は今の世の中では決して長続きしません。

 表題の経済的混乱について言えば、今の金融理論、金融システムは、解らないものの典型です。プレーヤーたち自身にも解らないうちに思惑が外れて破局を迎え、世界中に迷惑をかけるようなことが繰り返されています。

 一方、実体経済は極めて単純です。単純なものを解りにくくしようとするのは、単純に考えれば、「本当の事が皆に解ってしまうと困る人」の考えでしょう。
 情報化時代、我々庶民の知恵と判断力が問われているようです。しかし同時に、世界のリーダーたち、日本の政府や官僚、学者、マスコミには、是非、徹底して、本当のことを、解りやすく情報発信されるようお願いしたいと思います。


米、EU、経済立て直しに必要なこと:金融問題

2011年12月29日 12時18分21秒 | 経済
米、EU、経済立て直しに必要なこと:金融問題
 先日「経済にただの昼飯はない」と書きましたが、どんなに理屈をつけ、経済理論を振りかざしてみても、結局は、他人に迷惑を掛けない限り、人間は「稼ぎ」以上の生活はできないのです。それが実体経済で、極めて解り易いものです。

 ところで、金融問題をこれに加えますと、いろいろなバリエーションが可能になります。
 まず、通常の貸し借りですと、足りない分を借りて、利息を付けて返す、すぐに返せなくても、結局は何らかの形で弁済することになるわけで、踏み倒すのは大変なことです。これも解り易いと思います。

 これに、レバレッジとデリバティブを加えますと、想定の貸し借りの額は実際の貸し借りの額を何倍も何十倍も上回り、その中でリスクに応じて変化する利率や為替を利用して、貸し借りの当事者でなくても、巨大なキャピタルゲインをあげることが可能になります。

 言い換えれば、こうした金融手法を使えば、他人の経済問題を利用して第三者が「あぶく銭」を得ることが可能になり、投資銀行などはそのために金融工学を駆使することになります。

 しかしたとえ成功しても、キャピタルゲインは「実際の価値を創る」のではなく、「評価額の増減を振替える」だけですから、実体経済とは別に、それより大きな「損失と利益」が「どこか」あるいは「あちこちで」起きるということになります。
 儲ければ山分け、損すれば国が救済といったことが既に何度も起こっています。

 こうした金融取引は、実体経済に貢献することはなく、実体経済上の問題を利用し、混乱を増幅するだけですからFSB などによる規制が必要になるのですが、それがなかなか徹底しないというのは、それで儲けて実体経済の赤字を少しでも穴埋めしようという思惑が働くからでしょうか。

 人間は実体経済の中で暮らしているのですから、実体経済を誰にも解り易くし、問題をできるだけ早く是正できるようにしべきでしょう。そのためにも、赤字になったら、借金で凌ぐのではなく、早く赤字を正す気になるよう、過度な金融利用は止めるべきで、実体経済の是正策とともに、あるいはそれに先んじて、「行き過ぎた」金融活動の是正をしなければなりません。

 これを主導すべきは、まず、基軸通貨国で赤字を垂れ流アメリカでなければならないでしょう。


米、EU、経済立て直しに必要なこと:実体経済2

2011年12月27日 14時42分11秒 | 経済
米、EU、経済立て直しに必要なこと:実体経済2
 前回、今のアメリカ、EUなどの、いわゆるソブリンリスクの問題の基本は、将来の経済成長を担保に前借をして、現実の稼ぎよりも良い生活をしてしまい、借金がかさんで、二進も三進も行かなくなった結果だということを説明してきたつもりです。

 その借金が、IMFとか世銀とか、まともな金融機関からならいいのですが、サラ金みたいな国際投機資本関連からとなると、事は容易ではありません。まともな金融機関なら、経済立て直しの面倒を親身に見てくれるでしょうが、国際投機資本は、その目的とするところが、「このチャンスを利用していかに大きく儲けるか」ですから、国がつぶれようと、国民がどうなろうと、それは関係ないことなのです。

 この問題は次の金融の側面で触れるとして、実体経済の面から、立て直しに必要なことは、基本的には、現在の生活水準を、自分の稼ぎに合わせることだけです。まさに「入るを量って、出るを制す」しか、解決策はないのです。
 その他の策はすべて時間稼ぎで、結局は問題を深刻化するだけです。

 例えば、ギリシャの経常収支はGDPのマイナス8.0パーセント(いずれも2011年推計)
      イタリア              マイナス3.5パーセント
      フランス              マイナス2.7パーセント       
      イギリス              マイナス3.1パーセント
      アメリカ              マイナス3.1パーセント
      ドイツ             プラス  5.0パーセント
      日本              プラス  2.5パーセント
 ですから、マイナスの国はこのぐらい節約できれば、実体経済上は最悪の事態は回避できるということでしょう。(黒字の国もあまり溜め込むべきでないという見方もあります。)

 アメリカの場合は基軸通貨国ですし、EUの場合は、もともとマーストリヒト条約で、ユーロの加盟基準(収斂基準)で放漫財政(企業なら放漫経営)の規制はあったわけですから、本来、各国のガバナンスが早い段階で問われるべきだったのでしょう。

 立て直しはもちろん大変でしょう。しかし本来自分が、収入以上の贅沢をしてきたツケですからやるしかないのです。その上で、元本の返済という問題が残ります。

 実体経済の問題は、政権を変えても、デモをやっても暴動を起こしても解決しません。アメリカをはじめ、赤字垂れ流しの国には、早く真面目になってもらいたいと思います。赤字の返済が困難となると、ついつい、まともでない方法を考えるようになるからです
 
 <注>日本の場合
一般的に言うと、この経常収支の赤字のレベルは財政の赤字レベルに連動しているのですが、日本の場合は、政府に借金させて使わせ、国民が貯めこんでいる(国民が使わないから政府が国民から借金して使っている)という形で、政府の財政は超大幅赤字、国全体では、経常黒字という変わった形です。外国に迷惑をかける状況ではありません。


米、EU、経済立て直しに必要なこと:実体経済1

2011年12月26日 17時40分46秒 | 経済
米、EU、経済立て直しに必要なこと:実体経済1
 第二次大戦の結果を通じ、豊かになるためには植民地を持つという考え方が、一転、一国の領土の中で、確り働けばいくらでも豊かになれるという方向に変わったようです。

 1960年代、このことが現実に、エアハルトのドイツ、高度成長期の日本の実績を通じて明らかに実証されました。経済成長の経済はGDP、GDPのDはDomestic、つまり国土内でということです。

 領土を広げることはないのです。技術開発と勤勉な労働、さらに自由貿易があれば経済はいくらでも成長します。これは世界中に経済成長至上主義を広めたようです。戦争で領土拡大よりも国内で毎年経済成長、素晴らしい時代が来たということでしょう。

 しかしこれにも落とし穴はありました。GDP拡大の可能性が現実になると、一部の国は、成長を先取りして将来の成長を担保に、実力に比に過大な支出(国民生活)をするようになりました。
 今起こっている実体経済の問題は、基本的には殆ど全てがこれです。

 通常これが起きるプロセスというのは、国民が、生産性(実質)上昇以上の賃金引上げを要求するところから始まります。結果は自家製インフレ です。通常、輸入インフレが賃金コストプッシュインフレに転嫁されたりして起こります。強力な労働運動、安易な賃金のエスカレータ条項などがこれを加速します。

 時に、レーガン改革やサッチャー改革などがブレーキを掛けますが、南米諸国のように経済が破綻するまで続くこともあります。国際競争がありますから賃上げがインフレでカバーしきれず、労働分配率が上昇、企業利潤が減少して、スタグフレーション という結果になります。

 企業利潤が落ちると企業は、よりコストの安い国に投資を移し、国内では投資・雇用が減り、雇用確保のための労働時間短縮は労働コストを一層高め、スタグフレーションを促進します。スタグフレーションによる状況の一層悪化で、政権担当者は国民に迎合し、ケインズ政策、金融緩和を行います。国債発行は経常赤字につながり「双子の赤字」 になり借金国に転落します。

 そこでもう1つの対策が考えられます。固定相場制のもとではインフレ国は国際競争力を失います。1971年アメリカがニクソンショックでドルの切り下げを行いました。変動相場制になった後は、皆様ご存じのとおりです。 ―以下次回―


米、EU、経済立て直しに必要なこと

2011年12月19日 16時50分27秒 | 経済
米、EU、経済立て直しに必要なこと
 暮れも押し迫ってきましたが、1$=¥75、大震災、原発事故に見舞われた日本の問題はさておき、アメリカ、EUが経済的に大荒れに荒れ、政治的にも大変不安定になっています。これまで論じてきたことを前提に、対策のあり方を考えてみましょう。

 アメリカは来年に大統領選挙を控え、オバマさんは大分焦っているようですし、EUでは、経済再建のために政権担当者の辞任があい次いでいます。
 ここまでの混乱と犠牲を払っているのですが、アメリカ、EUの経済再建はうまくいくのでしょうか。

 本音を言えば、これは大変難しいと思いわれます。長い間、経済の本質を無視して、国民に迎合す政策をとり、挙句の果てが、ギリギリの土壇場、ソブリンリスクが言われるようになっているのです。多少の政策変更ぐらいで済むものではありません。

 政治家は辞めれば済んでも、国民は辞めるわけにはいきません、矢張り本気で悔い改めて、生活態度を変えなければならないのですが、国民にそれを納得させる政策が取れないような条件が、いろいろ出てきているからです。

 問題は大きく分けて2つあると思います。1つは、実体経済 の問題です。そして、もう1つは、金融システムの問題でしょう。
 この2つの問題をきちんと整理して、国民に解りやすく説明することが必要です。

 つまり、かつて言われたように、「経済にただの昼飯はない」、食べただけの昼飯代のツケはいつか必ず払わなければならなくなるということ(実体経済)。
 そしてもう1つ、借金には限度がある、延ばせば延ばすほど、利息が付いて払わなければならない金額は増えてくるものだ。ツケをいつまでも認めることは踏み倒しの横行、金融秩序の崩壊、ひいては経済自体の破綻を招くことになる(金融制度),早く払わなければもっと大変なことになるということでしょう。

 この説得が国民に理解されなければ、政治家が何人変わっても、混乱やデモや暴動が深刻化するだけで、問題は解決しません。

 ところが、政治家は今までそんなうるさいことは言わなかった。何とかやり繰りしてくれていた。今回だって何とかなるはずだ、とか、そう言うのだったら、政治家や官僚がまず数を減らし、給料を減らして襟を正せ、とか、片方で巨利を上げている金融機関があり、つぶれれば国が我々の税金で救済する、まずは富の分配の不平等を正すべきだ、といった主張が説得力を持ち、国民は簡単には納得しないのが現状です。さてさて・・・。


雇用の本質への理解不足

2011年12月14日 22時54分52秒 | 労働
雇用の本質への理解不足
 今、多くの国で経済政策が問われています。アメリカでも、ヨーロッパでも政権担当者が一番心を痛めているのは何でしょうか。
 経済が思うように成長しない、貧富の差が拡大している、国民の将来不安が高まっている、などなどいろいろありますが、最も深刻な問題は雇用問題でしょう。
<最近の各国の失業率>(内閣府海外統計データ:%)
 日本         4.1(9月)
 ドイツ        5.8(9月)
 アメリカ       9.0(10月)
 フランス       9.9(8月)
 イギリス       8.3(8月)
 ユーロ圏      10.2(9月)
 EU         9.7(9月)

 途上国との競争があるのでインフレ率こそ今は上がりませんが、日本とドイツを除く失業率10パーセントといいうのは、昔から政権交代が言われる水準です。失業率に敏感な日本では、5パーセントでも政権が代わったではないかという見方もあります。

 どこの国も、財政支出、金融緩和で雇用対策をやっていますが、もともと政府は金がない、金融はゼロ金利といった状態ですから、ほとんど効果はありません。
 これは当然の話で、国民所得が増えない中で、人件費に割ける金額には限度があります。それなのに1人当たりの人件費は、毎年、何がしか増えているのです。雇用が増える余地はありません。デフレで傾向的に平均賃金が下がっているのは日本ぐらいです。

 ポピュリストに成り下がっている多くの政権担当者は、それでも雇用を増やすと約束しては失敗を繰り返しています。
 本当は、経済成長が期待できないときに雇用を増やすためには、一人当たり賃金を下げる以外にはないのです。しかしそれではデモが起きるということになります。

 日本は非正規労働を増やして平均賃金を下げ、雇用の悪化を食い止めました。しかしこれは格差社会を生みました。
 ところで今、日本の厚生労働省は、年金支給開始年齢の延伸を理由に、高齢者雇用促進、希望者の65歳までの雇用義務化を言い出しています。
 法律を変えて雇用が増えるのであれば、どこの政府も苦労はしません。もともと雇用は経済成長の従属変数です。日本の経済成長をどうする、そのためには留めどない円高をどうする、といった問題は、経済官庁にまかせて「うちは雇用が担当だから」と言って無理すれば、日本経済にとっては、何らかの形で、平均賃金を下げて対応することしか方法はないでしょう。

キャピタルロスの心理学

2011年12月12日 10時25分57秒 | 経済
キャピタルロスの心理学
 バブル崩壊以降、日本経済は不況続きですが、その中でも、いくつかの節目がありました。 
 バブル崩壊の1991年、その後のアジア・フィナンシアルショック1997年、サブプライム・リーマンショックの2008~9、最近のユーロ危機などです。
 そのたびにいろいろな悲劇が起こります。投資した債券価格や株価が急落し、巨大なキャピタルロスの発生です。

 現物ならまだしも、信用取引、デリバティブ といったことになりますと、通常、取引額は実力以上になりますから、キャピタルロスの額は当然努力すれば何とかなるような額ではありません。

 最終的には責任者が命を絶つようなことにつながった例も多く聞きました。こうした場合の多くは、発生してしまったキャピタルロスを、新たなキャピタルゲインで取り戻そうと、「益々深みにはまった」結果です。

 キャピタルロスが発生した時、多くの人は、キャピタルゲインで取り戻そうと考えるようです。もちろん、シコシコ稼いで取り戻せるような額ではないということもあるでしょうが、やはり「あぶく銭の損」は「「あぶく銭の儲け」で取り戻すのが当然という心理からでしょう。

 このますます「深みにはまる」というのがまさに「ギャンブルの特徴」です。
 信用取引でも、現引きが出来る程度のレバレッジの低い範囲のものでしたら、損切り、塩漬けといった選択も可能でしょう。

 今の国際金融情勢を見ていますと、現物での損も巨大ですが、信用取引のレバレッジが大きすぎて、想定元本の損がどこまで大きくなるかわからないといった声も聞かれます。要するに、自分たちのまともな稼ぎで手の届く範囲( GDPや経常収支)をとうに超えて、キャピタルゲイン(あぶく銭、イージーマネー)でやりくりするのが当たり前のこととしてまかり通っていたということです。

 こんな不健全な金融取引の世界をだれが作ったのでしょうか。IMFや世銀は何故そんなことを認めてきたのでしょうか。そしてその結果、IMFや世銀自体が、今まさに「深みにはまる」状況にあります。これでは、国際金融情勢は益々混乱し、混乱の極みに達し、世界経済は深刻の度を増すでしょう。マネー至上主義の生み出すのは混乱ばかりです。


財政健全化と円高の関係は?

2011年12月08日 14時54分46秒 | 経済
財政健全化と円高の関係は?
 税と社会保障の一体改革が論議になっています。
 世の中がまともであれば、財政健全化は国の将来に関わる大事です。
 ですから、桜田財政審会長、土光行革審会長の時代から、急速な高齢化も予測される中で、いかに子孫につけツケを回さないようにするかは連綿と論議されてきました。

 ところが、プラザ合意以降の全く違った国際環境の中では、ただ闇雲に、財政健全化に突き進めばいいかという、昔とは全く違った問題が真正面に出てきているという点に十分気をつけないといけないのではないかというのが心配の種です。

 マネー資本主義主流の今日、何かあると国際投機資本は円に逃避し、円高になって、日本経済は死ぬ思いの苦労を強いられています。アメリカ、ギリシャはじめ赤字を垂れ流す国ばかり多い中で、まがりなりにも日本は健全な経済運営をしているからです。
 財政赤字のレベルは世界でも最大級ですが、経常国際収支は常に黒字で、日本経済全体としては健全な姿を保っています。

 この状況の中で、財政健全化の見通しが立ったら、日本は国際的に超健全な国ということになり、ますます円高の可能性が高まるというのがマネー資本主義の世界です。
 最近は、政府・日銀も、「1$=75は生命線」と発言するようになり、やっと円高の恐ろしさが解ってきたようですが、日本経済の健全化が進めば、そんなことにはお構いなしに、国際投機資本は円を買い、円高は進むでしょう。
 これ以上円高が進めば、早晩日本経済、特に日本経済を支える国内の製造業は、空洞化で壊滅状態になるでしょう。そして多分その先があります。

 日本経済が空洞化し、国内の産業力(特に製造業)が壊滅状態になれば、これまた国際投機資本が活躍するチャンスです。日本国債も円も、ソブリンリスクのレッテルを張られ、カラ売り、急落、というシナリオは、すでに多くの投機家の読んでいるところです。

 昔から、この世界では「山高ければ谷深し」です。「安定」は投機家にとっては死活問題なのです。円高を進め、次は円を谷底に落とすチャンスを狙うでしょう。

 まじめに働く日本が、まじめに頑張るが故にそうしたバカげた投機の対象にさせられることがないようするため、日本経済を国際投機資本の餌食にしないためにも、財政健全化という「本来は大変大事な問題」を論議するに当たっても、為替対策をどうするか、表裏の問題として、確り考えておくことが大切です。政府・日銀は、確たる戦略があるのでしょうか。
 桜田、土光大先輩たちの「古き良き時代」とは全く違うのです。


経済発展のライフステージと金融

2011年12月05日 12時20分19秒 | 経済
経済発展のライフステージと金融
 前回、アメリカの変心と書きました。第二次大戦中から、戦後世界の安定と平和を考え、ブレトンウッズ体制を用意した周到なアメリカ。バターも大砲もといわれた世界一の経済力を持ち、マーシャルプランでヨーロッパ諸国を、ガリオア・エロア基金で占領地を援助したアメリカが赤字国に転落、世界から金を集めまくるに至る大変化、背後にいったい何があったのかです。

 これには、あまり難しい理論は必要ないように思います。たぶんに国民の心が慣性の法則に従うことによるのでしょうか。

① 一国経済がテイクオフして順調に発展期に入るとき、国民の生活向上期待は、経済成長の速さに達しません。経済成長5パーセント、生活向上2パーセントなら、3パーセント分は黒字になります。経済青年期でしょうか。
② 経済成長の力を国民が理解するようになると、経済成長に見合った生活水準の向上を国民は望むようになります。1960年代のような健全な高成長時代です。ドイツの協調行動時代、日本の高成長・高賃上げの時代です。(壮年期)
③ 成長率は限界を迎えますが、生活水準向上の要求は止まりません。経済変動で不況があっても「昨年以上の賃上げ」といった要求が一般化します。労働分配率上昇の時期を迎えます。経常赤字の年が出てきます。(初老期)
④ 時短や余暇がはやり、経済成長は停滞しますが、生活水準向上の欲求は止まりません。政府は国債発行、ケインズ政策で景気の浮揚を図ります。経済はコスト高になって、競争力を失います。財政赤字、経常赤字の時代に入ります。(老年期)
 
  多少の違いはありますが、大体経済の歴史はこのように動きます。1970年台以降、アメリカ、ヨーロッパ(除ドイツ)は、④の段階に入ったようです。 
 こうした中で、日本とドイツは経常収支赤字国にはならないだけの節度を保っています。
 
 そこで経済は新しい段階に入ります。政権維持のために不況にしたくない政府は金融緩和と借金をし易くする政策(金融工学)で、経常赤字を穴埋めし、不況を避けようとします。

 本来なら、早期に引き締め政策で、国民生活が経済実態より肥大化することを抑えるべきところを、借金でやりくりし、二進も三進もいかない所まで行ってしまいます。ギャンブラー達は「ここで一儲けしようと、進化した金融工学を使って経済混乱に拍車を掛けます。
 今、アメリカ経済、EU経済はここまで来てしまっていると考えるべきでしょう。


ギャンブルは賭博場で 3

2011年12月02日 10時34分35秒 | 経済
ギャンブルは賭博場で 3
 横道にもそれながら、今の経済活動のゆがんだ面を描写してきたつもりです。何でこんなことになってしまったのでしょうか。
 何度も述べますように、問題の基底には今の政界の政治、経済、社会のリーダー格であるアメリカの変心があると思います。

 オバマさんは「チェンジ」と言って当選しましたが、現実に結果を見てみれば、野球のチェンジと同じで、共和党と民主党が攻守所を変えただけで、やっていることは同じ野球だったということのようです。それで、みんながっかりしているのでしょう。

 私がアメリカの変心と言っているのは、資本主義の健全な発展を目指して、ブレトンウッズ体制を主導してきたアメリカが、次第に万年赤字国に堕し、その脱出の難しさから、1970年のニクソンショックを機に、安易なファイナンスでのやり繰りの道を選ぶようになり、経済のギャンブル化を認め、世界経済を混乱に陥れるような経済ルールをデファクト・スタンダードとして世界に通用させる役割に変わってしまった「変心」です。

 アメリカ経済の変化、ヨーロッパ経済の変化、そして日本を含むアジア経済の戦後の変化を眺めながら、経済というのは、その構造の変化(成功・失敗の原因・結果)やそれを説明する理論は、基本的な所では実は極めて単純なものですが、失敗しないようにすることは、社会的、政治的に大変難しいことだということです。

 それは人間の欲望が絡んでいるからです。人間の要望は社会の進歩にとって一番大事なものですが、もともと欲望というのは「いじ汚いもの」「他人に意地悪になりやすいもの」ですから、そこに落し穴があり、世の中上手くいかないのでしょう。

 繰り返しますが、最も基本的な部分だけ見れば、アメリカが本当に経済力を持ち、自信を持って、世界経済を発展させることで、もう世界戦争などが起きない世界を作ろうと純粋に考えていた時が、自由世界(資本主義)が最も健全な時でした。
 1970年代以降、アメリカが経済力を落としながら、なお覇権の維持に懸命になった時から、資本主義に変化(ギャンブル化)が起きてきたということでしょう。

 そして世界もその堕ちた偶像、アメリカを、今なお頼っているのです。日本もその代表格でしょうか。 問題は、経済問題ではなく、政治、社会、権力、人の心の問題です。だから解決が難しいのだと思います。