tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本は本当に人手不足なのか

2014年07月31日 09時37分08秒 | 労働
日本は本当に人手不足なのか
 昨年来の景気回復基調の中で、有効求人倍率は上昇し、失業率は下がり、新卒は就職氷河期から売り手市場に転換、建設や介護などの業界では圧倒的な人手不足で、外国人労働者の積極的導入をという声も強くなっています。

 つい一昨年までは、長期のデフレ不況に呻吟し、正社員は削減、採用は非正規といった惨状にあった日本の労働市場が、20円の円安で、様変わりの様相になっています。

 喉元過ぎれば何とやらですが、もう円高の危険はないのでしょうか。2002年から2007年までの「いざなぎ越え」で、当時就職氷河期は終わったと言われた途端、サブプライム問題が引き金で、リーマンショックが起こり、$1=¥120→80の円高で、再びデフレ不況の淵に沈んだ日本です。

 今度はアメリカ経済も堅調のようだし、日銀の政策も変わったし、もう大丈夫という気持ちはあるでしょう。気持ちというより「願望」かもしれません。アメリカ経済は相変わらずの経常赤字で、外国から借金しなければ経済が回らない状況に変りはないのです。このままではアメリカ経済はまた何処かで挫折するでしょう。油断は禁物です。

 とはいえ、日本の今の人手不足は現実です。このブログでもずっと触れてきましたように、私はこの状況を人一倍喜んでいる者の一人です。

 人手不足こそが、デフレ不況の中で歪みに歪んだ日本の雇用構造の復元を可能にします。
多くの企業が若者を中心に採用を活発化し、安定した職場を求める者は正社員採用し、教育訓練に真剣に取り組み、優れた社会人を育てることが、この20年劣化を続けた日本社会を健全な形に復活させる原動力になることを願っているからです。

 ところで、前回まで「生産性」の問題を論じてきました。人手不足の最も有効な対応策は「労働生産性の向上」です。生産性を上げれば人手不足は緩和します。

 では「生産性向上」の余地はあるのでしょうか、ないのでしょうか。
 7月20日付の「 高付加価値経営と付加価値率」にデータを示しておきました。OECD加盟34ヶ国中、日本の実質付加価値労働生産性は「18位」です。
 数字を上げれば、日本の生産性は、以下のような水準です。
   アメリカの68パーセント
   スエーデンの82パーセント
   ドイツの85パーセント

 これを言い換えれば、日本経済全体の生産性をアメリカ並みに上げれば、32パーセントの人手が余り、スエーデン並みなら、18パーセント、ドイツ並みでも15パーセント余るということです。

 勿論こうした国全体の生産性は製造業企業だけのものではありません。農林水産業も、あらゆる流通、サービス産業も全部ひっくるめての取り組みが必要です。それには、日本の中央政府、地方自治体のマネジメント能力、社会資本、インフラの効率化への効率的な投資(国民経済における資本装備率の向上)も必須です。

 しかし他国が出来ていることです。日本に出来ないはずはありません。
 人手不足は、失業深刻社会に比べたら、ずっと望ましい姿です。日本の生産性を、OECD加盟国の18番目ではなく、せめてトップ10に早く入るように努力することが、最も重要な人手不足対策ではないでしょうか。

付加価値と付加価値生産性のまとめ

2014年07月30日 09時43分36秒 | 経営
付加価値と付加価値生産性のまとめ
 付加価値と付加価値生産性について、見て来ました。日本人は日本国内で生産した付加価値(GDP)で暮らしています。企業は、その企業の生産した付加価値を賃金と利益に配分し、存続・成長しています。付加価値は社会を豊かに、快適にする原資です。

 社会をより豊かに、より快適にするための仕事が「生産性の向上」です。正確には「付加価値労働生産性」の向上です。これは通常、企業の手によって行われます。生産性の向上に先行した企業や国が、企業間競争、国際競争の勝者になります。

 失われた20年で大幅な遅れを取った日本は、これからが正念場です。
 企業の生産性向上策については、種々の分析方法を見て来ました。売り上げを伸ばす、資本を活用する、資源を効率的に使う、などなど。
 これに加えて、国全体の生産性を上げるには、日本株式会社の本社機構であり、企業で言えば間接部門である「政府」の生産性向上努力、日本株式会社のための総合的な生産性向上策の「舵取り」大事です。

 途上国の人が、日本に来て仕事をした場合、自国内でやっていたのと同じ作業をしても賃金は何倍にもなります。これは、日本経済社会全体の生産性が高いから、その中では同じ作業をしても高い賃金が払えるのです。

 そうした目で、「 付加価値と付加価値率」を見て頂きますと、日本株式会社の生産性は、OECD加盟34か国中、18位だという事が解ります。
 日本企業は頑張ってはいますが、1990年代から20年に亘る長期不況で経営は思うに任せず、政府の舵取りもあまり適切ではなかった面も多かったのでしょう、いささか残念な現状です。

 しかし考え直せば、18位ということは、日本はまだまだ国民経済全体の生産性を上げて、国民生活をもっと豊かで快適にする余地が大きいという事でもあります。かつては、ジャパン・アズ・ナンバー1と言われた日本です。これからが楽しみでもあります。

 多分これからその実現に着々進んでいく日本だと思いますが、それを支えるのは、研究開発・技術革新の一層の推進、資本の蓄積とその活用、中央・地方政府の「国家・地方自治体の経営者」としての努力、そしてすべてを支えるのは、真面目に努力する日本人の態度と能力、そして知恵の発揮でしょう。

 付け加えれば、日本人の能力と知恵をますます高めるには、人材開発、そのための教育訓練、学校教育から産業訓練までの一層の充実が必須です。
 教育訓練は人間への投資です、設備投資と同様、人間への投資は生産性向上の決定的な要素です。5SやQC,OJTや定型訓練の実施で、2割程度の生産性の向上は容易に達成できるというケーススタディーもあります。
 長期不況の中で、 教育訓練費を削減し、非正規従業員を多用してきた咎めは、現場力の低下や組織連携活動の不具合などに顕著に表れています。
 すでに先進企業では反省の動きも始まっていますが、一層の広がりが期待されます。

 そうした産業界における付加価値への理解や付加価値生産性向上への取り組みの進展を、その時々、これからの経済社会の動きとともに、このブログでコメントしていければと思っています。

付加価値の分析 その7:資源の希少化と資源生産性

2014年07月29日 09時50分30秒 | 経営
付加価値の分析 その7:資源の希少化と資源生産性
 通常、付加価値生産性の分析は、これまで述べて来た2つの公式で完了です。しかしここでは、最近の資源問題を意識して、「第3公式」を考えてみました。
 第1公式は付加価値生産性に売上高を介在させたもの、第2公式は資本を介在させたもの、そして第3公式は、「資源」を介在させたものです。
 したがって、第3公式はこうなります。

 第3公式  付加価値生産性 = 付加価値/資源使用量 × 資源使用量/従業員数

 ここで使用資源量は「額」ではなく「量」です。資源の価格上昇を反映させないためです。
   
「付加価値/資源使用量」 は資源の生産性
「資源使用量/従業員数」は1人当たりの資源使用量。つまり、資源の制約状況を示します。

 値上がりする化石燃料、さらに典型的にはレアメタル、レアアースなどが分析対象になります。一般論的に言えば、ここでは第2項の希少資源の1人当たりの資源使用量は、減りこそすれ増えることはありません。従って、付加価値生産性を上げるためには、「資源の生産性」を上げる以外はないことになります。
 さらに、ますます資源が減るのであれば、それ以上に資源の生産性を上げるしかありません。

 日本は世界的に見ても、この分野では高いパフォーマンスを上げて来ています。すでに「省資源・省エネ」は日本経済成長のためのキャッチフレーズになっていますし、中国の資源戦略でネオジムのようなレアアースが不足してくる中で、ネオジムの使用量10分の1で同等の磁力を確保できる磁石の開発など素晴らしい実績があります。

 また、一人当たり資源の供給量に制約がある場合は、資源における材料転換への取組が果敢に行われています。代表的な例は、化石燃料に代わる再生可能エネルギーの開発でしょう。太陽光や風力、海水利用などでの電力生産、トウモロコシから始まり、多様な植物のアルコール化、ミドリムシによるジェット燃料の生産などなどです。

 こうした新しい取り組みのベースにあるのは「第2公式」です。「労働の資本装備率」をいかに高めるか、それにはすでに述べましたように、企業がより多くの利益を蓄積し、それを技術開発、R&D,生産設備に具体化して現実の成果を出すといったプロセスが必要になります。

 こうした困難なブレークスルーを必要とする時代には、企業はより多くの技術開発のための資本投下を必要とし、その確保のために、より大きな利益を上げることが要請されるのです。
 現実のプロセスでは、利益は、付加価値を人件費に配分した後の残りです。人件費は春の賃金交渉で決まり、それを払った結果、翌年の3月に、その期の利益が確定するのです。しかしそれでは「成り行き経営」ですから、「付加価値、人件費、利益」の関係を確りと「経営計画」の中で策定し、研究開発、技術開発に備えなければなりません。

 その意味では「 労働分配率」(人件費/付加価値)の適正値というのは、企業環境、社会からの企業への要請によって変わらなければなりません。労使間でそうした高度な話し合いが出来るのは、広い世界でも日本ぐらいではないかと私は思っています。
 
 以上、このブログのメインテーマとする、付加価値、高付加価値化、付加価値生産性などについて述べて来ましたが、次回は総まとめをしたと思います。

付加価値の分析 その6:労働の資本装備率と利益の重要性

2014年07月28日 12時29分31秒 | 経営
付加価値の分析 その6:労働の資本装備率と利益の重要性
 100年、200年人々の生活が変わらない中世から、産業革命以降の、毎年生活が良くなって当たり前、今で言えば、経済成長は当然、ゼロ成長なら政権を変えろ、という世の中になった最大の要因は、「技術革新」と「労働の資本装備率の向上」の組み合わせによるものです。

 人間は豊かさと快適さを実現するために資本を活用して付加価値を創出していると書いて来ました。創出された付加価値が豊かで快適な人類社会を実現するのとともに、そのために働く場においても、仕事はより楽に、生産性はより高く、を可能にするのは、技術革新と資本の組み合わせです。

 端的な説明として「 生産性向上の手段」をここでお読みください。すでにお読みになってご記憶の方もおられるかと思いますが、是非もう一度!!
 
 労働の資本装備率の向上は必ず、技術革新と組み合わせられなければなりません。私は漁業の例も使いますが、手づかみなら資本ゼロ、次は木製の銛、銛をを1本から5本にしても取れる魚は5倍になりません。釣竿にします。たくさん釣れますが、釣竿を5本にしても漁獲量は5倍にはなりません、「同じ技術水準」の設備を増やしても収量が上がらない、言い換えれば資本生産性が低下する事を「収穫逓減の法則」と言います。

 収穫逓減の法則を打ち破るのが、技術革新です。丸木舟に乗って、魚の沢山いる所で釣りをする。釣竿から漁網利用にする。船と網で、定置網、巻き網、底引きなど、多様な技術を使う、魚群探知機を装備する、などなど。

 法人企業統計などを使って、産業別の労働の資本装備率(以下資本装備率)と、産業別の付加価値生産性を見ると、はっきりと相関関係が見られます。

                付加価値生産性  労働の資本装備率
       繊維製造業      404千円    563千円
       化学品製造業    1310千円   1780千円
       電機製造業      853千円    762千円
       自動車等製造業    961千円   1101千円
       情報通信業     1069千円   1102千円
       卸売業        770千円    799千円
       小売業        526千円    560千円  
                (資料:法人企業統計年報2013年度)      

 同様の傾向は、企業規模別にも見られます。企業規模が大きくなるにつれて、労働装備率も付加価値生産性も上がります。
 しかしこうした数字はあくまで平均的なもので、個別企業については、同じ業種の中でも、中小企業であっても、資本装備率は格段に高く、生産性も同様に高いといったケースは少なくありません。特色ある技術、特色ある製品などで、国内や世界で大きなシェアを占めるような企業でよくみられる例です。 

 優れた技術革新のためには資本投下が必要です、それを生産設備として実現し活用するにはさらに資本投下が必要です。企業の利益(資本蓄積)というのはそのためにどうしても必要なものです。利益が出なければ生産性も上げられませんし、企業の成長も発展もありません。
 そうした資本投下と、それを開発し使いこなす技術・能力を従業員が持つこと、これは教育訓練ですが、以前も触れたように、教育訓練は人間への投資で、最終的にはこれが最も大事でしょう。

 これらが相まって、企業も経済も社会も進歩します。お時間があったら、「 企業活性化・経済成長への図式」をご一読いただければ幸いです。

付加価値の分析 その5:資本生産性を上げるには

2014年07月27日 09時41分16秒 | 経営
付加価値の分析 その5:資本生産性を上げるには
 付加価値生産性の第2公式から、付加価値労働生産性を上げるには、①資本生産性を上げる、②労働の資本装備率を上げる、の2つが必要という事が見えてきました。

 今回は資本生産性を取り上げてみましょう。
 資本生産性では、一般的には企業が活用しているすべての資本「総資本」の生産性を見るわけです。総資本はご承知のように、企業のバランスシートの資産合計(=負債・資本合計)です。
 つまり、企業が使っている「運転資金」「設備資金」、言い換えれば、「流動資産」「固定資産」の合計です、企業はそれだけの資本を「寝かせて」仕事をしているわけです。ですから、流動資産を出来るだけ圧縮する、設備投資を出来るだけ効率活用するといったことが重要になります。

 流動資産を圧縮する為の常套手段は、売掛金の早期回収と、棚卸資産の圧縮です。もちろん売掛金の早期回収は、売掛期間を長くして販売促進をやるといった努力と裏腹の関係になりますので、それぞれの場合のメリット・デメリットを比較秤量する必要があります。

 棚卸資産の圧縮は、 トヨタ方式といわれるJIT(ジャストインタイム方式)、製造期間の短縮などの積み重ねで可能になります。JITは、リーン生産方式などともよばれ、世界的に取り組まれています。

 固定資産の効率活用は、工場関係とオフィス関係両方で取り組まれなければなりません。生産の場では設備のフル活用、8時間より16時間、24時間操業にすれば工場設備の生産性は上がります。しかしそれでは交代制で、作業員人が増える可能性があります。そこで自動化、省力化が重要になります。

 本社ビルやオフィスは中小企業よりも大企業の方が立派です、法人企業統計などで見ますと大企業の方が設備生産性が低いのが一般的な傾向です。立派な本社ビルなどを建てると、設備生産性はかなり下がります。

 小売業でも、デパートの建物とスーパーの建物とは全く違います。デパートは高価でも高級品、高額消費を目指すという事で、それだけ建物にもカネ(資本)を掛けます。スーパーは品物を安くするために、建物の建築単価を下げて、設備生産性を上げているわけです。

 資本生産性を上げるという事は、それぞれの目指す業態の中で、製品や商品の品質、顧客の要請や嗜好等との総合的バランスの中で、いかに少ない資本投下で目指す付加価値の生産を実現するかという事になります。
 いわゆる遊休資産などは適切に処分すべきです。

 かつて、土地神話のあった頃は、遊休土地の保有が地価上昇で最も有利な含み資産などと言われたこともありましたが、バブル崩壊以来、殆ど全て処分されてきました。付加価値生産性こそが企業の死命を制する指標という正常な経済社会の中では低い資本生産性は許されないでしょう。

 というのが企業経営の王道ですが、実は、資本生産性は、なかなか上がりません。例えば製造業で見ると設備投資の生産性(総資本のうち、設備投資(有形固定資産)だけの付加価値生産性を見たもの)は平成23年度までの10年間、景気変動による変化はありますが、71%ほどでまったく変わっていません。これは例えて言えば、2倍の効率の上がる新鋭機械を買うと値段も2倍だといったことによるようです。
 ですから資本生産性の方は、大きくは上がらなくても、下げないように最大限努力をするといったことになるのでしょう。
 そこで、付加価値生産性向上のためには、次回取り上げる「労働の資本装備率」が大変重要になってきます。

付加価値の分析 その4:資本の活用と付加価値

2014年07月26日 08時58分32秒 | 経営
付加価値の分析 その4:資本の活用と付加価値
 前回も触れましたが、これからは、ますます高付加価値化の時代になると思います。
 例えば自動車は、ガソリン車からハイブリッド、電気自動車、燃料電池車、自動運転車など多様な進化で高付加価値化を狙っています。
 車載用から家庭・事業所用、電力会社用まで広い活用の可能性が広がる電池にしてもその高性能化には著しいものがあります。
 繊維は冬は吸湿発熱とか、夏はさらさら感とか、速乾、形状記憶、伸縮性、から金属代替まで、進化しています。
 そうした繊維を活用した衣料品から、機械部品、航空機まで様々です。快適さ、省資源化、軽量化、強靭化などはすべて付加価値を生みます。
 デパート、スーパー、コンビニ、専門店、なども、店舗設計、販売方式、おもてなし精神など多様な面で高付加価値化を狙います。

 こうした製造、販売、サービスなどの戦略を考える場合、どうしても必要になるのが設備投資です。本来はこの中には人間への投資=教育訓練も入るのですが、これはまた別の機会に譲ります。

 付加価値は人間が資本を使って創出すると言ってきましたが、この「資本」の活用が設備資金、運転資金への資本投下です。精密な部品を作るにはそのための機械が必要です。店にお客を呼ぶには場所を選び、魅力ある店舗にしなければなりません。どうしても資本が必要になります。

 という事で、付加価値(生産性)の分析の第2公式を見てみましょう。

   付加価値生産性 = 付加価値/使用資本 × 使用資本/従業員数

というのが第2公式です。付加価値生産性の公式に「資本」を介在させたものです。この式では、使用資本が、右辺の2つの分数の掛け算のそれぞれ分子と分母に入っていますから右辺の使用資本を相殺すれば、公式は元の付加価値生産性の式に戻ります。

 この公式の右辺の内、
「付加価値/使用資本」は、「資本生産性」で投下資本がどれだけ効率的に付加価値を生み出したかを示します。

   「使用資本/従業員数」は、「従業員一人当たり使用資本額」で、「労働の資本装備率」と呼ばれ、時に「資本装備率」と言われたり「労働装備率」と言われたりします。間違いやすいので気を付けてください。

 この式で見ますと付加価値生産性を上げるには「資本の生産性を上げる」ことと、「従業員一人あたりの資本投下額」(設備投資や運転資金で賃金ではありません)を増やすことが必要という事になります。

 そこで問題は、①資本生産性をどうやって高めるか、②労働の資本装備率をどうやってあげるかという事になります。

 この問題は、種々の事例の検討なども必要になりますので、次回に論じたいと思います。その間、自社の事例などから種々ご検討いただければ幸いです。

付加価値の分析 その3:売上高と付加価値

2014年07月24日 12時12分54秒 | 経営
付加価値の分析 その3:売上高と付加価値
 企業の業績に関わる数字で最も一般的なのは「売上高」と「利益」でしょう。業績好調の時はよく「わが社は今期も増収・増益だ」などと言います。
 増収とは、売上高が増えていること、増益とは利益が増えていることです。

 そこでは、付加価値という言葉は入って来ません。という事は、それだけ付加価値という言葉(その概念)は、なじみが薄いという事でしょう。

 しかし、一国の経済になると全く違います。その国の経済の状態を表す最も一般的な数字は「GDP=国内総生産」でしょう。ご承知のように、GDPはその国が1年間に創りだした「付加価値」です。
 国の中では原材料が部品になり、製品になり、卸で売られ、小売りで売られるという事で、同じものが何回も売られますから、売り上げで重複する部分を省いて、付加価値だけを表示した方が解り易いからです。

 1つの企業で見れば、売上高は「外から買った財やサービスの金額」と「わが社がそれに付け加えた金額」に分けられます。
  「売上高 = 外部購入費用 + 付加価値」 という事になります。

 そこで付加価値(生産性)分析の第1公式を見てみましょう。

   付加価値生産性 = 付加価値/売上高 × 売上高/従業員数

 付加価値生産性=付加価値/従業員数 に売上高を介在させてみたものです。売上高は、右辺の2つの分数の掛け算のそれぞれ分子と分母に入っていますから右辺の売上高を相殺すれば、公式は元の式に戻ります。

 この第1公式の右辺の、
 「付加価値/売上高」は、 「付加価値率」で、高付加価値化の指標です。
 「売上高/従業員数」は、 「従業員一人当たり売上高」で、よく達成目標に使われます。

 つまり、付加価値生産性を高めるためには、付加価値率を高めることと、一人当たり売上高を増やすことが必要という事になるわけです。
 これらの内、付加価値率を高めること( 高付加価値化)は、いわば「質的な」付加価値生産性向上策で、一人当たりの売上高増加策は、いわば「量的」な、付加価値生産性向上策です。

 今は量より質の時代などと言われますが、一般的に言えば、企業としては「付加価値率の向上」により重点を置くことになるのではないでしょうか。

 これからの企業発展のカギとなる「付加価値率の向上」については、このブログでも「付加価値と付加価値率」「付加価値率の数字」「生産性向上の手段」など、折々に取り上げて来ていますので、ブログ内リンクも含めて、検索して頂ければ、お役にたつ情報もあるかと思っています。

付加価値の分析 その2:付加価値分析の目的

2014年07月24日 10時06分22秒 | お知らせ
付加価値の分析 その2:付加価値分析の目的
 皆様すでに御承知の事と思いますが、型どおり最初に付加価値分析を何のためにやるのか考えてみましょう。
 付加価値は、我われの生活を豊かで快適なものにするための原資です。付加価値の分析は、付加価値の由来や構成、付加価値の分配なども含みますが、既に「付加価値を正確に理解しましょう」や「労働分配率論議」で取り上げています。
 という事で、ここでは先ず、どうすれば付加価値の創出がより効率的に行われ、付加価値が増えて、望ましい結果に近付けるかを検討する事にしたいと思います。
 それが巧くいかなかったときに、なぜ巧くいかなかったか、原因を知るためにも、勿論活用できます。

 ですからここでは、より大きな付加価値を生産(創造)するためにはどうすればいいかの検討が中心です。
 以前も触れましたが、2人で働いたら、1人の場合の2倍の付加価値が生産されたといっても、特に感心されたりはしないでしょう。1人で付加価値生産を1.5倍にしたら、これは大変なことです。

 ですから付加価値分析は、具体的には「付加価値労働生産性」=1人当たりの付加価値をいかにして増加させるかを目指すことになり、付加価値労働生産性向上への取り組みという事になります。

 そこで、通常付加価値分析で使われる公式というのは、「付加価値労働生産性の分析」という事になります。付加価値労働生産性(以下付加価値生産性)の公式ですから、その基本形は
 
     付加価値生産性 = 付加価値額/従業員数  という事になります。

 付加価値は人間が、資本を活用して創りだすものです。それは企業としては生産額=売上高として計上され、その中から、外部購入費用(他企業から購入した財とサービス)を差し引いたものがわが社の創出した付加価値となります。もう少し詳しく言えば、わが社という経済活動の場で巧みに組織化された、人間と資本の組み合わせが実現した(創出した)経済価値という事でしょう。

 したがって、この分析は、人間(従業員:これは社長まで含みます)をベースに、トータルの企業活動としての売上高、活用した資本の大きさ、使用した原材料の価格あるいは量などが関係してきます。

 というわけで付加価値分析(付加価値生産性分析)では、通常次の2つの公式を使います。

第1公式   付加価値生産性 = 付加価値/売上高 × 売上高/従業員数

第2公式   付加価値生産性 = 付加価値/使用資本 × 使用資本/従業員数

私は、もう1つ付け加えたいと思います。

第3公式   付加価値生産性 = 付加価値/使用原材料 × 使用原材料/従業員数

 次回以降、これらの公式を使って、いかに生産性の向上を考えるかを検討したいと思います。そこではいろいろな生産性の概念が登場することになると思います。

10銭の値動きでキャピタルゲイン!?

2014年07月23日 11時11分19秒 | 経済
10銭の値動きでキャピタルゲイン!?
 急に株式欄の表示が小数点以下1桁までになつて吃驚しました。
 最近値動きの少ない東京市場です。値動きがなければ株屋は仕事になりません。以前もこのブログで書きましたが、
 大工殺すにゃ 刃物は要らぬ 雨の三日も 降ればいい (江戸都都逸)
 噺家殺すにゃ 刃物は要らぬ 欠伸ひとつで 即死する  (某落語家)
 株や殺すにゃ 刃物は要らぬ 寄り引け同値で ザラバなし (某相場師)
などと言われるのは昔からです。
 
 聞けば10銭単位にするのは、取引を活発にしたいからだという事だそうです。
上の都都逸に従えば、値動きがなければ仕事になりませんから、値動きがあるようにしたい、1円の値動きがなければ、10銭幅にすれば値動きがあるだろう、10銭幅でも動きがないより良い、という事でしょうか。

 今はプロのトレーダーはコンピュータにソフトを組み込んで、売買はコンピュータがやるのだそうで、コンピュータなら、JRのスイカと切符の運賃の違いでも明らかですが、端数処理に特にコストがかかるわけではありません。
 巧く行けば、同じ1万円儲けるのに、10銭幅なら1円幅の10倍の株を動かさなければならないので、株の売買高は10倍に増えて、万々歳!なんてことも有り得るのでしょうか。

 しかし考えてみれば、こういう取引をする人は、売買する株を発行している企業の役に立つかどうかなどは全く念頭になく(コンピュータだから当然)、ただ自分のファンドのキャピタルゲインが極大になることしか眼中にないでしょう。
 一般投資家にはほとんど関係がないことだという意見も多いようです。

 株式市場というのは、本来、その国の企業の活動を支援し、実体経済の活動を活発化するために作られたものでしょう。投機資本が利益を得てファンドマネジャーが億万長者になり、庶民が貧しくなるようなマネーゲーム、マネー資本主義(最近のTV番組でも取り上げられていますね)のお先棒を担ぐためにあるのではありません。

 サブプライム・リーマンショック以来、マネー資本主義の行き過ぎが反省される中で、一般投資家はさておき、付加価値創出に関係ないキャピタルゲインだけを純粋に求める投機資本の活動に期待するような政策には何となく違和感を感じるのは、私だけでしょうか。

付加価値の分析 その1

2014年07月22日 11時34分43秒 | 経営
付加価値の分析 その1
 このブログが付加価値を重要概念として掲げていることは表題でも触れている通りです。付加価値というのは、実は単なる金銭的な価値ではなく、その時代の社会、その時代に生きてきる人間が「価値」として認めるものの具体化で、「経済価値として可視化」したものなのです。

 GDPが増えれば公害が増えるとか、経済成長は地球環境を悪化させるといった見方はありますし、中国の大気汚染、止まらない地球温暖化などはその典型でしょう。
 これは、今の人類の多くが、地球環境や人類社会の将来よりも、当面の豊かな生活を望んでいるという「現状の価値観」の結果なのです。

 しかし、他方で、これではいけないという意見は強くなり、より長期的視点の、より健全な価値観が広がってきていることは確かです。
 端的な例が、昔は「スピードの出る車」今は、「スピードも出て環境にも良い車」が売れるのです。人間の価値観が変われば、付加価値の中身は変わってきます。

 もっと大きく言えば、付加価値の中身は、人間が望む財やサービスの生産で構成されていて、それは豊かさと快適さ(という価値)を人間・社会に提供しています。
 そしてその中身が人々の価値観の変化に従って、次第に、当面の物質的な「豊かさ」から長期的視点の人間生活の「快適さ」により大きな比重を置くようになっているのではないでしょうか。

 やはり今日生産されている付加価値(GDP)は、今日の人間の価値観が、その中身を決定しているのです。
 日本は伝統的に、自然環境(地球環境)を大切にし、自然を育てて人間も育つと考えてきました。今日の技術開発の段階でも、長期的視点に立った人間生活の快適さを真剣に考える屈指の国でしょう。

 これから、付加価値の分析について順次整理していきたいと思いますが、その中でも、付加価値の中身(付加価値の生まれる源・原点)について、そうした視点を失わないようにしていきたいと思います。

 この視点では、種々の生産性の概念が重要になります。例えば省エネとは、少ないエネルギー源でより大きな効果を上げる、つまりエネルギー生産性の向上です。希少資源についての省資源の技術開発なども同じです。

 少ない人間で同じ成果を出すのは、労働生産性の向上です。これは人類社会の豊かさ、快適さを生み出す源です。

 そしてそのすべての成否は、人間の知恵や能力、進歩・前進への態度にかかわってきます。付加価値を生み出すのは人間ですから、これは当然でしょう。
 さて、そうした視点を失わないようにしながら、頑張って付加価値の分析の手法を皆さんと一緒に整理していってみたいと思います。

付加価値率の数字

2014年07月21日 10時51分42秒 | 経営
付加価値率の数字<2008年が日付のリメイク版>
 前回、「高付加価値経営と付加価値率」というテーマで書かせていただきましたが、少し具体性がないとと思い、財務省の「法人企業統計年報」から、業種別などの付加価値率を拾って見ました。
 付加価値率は企業の元気度、バイタリティーの指標などといわれますが、理由はこうです。

 同じものばかり売っていればだんだん売れなくなり値下がりして付加価値率は下がります。付加価値率を高く維持するには、常に新製品、高度化商品など顧客に魅力ある製品やサービスを提供し、価格は多少高くても売れるといった状況を作り出すことが必要です。

 という事で財務省の法人企業統計をみてみますと、全産業平均の付加価値率は、平成20年から23年にかけて、17.5%、19.3%、19.6%、19.9%、と上がって来ています。「失われた20年を徐々に克服し、日本経済全体が元気なってきた証拠でしょう。近年、いろいろな新製品・新商品がどんどん出て来ていますが、今年度の統計が出る頃にはもっと上がっているでしょう。

 この法人企業統計では、売上高は消費税などを差し引いた純売上高、付加価値の定義は、付加価値=営業純益(営業利益-支払利息等)+役員給与+従業員給与+福利厚生費+支払利息等+動産不動産賃借料+租税公課で、このブログの「付加価値を正確に理解しましょう」と同様のものです。

 従来から、平均的な企業の付加価値率は、ほぼ20パーセントなどと言われ、確かにその通りですが、産業別などの中身に下りてみると、かなりの違いがあります。
 法人企業統計年報で最近時点、平成23年度の数字で見ますと
     全産業     19.9%
     製造業     18.3%
     卸売業      7.8%
     小売業     18.5%
     運輸業     35.7%
     サービス業   38.3% (うち教育・学習支援   51.1%)
などとなっていて、業態によって大きく違 うことが解ります。
 卸売りと小売の違いはマージンの違いを考えれば理解できますし、商品や原材料の仕入れのないサービス関連の業種の付加価値率が高いのも理解できます。
 また、同じ製造業の中で企業規模別に見ますと、規模の小さいほうが付加価値率が高いことがわかります(ここでは数字は示していません)。これは大手ほど、完成度の高い高価な材料・部品を仕入れるアセンブリー型の企業が多ために、売り上げ占める原材料費の比率が高くなるいことの結果と思われます。
 また、個別主要企業の付加価値率が見られる三菱総研の「企業経営の分析」で見ますと、たとえば大手自動車メーカーの平均は15%ぐらいです。しかしロボットメーカで有名なファナックは、上場企業の中で自己資本比率が最も高い(90%前後)ことでも有名ですが、付加価値率も49%と製造業としては驚異的な高付加価値率です。

 このように、付加価値率は、業種・業態によって、それぞれ異なりますので、他社(同業・同規模のであっても、環境や業態の違いもありますので)の数字はあくまで参考にとどめ、わが社の付加価値率を如何に高めていくかを考えるのが現実的といえます。

高付加価値経営と付加価値率

2014年07月20日 12時20分39秒 | 経営

高付加価値経営と付加価値率<2008年1月4日付のリメイク版>
 前回も、実質付加価値労働生産性が重要概念と書いて来ましたが、日本人は1人当たり年間にどのくらいの付加価値を産出しているのでしょうか。
 この統計はOECDが出していますが、2012年で、35,202ドル(約350万円)です。OECD加盟国の中では、34か国中18位で、あまり高くありません。
 この数字は、OECD発表の購買力平価を使って、全ての国のGDPをドル換算していますから、理論上は実質値という事になります。

 アメリカは51,689ドル、スエーデンは43,176ドル、ドイツは41,231ドルですから、日本の数字は、アメリカの68パーセント、スエーデンの82パーセント、ドイツの85パーセントという事になります。

 一人当たりのGDPというのは通常、その国の国民の豊かさを表す指標という形で比較されることが多いのですが、見方を変えれば、日本人の生産性は、これらの国に比べて、それだけ低いという事です。
 日本人は勤勉でよく働く、技術水準も高いと内心思っていますが、少し違うようです。

 何故、こんなことになっているのでしょうか。原因はいろいろあると思います。日本のGDP は「失われた20年」で1990年代からほとんど増えていないという事もあるでしょう。さらにその原因(QCではナゼを5回繰り返せと言います)は、この間不況で生産性を上げるような経済活動が出来なかった。(なぜ不況になった?・・・以降はこのブログでずっと取り上げて来ました)

 これから日本は此の遅れを取り戻さなければなりません。そこで先ず「高付加価値経営」という事になります。日本の経済・社会全体が高付加価値になる必要があります。一人一人の日本人が、より高い付加価値生産に貢献するためにはそれぞれの場所で「生産性」を上げなければなりません(生産性=付加価値/従業員数)。

 という事でこれを企業レベルに落としてみましょう(日本の生産活動のほとんどは企業が行っています)。
 グローバルに競争が進展する社会です。企業にはますます高付加価値経営が求められます。端的にいえば、「使う原材料は同じでも、出来た製品の機能・性能は格段に優れている」といったことで、優れた創造性や技術力によるものということが出来ましょう。

 では具体的に、高付加価値経営を示す指標は何かといえば、それは「付加価値率」ということになります。

   付加価値率 = 付加価値/売上高×100  (100をかけるのは%表示にするため)

ということになっています。上の式の右項のうち、「売上高」はすぐわかりますが、「付加価値」は解りにくいと仰る方もあるかもしれません。付加価値は、その企業が外から買ってきたものやサービスの値段(外部からの購入費用)にその企業の活動によって「付け加えた価値」で、「外部からの購入費用」と「付加価値」を足せば売上高(100%)になります。ですから、売上高のうち付加価値の分が何%かが「付加価値率」です。

 付加価値率はその企業の活力の指標だといわれます。付加価値率が上昇傾向の企業は元気に発展する企業、元気のない企業は、付加価値率が下がりがちになります。

 あなたの会社は如何でしょうか。ここ数年のあなたの会社の付加価値率の動きをグラフにしてみれば、何か得るもの、感じるものがあると思います。


付加価値生産性のいろいろ

2014年07月19日 10時22分09秒 | 経済
付加価値生産性のいろいろ<2008年4月30日付のリメイク版>
  付加価値とは、人間が資本を活用して作り出す「人間生活に役立つ価値(物やサービス)」のことです(「 付加価値の正確な理解を」2008年3月など参照)。

 われわれは、いろいろな欲求を持っています。それは、時代や個人によって異なります。そして我々はその欲求に対して金を払います。そこに付加価値が生まれます。

 戦後はお米でさえあればよかったのですが、今はよりおいしいお米に金を払います。単に走る車ではなく、環境いい車、乗り心地のいい車なら多少高価でも買うでしょう。車でスーパーに行くより、多少高くても近所のコンビニでという事もあります。

 美味しい、環境に良い、便利、・・・こうしたものの価値が上がって来ています。時代のせいでしょうか、人の欲求は高度化するのです。

 ところでこうした欲求(購買意欲)に対してモノやサービスを提供するためには、生産や販売、サービスのための設備が必要です。これを資本といいます。
 
 資本とは、土地であったり、機械であったり、ソフトウエアであったりするわけですが、今は貨幣経済の世の中ですから、こうした資本はお金に換算して表されます。そして、人間が資本を活用して創出した付加価値も、同じように金額であらわされます。
 日本全体で創出された付加価値の1年間の総額を表したものがGDPであることは、前記のブログでも触れてきたとおりです。

 ところで、1人より2人で働けば、創出される付加価値も大きくなりますが、2人がかりで2倍の付加価値を創出しても、誰も特に感心しません。しかし、たとえば、1人で5割増しの付加価値を生産したら、人を感心させることが出来ます。この「1人当りどれだけか」という数字(数字で表される概念)が「生産性」です。正式には働く人間1人当たりですから「労働生産性」、もっと正式に言えば、一人当たりでどれだけ付加価値を生産したかですから「付加価値労働生産性」  ということになります。

 このように、「生産」に「性」がつくと、1ヘクタールで小麦が何トン(土地の生産性)、100万円の資本設備でいくらの付加価値(資本生産性)、1本の生産ラインで何台の自動車(ラインの生産性)というように、使用した(投入した)生産要素当たりの生産を示すことになって、いろいろな形で、生産の効率を示す指標になります。

 もちろん、生産されたモノや付加価値は、人間が生産し、人間が活用するわけですから、「人間1人当たり」、つまり「労働生産性」が、通常は最大の関心事項で、これを日本経済全体でいえば「国民経済生産性」、働く人(就業者)1人が1年間にどれだけのGDPを生み出したか、という数字になります。

 この場合、売値を上げても生産性は増えることになります。しかしそれでは世の中が豊かになったことにはなりません。
 そこで物価の値上がりを含んだものを「名目生産性」、物価値上がり分を差し引いた正味の生産性を「実質生産性」といって区別します。そういう意味では、日本人の生活が良くなる源は「実質国民経済生産性」だということになります。



付加価値と生産性の重要性

2014年07月18日 12時06分15秒 | 経済
付加価値と生産性の重要性
 付加価値の重要性をメインテーマにしてきたtnlabo's blogですが、その本来の趣旨は、経済活動とか、それを学問の面から助ける経済学というのは、人間生活を「より豊か」で「より快適」なものにするのが目的ですから、人類のための豊かさである「付加価値」の創出問題を中心にしなければならないと考えたからです。

 その付加価値をより効率的に作り出す方法が「生産性向上」だという事になります。これに成功すれば、地球人類の活用できる豊かさは増え、その中ではwin=winの関係が成立します

 それに対して、1970年代以降、為替レート問題やマネー資本主義、金融工学が経済・経済学の表舞台に出てきました。これらは「人類の豊かさ」ではなく、専ら「自分の豊かさ」に関わるもので、その目的は「世界・社会に現存する豊かさを、より多く自分の所に移転させる」ことを目的とするものです。
 言い換えれば「ゼロサムゲーム」の中で、より多くの豊かさ(富み)を自分のものにしようという事で、結果はwin=lose の世界です。
 
 繰り返しますが、tnlabo's blogが大事と考える実体経済(創出した付加価値の総計)の成長・進化(豊かさの創出)に関わる重要概念は「付加価値」や「生産性」です。
 一方、マネーの操作で豊かさを自分の所に移転させるための手法が「マネーゲーム」であり最近の金融政策、金融工学という事になります。

 そんなわけで、このブログでは、経済・経済学の本来の使命である「実体経済」の成長や進化の基礎概念である「付加価値や生産性」に関わる問題について、かつてのブログのリメイク版も含め、改めて取り上げてみたいと思います。

一寸余計なことを書きます。
 戦後、日本は、資源のない狭い国土の中で、人間の知恵と努力によって、豊かさと快適な環境を創り上げてきました。
 「モノづくり」で より良いものをより安く、「おもてなし」の精神で、より良いサービスを、世界に提供してきたと言えるでしょう。

 「モノづくり」も、「おもてなし」も、いまアジアをはじめ多くの新興国、途上国に文化として輸出されているように思います。 
 あえて言えば、日本は戦後「普通の国」ではなく、真似るべき、あるいは学ぶべき国としてのイメージを築き上げて来たのではないしょうか。

 かつて聞かれた「ルック・イースト」、「ルック・ジャパン」はそれでしょう。
 日本人の創り上げたその文化は、今も、大震災後の整然とした行動や、サッカーワールドカップの観客の行動に表れて世界を驚かせています。
 これらのベースには、日本人の生真面目さ、経済活動における付加価値や生産性に対する生真面目な態度と同じものがあると考えています。


BRICKSの開発銀行設立

2014年07月17日 09時47分23秒 | 国際経済
BRICKSの開発銀行設立
 われわれ市井の人間にとっては突然飛び込んできたニュースですが、もう2年も前から進められてきたものだそうです。
 
 確かに、いまのIMF、世界銀行の中では、拠出額の少ない途上国は、余り発言権がないのでしょう。正直言って実体は知りません。しかしIMF第2位の拠出国の日本でさえ、異常な円高を強いられて、「失われた20年」を経験しなければならなかったことから見ても、新興国はIMFや世銀を「メインバンク」として頼りにする気にはならないのかなと考えてしまします。

 であってみれば、新興開発国が、それに代わる頼りになる国際金融機関を作ろうと考えるのも当然かもしれません。

 もちろん必ずしも主要国の横暴というのではなく、主要国の金融機関が、主要国が認めるマネー資本主義の中で、巨大なマネーを動かして新興国の経済に混乱をもたらすといったことも大きな問題でしょう。

 新興国はインフレになり勝ちです。マネーゲーマー達には、それはビジネスチャンスで、為替や金利の変動をより大きくし、そこからキャピタルゲインを得るのです。途上国の経済に与える影響より、自分のマネーメイキングが大事なのは言うまでもありません。

 ニュースを見て、私などは、新興国として当然の動きかな、などと思うのですが、BRICKSの中では、中国に主導権を握られるのを恐れているという事です。

 考えてみれば、アメリカが最大の拠出国で主導権を握るIMFが頼れないから、別の国際金融機関が必要という事なのでしょうが、そこで中国に主導権を握られてしまったのでは、IMFの二の舞になりかねないという心配もあるでしょう。

 外電では、アメリカの学者やマスコミが、「中国封じ込めが最大の課題」などと伝えていいますし、BRICKS自体も、それを避けるために拠出金額は平等にし、総裁はインドから出すことにしたそうですが、矢張り、本店は上海に置くと決まったようです。

 アメリカ自身が、国連をジュネーブからニューヨークに移し、IMF、世銀の本部はアメリカにおいて主導権を握る一方で、ユネスコやILOの本部はパリやジュネーブのままで、アメリカは都合が悪いと、脱退を言ったり、拠出金を支払わなかったりしているのですから、中国についての心配をアメリカが言うのは、極めて解り易いですね。

 アメリカはアメリカ、中国は中国として、私ども新興国の健全な発展を願うものとしては、此の新たの国際金融機関が、本当に新興国、途上国の役に立ち、頼りになる優れた金融機関として、順調に発展することを願うばかりです。