急転する雇用環境:雇用問題も量から質へ
4月の有効求人倍率が発表され1.08まで上昇、この上昇傾向は昨年来一貫して続いています。日本経済の昨年来の変化を象徴する数字でしょう。
中身では、有効求人数が増え、有効求職者数が減少ということになっていますが、一部には人手不足の深刻化が報道されています。
何かを配布する際でも、「人数分は確保していますからご安心ください」というのと、「全員の分には少し足りませんが・・・」というのでは人間の心理的反応が全く違うように、有効求人倍率1.0という境目は雇用問題において大きな心理的影響を持ちます。
読者を驚かすことが大きな意味を持つマスコミではすでに、時給1500円でも人が採れない食堂チェーンとか、復興・建設関係では人がいないとか、介護関係は外国人頼み、といった報道も多く、それぞれそれないりに、人手不足が深刻な現場の報道であることも事実でしょう。
つい先ごろまでの就職氷河期、正社員は高嶺の花、といった状態を思い出せば、本当に様変わりというのが実感ですが、そうした現場の現実に振り回せれるだけではなく、特に企業サイドはこの際、我が国における雇用はいかにあるべきかといった国民生活の基盤の問題について改めて真剣に考えつつ、あらたな雇用環境に真摯に対応すべきと思う所です。
具体的な数字を1つ挙げれば、非正規雇用37パーセントといった数字です。これは日本企業が深刻な長期不況の中でな何とかサバイバルを図るための窮余の雇用政策でした。
一方社会の安定のためには、雇用の安定が不可欠の条件です。
日本的経営はもともと「雇用が安定すれば、従業員は安心して確り働く」という性善説に立っています。そしてこれは日本人の性格に合っていたと思われます。
一方現在の日本社会で、制約の多い正社員より自由な働き方を選ぶという非正規志望の人は、アルバイト、パート、退職高齢者などで20パーセント強と推定されます。
現状の非正規社員のうち、十数パーセントは不本意に非正規で働いている人たちです。
有効求人倍率は雇用の量的な側面の数字ですが、いわゆる非正規問題への早期な対応といった雇用の質の問題は極めて重要です。
日本的経営の根幹は「人間中心の経営」、「長期的視点に立った経営」といわれてきました。雇用環境の変化の中で、こうした「雇用の質」の問題に企業が取り組み始めたこともこのところ数多く報告されています。
雇用については、量の変化を追い風に、質の変化に明確な理念を持って取り組む時期が来ているように思われます。