tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「中流危機を越えて」雑感:雇用問題

2022年09月26日 21時42分57秒 | 労働問題
先日の日曜夜9時からの「“中流危機を越えて”NHKスペシャル」はいろいろ考えさせられる内容を提供してくれたようです。

今回は第2回で、第1回から所得分布が大幅に下方にシフトしていることをグラフで示し何とかこれを克服して、中流層を上方に広げ、幅をずっと広げて、(このブログに言わせれば)昔やって出来ていたように(1億総中流)やり直していこうという意欲的なものでした。

そのなかで刺激的だったのは1982年の政労使3社のワッセナー合意以降のオランダの成功を指摘し、ジョブ型賃金・同一労働同一賃金の原則で1人当たりGDPは日本の1.4倍になっているという数字でした。

実は振り返って見ますと1990年代前半あたりまでは、日本の方がオランダより30-40%ほど高かったのですが、日本はそれから30年間もマイナス・ゼロ成長で、現在に至っているのです。一人当たりGDPランキングも世界5位以内から現在30位近くに落ちているのです。

国の経済の浮沈というのはありますが、真面目に一生懸命働いているつもりの日本がなぜそんな事になったのかの説明は「プラザ合意」と「リーマンショック」による「過度の円高」でほとんど説明できます。

ただしこれは円レートが正常化した2013~14年までの話で、アベノミクスに入ってからの低成長の原因は別でしょう。

そこでこのワッセナー合意の意味が注目されるのです。ただし、注目されるのは、実は雇用制度ではありませんが、一応、雇用・労働時間題にも触れておきます。

番組の説明では一日2時間働く人も4時間働く人も8時間働く人も、賃金・社会保障などの計算は全部時間当たりで同じ、とみんな楽しそうでした。

勿論同一労働同一賃金ですから、同じ仕事・同じ労働時間で続けていれば、賃金はいつまでも同じですから、国の職業訓練機関へ通って、例えばデジタル技術を習得、新しい仕事について8時間働いて収入が大幅に増える人もいるわけです。

解り易く言えば、従業員は全部日本でいえば非正規で、正規従業員はいないのです。従業員は仕事(ジョブ)に就き、自分の(夫婦の)生活費に合わせて、労働時間を選んで会社と契約してその時間働くという構図です。資格能力があれば管理職に就けますが、管理職だから8時間働く必要はない必ずしもないのです。

ただし企業がそういう仕事(ジョブ)の採用はありませんと言えば就職はできません。資格・能力を身に着けてからどうぞという事です。会社は職業訓練の場ではないのです。

この点は日本と欧米が基本的に違うところで、日本では、会社が給料を払いながら社会人としての生き方の訓練からローテーションでいろいろな職業訓練までやってくれます。
結果,日本の若年層失業率は世界で多分最低という定評になっているのです。

「働き方改革」の目指す方向は、基本的にはオランダ・モデルです。「ジョブ型賃金」で年功方式はやめる。同一労働・同一賃金で最終的には正規従業員は要らない。そのためには新卒一括採用はやめていくなどなど。

番組では公労使の代表がコメントをしてえいましたが、オランダ方式になれば高生産性部門に人が集まり高成長になるというより、企業内で再訓練(リ・スキリング)をやっているという意見や解説が中心だったようです。

コメントがはっきり出たのは、賃金をめぐる政労使の関係でした、これは中流層拡大という意味からは最も重要な問題ですが、次回は、この問題についてコメンテーターの意見を含め取り上げてみたいと思います。

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