tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

マネー資本主義克服に何が必要か

2012年01月30日 10時51分10秒 | 経済
マネー資本主義克服に何が必要か
 では、資本主義から生まれて、今やその健全な発展を脅かすマネー資本主義を克服するのには何が必要なのでしょうか。
 賢明な読者の方は、とうにお気づきと思いますが、それは、実体経済とマネー経済という2つのパラレルワールドの、勝手に膨張するマネーの世界の方を、実体経済の中に戻すことです。
 
 「何だ、貨幣数量説に戻るのか」と言われる方もあるかと思いますが、ある意味ではそうかもしれません。その場合、マーシャルは、通貨の量と流通速度を問題にしましたが、それに所得(おもに賃金で、実はこれが主役)を加えると良いでしょう。

 貨幣流通量は、M2などで測りますが、賃金については、具体的には一人当り名目雇用者報酬の伸びを採用するのがいいでしょう。そしてその年々の伸びを一人当りの実質GDP の上昇(国民経済生産性の伸び)に合わせることになります。(この応用分野として、インフレ・ターゲット政策があります。)

 理由は単純です。今日、先進国では、賃金(雇用者報酬)は国民所得の7割程度を占めており、殆ど全てのインフレは賃金コストプッシュインフレ です。生産性上昇を超える賃金上昇によるコスト上昇からインフレになるのですが、国際競争があるので通常スタグフレーションを引きおこし、競争力の喪失から国際経常収支の赤字をもたらします。
 労使交渉の中で、物価上昇は賃金上昇に転嫁され、賃金抑制は困難で、事態の深刻化は進みます。

 そこで2つの事が必要になります。1つは赤字のファイナンス、もう1つは、景気対策としての財政金融政策です。しかしこれは単なる鎮痛剤で、症状は和らげますが、病気は治りません。
 痛みを和らげた分、インフレ(スタグフレーション)と双子の赤字(財政赤字と経常赤字)が進行します。

 そして前回書きましたように、健全な経済運営をしている国に、為替レートの切り上げを迫り、金融工学で資金を還流させ、出来れば借金の棒引き部分を増やそうという戦略になります(これを考える人が『金融ストラテジスト』でしょうか)。
 賃金上昇が、生産性の上昇に整合的であれば、こうしたことはすべて不要になります。


マネー資本主義は経済の退歩

2012年01月28日 12時58分08秒 | 経済
マネー資本主義は経済の退歩
 これまで4回ほどで、マネー資本主義が今の世界経済に何をもたらしているかを見てきたつもりです。

 もちろん本来の金融は、実体経済を助けて生産性を上げ、付加価値を増やし、それを労働と資本で分け合い、その資本分配の中から金利を得るというのが仕事です。この場合金融機関の所得はインカムゲイン(付加価値)の分配です。

 金融機関はこれで十分儲かるようにできているのですが、金融業界に経済・経営に関わる情報が集中し、経済や経営の先行きが読めるようになればなるほど、株などを自分で売買し、直接値上がりや値下がりを利用して儲けた方が簡単だ、と考えるようになります。

 こうして運用預かり、自己売買、投資ファンドなどへの傾斜が大きくなり、キャピタルゲイン中心経営に堕していきます。
 例えば、ある企業で画期的な技術開発があれば、その会社に金を貸して、その会社が収益を上げる中で金利をもらうより、その会社の株を買って、技術革新の新聞報道で値上がりしたら、すぐ売る方が早いですね。労力も時間もかからず、儲けも大きいでしょう。

 こうした儲けは日本では昔から「あぶく銭」と言って蔑んで来ました。住友家の家憲では「浮利に逸らず」と言っています。
 今のアメリカの「ボルカールール」も基本的には同じ考え方によるものでしょう。しかし歴史的に見ると、種々の金融問題が起こるたびに反省はあるのですが、こうしたマネー経済はだんだん大規模なものに進化して、金融工学にまで至っています。

 かつても触れさせていただきましたが、アダム・スミスが、レッセフェール言いながら「道徳情操論 」を書き、渋沢栄一が「論語とそろばん」といったように、ビジネスは、常に倫理と共存する必要があるようです。
 付加価値を作らないビジネスはギャンブルに堕し、そこで経済成長は止まります 。今回もギャンブル経済への反省は生まれています。この反省も一時的なものにとどまるのでしょうか。

 戦後世界が学んだ「生産性を上げれば、いくらでも豊かで快適な社会を作れる」が忘れられ、先進国経済は、生産性よりマネーゲーム、現有の豊かさを分捕りあうというwin=loseの世界に退歩しつつあるようです。


マネー資本主義を使うと何ができるか

2012年01月26日 12時20分14秒 | 経済
マネー資本主義を使うと何ができるか
 第二次世界大戦中にアメリカが準備し、戦後実行してきたブレトンウッズ体制は固定相場制をベースに置きました.
基軸通貨ドルは金(ゴールド)にリンクしていました。そこにはマネー資本主義はなく、マネーは経済成長の潤滑油として実体経済を助けるのが役割でした。

 しかし、固定相場制は、一国経済に厳しいディシプリンを課します。生産性上昇を超えて、賃金やマネーが独り歩きするとインフレが起こり、コストや物価が上がって、競争力を失います。つまり、働いた分の中で生活することを強いられるのです。

 しかし、民主主義の中で、政権担当者が、民意に迎合しやすくなると、この範囲を逸脱して実体経済より良い生活(稼ぎより良い生活)を認めてしまうケースが増えます。生産性を超える賃上げによるコストプッシュインフレが典型的なものです。

 政権担当者が国民に「自分たちが生産性の範囲内で生活しましょう」と説得できなくななった国は、コストプッシュのひどい順にスタグフレーションに陥りいます。1970年代から80年代にかけての、先進国病の時代(サッチャー、レーガン改革前)が典型です。
 経常赤字をゼロに戻す努力ができない国の通貨は、イギリスポンド、アメリカドル、フランスフランをはじめ軒並み下落です。

 こうして、結果的に、ドルやIMF特別引き出し権(SDR)など通貨を増やし、当座を借金で凌ぐことと、通貨の切り下げで凌ぐうちに、次第に、マネー資本主義が形作られます。

 これを経済戦略として明確に登場させたのが「プラザ合意」でしょう。自国のコストが下がらなければ、相手国のコストを上げることで対抗しようということです。日本のコストはプラザ合意後2年間に2倍になり、為替レート切り上げの場合には、物価も同時に2倍になりますから、当然デフレになりました。

 マネーが実体経済を無視して国際経済関係を大幅に変える武器になることが明らかになったのです。

 さらにもう1つの、複雑なシステムも開発されました。それは,黒字国のカネを赤字国に流すシステムです。これは国際的なシステムの変更で、資本取引の自由化、時価会計、デリバティブ、レバレッジの緩和といった大掛かりなものでした。政治的には規制緩和が条件を整備します。

 こうして本来ならば、赤字国の努力で、早期に是正されていなければならない、国際的な経済の不均衡が、危機的なものに巨大化するまで、隠されたり、気づかれなかったり、放置されたりすることになってしまったのが今日の状態でしょう。

 これが、マネー資本主義にできること、やってきたことの概要だと思います。


生産性とマネー資本主義とは別世界

2012年01月24日 11時57分50秒 | 経済
生産性とマネー資本主義とは別世界
 前回も申しあげましたが、ここでの生産性は、実質労働生産性と理解していただきたいと思います。もともと生産性とは生産の効率を測定するための指標で、利用目的は、生産性を上げれば、それだけ人類がより豊かで快適な生活を享受できるからということです。

 多くの皆様がご承知のように、いかなる形の生産性を測定すれば、その目的に最も役に立つかということで、全要素生産性(生産の3要素の生産性を総合する試み)とか実質国民経済労働生産性(実質GDP生産性)とかの研究がされてきているわけです。

 ところがマネー資本主義というのは、実体経済という世界に対して従属関係にあったマネーの世界を、いわばパラレルワールドに切り離し、マネー経済を「純粋」に「原理主義的」な形で取り上げることで、実体経済の成長(生産性の向上)とは関係がない、価格の変動の「演出と活用」だけの関係に変えていくように変態を遂げたようです。

 もともと、マネー(貨幣)は実体経済の活動に役立つために発明されたものなのでしょうが、今のマネー資本主義(金融工学と言替えればもっとはっきりすると思います)は、その役割は放棄して、前述のように「純粋に」マネーの動きだけで「マネーの増殖」を図ろうというものです。

 実体経済に奉仕することを止めたところで、マネー資本主義は、評価額の差でマネーの増殖を図る「キャピタルゲイン」の世界のものとなります。同じ資本主義と呼ばれながら、行動の基本原理、基本哲学が全く違ったものとなったのです。

 御承知のように、キャピタルゲインの世界は基本的に『ゼロサム』です。こうしてマネー経済学は、生産性とは無縁になり、別世界のものとなり、人間全体に豊かさをもたらすものではなくなります。A氏が豊かになれば、B氏がその分貧しくなるのです。

 戦後世界が目指してきた、他者を収奪しなくても、自らが生産性を上げる事でだれもが豊かになれるというwin=winの経済モデルは崩れ、win=loseの植民地時代に逆戻りです。但し今度は、版図の拡大ではなく、金融自由化の拡大がそのベースを提供します。

 これがマネー資本主義、マネー原理主義、金融工学の本当の意味ではないでしょうか。


マネー資本主義と生産性

2012年01月22日 12時43分26秒 | 経済
マネー資本主義と生産性
 経済活動は、人間と資本で成り立っています。生産の3要素『土地、労働(人間)、資本』の土地は資本に含まれると考えてください。そして経済活動の主人公は人間です。資本主義と言いますから、資本が主人公だと思ってはいけません。主人公はあくまで人間です。

 資本主義であろうと社会主義であろうと自由主義であろうと民主主義であろうと、共産主義であろうと、全体主義であろうと個人主義であろうと禁欲主義であろうと享楽主義であろうと、すべて人間がいなければ存在しません。だからすべて人間が主人公です。

 同様に、今、実体経済とマネー経済が競合しているようです。この場合は、実体経済が主人公です。理由は、マネー経済は実体経済がなければ存在しないからです。
 そして経済活動の主人公は人間です。

 同じように考えれば、マネー資本主義の主人公も人間です。但しこの主人公は、「こころ」を「マネー」に乗っ取られた人間です。シャミッソーの『影を売った男』(悪魔に自分の影を売って異常な能力を手に入れた人の話)のように。
 この主人公は、通常の資本主義の主人公の人間とは違い「マネー」の心で行動します。
 そのための行動の違いは、SBI証券さんの
http://www.dambo-33.com/kouza/toshi-toki.shtml
が非常にわかりやすく説明しておられますので、有難く引用させていただきます。そして私見を付け加えますと、我々は誰でも、心の中にそうした部分を持っています。

 ところで、人間は実体経済の中で暮らしています。人間は実体経済を成長させることで、より豊かで快適な生活を実現してきました。
 その時のキーワードが『生産性』です。正式には労働生産性です。労働生産性 は「働く人1人当たりの生産量(額)」で、人間の享受する豊かさ快適さはこれに比例します。

 戦後日本は、狭い4つの島の中で、生産性を上げることに邁進し、領土を拡張しなくても、植民地を収奪しなくても、生産性さえ上げげれば、いくらでも豊かになれることを世界的に実証し、ある意味では、世界の人々の考え方を変えてきました。
 日本人にとって、生命線の「生産性」は、マネー経済学にとって、どんな意味を持つのでしょうか。


マネー資本主義と日本

2012年01月20日 11時38分56秒 | 経済
マネー資本主義と日本
 野田総理の消費税増税への姿勢は本物のようです。
 この所の民主党は、消費税も普天間も、八ッ場ダムも高速道路料金も原発も新幹線建設も、次第に自民党と同じになるようです。日本の政権政党はこの路線でないと困ると決まっているのでしょうか。決めるのは我々だと思うのですが、我々の知らない間にみんな変わってしまいました。

 ところで前回、世の中がまともであれば、財政健全化大賛成と書きました。私も日本人の一人です。もともと真面目なつもりですし、このブログを見て頂いても、専門は企業経営で、経済・経営は健全が最善 と考えていることはお分かり頂けると思います。

 しかし残念ながら、その真面目さが、今日、世界では通用しなくなっている、という現実を、度重なる経験的事実から痛感しているというのも本当です。
 それは資本主義の原理原則が、実体経済中心からマネー中心にシフトして来てしまっているということによります。

 人間は本来、実体経済の中の生き物です。マネーは食べられません。しかし食料品はマネーで買えます。
 これを徹底していくと、「金さえ稼げばいい」となり、次第に、豊かになるためには「生産性をあげても」「投機で金を稼いでも」同じだということになります。
 これを応用すれば、国際競争力を持つためには、「自国の生産性を上げてもいいし」「相手国の通貨価値を上げて(例えば円高)コスト高にしてもいい」、どちらも結果は同じ、となります。
 
 この通貨価値の方は、一寸解りにくくて、「円が高くなることは、日本経済の価値が上がることだ」とか「円が強くなれば、外国の物が安く買えていいじゃないかとかいう経済学者も結構多いので、そういう方々への説明のために。私はゴルフのハンディー の例えを使ってきました。

 そして今のマネー資本主義の流行の中、欧米先進国の巨大金融機関が一国経済や世界の大企業の経営にまで大きな影響を与えうるようなマネー市場肥大化の下で、日本やアジア諸国の実体経済中心の経済認識、経済行動が、マネー資本主義の荒波に翻弄されています。
 はっきり言ってしまえば、「勤勉に働くこと、生産性向上努力」で得たカネも、「投機で儲けたカネ」も同じカネだとして、付加価値 創造の価値を最小に貶めつつある、という現実に遭遇しているのです。

 世界でも「ものづくりのリーダー」をもって任じてきた日本がこの問題に確りと目を向ける必要があると考えるからこそ、単に『財政健全化を真面目にやりさえすれば』それに命を掛ければ、それだけで一国をリードできるのかと、敢て言わなければと考えるのです。


国債残高:資産か負債か まとめ

2012年01月18日 16時39分39秒 | 経済
国債残高:資産か負債か まとめ
 国債というと、イコール負債と、マスコミが書く通りに思い込んでしまっておられる方が多いような印象を受けていたものですから、政府にとっては国債は負債ですが、国民にとっては優良な資産のはずですという意味で書いてきました。

 国債には優良な資産という側面もあるということも含めて、国債を優良な資産として、国民が保有するような国であってこそ、野田総理の言われる「分厚い中間層」を持つ安定した経済社会が確保できる面もあることをご理解いただこうと思って書き始めました。

 残念ですが、野田総理が言われるように、社会保障をいくら確りしても「分厚い中間層」はできないと思います。社会保障は、稼いでいる人の所得を振替えるだけで、「自ら稼ぎ、貯蓄する人」が増えなければ、中間層は分厚くなりません。

 それには経済成長が必要で、日本は今、経済成長ができないような経済メカニズムの狭間に落ちています。問題はそこからいかに脱出するかで、これは経済の問題ではなく、政治の問題だと私は考えています。

 おりしもギリシャはじめ、ソブリンリスクの問題が起こり、国債の金利、国債の価格の問題が世界的にクローズアップされましたので、整理してみたつもりですが、国債の問題は、根は極めて単純で、要約すれば、単に「借金は長くは続けられない」という、個人にも家計にも国にも共通の、自明のことと分って頂ければそれですべてと考え、国債についての整理ははこのくらいにしたいと思います。
 次からは、この自明の理を分かりにくくし、日本経済を再起不能の経済の狭間に落とし込んでいる問題を、あまり歯に衣着せずに、論じていきたいと思います。

 国債の問題にここまで、お付き合いいただき、誠に有難うございました。お役にたたなかったら、歯に衣着せずに仰ってください。


国債残高:資産か負債か 4

2012年01月17日 13時54分11秒 | 経済
国債残高:資産か負債か 4
 1970年代、桜田武さんが財政制度審議会会長を務め、財政再建が問題になって土光臨調で引き継いだころ(1~2次オイルショックの頃)言われていたわが国財政の基本的問題点というのは、
 第一次オイルショックからの回復のためにやむを得ず赤字国債を出しましたが、一度出すと蛇口がなかなか閉まらない(官僚システムの悪弊)。だから行政改革をやり、財政の蛇口を締めて、また不況回復のために財政出動(ケインズ政策)が必要になった時 、さらには、将来の高齢化時代に今のうちに備えるべきだ、ということでした。

 今よりずっと余裕のある時代、一億総中流と言われ、所得格差の小ささは世界でもノールウェイに次いで2番目などと言われていた時代に時代に、子孫のために借金を残すなと言っていたのです。当時わたくしもこの堅実さに大賛成でした。
 
 家族に失業の恐怖もなく、皆正社員で、給料が毎年上がるのは当たり前と考えられ、頑張って働きさえすれば、必ず生活は良くなると確信される時代でした。
 この家のお母さんも、初めは、借金しても、金が余って返せる年も来るから問題ないと思っていた時代でしょう。

 しかし、最近状況が変わって、みんな給料が上がらなくなって、正規社員から非正規社員になった弟もいて、親の高齢化で医療費も増えて、お母さんも家族に追加借金の依頼をしながら、「こんなに毎年借金していたら、家族に借金をどうやって返すか」という心配が大きくなって、家計への拠出率を80パーセントから85パーセントに上げようという提案になったのです。

 日本の財政の場合にはおまけがあります。余裕のある時期、政府は、特別会計も含めいろんな余裕金を湯水のように無駄遣いしました。象徴的なスパウザ小田原、中野駅前のサンプラザをはじめ、日本各地のグリーンピア、簡保の宿・・・、処分価格は取得価格の何百分の1、懲りずにインカムロスを繰り返す年金基金の運用、などなどです。

 桜田さん、土光さんの心配は本物になりました。
 それでもまだ、多少の余裕は残っています。日本国債は紙屑にはなりません。前述のように、復興国債は売れています。本当に大事なことは、国民と政府で、「紙くずにしない努力」をすることです。その限りで、国債は健全資産であり続けます。
 そして、次の問題は、そのために何が必要かです。野田総理は、きちんと増税をすることが何にも増して重要だから、私は命をかけてやると言っています。例えている家のお母さんの心情と同じです。

 これはまさに正論です。世の中がまともだったら、私ももろ手を挙げて賛成するでしょう。問題は今の世の中が「まとも」ではないという現実です。


格付け会社は経済社会の混乱要因

2012年01月15日 14時58分32秒 | 経済
格付け会社は経済社会の混乱要因
 格付け会社のS&Pがフランスをはじめユーロ加盟9か国の国債の格付けを1~2ランク下げるということになって、それでまたユーロ経済が揺れているということです。
 国債が負債か資産かという問題については、もう少し書こうと思いますが、格付け会社の存在と行動のあまりの杜撰さに、今回はこの問題を取り上げてしまいました。

 FSBは格付け会社も監督するといっていますし、このところ(もともと?)格付け会社の行動様式が、本来目指したであろうものと、とんでもなく乖離してしまっているように感じるのはわたくしだけではないと思います。

 格付け会社は、国債の格付けもしますが、企業の格付けもします。誰もが期待するのは、「さすがによく見ているな、よく見て、よく考えれば、その通りだ」とみんなが納得するような分析力や先見性を持って、国でも企業でも、その将来に影響するようなプラス、マイナスの重要な点を早期に指摘し、国や企業、経済社会がより安定的に発展するような方向に導く役割を担うのが格付け会社でしょう。

 ところが今やっていることは何でしょう、ギリシャの粉飾決算を見破れないばかりか、それをきっかけにしてユーロが揺れているさなかに、誰がみてもおかしいフランスのAAAランクを突如下げ、他の8か国も、決して状況は同じでないのにまとめて下げて見せたわけです。
 おかげで、またユーロ圏は大揺れ、世界経済は当然悪い影響を受けるでしょう。

 格付け会社は当然国際投機資本がどうするかということは知っています。彼らが、格付け会社の行動で、いかに儲けを狙っているかも知り尽くしているでしょう。

 御承知のように、フランスは2005年以降ずっと経常赤字、そのGDP比はじりじり増えています。つまり毎年外国から借金しないとやれない国です。一方ドイツは日本と同じで万年黒字、ユーロ圏全体では、ほとんどドイツ(ちょっぴりオランダ)のお蔭で、ギリシャを始め、イタリヤやフランスまで赤字を出しても、経常黒字を維持しています。

 それなのに、格付け会社はずっとドイツもフランスも同じAAAにして放っておいていました。そして今、この混乱の中で、思い出したように、赤字国の国債のランクを引き下げ始めたのです。

 ま、アメリカは1960年代後半からずっと経常赤字で、それでもついこの間までAAAでしたから、「まあ、そんなもんか」と言えばそうなのかもしれませんが、せっかく世間から認められて、本来、サー-ビス料をとってサービス業を営んでいるのです。勝手格付けは勝手でいいとはならないでしょう。矢張りまじめに努力するべきではないでしょうか。

  例えば、もっと早期に、几帳面に、経常赤字国が早くお行儀を正すよううるさく言っていれば、アメリカがサブプライムローン問題や、リーマンショックで、世界経済を大混乱に落とし込んだり、折角ヨーロッパの安定を目指してできたユーロが、その運営の失敗から今回のような混乱を引き起こしてしまったりすることを未然に防止する役に立てたかもしれない、ぐらいの使命感を持って、世界経済社会に貢献して欲しいものです。


国債残高:資産か負債か 3

2012年01月14日 11時15分20秒 | 経済
国債残高:資産か負債か 3
 今の日本の財政問題も、こうやって、家庭に置き換えて考えれば、家族がお互い責任感を持ち、信頼し合って助け合って行動しているような場合には、よく話し合えば、何とでもなりそうな感じです。

 おそらく政府も国民の良識を期待しているのでしょう。すでに日本国民の多くは、消費増税は「致し方ない」と理解しているのでしょう。物分りがいいですね。

 しかし例えば、この家でも、お母さんだけが、「財布を握っているから」と勝手に振舞ったり、長男はお金を家計に貸しますが、次男は絶対貸さないとか、下の妹はアルバイトで貯めたお金を全部お母さんに貸したとかいろいろなケースがあるとすれば、きちんとしないと損得関係で、「家庭崩壊」につながるのかもしれません。家族の信頼関係次第です。

 年月が経って、このお母さんの書いた借用証が、孫の手にわたる時代、それは孫の借金なのか資産なのかと言えば、途中でチャラにしなければ資産です。返すお金が積み立ててなければ、孫たちは「返してもらうためには」孫がみんなで負担して、借用証を持っている孫が受け取るわけです。

 日本の場合は、ほとんどが国内での貸借で、消費税でみんなが国の借金返済を負担しますから、国債を持っている人にはやはり資産です。国債を持っていない人にとっては、親が国債を買うという負担をしなかった分、増税で負担、ということなのでしょう。

 つまり、国民の中で、「国債を買うことで前もって負担した人と子孫」と「国債を買わなくて後から消費税で負担する人と子孫」で、負担と受益の時期がずれますが、結局は「食べた昼食代は、いつか払う」わけで、違いが生じるのは、その間の利息分、ということになります。
 これは、昔の無尽講で、早く受け取れば受取額は利息分だけ少なく、遅く受け取る人は、利息分だけ余計受け取る、と言いうのと、期間や形は違いますが、理屈は同じものです。

 こうしてみると、元利が支払われる限り、国債は確かに資産です。
 しかも国が国債をまとめて全部償還する必要は通常ありません。資産として代々保有する国民には現金にしてあげることはないのです。大部分は借り換えて、年々の発行額、償還額の増減で、単年度主義の財政のバッファーにするという昔の教科書通りの結論になるのではないでしょうか。

 もちろんこれは国債を「国内消化」しているからです。国民が「政府は払ってくれる」と信用していれば、問題ありません。
 幸い政府はまだ信用があり、個人向け復興国債も良く売れているようです。政府経済見通しでも、日本経済には平成24年度、まだ12兆円以上の引き受け余力 があります。


国債残高:資産か負債か 2

2012年01月11日 13時53分14秒 | 経済
国債残高:資産か負債か 2
 1月2日に同じ表題で書かせていただきました。今回はその続きです。

 国を家族に例えてみましょう。この家では専業主婦の奥さんが家計をやりくりしていて、ご主人と子供さん達も働いていて、稼ぎ手は複数の大家族、学費のかかるお孫さんもいます。
 稼ぎ手は、稼ぎの80パーセントを奥さんに共通家計費として渡し、奥さんはそれで家計を遣り繰りします。

 ある年、今年は、塀を直したら少し足りなくなり、ご主人と子供達に「借用証(国債)を書いて銀行より高い利息を付けるから、少し家計費に貸して」と依頼してきました。
 翌年も、ソーラーパネル設置(建設国債)と夏の家族旅行(赤字国債)で足が出るから今年ももう少し貸してということになり、その翌年は、台風で屋根が傷んだから貸してと、その後も毎年そんなことが続いています。ご主人と長男が貯金を下ろしてかなり貸しています。それでも家全体では黒字で外からの借金はありません。
 
 最近、奥さんが、家全体の収入も増えないし、借用証は書いたけれど、そのお金が返せなくなると困るから、みんなの負担率を80パーセントから85パーセントに上げた方(消費税率引き上げ)が公平でいいと言い出しました。
  日本はちょうどこんな家庭のような国なのです。

 子供たちは「解るけど、お母さんの所だけ床暖房にしたり、買い物にタクシーで行ったりしないで(政治家・公務員の優遇)、家計費を切り詰めましょう(ばらまき財政批判)、みんながもう少し稼げばいいんじゃない(経済成長加速)などいろいろな声があります。

 さて、お母さんの書いた借用証を紙屑にしないためには、どうしたらいいのでしょう。孫達は「この紙をバーバに持ってけばお年玉(年金利息)くれるんだよ」と言っています。

 みんなが仲の良い家庭なら、「返せなけりゃチャラにしてもいいよ」、「外から金を借りているわけじゃないし」、「お父さんと兄貴だけ損することになるよ」、「結局は収入の範囲で生活すればいいんだろう」などとなるのでしょうが、国となると、人の立場も多様、簡単にはいきません。

 解決方法は合理的でなくてはなりませんし、今の国際経済では、これに為替レート、国際投機資本が絡んできます。
 皆さんも是非いろいろと考えてみてください。


24年度の政府経済見通しを見る

2012年01月07日 15時27分50秒 | 経済
24年度の政府経済見通しを見る
 昨年末に、来年度の経済見通しの閣議了解版が出ました。閣議決定版は今月末になるのでしょうが、多分数字は同じで、分配国民所得が追加になるぐらいでしょうから「了解版」で見て置きたいと思います。

 まず、政府見通しは相変わらずのデフレ基調の経済です。デフレ脱却はできないとみています。名目成長率は2.0パーセントで、実質成長率は2.2パーセントです。GDPデフレータがマイナス0.2で消費者物価指数はプラス0.1ですから、国内はデフレ、多少の海外(輸入)インフレを見ていることになります。

 2.2パーセントの実質成長のうち内需の寄与度が1.8、外需寄与度が0.4で、内需寄与度を民需と官公需に分けると民1.6、官0.4、ただし消費支出は前年度比1.1パーセントしか増えず、民間住宅建設と企業設備投資がそれぞれ6パーセン台ト、5パーセント台の増加となっています。

 雇用者数は0.8パーセントの増加ですから、賃金上昇はほとんどなく、デフレ基調の中で国民は財布のひもを締めて暮らすという従来と基本的には変わらないパターンの経済の形のようです。政府は消費振興など余り考えていないようです

 民間住宅建設が増えるのは、大震災からの復興もあるのでしょうか、企業の設備投資も復興投資でしょうか、企業の海外進出が増えていますから、問題はこれが、海外で付加価値を生むのか、国内で付加価値を生むのかです。

 そのあたりを占うのが、円の行方ですが、政府の説明では23年度の平均が$1=¥78.5、24年度の平均が$1=¥77.5となっています。
 ということであれば、来年度中は平均しても今よりは円安ということになり、日本企業は安心できるのですが、油断はできません。

 理由は、経常収支の欄を見ると、23年度の9.9兆円から24年度は12.2兆円に増加しており、これだけ復興のために余計な金を使っても経常黒字は増加基調をとるということです。またこの金は外国(米国?)に貸すのでしょうか。

 円は益々健全通貨になり 、円高の可能性は高くなります。日本人が真面目な経済運営をするだけ円高で苦労するのは解り切っています。

 ここでも政府日銀が言った$1=¥75は「生命線」と言った言葉が試されることになるわけで、アメリカやEUで何か金融問題があったと言っては円高がさらに進むようなことになります。、政府は、「何を変えようとしているのでしょうか


国債と振り込め詐欺(真面目な笑話)

2012年01月05日 14時42分16秒 | 経済
国債と振り込め詐欺(真面目な笑話)
 このあたり都下国分寺あたりでも、振り込め詐欺にあっている人が結構いるのだそうで、警察が広報車を出したりチラシや振り込め詐欺防止グッヅを配ったりしています。
近所では電話を受けた方もおられますし、家内によれば、我が家にも何回かあったようです。

 話を聞いて驚くのは、金額が100万円単位と大きいこと、不思議でしょうがないのは、それを現金で渡していることです。
 我が家では現金が20万円も置いてあれば大変リッチな気分ですが、何100万円もの巨額を現金で持っているというのがどうしても不思議です。

 確かにこのあたりは、高齢者が多く、そうした方々は、かつて、定期預金にしておけば、1年で5.5パーセントの利息が付いたことなどを良く覚えていますから、100万円預けて1年たっても電車賃より安い利息しか付かないのでは、あまりにバカバカしいので、現金で持っているということになるのでしょうか。

 そんなことで聞いてみると、預けておいても利息は付かないし、下ろそうとすると、何で下ろすんだと銀行員に聞かれてうるさくて面倒だとかいうこともあるようで、現金で持っているといっても、家に置いてあるばかりではなくて、貸金庫に入れてあるといったことも結構多いようです。

 こうしてみると「振り込め詐欺かもしれませんよ」などとうるさく言うのが逆効果になっていることもあるような気もしてきます。

 振り込め詐欺に引っかかるのは、慌てているからということが大きいようですから、否応なしに現金を作るまでに長い時間がかかるようにすれば、その間に何らかの形で気が付くこともありそうで、防止には効果があると思います。

 ということで、余分な現金があったら、思い切って、国債にしておくのはどうでしょうか。お国のためにも、ご自分のためにも、個人向け復興国債をどうぞ!!!
「これから国債を現金にしますから」と言えば、振り込め詐欺の方が「こりゃ駄目だ」と諦めるという効果もあるかもしれません。


国債残高:資産か負債か

2012年01月02日 14時34分54秒 | 経済
国債残高:資産か負債か
 消費税増税のスケジュールが発表になりました。結局8パーセント経由で10パーセントへということですが、確かに財政はその分健全化するでしょう。

 報道によれば、総理は、一つ覚えのように、昔、土光臨調でいわれた、子孫のために借金を残すなと言いうことを繰り返し、「財政健全化に貢献する」を強調しています。
 
 そのせいか、マスコミも、国債は借金だといっています。しかし、現実に日本国債をお持ちの国民の皆様にお聞きします。「国債は借金でしょうか?」 
 私も持っていますが、私にとって、国債は「資産」以外の何ものでもありません。しかも元本保証で利息も付く最も優良な資産です。そしてわたくしが死ねば、それは子供の資産になります。
 
 こんな優良な投資対象を減らさないでほしいですね。株は下がるばかりですし、海外に投資しているものは毎年目減りです。分配金が来てもそれは元本を食って払っているようです。日本国債のような優良な投資対象を資産をなんで減らさなければならないのでしょうか。もしかしたらデフォルトにするつもりですか?

 私は、お金があったら国債にしておくのが一番いいと思って、今度の個人向け復興国債も早速買いました。復興のための投資は必要ですし、復興の部分の経済成長は早いですからリターンも大きいでしょう。

 政府のやるべきことは、税金をとって、国民の優良投資先を減らすことではなくて、国民にとって、国債が優良な資産であり続けることを頑張って保証することではないのでしょうか。

 できれば、どんどん目減りするアメリカやヨーロッパへの投資を引き揚げてでも、日本国債に投資するようにし、国民に優良資産を提供し続けるように考えてほしいものです。
 今度の大震災でも明らかになりましたが、日本人は、世界が注目する最も真面目で勤勉で、良く働く国民です。そういう国に投資をするのが最もまともな資産運用でしょう。

 問題なのは、そういう真面目な国が、世界で最も長期デフレで苦しみ、他方、赤字を垂れ流しながら、安易な経済運営をする国のほうが景気がいいという現実のほうです。世界一頑張るのだから、世界一景気の良い国にしてほしいものです。
 消費税増税で財政が健全化し、やっぱり日本はすごい、やることはきちんとやる国だ、と評価が一層高まり、もっと円高になったらどうするんですか、と総理にお聞きしたいところです。


 明けましてお芽出度うございます

2012年01月01日 13時21分16秒 | インポート
訪問者各位
 明けましてお芽出度うございます。
 早速にお立ち寄り頂き、有難う御座います。
 今年も、思ったことを出来るだけ率直に、できれば平均3日に1日ぐらいは書いていきたいと思っています。ご都合のつく折にお付き合い頂ければ幸甚です。見当違いの事が書いてありましたら、ご叱正いただければ、さらに幸いです。

 ところで、今年当面する決定的な懸念は、$1=¥75を切り上げるような円高だと思っています。政府・日銀は、75円が生命線と言いました。言ったからには、生命線は死守してほしいものです。守ってこその「生命線」です。
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