tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

雇用のミスマッチについて:考察1

2025年01月14日 13時41分49秒 | 経済

職安の業務統計の有効求人倍率はこのところ1.2倍台で極めて安定しているように見受けられます。

しかしその一方で、大手の電機、自動車、化学などの企業で、国際的な人員削減、そのうちのある程度は国内での削減といったニュースが入ってきます。

最近は、技術革新が急テンポで、特にAIの活用が所謂事務職の大幅な削減につながるのではないかといった意見も多く聞かれますが、その現実化は、今後次第に見えて来るのではないでしょうか。

その一方では、エッセンシャルワーカーなどを中心に、極端な人手不足が起きているようで、特に訪問介護などは、人手不足による事業所閉鎖が相次ぐといった話も聞かれます。

バスの運転手が不足して路線バスの運行を間引きする、不採算路線を廃止するので高齢者にとっては不便になる場合が多いといった地域のニュースも良く聞かれます。

産業構造が、多様な技術革新によって急速に変化し、一方では、高齢化問題なども含めて社会の在り方が変わっていくという時代が、今まさに進展しているのでしょう。

技術革新が、生産現場などの省力化を進め、雇用が縮小し、失業時代が来るというかつての懸念は、技術革新が新しい産業を生むという実体経験によってどちらかというとあまり心配されなくなったのは大変良かったと思うところです。

しかし、これからの問題は、今後一層進歩するであろう産業社会の技術進歩の雇用に与える影響がプラスかマイナスかという問題も含めて、技術進歩の影響(恩恵)を受けにくいエッセンシャルワーカーといった雇用の分野との間で、雇用のミスマッチが、ますます深刻になるのではないかという問題です。

現状で、深刻な問題は、エッセンシャルワーカーの仕事は,人間が人間の世話をするという面が大きいので、人間でなければ出来ない事がほとんどでしょう。産業社会での高度設備を使えば人間が不要になるという「省力化」が働かない分野なのです。

例えば身体介護といった仕事の場合には、相手は人間ですから、そこには人間関係が必然的に発生します。そして人間関係という分野は、ホモサピエンスが発生して30万年の間、基本的に進歩の無い、言い換えれば生産性の上がらない分野なのです。

これを雇用・賃金の単純理論から言えば「同じことをやっていたのでは賃金は同じ」という事になるのです。そして、結果的にそれは、「訪問介護サービスの賃金は上がらない」という現実、そして人手不足につながるのでしょう。

勿論、雇用のミスマッチは、賃金制度・賃金水準だけで解決する問題ではありません。しかしこの問題の解決のための、多分最大の「必要条件」の1つでしょう。

今回は、雇用のミスマッチ問題の最も基本的な「必要条件」の1つについての問題提起をしてみました。


日本水仙、立金花:狭い庭にも春の気配

2025年01月13日 16時21分09秒 | 環境

都下国分寺でも昨日の朝は氷点下になり庭の土は凍っていました。日が出て凍った土が解けた頃、雀が4羽ほどやって来ました。

以前も書きましたが、我が家では、電気釜や食器を洗った時に残ったご飯粒はその都度庭に撒くことにしています。狭い庭でも雀が来るようにと思ってのことです。時に山鳩も来ます.それぞれに一粒一粒、雀はせわしなく、山鳩はゆっくりとご飯粒を啄んでいるのを見るは、何か自然を感じて、いいものです。

狭い庭の片隅には、気が付くともう花が咲いていました。居間の窓から見える「あけぼの」の下に伸びている日本水仙はまだ蕾だなと思っていましたら、午前中少し日の当たるおおむらさき」下の日本水仙は、気が付いたらもう花が開いています。 

この所、庭のあちこちに生えて来る立金花は、挙って濃緑色の葉を広げてきています。この花も春は早い花ですから、そろそろ蕾が出てもいいのかなと思ってよく見ましたら丸い蕾を1つ見つけました。

正月も、もう雑煮とお屠蘇の3が日、七草粥、鏡開きも過ぎて、小寒に入ったと言っているうちに、来週はもう大寒です。

「小寒の氷、大寒に解ける」と言いますが。大寒の終わりは節分、翌日は立春ですから、やっぱり小寒が一番寒いのかな、などと思っていますが、歳をとって思うのは、月日のたつのが早すぎるという実感です。

1年が「分子」で自分の年齢が「分母」だと考えれば分母が1増えるごとに、分子は相対的に小さくなるという事でしょうか。美味しいものを食べるように、1日、1日を味わって過ごさなければ勿体ないような気もします。


賃上げ継続、人手不足、休日増加、生産性向上

2025年01月11日 14時20分49秒 | 労働問題

今春闘では高めの賃上げを継続するのが主たる問題でしょう。しかしそれに加えて休日増、労働時間の短縮や弾力化といった問題も提起されているようです。

労使が春闘を機に、労働条件に関わる種々の問題を話し合う事は、労使のコミュニケーションの促進、ひいては労使関係の安定や進化のために大変結構だと思うところです。

嘗ては、賃金は春闘で、制度その他の問題は秋闘でとの慣行もありましたが、長期不況の中で忘れられたようです。ようやく賃上げだけは戻ってきましたが・・・。

本来、賃金・雇用・労働時間といった問題は、労使関係、労働問題の基本的な部分ですから、労使で、勿論政府も、十分な話し合いをしながら、検討し、経済環境、社会状況に応じて適切な配慮をしなければならない問題です。

企業は、「財やサービスを生産」するのと同時に、社会に対し、安定した雇用、適正な賃金、合理的な労働時間その他の「労働の場」を提供するという役割を持っています。

そして、提供する生産の成果においても、労働の場においても、その量も十分であり、その質も時とともに改善されていかなければならないのです。

経営サイドは生産の面により関心があり、労働サイトは,労働条件により関心があるのでしょうが、それを十分に摺り合わせて、労使関係をwin=winの関係に持っていく事が望まれるのです。

そこで登場するのが「労働生産性向上」の概念です。労働経済学の公式から言えば、労働生産性向上の成果は、賃金上昇と労働時間短縮に分配されるという事になります。生産性3原則をご記憶の方も多いと思いますが、①雇用の維持拡大、②労使の協力と協議、③成果の公正な分配の3項目です。

このブログでは、就業者一人当たりの実質GDPが「国民経済生産性」で、その伸び率が賃金上昇の基準になるといった説明をしています。GDPは所得分配の面では、雇用者報酬(人件費の総額)、営業余剰(企業の総利益)、財産所得(利子配当、時代家賃など)ですから、実質GDP成長率と実質賃金が同程度の伸びなら労使の分配関係は変わらないという考え方です。

所が現実を見ますと、この30年ほど日本の実質GDPはほとんど増えていませんから、賃金の上がらないのは当然なのです。このところ円安などで、少し企業利益の方に配分が多くなっていますので、そういう企業は連合の要求より高い賃上げをするようで、日本には真面目な経営者も多いようです。

ただ、企業はそれぞれに生産性向上に頑張っているのですが、なかなか生産性は上がりません。その結果、GDPはなかなか増えない、経済成長しないという事ことで、日本済の労働生産性は、一人当たりGDPの世界ランキングの低下とともにランキングを下げて現状では世40位ほどまで落ちました。

ここいら辺りで、かつて盛んだった生産性向上の議論をもう一度復活させる必要があるように思っています。


2024年11月平均消費性向下げ止まる !?

2025年01月10日 22時20分17秒 | 経済

今日、総務省統計局から11月の家計調査の家計収支編が発表になりました。

このところ、消費者物価指数は反転上昇の気配で、家計は消費を手控えているという報道が多いので、毎月追いかけている二人以上勤労者世帯の平均消費性向も相変わらず下がっているのではないかと予測して、パソコン上のページをめくっていきましたら、案に相違して11月の平均消費性向は上昇でした。上昇と言っても昨年の11月が74.7%で、今年の11月が74.9%ですから僅か0.2ポイントの上昇です。 

この3年間の動きのグラフを下に掲げますが、ご覧いただきますように今年の5月からずっと前年の数字を下回っていて消費が伸びる気配はありません。

5月からは春闘の結果、賃金上昇になっているはずで、特に6月7月はボーナスがの伸びが大きく実質賃金がプラス転換したにもかかわらず、勤労者世帯の消費は実額で見ても、それを反映するような上昇は見られず、結果的に平均消費性向は前年同月に比べ、かなりの下落となっています。

政府は賃金が上がれば消費が増えて、経済成長率が高まると理解していたようですが、家計の方は、やっぱり将来のことを考えて、一時的に収入が増えたと言っても浮かれて使うべきではないと考えているのでしょう。

それが11月になって消費性向が上がったのです。

年末商戦には未だ1か月ありますが、少し消費意欲が出てきたのかなとも考えましたが、どうもこれは違ったようです。

確かに勤労者世帯の可処分取得は配偶者の収入が増えている事もあって11月には前年同月比4.6%の増加になっています。

一方、消費支出は4.9%の伸びですから、平均消費性向は上がったのですが、支出の内訳の数字が出ている「二人以上世帯の消費支出」を見ますと、目につくのは、(最近エンゲル係数も上がっているようですが)消費支出の3分の1を占める食料の支出が、いい月には、対前年同月比で、名目4.2%、実質 -0.6%という事になっています。

恐らく、11月の状況では、昨年より60%以上も値上がりしたお米の値段を中心に食料費に予想外の支出が必要になったお蔭で平均消費性向が上がったという要因が大きいのではないかという推論結果になった次第です。

やっぱり家計は、未だ消費意欲が出る段階には至っていないのかと考えるのも情けないですが、考えてみれば、毎年それなりの賃上げがあるという日本経済にならないと、家計は将来の心配ばかりで、安定して消費を増やす気にはならないようです。

そういう事であれば、先ずは、これから始まる2025年の春闘に期待することになるのでしょうか。

 


実質賃金、再び4か月連続マイナス(?)

2025年01月09日 15時31分57秒 | 経済

今日、毎月勤労統計の2024年11月が発表になりました。

この所注目を集めているのは実質賃金(指数)の動向で、すでに発表されている11月の反転上昇の消費者物価指数の統計と合わせて、賃金と物価の上昇率の比較から実質賃金の動きが発表されるからです。

実質賃金の動きは2022年の4月から2024年の5月まで25か月にわたって連続して前年水準を下回ったという長期低迷の実態を示しました。昨年の6月に至ってボーナスが良かったことでこの連続記録はストップしましたが、ボーナス月が過ぎた8月から11月まで再び連続のマイナスとマスコミは書いています。

このブログでも、実質賃金の動向は追ってきていますが、昨年の春闘が多少高めだったこともあって、実質賃金はプラスかマイナスかは、統計の見方によるという状態になっています。

昨年1月からの実質賃金指数を毎月勤労統計の実質賃金指数で見ますと下の図です。

 

               資料:厚労省「毎月勤労統計」

5月まではマイナスで、6月は1.1%、7月は0.3%で一応プラスです。しかし8月からは小幅ですが、残念ながらマイナス転落です。ただ春闘前の1~3月から見ればマイナス幅は小さくなっていることは明らかで、昨春闘の賃上げが33年ぶりの大幅賃上げと言われ、この程度の効果はあったという事でしょう。

もともと実質賃金は、長い目で見れば実質経済成長率程度は上がって行ってもいいのですが、実質経済成長率が僅か0.4%という所ですから、やっぱりこの程度という事でしょうか。

ただこのブログでは、いつも触れていますが毎月勤労統計の実質賃金を計算する際の消費者物価指数は、理論的に正しいとされる「持ち家の家賃を除く総合」(家計調査でも同じ)で、これが毎月発表される消費者物価指数「持ち家の帰属家賃を含む」消費者物価指数に比べると上り幅が大きいのです。

持ち家の人は家賃を払っていませんから、持ち家の家賃相当額は、市場の家賃の動きを参考にして決めているとの事ですが、この11月も、通常の消費者物価指数の「総合」は2.9%、「帰属家賃を除く」は3.4%の上昇となっています。

賃金指数の方は「現金給与総額」で3.0%の上昇ですから通常の消費者物価指数を採れば0.1%のプラスです。10月は「除く」が2.6%、「通常」が2..3%の上昇ですから実質賃金のマイナス幅は0.1%と縮小します。

日本は持ち家が大部分で、持ち家の帰属家賃のウェイトは大きいので家賃水準の推計如何が大きな影響を持つようです。

考えてみればこんな1%にも足りない所でプラス・マイナスを論じるよりも、早く2~3%の経済成長を実現して、実質賃金が毎年2%ぐらいは上がって当たり前という日本経済にすることを確り考えた方がいいようです。